ロバート・ライトハイザー
ロバート・ライトハイザー Robert Lighthizer | |
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生年月日 | 1947年10月11日(77歳) |
出生地 | アメリカ合衆国 オハイオ州アシュタビーラ |
出身校 | ジョージタウン大学 |
前職 | 弁護士 |
所属政党 | 共和党 |
第18代 アメリカ合衆国通商代表 | |
在任期間 | 2017年5月15日 - 2021年1月20日 |
大統領 | ドナルド・トランプ |
ロバート・エメット・ライトハイザー(Robert Emmet Lighthizer, 1947年10月11日 - )はアメリカ合衆国の法律家、弁護士。ドナルド・トランプ政権でアメリカ合衆国通商代表(USTR)を務めた 。所属政党は共和党である。
経歴
[編集]オハイオ州アシュタビーラで生まれた。ジョージタウン大学で1969年に文学士号を取得、後の1973年にジョージタウン大学ローセンターで法務博士(専門職)資格を得る。
1973年から1978年まで、コヴィントン&バーリング法律事務所で働く[1]。その後、法律事務所スカデン・アープス・スレート・メーガー・アンド・フロムのパートナーに就任した[2]。
1983年から1985年までロナルド・レーガン政権でアメリカ合衆国通商代表次席代表を務め、日米貿易摩擦で日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさせた[3]。交渉の席で日本の提案書を紙飛行機に折って投げ返したという逸話もある[4][5]。
1985年から1990年まで、ブラジル砂糖・アルコール協会を含む米国外の5つの顧客のロビー活動を行った[6]。
長年にわたり鉄鋼業を支援してきた[7]。ライトハイザーは日本、韓国、メキシコ、イギリスに対して、米国市場向けの安価な鉄鋼輸出数量を制限するVRA(輸出自主規制の取決め)を受け入れさせた[8]。
アメリカ合衆国通商代表
[編集]2017年1月2日、トランプ大統領はアメリカ合衆国通商代表 (USTR) にロバート・ライトハイザーを指名した[9]。環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) に代わる2国間協定や、カナダ、メキシコと結ぶ北米自由貿易協定 (NAFTA) の再交渉を担当する予定とされる[10]。
トランプ大統領は「多くの米国人の富を奪ってきた間違った通商政策を転換するために、ライトハイザー氏はすばらしい仕事をするだろう」とライトハイザーへの期待を述べた[11]。ライトハイザーの指名承認のための公聴会は2017年3月14日に行われた[12]。指名のための公聴会は、炭鉱労働者に年金と医療を提供する法案とを結び付けようとする12人の民主党議員のために引き伸ばされてきたと報道されている[13]。
2017年3月14日の公聴会では、トランプ政権のTPP離脱宣言は将来の貿易交渉において米国の信頼を損なうのではないか、NAFTAの再交渉では何を変えようとするのか、米国のサプライチェーンに混乱が生じるのではないかなど、7つの質問が投げかけられた[14]。日本については「農産品の市場開放が重要な地域として日本を最優先の標的に位置づけている」と述べた[15][16]。
ライトハイザーに対する公聴会は2017年3月14日に行われ、ライトハイザーは「中国は国家の支えがなければ生き残れないほどの膨大な生産能力を抱えており、とりわけ鉄鋼とアルミニウムでは米国へのダンピングにつながった。そのような工場を維持するためのコストを引き上げるために、貿易法を強化することが必要だ」と述べた[17]。
通商代表就任に必要なアメリカ合衆国上院財政委員会での承認作業は、民主党が過去の中国での仕事を理由として遅らせ、結局は4月25日になってライトハイザーの通商代表就任を賛成26・反対0で承認した。オリン・ハッチ財政委員会委員長は、ライトハイザーは貿易政策に関して、議会と大統領の主要な仲介者になるだろうと発言した[18][19]。5月11日に上院の本会議で賛成82・反対14でライトハイザーの就任が超党派の投票で承認された[20][21]。承認を受け、CSUSTL委員長のロジャー・シャグリン (Roger B. Schagrin) は、産業・農業・労働組合のメンバーは彼と仕事をするのを楽しみにしていると述べている[22]。5月15日に就任宣誓式を行い、第18代アメリカ合衆国通商代表 (USTR) に就任した[23][24]。マイク・ペンス副大統領は、ライトハイザーはこの仕事の唯一の資格者と評した[25]。
2017年5月20日、ベトナムのハノイで開催されたアジア太平洋経済協力会議 (APEC) の貿易大臣会合で、ライトハイザー通商代表と世耕弘成経済産業大臣が会談し、貿易障壁をなくして高い経済成長のために両国が協力することで一致したと報道された。同年5月22日には中国の鍾山商務部長と会合し、ライトハイザー通商代表は対話を通じて貿易不均衡を解消したいと述べた。
2018年3月23日には通商拡大法231条の国防条項を中国をはじめとする欧州連合[26]、メキシコ、カナダ、ロシア[27]、インド[28]など世界各国に適用して、安全保障を理由とした輸入制限はリビア産原油以来36年ぶりである鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をトランプ政権は発動し、ライトハイザー通商代表は日本も対象であることを表明した[29]。同時期、トランプ大統領はスーパー301条(通商法301条)に基づく関税を賦課する中国製品の対象品目特定を命令し、これを受けて4月3日にライトハイザー通商代表はパーソナルコンピュータとスマートフォンや衣料品などといった輸入額の大きい消費財を除外しつつ産業用ロボット、電気自動車、一部の半導体などの中国製品1300品目(500億ドル相当)を特定する原案を発表し[30][31]、発動までの2カ月間の交渉解決の可能性も示唆した[32]。翌4日に中国は大豆・自動車・一部の航空機・牛肉など米国製品160品目(500億ドル相当)に同じ25%の関税で報復したことに対してトランプは「貿易戦争は起きてない。愚かで無能な歴代の米国政府が戦い、既に負けている」と述べるも[33][34]、翌5日に中国の報復に対するスーパー301条による1000億ドル相当の追加関税の是非を検討するよう指示されたライトハイザー通商代表は関税は直ちに実施されないとしつつ中国の不公正な貿易慣行の確証はあると述べた[35]。
2018年4月18日、日米首脳会談の合意で日本の茂木敏充経済再生担当大臣とライトハイザー通商代表による二国間貿易協議(日米貿易交渉)が新設され[36]、これは麻生太郎副総理とペンス副大統領が共催する既存の日米経済対話の遅れにトランプ大統領が苛立ちを募らせていたことが理由とされる[37]。
2018年5月3日、スティーヴン・マヌーチン財務長官、ウィルバー・ロス商務長官、ラリー・クドロー国家経済会議委員長、ピーター・ナヴァロ通商製造業政策局局長らとともに北京を訪問して中国の劉鶴国務院副総理らと通商協議を行い[38]、17日からワシントンDCで開催された第2回の通商協議にも出席した[39]。以後、追加関税の報復合戦を繰り返す米中貿易戦争の閣僚級キーパーソンとなった。
人物
[編集]安価な外国製品に苦しむ米鉄鋼業界などの弁護士として、30年近く反補助金や反ダンピング関連の訴訟を担当した経歴からピーター・ナヴァロと同様、中国の貿易慣行を不公正だと批判してきた[40]。レーガン大統領を理想の人物に挙げ、米国が1980年代の日本に対して行った半導体や自動車の輸入規制を中国にも適用すべきと主張している[41]。ただし、貿易戦争は米中双方に無益としてあくまで対話を通じて貿易摩擦を是正すると表明している[42]。
2020年の朝日新聞とのインタビューでは1980年代に日本を知るために日本史の勉強を始めたが、その結果日本のことが好きになったと打ち明けている[43]。
脚注
[編集]- ^ "Nomination of Robert Emmet Lighthizer To Be a Deputy United States Trade Representative" The American Presidency Project(1983年4月12日), 2017年1月20日閲覧.
- ^ "Trump Picks Robert Lighthizer To Be U.S. Trade Representative" NPR(2017年1月3日), 2017年1月20日閲覧.
- ^ "米次期通商代表:ライトハイザー氏起用へ 保護主義を支持" 毎日新聞(2017年1月3日), 2017年2月15日閲覧.
- ^ “日米貿易交渉、担当に因縁の人物 市場開放へ圧力必至、背景に11月の中間選挙”. フジサンケイ ビジネスアイ (2018年4月20日). 2018年4月20日閲覧。
- ^ “相手国たたくトランプ氏の「ハンマー」役、USTR代表人事公聴会へ”. ブルームバーグ (2017年3月14日). 2020年12月12日閲覧。
- ^ Bill Allison (2017年1月25日). “Trump’s Trade Pick May Face Hurdle Over Past Lobbying for Brazil”. Bloomberg. 2017年4月1日閲覧。
- ^ Estelle Tran (2017年1月5日). “STEEL INDUSTRY CHEERS NOMINATION OF LIGHTHIZER AS US TRADE REPRESENTATIVE”. S&P Global Platts. 2017年4月1日閲覧。
- ^ David Francis (2017年1月10日). “rump’s New Trade Guru May Actually Be the Adult in the Room”. Yahoo! news. 2017年4月1日閲覧。
- ^ "https://jp.reuters.com/article/usa-trump-trade-idJPKBN14N095/?pagewanted=all/ トランプ氏、USTR代表にライトハイザー氏指名 対中強硬派" Reuter(2017年1月4日), 2017年1月20日閲覧.
- ^ "米通商代表にライトハイザー氏起用へ トランプ次期大統領 海外報道" Sankei Biz(2017年1月3日), 2017年1月20日閲覧.
- ^ 畑中徹 (2017年1月4日). “通商代表に対中強硬派 トランプ氏発表、ライトハイザー氏”. 朝日新聞. 2017年3月9日閲覧。
- ^ TARA JEFFRIES (2017年3月7日). “Senate Panel Schedules Confirmation Hearing for USTR Pick Lighthizer”. Mprning Consult. 2017年3月9日閲覧。
- ^ VICKI NEEDHAM (2017年3月7日). “Lighthizer nomination hearing set for Tuesday”. The Hill. 2017年3月14日閲覧。
- ^ CLARK PACKARD (2017年3月14日). “7 questions for Robert Lighthizer, Trump's nominee for United States Trade Representative”. Washington Examiner. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “USTR代表候補が「日本は最優先の標的」と上院委で発言 農産品の市場開放で”. 産経新聞 (2017年3月15日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “米次期通商代表、農業分野「日本が第一の標的」”. 日本経済新聞 (2017年3月15日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ David Lawder (2017年3月14日). “Trump's USTR nominee pledges tough enforcement of U.S. trade laws”. Reuter. 2017年4月1日閲覧。
- ^ Terrence Dopp (2017年4月26日). “Democrats Help Trump Trade Nominee Lighthizer Clear Senate Panel”. Bloomberg. 2017年4月30日閲覧。
- ^ VICKI NEEDHAM (2017年3月22日). “US Chamber urges quick vote on USTR nominee Lighthizer”. THE HILL. 2017年4月30日閲覧。
- ^ “米通商代表にライトハイザー氏決定 上院が承認”. 日本経済新聞. (2017年5月12日) 2017年5月12日閲覧。
- ^ Andrew Soergel (2017年5月11日). “Lighthizer Confirmed as U.S. Trade Representative”. US News. 2017年5月13日閲覧。
- ^ Praise for Robert Lighthizer, the next United States Trade Representative (2017年5月12日). “Praise for Robert Lighthizer, the next United States Trade Representative”. Steel Times International. 2017年5月14日閲覧。
- ^ “United States Trade Representative, Robert E. Lighthizer”. USTR. 2017年5月16日閲覧。
- ^ “ライトハイザー米通商代表、APEC貿易相会合に出席へ”. ロイター (ロイター). (2017年5月16日) 2017年5月16日閲覧。
- ^ ロイター (The Newyork Times). (2017年5月15日). https://www.nytimes.com/aponline/2017/05/15/us/politics/ap-us-trade-lighthizer.html?_r=0+2017年5月16日閲覧。
- ^ “EU・カナダ・メキシコが報復措置、米鉄鋼・アルミ関税発動で”. ブルームバーグ. (2018年5月31日) 2018年8月19日閲覧。
- ^ “ロシアも報復検討 貿易戦争の様相さらに”. 毎日新聞. (2018年3月24日) 2018年8月19日閲覧。
- ^ “インド:報復関税実施へ 米の輸入制限を発動に”. 毎日新聞. (2018年6月22日) 2018年8月19日閲覧。
- ^ “米国の鉄鋼・アルミ輸入制限、日本も対象に発動 暫定適用除外は7カ国・地域”. フジサンケイ ビジネスアイ. (2018年4月6日) 2018年3月23日閲覧。
- ^ “米の対中知財制裁、産業ロボなど1300品目 原案公表”. 日本経済新聞. (2018年4月4日) 2018年4月4日閲覧。
- ^ “米国、500億ドルの中国輸入品への関税適用提案-ハイテク製品中心”. ブルームバーグ. (2018年4月4日) 2018年4月4日閲覧。
- ^ “米通商代表、対中制裁決定は6月 交渉解決に「希望」”. 日本経済新聞. (2018年3月29日) 2018年4月6日閲覧。
- ^ “中国と交渉の扉開かれている、米国は示唆-貿易戦争への警戒緩む”. ブルームバーグ. (2018年4月4日) 2018年4月6日閲覧。
- ^ “米中は貿易戦争に入っていない=トランプ米大統領”. ロイター. (2018年4月4日) 2018年4月6日閲覧。
- ^ “トランプ大統領:中国製品1000億ドル対象の追加関税検討を指示”. ブルームバーグ. (2018年4月6日) 2018年4月6日閲覧。
- ^ “米、TPP復帰見えず 貿易協議開始合意も”. 毎日新聞. (2018年4月20日) 2018年4月19日閲覧。
- ^ “日米首脳が共同会見 通商問題で閣僚級協議の枠組み設置”. 朝日新聞. (2018年4月20日) 2018年4月19日閲覧。
- ^ “Trump's top economic advisers are embarking on a trip that could make or break the US-China trade fight”. ビジネスインサイダー. (2018年5月3日) 2018年5月4日閲覧。
- ^ “中国が米国からの購入「大幅に」拡大、貿易戦争は回避されたと表明”. ブルームバーグ. (2018年5月21日) 2018年5月21日閲覧。
- ^ "米通商代表にライトハイザー氏起用、対中強硬派の元次席代表" Bloomberg(2017年1月3日), 2017年1月20日閲覧.
- ^ Jennifer Jacobs (January 2, 2017). “Trump Taps China Critic Lighthizer for U.S. Trade Representative”. ブルームバーグ 2018年4月6日閲覧。
- ^ “「貿易戦争、利益にならず」 ライトハイザー米通商代表、中国商務相に”. 産経ニュース. 産経新聞 (2017年5月22日). 2017年6月7日閲覧。
- ^ “「強硬派」が見せた日本への配慮 米貿易戦略の腹の内”. 朝日新聞デジタル. (2020年8月27日) 2023年6月6日閲覧。
公職 | ||
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