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ヤマモモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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ヤマモモ
ヤマモモ
ヤマモモ
(2004年6月27日、愛媛県広見町
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : 真正バラ類I eurosids I
: ブナ目 Fagales
: ヤマモモ科 Myricaceae
: ヤマモモ属 Morella
: ヤマモモ M. rubra
学名
Morella rubra Lour. (1790)[1]
シノニム
和名
ヤマモモ
英名
red bayberry, wax myrtle
品種
  • シロヤマモモ M. r. f. alba

ヤマモモ(山桃[4]学名: Morella rubra)は、ヤマモモ科ヤマモモ属常緑樹。また、その果実のこと。夏に実る赤い果実は生食でき、甘酸っぱい独特の風味があり、ジャムや果実酒にも加工される。

名称

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和名のヤマモモの名について、植物学者の辻井達一は「やはり山のということだろう」と述べている[5]。日本に自生するヤマモモは、「モモ」と呼ばれ、モモは果実の総称ともしていて、渡来種の桃は初め「ケモモ」と呼ばれていた。それが、時代が立って桃が生活に食い込んで「モモ」と呼ばれ、ヤマモモは山のモモで「ヤマモモ」と呼ばれるようになった。琉球方言に残っている[6]。琉球方言は3母音(O→U、E→I)[7]で、ヤマモモを「ムム」[8]モモを、「キームム」[9]という。モモのモは実を表し、軟質な外側のモと内の硬い核のモでモモとして二重性を表している[10]

漢名楊梅(ようばい)[11]中国名楊梅[1](ヤンメイ、(拼音: yángméi))[12] で、その葉の形が楊(ヤナギ)に似ている様に由来するとされる[13]。別名として山桜桃、火実などがあり、古代から和歌などにも詠まれる。ベトナムでも漢名をそのまま用いて「dương mai」ズオンマイと呼ぶ。

分布・生育環境

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中国大陸日本を原産とし、山地の暖地を好み[14]、暑さには強い。日本では関東以南(房総半島南部、福井県以西)の本州四国九州沖縄低地山地に自生する[15][16]。本州南部以南では、海岸や低山の乾燥した尾根など、痩せ地で森林を構成する重要樹種である。

日本国外では、朝鮮半島南部、中国台湾フィリピンに分布する[15]。中国では江蘇省浙江省が有名な産地で、とりわけ寧波市に属する余姚市慈渓市、あるいは温州市甌海区は古くから知られた産地であり、千年に及ぶとされる古木も多く残る。他に福建省広東省広西チワン族自治区台湾なども産地である。

自然分布以外にも、人の手によって公園、庭園、都市の街路などにも植えられる[14][4]。関東地方ではほとんど実がつかないで花だけを楽しむだけになり、これを花楊梅という[17]

形態・生態

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ヤマモモの樹

常緑広葉樹大高木で、成木は樹高20メートル (m) ほどになる[17]。大きなものは、幹径は1 m以上になるものもある[17]樹冠は、こんもりした円形となる[4]。生長は遅く、幼木は日陰を好むが、成木は日なたを好む[16]樹皮は灰白色で滑らか、一年枝は灰褐色で多数の楕円形の皮目を持つ[4]。古くなると縦の裂け目が出ることが多い。

は密に互生し、多くは枝先に束生する[16][18]葉身質、つやのある深緑で、長さ5 - 12センチメートル (cm) 、幅1 - 2 cmほどの倒披針形か長楕円形、もしくは倒卵形をしており、成木では葉は滑らかな縁(全縁)だが、若木では粗く不規則な鋸歯が出ることが多い[17][18]。葉の裏側に芳香を出す油点(ゆてん)がある[15]葉柄は5 - 10ミリメートル (mm) 程度と短い。葉腋には円筒形の花芽がつく[4]

花期は3 - 4月[4]雌雄異株[17]。葉の付け根から穂状の花序を伸ばして[15]数珠つなぎに小さな桃色花弁4枚の目立たないをつける。

果期は6 - 7月[14]。雌株につく果実は直径1.5 - 2 cmのほぼ球形で、固まってたくさん実り、6月ごろに黄紅色から鮮紅色を経て、暗赤色に熟し、生で食べられる[14][18]。表面に粒状突起を密生する[16]。この突起はつやがあるので、外見的には小粒の赤いビーズを一面に並べたように見える。ヤマモモの果実はなどに食べられ、消化された後に発芽する性質がある。

枝先には葉芽がつき、円錐形で黄色い腺点に覆われている[4]。雌雄異株であることから、雌花序の冬芽と雌花序の冬芽は別々の株につき、雌花序のほうがやや細い[4]

根粒窒素固定を行う放線菌の1種であるフランキア共生させており、比較的栄養の乏しい土壌でも生育できる。

ホルトノキとの区別

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その姿や形はややホルトノキに似ており、本州南部以南では紛らわしいことがある。ホルトノキは落葉が赤くなり、常に少数の葉が赤く色づいているのがよい区別点になる。

栽培・生産

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比較的日陰でも耐えるが、雌株に果実を結ばせるには日当たりの良いところに植える[19]。土壌の質は乾燥した壌土に、根は深く張る[16]。植栽適期は6 - 7月上旬か、9月中旬 - 10月中旬とされる[16][18]。剪定は3 - 4月か6 - 7月に行い、伸びすぎた枝を切って樹形が整えられる[16]。施肥を行う時期は、2 - 3月と5月とされる[16]

病虫害に、細菌(バクテリア)による病気である細菌性こぶ病にかかることがあり、枝や幹にごつごつしたこぶが出ているもの見られる[14]

野生種以外に大粒で酸味の強い瑞光、大玉で酸味の弱い森口や秀光(秀峰、平井1号)などの栽培品種があり、農作物として栽培されている。中国では浙江省の「丁嶴梅」や広東省の「烏酥楊梅」という品種が良質で知られている。日本の改良品種は少なくなく、本来の赤い果実だけではなく、白や紅色の実の種類もつくられている[20]。白い実をつけるものは、シロモモという変種から作出された品種である[20]。そのほか、阿波錦(あわにしき)、日の出、甘露(かんろ)、白妙(しろたえ)などの特産品種がある[20]

日本では四国の徳島県が最も栽培・生産が盛んで産地の中心といわれる[20]高知県和歌山県もヤマモモの産地で知られている[20]。しかし、果実収穫後は鮮度がすぐに落ちるので、市場にはあまり出回らない[14]

人間との関わり

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大気汚染に強く[15]緑化を目的とする植樹に用いられ、庭木公園樹街路樹として植えられる[15]。葉が密生していることから、建物の風よけや目隠しに列植されることもある[16]

殖やし方は接木のほか取り木がある。雌雄異株のため結実には雄株が必要であるが、都市部では街路樹として植栽されている雄株が随所にあるため、雌株の結実性は比較的高い。

果実は甘酸っぱく生で食べられる[16]。また、ジャム缶詰、砂糖漬け、リキュール等に加工される[14]。中国では白酒砂糖を加え、ヤマモモの果実を漬け込んだリキュールの「楊梅酒」が広く作られている。ヤマモモの生の果実は、日持ちが悪く輸送がきかないといわれている[17]

樹皮は桃皮渋木渋皮[21]と呼ばれ染料にした[15]。樹皮に含まれるタンニンには防腐、防水、防虫の効果があり、むかしは漁網を染めるのに用いた[22]。また、樹皮は楊梅皮(ようばいひ)という生薬になって、タンニンに富むので止瀉作用がある。消炎作用もあるので筋肉痛腰痛用の膏薬に配合されることもある。

高知県ではシイラ漬漁業に使うシイラ漬の下に葉が付いたヤマモモの枝を垂らし、隠れようとする小魚を誘き寄せ、小魚を目当てに集まってくるシイラを巻き網で捕る漁法に使われている。

高知県の県の花、徳島県の県の木[23]知多市西都市那珂川市下松市の市の木に指定されている。ヤマモモの花言葉は、「教訓」[14]「一途」[14]とされる。

ヤマモモ属

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ヤマモモ属(ヤマモモぞく、学名: Morella)は、ヤマモモ科の一つ。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Morella rubra Lour. ヤマモモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月29日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Myrica rubra Siebold et Zucc. ヤマモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Myrica rubra Siebold et Zucc. var. acuminata Nakai ヤマモモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 137.
  5. ^ 辻井達一 2006, p. 43.
  6. ^ 前川文夫(著)『植物の名前の話』八坂書房、1994年、27,40-42,44,45,83,121,142頁
  7. ^ https://bibdb.ninjal.ac.jp/SJL/getpdf.php?number=0850010190 2022年11月24日閲覧
  8. ^ しまくとぅば単語一覧|読谷村史編集室へようこそ (yomitan-sonsi.jp) https://yomitan-sonsi.jp/kana/mu/ 2022年11月24日閲覧
  9. ^ モモ | 亜熱帯生物資源データベース (u-ryukyu.ac.jp)https://iicc.skr.u-ryukyu.ac.jp/plant/br/862.php 2022年11月24日閲覧
  10. ^ 前川文夫(著)『植物の名前の話』八坂書房 1994年 P39
  11. ^ 跡見群芳譜(樹木譜 ヤマモモ) (atomigunpofu.jp)http://www.atomigunpofu.jp/ch2-trees/yamamomo.htm 2023年3月26日閲覧。
  12. ^ Plant of Kunming [その6] 楊梅(ヤマモモ)|東アジア植物記|読みもの|サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信 (sakata-tsushin.com)https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/standard/eastasiaplants/20180724_007406.html 2023年3月26日閲覧。
  13. ^ 辻井達一 2006, pp. 43–44.
  14. ^ a b c d e f g h i 田中潔 2011, p. 92.
  15. ^ a b c d e f g 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 99.
  16. ^ a b c d e f g h i j 正木覚 2012, p. 109.
  17. ^ a b c d e f 辻井達一 2006, p. 44.
  18. ^ a b c d 山﨑誠子 2019, p. 92.
  19. ^ 山﨑誠子 2019, p. 93.
  20. ^ a b c d e 辻井達一 2006, p. 46.
  21. ^ 林産名彙 1913.
  22. ^ 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 221.
  23. ^ 徳島県のシンボル - 徳島県 2019年2月21日閲覧

参考文献

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  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、137頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、92頁。ISBN 978-4-07-278497-6 
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、43 - 46頁。ISBN 4-12-101834-6 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、99頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 正木覚『ナチュラルガーデン樹木図鑑』講談社、2012年4月26日、109頁。ISBN 978-4-06-217528-9 
  • 山﨑誠子『植栽大図鑑[改訂版]』エクスナレッジ、2019年6月7日、92 - 93頁。ISBN 978-4-7678-2625-7 
  • 茂木透 写真『樹に咲く花 離弁花 1』高橋秀男・勝山輝男 監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、16-17頁。ISBN 4-635-07003-4 
  • 林将之『樹木の葉 : 実物スキャンで見分ける1100種類 : 画像検索』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2014年、352頁。ISBN 978-4-635-07032-4 
  • 田中芳男『林産名彙』大日本山林会、1913年、98頁。NDLJP:/951750/68 

関連項目

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外部リンク

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