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ミツバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
三葉から転送)
ミツバ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: ミツバ属 Cryptotaenia [1][2]
: C. japonica
亜種 : ミツバ C. japonica subsp. japonica [3]
学名
Cryptotaenia canadensis (L.) DC.
subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz. (1933)[3][4]
シノニム
和名
ミツバ、ミツバゼリ
英名
Japanese honeywort[8]
Japanese parsley[9]
Mitsuba[9]
honewort[10]
wild-chervil[10]

ミツバ(三つ葉[9]、三葉[11]、野蜀葵、学名: Cryptotaenia canadensis subsp. japonica)は、セリ科ミツバ属多年草和名由来が3つに分かれている様子から。さわやかな香りが特徴の香味野菜ハーブ)で、と葉が食用される。別名、ヤマミツバ[11]、ノノミツバ[11]、ノミツバ[11]、ミツバゼリ[11]

特徴

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日本原産[9]北海道から沖縄までの日本各地、及び中国朝鮮半島サハリン南千島等の東アジアに広く分布し[12]、平地から高山にかけて、日陰地や湿り気のある野原、谷間、川岸などに群生する[11][13]。日本には古来から自生している野菜で、1本の茎に3枚の葉がついていることから「三つ葉」の名がつく[14]

草丈は30 - 50センチメートル (cm) ほどになる[11]。葉は根の近くから曲がって横に張りだして互生し、長い柄の先に3枚の小葉からなる複葉をつける[11][13]葉身の形状は卵形で先が細くなって尖り、葉縁にはギザギザとした重鋸歯がある[13]。全体にさわやかな香気を有する[10]

花期は夏(6 - 8月ごろ)で、花茎を伸ばして5枚の花弁からなる白い小さなを咲かせる[11]。花後は楕円形の果実をつける[11]

日本では栽培されたものがほぼ一年中店頭に並ぶ、ポピュラーな野菜となっている[11]

種類

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市場に流通するミツバは、野生ミツバを栽培方法の違いによって3種類に改良したもので[9]、大別すると、畑などで育つ「根三つ葉」と、水耕栽培される「糸三つ葉」、灰汁が少ない「切り三つ葉」がある。元の品種に違いはなく、栽培方法によって葉や茎の見た目、香りの強さに違いを出している[9]

  • 根三つ葉(根ミツバ) - 旬は春で、根をつけたまま出荷されるもので、最も野生種に近く、他の三つ葉よりも香りや風味が強くて栄養価も高く、歯触りがしっかりしているのが特徴。芽を土寄せして軟化栽培しているので、根元だけが白い[9]。一般の青菜のような使い方ができ、お浸し、吸い物、卵とじ、揚げ物、炒め物に向く[15][9]。シャキシャキした歯触りが関東で好まれる[10]
  • 糸三つ葉(糸ミツバ) - 根にスポンジがついて水耕栽培されるミツバで、通年市場に出回る。密植して茎を細く育てている[9]。栄養価が高く、食感と香りは根三つ葉と切り三つ葉の中間くらいで、用途は丼物や吸い物など広く使われる[15]。主に関西で使われている[9]。茎が緑色で、別名青ミツバともよばれる[9]
  • 切り三つ葉(切りミツバ) - 旬は冬で、葉の緑色が薄く、茎が細くて白く、香りが穏やかで、葉も茎ともやわらかく口当たりがよいのが特徴。軟化栽培で根を切り取っているため、茎全体が白い[9]。茶碗蒸しや吸い物の彩りに適している[15]。関東を中心に雑煮にも使われる[9]

日本での栽培

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江戸時代から栽培され、現在では主にハウス水耕栽培したものが周年出荷されており、山菜としてはから初夏が旬である。野生のものは一般的に、ハウス栽培のものよりも大きく香りも強い[16]。掘り上げずに地上部を刈って収穫すれば、新芽が出てシーズン中は何回か収穫できる[8]

種から育てられるミツバは、1年のうちで2回栽培でき、「青ミツバ」は春まきして夏に収穫(4 - 8月)する方法と、秋まきして晩秋に収穫(9 - 12月)する方法がある[15][8]。「根ミツバ」は、春まきして育ててそのまま冬を越し、翌年の春に収穫する[8]。根株は水耕栽培することもでき、この場合は通年栽培が可能である[15]。栽培適温は10 - 20度とされ、連作も可能な作物である[15]。ミツバの種は発芽に光が必要で、ごく薄く覆土する必要がある[8]直まきをしてもよいが、育苗した方が育てやすい[8]。「青ミツバ」は種まきから2 - 3か月で収穫できる[8]。「根ミツバ」は、冬は穴あきの小トンネルをかけて防寒し、冬越しさせて春に収穫する[8]

種は水に一晩浸し、新聞紙などに広げて生乾きにした後に種をまく[15]直まきする場合は、用土は浅い溝をつけて筋まきし、種まき後は覆土せずに軽く手で押さえて静かに水やりをする[15]。芽が出たら間引きしながら育てていき、株間を5 - 15センチメートル (cm) 間隔になるようにする[15][8]。苗をつくってもよく、育苗箱に種を筋まきして、本葉が出始めるころに育苗ポットに移植し、本葉4 - 5枚で株間15 cmとり畑のに1本ずつ定植する[8]

ミツバは初期の生長が遅いため、苗が小さいうちは周囲の雑草に負けないように、こまめに草取りをする[8]追肥は草丈5 - 6 cmで1回目を行い、その後も10日から2週間に1度の間隔で追肥と中耕しを行い、夏場は日陰にして管理する[15][8]。草丈が15 cmほどになったら、根を残して株元から切って、必要な分だけ収穫する[15]。残した根株に追肥を行うことで新たな芽が出て、長期間収穫することができる[15]。草丈が15 - 20 cmになったら収穫適期で、「青ミツバ」として根元を刈って何回か収穫する[8]。冬に地上部が枯れたら冬越しの準備として、株元に10 cmほど土寄せして、トンネルをかけて防寒する[8]。春に芽が出たらトンネルを外し、軟白部が10 cmくらいで株ごと収穫すると「根ミツバ」になる[8]。家庭では、スーパーなどに売られている根つき三つ葉を、株元から5 cmほど残して切り、少量の液肥を入れた水に差して明るい窓辺に置くと、やがて新しい葉が再生して、周年栽培もできる[15]

生産地

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ミツバは、収穫後にすぐに品質が落ち始める軟弱野菜の一つで、消費者のもとにすぐ届くような近郊農業で生産される作物である[17]。日本の主な産地は、茨城県埼玉県千葉県静岡県愛知県などである[18]

2019年度(令和元年度)の日本全体の年間生産量は1万4000トン (t) 、作付面積は891ヘクタール (ha) である[17]。都道府県別の収穫量割合は、千葉県 19%、愛知県 13%、茨城県 12%となっており、この3県で全国シェアの50%以上を占める[17]。市町村別では、大分市(大分県)が最も収穫量・出荷量ともに最多で、これに浜松市(静岡県)、愛西市(愛知県)が続く[19]。日本全体のミツバの生産量は年々減少する傾向にあり、過去14年で約24%の減少、作付面積も約28%減少しているが、単位面積当たりの収量は微増している[18]

利用

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切りみつば 葉 生[20]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 66 kJ (16 kcal)
4.0 g
食物繊維 2.5 g
0.1 g
1.0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(8%)
61 µg
(7%)
730 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(8%)
0.09 mg
ナイアシン (B3)
(3%)
0.4 mg
パントテン酸 (B5)
(6%)
0.29 mg
ビタミンB6
(3%)
0.04 mg
葉酸 (B9)
(11%)
44 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ビタミンE
(5%)
0.7 mg
ビタミンK
(60%)
63 µg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
8 mg
カリウム
(14%)
640 mg
カルシウム
(3%)
25 mg
マグネシウム
(5%)
17 mg
リン
(7%)
50 mg
鉄分
(2%)
0.3 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
(4%)
0.07 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 93.8 g
ビオチン(B7 1.9 µg

軟白栽培品
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した。
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

数少ない日本原産の野菜の一つで[13]、葉と茎、が食用にされる[11]。野菜としてのは、糸三つ葉が通年、根三つ葉が3 - 4月、切り三つ葉が12 - 2月といわれ[14]、早春のものが特に香りもよくおいしいとされる[13]。葉の緑色が鮮やかで、茎とともに変色がなく、全体にピンとして瑞々しいものが市場価値の高い良品とされる[14][9]。関東では土寄せして根元を軟化させる「根ミツバ」、関西では土寄せせずに短期間で育てられた「青ミツバ」が主流である[8]

昔から野生種を食用にしていたといわれ、現代では見た目のかわいらしさとさわやかな香りを生かして、様々な和風料理に彩りを添えるために重宝されている[14]。野生のものは特に香りが強く、鎮静や食欲増進に効果的といわれる[11]。野生のものを採取する際は、自然保護の観点から根際からナイフで切りとって、根を残すことが推奨されている[11]

刻んで薬味にしたり、茹でておひたし和え物とするほか、煮浸し吸い物、汁の実、鍋物茶わん蒸し雑煮天ぷら丼物の具、卵とじなどにして幅広く用いられる[11][10]。調理の下ごしらえで茹でる際には、火の通りが早く茹ですぎると風味が損なわれる食材のため、短時間で手早く茹でてすぐに水にとって冷ます[15]。冷まし方が足りなかったり、水につけすぎると、緑色が変色したり、栄養素が逃げる原因となる[15]

栄養素

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水耕栽培されている糸三つ葉や切り三つ葉に比べて、農地栽培されている根三つ葉は栄養価が高く、特にβ-カロテンカリウムカルシウムを多く含む緑黄色野菜である[14][9]。根三つ葉のビタミンC含有量は、糸三つ葉の1.5倍、鉄は約2倍含まれている[14]。3種のミツバのうち、糸三つ葉、根三つ葉、切り三つ葉の順にカロテン量が多いが、糸三つ葉のカロテンは可食部100グラム (g) 中に3200マイクログラム (μg) 含まれ、これは同じセリ科のセリを大きく凌ぐ量で、切り三つ葉でも730 μgも含まれている[10]。ミツバに含まれるこれら栄養素は、貧血予防、疲労回復、肌荒れ予防に有効といわれている[14]。また、ミツバの香り成分には、神経を鎮める作用や不眠改善、食欲増進作用があるといわれている[14][9]

保存

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日持ちしない食材であるため、入手したらできる限り早く食べきるのが望ましい[14][9]。使い残しなどで保存する場合は3 - 4日程度を限度に、糸三つ葉は根を切り離して茎を2 - 3等分にして、濡らしたキッチンペーパーなどを敷いた保存容器に入れて冷蔵する[14]。根三つ葉は、洗わずに濡れたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて乾燥防止して冷蔵する[14][9]

薬用

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9月ごろに果実がついたものを採取し、陰干ししたものが民間薬として使われる[11]。風邪の初期症状には、1日量15グラム (g) を600 ccほどの水で半量になるまで煎じ、かすをこしてから就寝前に服用する民間療法が知られる[11]。食欲増進には、お浸しを食べるとよいといわれる[11]。腫れものには生の葉をすり潰して、患部に湿布すると消炎効果があるとされる[11]

脚注

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  1. ^ 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2 
  2. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
  4. ^ "'Cryptotaenia canadensis subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1704252. 2012年7月29日閲覧
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia japonica Hassk. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis auct. non (L.) DC. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. var. japonica (Hassk.) Makino ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 金子美登 2012, p. 145.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 170.
  10. ^ a b c d e f 講談社編 2013, p. 22.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 23.
  12. ^ 山岸 喬『北海道 薬草図鑑 野生編』北海道新聞社、1992年。ISBN 4-89363-662-6 
  13. ^ a b c d e 金田初代 2010, p. 36.
  14. ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 134.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 主婦の友社編 2011, p. 135.
  16. ^ 栽培および野生ミツバの形態ならびに生態に関する研究 園芸學會雜誌 Vol.33 (1964) No.2 P117-124
  17. ^ a b c 三つ葉 産地(都道府県)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  18. ^ a b 三つ葉 農業”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  19. ^ 三つ葉 産地(市町村)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  20. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

参考文献

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関連項目

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  • ウマノミツバ - 外見がミツバに似るが小葉が5枚で、香りがなく、食用にならない。

外部リンク

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