ライ麦ビール
ライ麦ビール(ライむぎビール、英語: Rye beer、ドイツ語: Roggenbier)は、ビールのスタイルの1つ。オオムギ麦芽の一部をライ麦で置き換えたビールである。
概要
[編集]ライ麦を30%以上使用して作られるビールである[1]。苦味は少なく、ほのかなバナナ香、クローブを思わせるスパイシーな香りがある[1]。液色は淡色系から濃色系までさまざまなものがある[1]。ライ麦パンのような味わいがあり、ローストした麦芽の渋味、甘味のバランスが良い[1]。
ライ麦にはβ-グルカンが含まれているため、麦芽を煮込む糖化工程で粘度が増してどろどろになり、ろ過をする際に目詰まりを起こりやすくなる[2]。このため、製造効率を高めるよう工夫された近代の醸造機器ではろ過が行えず、ライ麦の量を減らしてビール造りをしていた(むろん、ライ麦の使用量が減るとスタイルも変わってくる)[2]。伝統的な設備(いうなれば効率の悪い設備)を使えば、問題はないのだが、製造方法の難しさから世界的にも仕込んでいる醸造所は少なくなってきている[2]。
各国のライ麦ビール
[編集]ドイツ
[編集]ロッゲンビア(Roggenbier)は、最大60%のライ麦麦芽を用いて作る。ドイツ南部のバイエルン州が起源で、ヘーフェヴァイツェンと同じ酵母で醸造するため、似たような軽くてドライかつスパイシーな味になる。
バイエルン州では、ライ麦麦芽はビールを醸造するのに15世紀から用いられてきた[3]。しかし、不作期間の後、ビール純粋令により、ライ麦はパンを焼くためにのみ用い、ビール用にはオオムギのみ用いることが規定された。そのため、ロッゲンビアは、ほぼ500年間途絶えていた[3]。
1980年代末、レーゲンスブルク近郊のSpezialbrauerei Schierlingで、高濃度のライムギ麦汁にも対応可能な、特許取得の改良型糖化培地を用いて、初めての近代型ロッゲンビアであるSchierlinger Roggenが作られた[4]。
近代型のロッゲンビアは、通常、アルコール度数は約5%で、色はかなり暗い[3]。穀物の風味があり、しばしばプンパーニッケルに似たボリューム感のある味わいになる。通常、製造に使用される麦芽の少なくとも50%はライ麦から作られる。
アメリカ合衆国
[編集]アメリカ合衆国では、ホームブルーイングやマイクロブルワリーで良く作られる。ホップの存在により、アメリカ合衆国のインディア・ペールエール(IPA)に似たレベルにまで達する[5]。このスタイルは、ライIPAまたは"Rye-P-A"と呼ばれる。
日本
[編集]ベアレン醸造所(岩手県)が2022年より数量限定で醸造、販売を行っている[2]。
関連する飲料
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d 一般社団法人日本ビール文化研究会「6.発祥国不明・その他のスタイル」『日本ビール検定公式テキスト』(2022年5月改訂版)マイナビ出版、2022年、77頁。ISBN 978-4839978853。
- ^ a b c d きただともこ. “~極上のとろみの無ろ過ビール~ ベアレンライ麦ビール3月23日から発売開始!”. 日本ビアジャーナリスト協会. 2023年9月4日閲覧。
- ^ a b c “Sorten Bierspezialitäten – Roggenbier”. Deutscher Brauer Bund. 2001年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月2日閲覧。
- ^ “Beer with rye-aroma and process for manufacturing the same” (英語). patents.google.com. 2019年6月27日閲覧。
- ^ “Full Moon Pale Rye Ale | Real Ale Brewing Company” (英語). BeerAdvocate. 2018年9月7日閲覧。
- ^ “Dogfish Head Craft Brewery - Zwaanendale” (英語). www.beermonthclub.com. 2018年10月3日閲覧。