ミツバ
ミツバ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Cryptotaenia canadensis (L.) DC. subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz. (1933)[3][4] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ミツバ、ミツバゼリ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Japanese honeywort[8] Japanese parsley[9] Mitsuba[9] honewort[10] wild-chervil[10] |
ミツバ(三つ葉[9]、三葉[11]、野蜀葵、学名: Cryptotaenia canadensis subsp. japonica)は、セリ科ミツバ属の多年草。和名の由来は葉が3つに分かれている様子から。さわやかな香りが特徴の香味野菜(ハーブ)で、茎と葉が食用される。別名、ヤマミツバ[11]、ノノミツバ[11]、ノミツバ[11]、ミツバゼリ[11]。
特徴
[編集]日本原産[9]。北海道から沖縄までの日本各地、及び中国、朝鮮半島、サハリン、南千島等の東アジアに広く分布し[12]、平地から高山にかけて、日陰地や湿り気のある野原、谷間、川岸などに群生する[11][13]。日本には古来から自生している野菜で、1本の茎に3枚の葉がついていることから「三つ葉」の名がつく[14]。
草丈は30 - 50センチメートル (cm) ほどになる[11]。葉は根の近くから曲がって横に張りだして互生し、長い柄の先に3枚の小葉からなる複葉をつける[11][13]。葉身の形状は卵形で先が細くなって尖り、葉縁にはギザギザとした重鋸歯がある[13]。全体にさわやかな香気を有する[10]。
花期は夏(6 - 8月ごろ)で、花茎を伸ばして5枚の花弁からなる白い小さな花を咲かせる[11]。花後は楕円形の果実をつける[11]。
日本では栽培されたものがほぼ一年中店頭に並ぶ、ポピュラーな野菜となっている[11]。
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野生のミツバ
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ミツバの花
種類
[編集]市場に流通するミツバは、野生ミツバを栽培方法の違いによって3種類に改良したもので[9]、大別すると、畑などで育つ「根三つ葉」と、水耕栽培される「糸三つ葉」、灰汁が少ない「切り三つ葉」がある。元の品種に違いはなく、栽培方法によって葉や茎の見た目、香りの強さに違いを出している[9]。
- 根三つ葉(根ミツバ) - 旬は春で、根をつけたまま出荷されるもので、最も野生種に近く、他の三つ葉よりも香りや風味が強くて栄養価も高く、歯触りがしっかりしているのが特徴。芽を土寄せして軟化栽培しているので、根元だけが白い[9]。一般の青菜のような使い方ができ、お浸し、吸い物、卵とじ、揚げ物、炒め物に向く[15][9]。シャキシャキした歯触りが関東で好まれる[10]。
- 糸三つ葉(糸ミツバ) - 根にスポンジがついて水耕栽培されるミツバで、通年市場に出回る。密植して茎を細く育てている[9]。栄養価が高く、食感と香りは根三つ葉と切り三つ葉の中間くらいで、用途は丼物や吸い物など広く使われる[15]。主に関西で使われている[9]。茎が緑色で、別名青ミツバともよばれる[9]。
- 切り三つ葉(切りミツバ) - 旬は冬で、葉の緑色が薄く、茎が細くて白く、香りが穏やかで、葉も茎ともやわらかく口当たりがよいのが特徴。軟化栽培で根を切り取っているため、茎全体が白い[9]。茶碗蒸しや吸い物の彩りに適している[15]。関東を中心に雑煮にも使われる[9]。
日本での栽培
[編集]江戸時代から栽培され、現在では主にハウス水耕栽培したものが周年出荷されており、山菜としては春から初夏が旬である。野生のものは一般的に、ハウス栽培のものよりも大きく香りも強い[16]。掘り上げずに地上部を刈って収穫すれば、新芽が出てシーズン中は何回か収穫できる[8]。
種から育てられるミツバは、1年のうちで2回栽培でき、「青ミツバ」は春まきして夏に収穫(4 - 8月)する方法と、秋まきして晩秋に収穫(9 - 12月)する方法がある[15][8]。「根ミツバ」は、春まきして育ててそのまま冬を越し、翌年の春に収穫する[8]。根株は水耕栽培することもでき、この場合は通年栽培が可能である[15]。栽培適温は10 - 20度とされ、連作も可能な作物である[15]。ミツバの種は発芽に光が必要で、ごく薄く覆土する必要がある[8]。直まきをしてもよいが、育苗した方が育てやすい[8]。「青ミツバ」は種まきから2 - 3か月で収穫できる[8]。「根ミツバ」は、冬は穴あきの小トンネルをかけて防寒し、冬越しさせて春に収穫する[8]。
種は水に一晩浸し、新聞紙などに広げて生乾きにした後に種をまく[15]。直まきする場合は、用土は浅い溝をつけて筋まきし、種まき後は覆土せずに軽く手で押さえて静かに水やりをする[15]。芽が出たら間引きしながら育てていき、株間を5 - 15センチメートル (cm) 間隔になるようにする[15][8]。苗をつくってもよく、育苗箱に種を筋まきして、本葉が出始めるころに育苗ポットに移植し、本葉4 - 5枚で株間15 cmとり畑の畝に1本ずつ定植する[8]。
ミツバは初期の生長が遅いため、苗が小さいうちは周囲の雑草に負けないように、こまめに草取りをする[8]。追肥は草丈5 - 6 cmで1回目を行い、その後も10日から2週間に1度の間隔で追肥と中耕しを行い、夏場は日陰にして管理する[15][8]。草丈が15 cmほどになったら、根を残して株元から切って、必要な分だけ収穫する[15]。残した根株に追肥を行うことで新たな芽が出て、長期間収穫することができる[15]。草丈が15 - 20 cmになったら収穫適期で、「青ミツバ」として根元を刈って何回か収穫する[8]。冬に地上部が枯れたら冬越しの準備として、株元に10 cmほど土寄せして、トンネルをかけて防寒する[8]。春に芽が出たらトンネルを外し、軟白部が10 cmくらいで株ごと収穫すると「根ミツバ」になる[8]。家庭では、スーパーなどに売られている根つき三つ葉を、株元から5 cmほど残して切り、少量の液肥を入れた水に差して明るい窓辺に置くと、やがて新しい葉が再生して、周年栽培もできる[15]。
生産地
[編集]ミツバは、収穫後にすぐに品質が落ち始める軟弱野菜の一つで、消費者のもとにすぐ届くような近郊農業で生産される作物である[17]。日本の主な産地は、茨城県、埼玉県、千葉県、静岡県、愛知県などである[18]。
2019年度(令和元年度)の日本全体の年間生産量は1万4000トン (t) 、作付面積は891ヘクタール (ha) である[17]。都道府県別の収穫量割合は、千葉県 19%、愛知県 13%、茨城県 12%となっており、この3県で全国シェアの50%以上を占める[17]。市町村別では、大分市(大分県)が最も収穫量・出荷量ともに最多で、これに浜松市(静岡県)、愛西市(愛知県)が続く[19]。日本全体のミツバの生産量は年々減少する傾向にあり、過去14年で約24%の減少、作付面積も約28%減少しているが、単位面積当たりの収量は微増している[18]。
利用
[編集]100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 66 kJ (16 kcal) |
4.0 g | |
食物繊維 | 2.5 g |
0.1 g | |
1.0 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(8%) 61 µg(7%) 730 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.03 mg |
リボフラビン (B2) |
(8%) 0.09 mg |
ナイアシン (B3) |
(3%) 0.4 mg |
パントテン酸 (B5) |
(6%) 0.29 mg |
ビタミンB6 |
(3%) 0.04 mg |
葉酸 (B9) |
(11%) 44 µg |
ビタミンC |
(10%) 8 mg |
ビタミンE |
(5%) 0.7 mg |
ビタミンK |
(60%) 63 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(1%) 8 mg |
カリウム |
(14%) 640 mg |
カルシウム |
(3%) 25 mg |
マグネシウム |
(5%) 17 mg |
リン |
(7%) 50 mg |
鉄分 |
(2%) 0.3 mg |
亜鉛 |
(1%) 0.1 mg |
銅 |
(4%) 0.07 mg |
セレン |
(1%) 1 µg |
他の成分 | |
水分 | 93.8 g |
ビオチン(B7) | 1.9 µg |
軟白栽培品 ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した。 | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
数少ない日本原産の野菜の一つで[13]、葉と茎、蕾が食用にされる[11]。野菜としての旬は、糸三つ葉が通年、根三つ葉が3 - 4月、切り三つ葉が12 - 2月といわれ[14]、早春のものが特に香りもよくおいしいとされる[13]。葉の緑色が鮮やかで、茎とともに変色がなく、全体にピンとして瑞々しいものが市場価値の高い良品とされる[14][9]。関東では土寄せして根元を軟化させる「根ミツバ」、関西では土寄せせずに短期間で育てられた「青ミツバ」が主流である[8]。
昔から野生種を食用にしていたといわれ、現代では見た目のかわいらしさとさわやかな香りを生かして、様々な和風料理に彩りを添えるために重宝されている[14]。野生のものは特に香りが強く、鎮静や食欲増進に効果的といわれる[11]。野生のものを採取する際は、自然保護の観点から根際からナイフで切りとって、根を残すことが推奨されている[11]。
刻んで薬味にしたり、茹でておひたしや和え物とするほか、煮浸し、吸い物、汁の実、鍋物、茶わん蒸し、雑煮、天ぷら、丼物の具、卵とじなどにして幅広く用いられる[11][10]。調理の下ごしらえで茹でる際には、火の通りが早く茹ですぎると風味が損なわれる食材のため、短時間で手早く茹でてすぐに水にとって冷ます[15]。冷まし方が足りなかったり、水につけすぎると、緑色が変色したり、栄養素が逃げる原因となる[15]。
栄養素
[編集]水耕栽培されている糸三つ葉や切り三つ葉に比べて、農地栽培されている根三つ葉は栄養価が高く、特にβ-カロテンやカリウム、カルシウム、鉄を多く含む緑黄色野菜である[14][9]。根三つ葉のビタミンC含有量は、糸三つ葉の1.5倍、鉄は約2倍含まれている[14]。3種のミツバのうち、糸三つ葉、根三つ葉、切り三つ葉の順にカロテン量が多いが、糸三つ葉のカロテンは可食部100グラム (g) 中に3200マイクログラム (μg) 含まれ、これは同じセリ科のセリを大きく凌ぐ量で、切り三つ葉でも730 μgも含まれている[10]。ミツバに含まれるこれら栄養素は、貧血予防、疲労回復、肌荒れ予防に有効といわれている[14]。また、ミツバの香り成分には、神経を鎮める作用や不眠改善、食欲増進作用があるといわれている[14][9]。
保存
[編集]日持ちしない食材であるため、入手したらできる限り早く食べきるのが望ましい[14][9]。使い残しなどで保存する場合は3 - 4日程度を限度に、糸三つ葉は根を切り離して茎を2 - 3等分にして、濡らしたキッチンペーパーなどを敷いた保存容器に入れて冷蔵する[14]。根三つ葉は、洗わずに濡れたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて乾燥防止して冷蔵する[14][9]。
薬用
[編集]9月ごろに果実がついたものを採取し、陰干ししたものが民間薬として使われる[11]。風邪の初期症状には、1日量15グラム (g) を600 ccほどの水で半量になるまで煎じ、かすをこしてから就寝前に服用する民間療法が知られる[11]。食欲増進には、お浸しを食べるとよいといわれる[11]。腫れものには生の葉をすり潰して、患部に湿布すると消炎効果があるとされる[11]。
脚注
[編集]- ^ 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2。
- ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
- ^ "'Cryptotaenia canadensis subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1704252. 2012年7月29日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia japonica Hassk. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis auct. non (L.) DC. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. var. japonica (Hassk.) Makino ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 金子美登 2012, p. 145.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 170.
- ^ a b c d e f 講談社編 2013, p. 22.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 23.
- ^ 山岸 喬『北海道 薬草図鑑 野生編』北海道新聞社、1992年。ISBN 4-89363-662-6。
- ^ a b c d e 金田初代 2010, p. 36.
- ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 134.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 主婦の友社編 2011, p. 135.
- ^ 栽培および野生ミツバの形態ならびに生態に関する研究 園芸學會雜誌 Vol.33 (1964) No.2 P117-124
- ^ a b c “三つ葉 産地(都道府県)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
- ^ a b “三つ葉 農業”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
- ^ “三つ葉 産地(市町村)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
参考文献
[編集]- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、170頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 金子美登『有機・無農薬でできる野菜づくり大事典』成美堂出版、2012年4月1日、144頁。ISBN 978-4-415-30998-9。
- 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、36 - 37頁。ISBN 978-4-569-79145-6。
- 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、22頁。ISBN 978-4-06-218342-0。
- 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、134 - 135頁。ISBN 978-4-07-273608-1。
- 高野昭人監修 世界文化社編『おいしく食べる 山菜・野草』世界文化社〈別冊家庭画報〉、2006年4月20日、23頁。ISBN 4-418-06111-8。
関連項目
[編集]- ウマノミツバ - 外見がミツバに似るが小葉が5枚で、香りがなく、食用にならない。
外部リンク
[編集]- 野菜図鑑 みつば
- ミツバの香気の特性ならびにその香気特性に及ぼす栽培培地と品種の影響 園芸學會雜誌 Vol.62 (1993-1994) No.4 P903-908