漢書
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(前漢書から転送)
二十四史 |
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二十四史 |
司馬遷『史記』 |
班固『漢書』 |
范曄『後漢書』 |
陳寿『三国志』 |
房玄齢等『晋書』 |
沈約『宋書』 |
蕭子顕『南斉書』 |
姚思廉『梁書』 |
姚思廉『陳書』 |
魏収『魏書』 |
李百薬『北斉書』 |
令狐徳棻等『周書』 |
魏徴・長孫無忌等『隋書』 |
李延寿『南史』 |
李延寿『北史』 |
劉昫等『旧唐書』 |
欧陽脩・宋祁『新唐書』 |
薛居正等『旧五代史』 |
欧陽脩『新五代史』 |
脱脱等『宋史』 |
脱脱等『遼史』 |
脱脱等『金史』 |
宋濂等『元史』 |
張廷玉等『明史』 |
二十六史 |
柯劭忞等『新元史』 |
趙爾巽等『清史稿』 |
その他 |
班固・劉珍・蔡邕等『東観漢記』 |
中華民國版『清史』 |
中華民國版『新清史』(未完) |
中華人民共和国版『清史』 |
『漢書』(かんじょ)は、中国後漢の章帝の時に班固・班昭らによって編纂された前漢のことを記した歴史書。二十四史の一つ。「本紀」12巻・「列伝」70巻・「表」8巻・「志」10巻の計100巻から成る紀伝体で、前漢の成立から王莽政権までについて書かれた。『後漢書』との対比から前漢書ともいう。
『史記』が通史であるのに対して、漢書は初めて断代史の形式をとった歴史書である。『漢書』の形式は、後の正史編纂の規範となった。
『史記』と並び、二十四史の中の双璧と称えられ、故に元号の出典に多く使われた。『史記』と重なる時期の記述が多いので、比較されることが多い。特徴として、あくまで歴史の記録に重点が多いので、『史記』に比べて物語の記述としては面白みに欠けるが、詔や上奏文をそのまま引用しているため、正確さでは『史記』に勝る。また思想的に、儒教的な観点により統一されている。『史記』と比較すると『漢書』には載道の意識が、やや硬直した形で現れている。
成書過程
[編集]『漢書』の制作は、班彪(はんひょう)が司馬遷の『史記』を継いで書いた『後伝』に始まる。班彪の子の班固が『史記』と未完の『後伝』を整理補充して『漢書』を制作した。ただし、その八表と天文志は未完であり、和帝のとき、班固の妹の班昭と馬続によって完成された。
史記との体裁の違い
[編集]- 分野史:「書」を「志」と改める。
- 伝記:「世家」を廃して「列伝」に入れた。
- 年表:「百官公卿表」を創設し、官制の沿革を示した。「古今人表」を著し、太古から漢以前の人物を評価した。
内容
[編集]本紀
[編集]- 高帝紀 - 高祖劉邦
- 恵帝紀 - 恵帝劉盈
- 高后紀 - 高后呂雉(前少帝・後少帝劉弘)
- 文帝紀 - 文帝劉恒
- 景帝紀 - 景帝劉啓
- 武帝紀 - 武帝劉徹
- 昭帝紀 - 昭帝劉弗陵
- 宣帝紀 - 宣帝劉詢
- 元帝紀 - 元帝劉奭
- 成帝紀 - 成帝劉驁
- 哀帝紀 - 哀帝劉欣
- 平帝紀 - 平帝劉衎
表
[編集]- 異姓諸侯王表 - 劉氏以外の王
- 諸侯王表
- 王子侯表
- 高恵高后文功臣表
- 景武昭宣元成功臣表
- 外戚恩沢侯表
- 百官公卿表
- 古今人表
志
[編集]列伝
[編集]- 陳勝項羽伝 - 陳勝・項羽
- 張耳陳余伝 - 張耳・陳余
- 魏豹田儋韓王信伝 - 魏豹・田儋・韓王信
- 韓彭英盧呉伝 - 韓信・彭越・英布・盧綰・呉芮
- 荊燕呉伝 - 荊王劉賈・燕王劉沢・呉王劉濞
- 楚元王伝 - 楚元王劉交・劉向・劉歆
- 季布欒布田叔伝 - 季布・欒布・田叔
- 高五王伝 - 劉肥・劉如意・劉友・劉恢・劉建
- 蕭何曹参伝 - 蕭何・曹参
- 張陳王周伝 - 張良・陳平・王陵・周勃
- 樊酈滕灌傅靳周伝 - 樊噲・酈商・夏侯嬰・灌嬰・傅寛・靳歙・周緤
- 張周趙任申屠伝 - 張蒼・周昌・趙堯・任敖・申屠嘉
- 酈陸朱劉叔孫伝 - 酈食其・陸賈・朱建・劉敬・叔孫通
- 淮南衡山済北王伝 - 淮南厲王劉長・衡山王劉賜・済北貞王劉勃
- 蒯伍江息夫伝 - 蒯通・伍被・江充・息夫躬
- 万石直周張伝 - 石奮・衛綰・直不疑・周仁・張欧
- 文三王伝 - 梁孝王劉武・代孝王劉参・梁懐王劉揖
- 賈誼伝 - 賈誼
- 爰盎鼂錯伝 - 袁盎・鼂錯
- 張馮汲鄭伝 - 張釈之・馮唐・汲黯・鄭当時
- 賈鄒枚路伝 - 賈山・鄒陽・枚乗・路温舒
- 竇田灌韓伝 - 竇嬰・田蚡・灌夫・韓安国
- 景十三王伝 - 河間献王徳・臨江哀王閼・臨江閔王栄・魯恭王余・江都易王非・膠西干王端・趙敬粛王彭祖・中山靖王勝・長沙定王発・広川恵王越・膠東康王寄・清河哀王乗・常山憲王舜
- 李広蘇建伝 - 李広・蘇建
- 衛青霍去病伝 - 衛青・霍去病
- 董仲舒伝 - 董仲舒
- 司馬相如伝 - 司馬相如
- 公孫弘卜式児寛伝 - 公孫弘・卜式・倪寛
- 張湯伝 - 張湯
- 杜周伝 - 杜周
- 張騫李広利伝 - 張騫・李広利
- 司馬遷伝 - 司馬遷
- 武五子伝 - 戾太子拠・斉懐王閎・燕剌王旦・広陵厲王胥・昌邑哀王髆
- 厳朱吾丘主父徐厳終王賈伝 厳助・朱買臣・吾丘寿王・主父偃・徐楽・厳安・終軍・王褒・賈捐之
- 東方朔伝 - 東方朔
- 公孫劉田王楊蔡陳鄭伝 - 公孫賀・劉屈氂・田千秋・王訢・楊敞・蔡義・陳万年・鄭弘
- 楊胡朱梅伝 - 楊王孫・胡建・朱雲・梅福
- 霍光金日磾伝 - 霍光・金日磾
- 趙充国辛慶忌伝 - 趙充国・辛慶忌
- 傅常鄭甘陳段伝 - 傅介子・常恵・鄭吉・甘延寿・陳湯・段会宗
- 雋疏于薛平彭伝 - 雋不疑・疏広・于定国・薛広徳・平当・彭宣
- 王貢両龔鮑伝 - 王吉・貢禹・龔勝・龔舎・鮑宣
- 韋賢伝 - 韋賢
- 魏相丙吉伝 - 魏相・丙吉
- 眭両夏侯京翼李伝 - 眭弘・夏侯始昌・夏侯勝・京房・翼奉・李尋
- 趙尹韓張両王伝 - 趙広漢・尹翁帰・韓延寿・張敞・王尊・王章
- 蓋諸葛劉鄭孫毋将何伝 - 蓋寛饒・諸葛豊・劉輔・鄭崇・孫宝・毋将隆・何並
- 蕭望之伝 - 蕭望之
- 馮奉世伝 - 馮奉世
- 宣元六王伝 - 淮陽憲王欽・楚孝王囂・東平思王宇・中山哀王竟・定陶共王康・中山孝王興
- 匡張孔馬伝 - 匡衡・張禹・孔光・馬宮
- 王商史丹傅喜伝 - 王商・史丹・傅喜
- 薛宣朱博伝 - 薛宣・朱博
- 翟方進伝 - 翟方進
- 谷永杜鄴伝 - 谷永・杜鄴
- 何武王嘉師丹伝 - 何武・王嘉・師丹
- 揚雄伝 - 揚雄
- 儒林伝 - 丁寛・施讎・孟喜・梁丘賀・京房・費直・高相・伏生・欧陽生・林尊・夏侯勝・周堪・張山拊・孔安国・申公・王式・轅固・后蒼・韓嬰・趙子・毛公・徐生・孟卿・胡毋生・厳彭祖・顔安楽・瑕丘江公・房鳳
- 循吏伝 - 文翁・王成・黄覇・朱邑・龔遂・召信臣
- 酷吏伝 - 郅都・寧成・周陽由・趙禹・義縦・王温舒・尹斉・楊僕・減宣・田広明・田延年・厳延年・尹賞
- 貨殖伝 - 范蠡・子贛・白圭・猗頓・烏氏蠃・巴寡婦清・蜀卓氏・程鄭・宛孔氏・丙氏・刀間・師史・宣曲任氏
- 游侠伝 - 朱家・劇孟・郭解・萭章・楼護・陳遵・原渉
- 佞幸伝 - 鄧通・趙談・韓嫣・李延年・石顕・淳于長・董賢
- 匈奴伝 - 匈奴
- 西南夷両粤朝鮮伝 - 南越・衛氏朝鮮
- 西域伝 - 西域
- 外戚伝 - 外戚
- 元后伝 - 王政君
- 王莽伝 - 王莽
- 叙伝 - 班家の歴史・班固の序文
注釈
[編集]- 影印本で1巻は「帝紀・表・志・列伝上」、2巻は「列伝下」
日本語訳文献
[編集]- 「志」
- 加藤繁訳註 『史記平準書・漢書食貨志』 岩波文庫、1942年、復刊1977年、1996年 ISBN 4003341511
- 内田智雄訳注 『漢書刑法志』 ハーバード燕京同志社東方文化講座委員会、1958年
- 『中国の科学 続世界の名著1』 薮内清責任編集、中央公論社(新装版 中公バックス)
- 「漢書律暦志」を収録、pp.167~223、注解pp.441~460
- 黒羽英男訳注 『漢書食貨志訳注』 明治書院、1980年。原文・書下し・詳細な訳注・解説を収録
- 鈴木由次郎訳注 『漢書藝文志』 明徳出版社〈中国古典新書〉、1968年、新版1988年ほか ISBN 4896192176
- 冨谷至・吉川忠夫訳注 『漢書五行志』 平凡社東洋文庫、1986年 ISBN 4582804608
- 狩野直禎・西脇常記訳注 『漢書郊祀志』 平凡社東洋文庫、1987年 ISBN 4582804748
- 永田英正・梅原郁訳注 『漢書食貨・地理・溝洫志』 平凡社東洋文庫、1988年 ISBN 4582804888、各・ワイド版2007-2008年
- 「列伝」
- 本田済編訳 『漢書 後漢書 三国志列伝選 中国古典文学大系13』 平凡社、1968年、復刊1994年。普及版「中国の古典シリーズ」1973年
- 井上秀雄ほか訳注 『東アジア民族史1 正史東夷伝』 平凡社東洋文庫、1976年
- 内田吟風・田村実造ほか訳注 『騎馬民族史1 正史北狄伝』 平凡社東洋文庫、1978年。「漢書匈奴伝」を収録
- 三木克己編訳 『漢書列伝選』 筑摩書房〈筑摩叢書〉、1992年。元版「世界文学全集 4 史記・漢書集」筑摩書房、1970年。前者は小川環樹編
- 福島吉彦編 『漢書 中国詩文選8』 筑摩書房、1976年。※以下4冊は原文、書下し、訳・解説の構成。
- 髙木友之助・片山兵衛 訳著 『漢書列伝』 明徳出版社〈中国古典新書続編〉、1991年。「蕭何、張良・陳平・周勃」、「張騫・李広利」の6名
- 福島正編 『史記・漢書 鑑賞中国の古典7』 角川書店、1989年。「王莽伝」「朱買臣伝」を収録
- 福井重雅編 『中国古代の歴史家たち 司馬遷・班固・范曄・陳寿の列伝訳注』 早稲田大学出版部、2006年
- 「全訳」(現代語訳注のみ)
- 小竹武夫訳 『漢書』 筑摩書房(上・中・下)、1977-78年。読売文学賞(第31回 研究部門)受賞
- 改訂版 ちくま学芸文庫(全8巻)、1997-98年、復刊2010年、2016年
- 『漢書1 帝紀』 ISBN 4480084010
- 『漢書2 表・志(上)』 ISBN 4480084029
- 『漢書3 志(下)』 ISBN 4480084037
- 『漢書4 列伝I』 ISBN 4480084045
- 『漢書5 列伝II』 ISBN 4480084053
- 『漢書6 列伝III』 ISBN 4480084061
- 『漢書7 列伝IV』 ISBN 448008407X
- 『漢書8 列伝V』 ISBN 4480084088
関連文献
[編集]- 大木康 『「史記」と「漢書」 中国文化のバロメーター』
- <書物誕生:あたらしい古典入門>岩波書店 2008年、ISBN 4000282832
- <あじあブックス>大修館書店、2002年、ISBN 4469231835
- 稲葉一郎 『中国史学史の研究』 <東洋史研究叢刊70>京都大学学術出版会、2006年
- 稲葉一郎 『中国の歴史思想 紀伝体考』 <中国学芸叢書7>創文社 1999年
- 狩野直喜 『両漢学術考』 筑摩書房 1964年、復刊1978年
- 柿沼陽平 「『漢書』をめぐる読書行為と読書共同体―顔師古注以後を中心に―」(榎本淳一編『古代中国・日本における学術と支配』同成社,2013年2月,75-101頁)
- 柿沼陽平「『漢書』をめぐる読書行為と読者共同体―顔師古注以前を中心に」『帝京史学』第29巻、2014年2月、29-68頁。
- 柿沼陽平「日本古代における『漢書』の受容とその意義」『帝京史学』第35巻、2020年2月、5-46頁。
- (漢)班固 撰, (唐) 顏師古 注. “前漢書 100卷 附考證”. 国会図書館デジタルコレクション. 成都書局 同治10(1871). 2023年1月27日閲覧。
関連項目
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