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下森定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

下森 定(したもり さだむ、1930年4月27日 - 2021年10月1日)は、日本法学者。専門は民法法政大学名誉教授・元総長・元理事長。島根県鹿足郡日原村(現・津和野町)出身。

人物

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詐害行為取消権についての責任説、瑕疵担保責任の法的性質に関する法定責任説(修正説) 安全配慮義務等契約責任の再構成等の研究で有名[1]高須順一法政大学教授や、木納敏和東京高等裁判所部総括判事は、下森ゼミの教え子[2]

学説

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民法上の主要な問題点につき、通説的解釈からスタートしつつも、外国法(ドイツ法)からの示唆を加味し、独自の修正を加え、結論としての妥当性と解釈論としての妥当性との調和を目指す解釈を基調としている。平井宜雄の『法律学基礎論覚書』にて「良い法律論」の一例として、詐害行為取消権についての責任説が紹介されている[3]

責任説においては、ドイツ法からの示唆をベースに立論している(中野貞一郎とほぼ同時に日本に紹介)。ドイツにおける訴訟形態が日本では認められないため、責任説は通説でない[4]。(詐欺)取消と登記の問題に関しては、従来の通説であった復帰的物権変動による解釈を批判的に検証し、新しい解釈として94条2項類推適用説を精緻化することに寄与した[5]

瑕疵担保責任の法的性質に関しては,「特定物のドグマ」を批判する有力説が、「不代替的特定物」を前提としているのか「代替的特定物」を前提にしているのかが曖昧で、漠然と「特定物」として議論している点を批判し、通説である法定責任説を擁護した[6]

契約責任の再構成の議論に関連しては、岡孝、辻伸行教授等とともに、ドイツでの債務法改正動向を、積極的に日本に紹介した[7]。ところで、詐害行為取消権の性質に関する責任説(特に責任法的無効説)を提唱することを契機に、民法解釈を「債務」と「責任」(強制執行を受けうる地位)との2層に分離して解釈するという立場(例:法律行為の無効を論じるにあたり、「債務」レベルでの「絶対的無効」か「相対的無効」かという立場に加え、「責任」レベルでの「責任法的無効」かを選択肢として選びうる)に立つこととなった[要出典][8][9]。集合動産の譲渡担保に関する解釈論においても、この新しい立場からの解釈論が展開されている[10]

略歴

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エピソード

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法政大学時代の法学部の講義においては、長年、民法1部(民法概説)を担当。民法2部(民法総則物権法)を民法総則分野の権威、須永醇教授(現名誉教授)が、民法3部(債権総論担保物権法)を安達三季生教授(現名誉教授)が担当していた。そのため「学説」に述べた民法総則上の解釈論や債権総論債権各論上の解釈論が、学部の学生向けに開陳される機会は、ほとんどなかった。何年かに一度不定期に開講される「法律学特講」のみが、その限られた機会であった。そのため氏の解釈論を、著作を通じてでなく講義を通じて学び得た法政大学の学生は僅かである。

著書

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  • 『債権法論点ノート』(日本評論社
  • 『択一式受験六法』(監修)(自由国民社、司法試験の受験書としてはロングセラー、現在は廃刊)

その他著書多数

栄典

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脚注

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  1. ^ 『安全配慮義務法理の形成と展開』(日本評論社 ISBN 4-535-57727-7 )
  2. ^ 自分の目標を見つけよう - 法政大学法学部同窓会
  3. ^ 『法律学基礎論覚書』(有斐閣 ISBN 4-641-02678-5 )P101以下(初出は「ジュリスト」928号1989,3,1,P67以下)
  4. ^ 『注釈民法(10)』
  5. ^ 『新版注釈民法(3)総則(3)法律行為(1)』第96条
  6. ^ 『債権法論点ノート』(日本評論社 ISBN 4-535-57851-6 )「特定物売買と不完全履行」P31
  7. ^ 『西ドイツ債務法改正鑑定意見の研究』(日本評論社 ISBN 4-641-02678-5)
  8. ^ 『債権者取消権の判例総合解説』(信山社 ISBN 4-7972-5668-0)P16
  9. ^ 『法学教育とともに』(信山社 ISBN 978-4-7972-8580-2)P34
  10. ^ 『物権法重要論点研究』(酒井書店 ISBN 4-7822-0223-7 )集合物(流動動産)の譲渡担保P108以下、特にP119「三 問題の検討」以下
  11. ^ 平成22年春の叙勲 瑞宝中綬章受章者” (PDF). 内閣府. p. 11 (2010年4月29日). 2010年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月22日閲覧。