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ユーカリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ユーカリノキから転送)
ユーカリ属
ユーカリ(Eucalyptus globulus
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : rosid II / Malvidae
: フトモモ目 Myrtales
: フトモモ科 Myrtaceae
: ユーカリ属 Eucalyptus
学名
Eucalyptus L'Hér. [1]
タイプ種
Eucalyptus obliqua [1]
  • 本文参照
自生地

ユーカリ(有加利[2])はフトモモ科ユーカリ属Eucalyptus)の樹木の総称。常緑高木となるものが多い。2020年の時点では900種近くの種類が存在すると推定されている[3]

和名のユーカリは、属名の英語読み「ユーカリプタス」を短縮したもの。学名の語源は eu-(真に・強く・良く)+ kalyptós(…で覆った)、つまり「良い蓋」を意味するギリシア語ラテン語化したもの。のがくと花弁が合着して蓋状となること、あるいは乾燥地でもよく育って大地を緑で被うことに由来して命名されたとされる。漢語では「桉樹」と書く。

なお、CorymbiaAngophora 等の近縁の数属もユーカリと共に扱われることがある[3]

多くがオーストラリアに分布するが、世界各地で移植・栽培されている(参照: 利用)。コアラの食物としてもよく知られている(参照: #コアラの食料)。

特徴と分布

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カメレレの木の根本。

2000年までの段階では400 - 500が知られており、そのほとんどがタスマニア州含めオーストラリア全域に分布するものとされたが、すぐ北のニューギニアマレー群島区系に生育するものもわずかながら存在し、カメレレEucalyptus deglupta)のようにむしろオーストラリアでは一切自然分布が確認されていない種も存在する[4]。成長がとても早く、材木として注目される。70メートルを超える高さになるものから、5メートル程で枝分かれする種類もある。

オーストラリアという隔離された地域において著しい数のしゅに分化しているが、としては非常にまとまっており、次のような共通した特徴を持つ[4]

  • 樹皮は長い紐状に剥がれ、滑らかな木肌のものが多い[5]
  • 葉は幼木の時は幅が広く、しばしば無柄で対生であるが、成木になると細長い披針形になることが多く、有柄かつ互生に変化する[5]。表面も裏面も青灰色で、精油分を含んでいるため透かすと油点の散在が見られ、揉むと芳香がする。
  • 花のつぼみ萼筒が倒円錐形か形であり、萼片と花弁の合着した蓋(: operculum)が存在するが、この蓋は開花の際に脱落する。雄蕊おしべは多数存在する。
  • 果実は蒴果で多数の小さな種子が含まれる。

ユーカリは、を非常に深くまで伸ばし地下水を吸い上げる力が強いので、成長が早い。インド北部のパンジャーブ地方の砂漠化した地域の緑化に使われて、成功した。旱魃かんばつに苦しんでいた地方が5年程で甦った例がある(参照:杉山龍丸)。また東南アジアでは熱帯林を伐採した跡の緑化樹として用いられている。

オーストラリアでは自然発火による山火事が多いが、ユーカリがその一因である。ユーカリの葉はテルペンを放出するが、気温が高いとその量が多くなるので、夏期にはユーカリ林のテルペン濃度はかなり上昇する。テルペンは引火性であるため、何かの原因で発火した場合、燃え広がり山火事になるのである[6]。樹皮が非常に燃えやすく、火がつくと幹から剥がれ落ちるので、幹の内側は燃えずに守られる[7]。根に栄養をたくわえており、火事の後も成長し続けることができ、新しい芽をつけることもできる[7]

樹幹上にキノ英語版と呼ばれる赤褐色の樹脂状物質を出すことが多い[4]

オーストラリアに見られるユーカリ類の林は、雨量気温の観点から次の3つの型に分けることが可能である[4]

  1. 湿潤ユーカリ林 …… 南東部および南西端部の年間雨量750-1000ミリメートルの地域に発達し、密生した高木性のユーカリ林を形成する。この型の林では樹高が数10メートルにまで及ぶ種も多く、特にセイタカユーカリEucalyptus regnans)は広葉樹としては世界最高の樹高97メートル、直径7.5メートルのものが記録されている。
  2. 乾燥ユーカリ林 …… 年間雨量500-750ミリメートル(南部)あるいは750-1500ミリメートルの地域に成立し、高木のユーカリ類を主体とするまばらな林(疎林)を形成する。
  3. マリmallee)…… 南部の年間雨量250-500ミリメートルの範囲に成立し、低木のユーカリ類がやや散生的に生育する叢林そうりんを形成する。

発芽方法

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オーストラリアの気候は乾燥しており、山火事が頻繁に起こる。ユーカリの種は、山火事を経験した後の降雨により発芽すると言われている。人工的にこの条件を満たすには、フライパンで種をさっと煎ったり、熱湯をかけたり、用土を燻煙処理したりする。ただし特別な処理を行なわなくても発芽する種類がほとんどである。

歴史

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Eucalyptus obliquaホロタイプ(正基準標本)。この標本が今日知られている全てのユーカリ属の種の基準となっている。

ユーカリを発見し最初に紹介したのはイギリスの植物学者ジョセフ・バンクスとされ、ジェームズ・クックによる太平洋探検の第一回航海(1768年 - 1771年)に同行したときである[8]。 ただし、ユーカリがヨーロッパ人に知られたのは16世紀前半に東ティモールポルトガルの植民地とされた頃と考えられている[3]。東ティモールに分布しているユーカリは少なくともポプラガムEucalyptus alba)とウロフィラユーカリEucalyptus urophylla)の2種である。

フランスのシャルル・ルイ・レリティエ・ド・ブリュテルが史上初めてユーカリ属の種として新種記載した[8]のはオーストラリア南東部の湿潤地域産のメスメート・ストリンギーバルクこと Eucalyptus obliqua で、記載に用いられた標本ジェームズ・クックの3度目の航海(1777年)に同行したデイヴィッド・ネルソンが現タスマニア州ブルニー島アドベンチャー湾で採取したものである[3][注 1]。フランスでは、1802年に南フランスのトゥーロンに初めて植樹され、1804年に皇后ジョセフィーヌによりマルメゾン城にも植えられた[8]

英名

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アイアンバークの例、Eucalyptus siderophloiaシドニー王立植物園にて)
ストリンギーバークの例、メスメート・ストリンギーバルクメルボルン郊外ブラックバーン・レイク英語版にて)

ユーカリ属はオーストラリアに様々な種が分布するという関係上、その公用語である英語の呼称がついた種がいくつも見られるが、複数の種に特定の共通した呼称が使用されている例も見られる。こうした呼称からはある程度その種の特徴を窺い知ることが可能である。数例を以下に挙げることとする。

また#分布と特徴で触れたように樹幹に樹脂の滲出が見られることからユーカリ属の木は gum あるいは gum-tree と総称されることがある[4]

主な種

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セキザイユーカリの花と蕾
クーパーユーカリの花と蕾

ここでは日本語文献において言及例が存在するもののみを取り上げる。それ以外のものに関してはユーカリ属の一覧英語版を参照。和名は特に断りがない限り「米倉浩司梶田忠 (2003-). 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)、英名、属と種の間の細分化、分布情報は特に断りがない限り Slee et al. (2020) による。

学名 和名 英名 細分化 分布 備考
Eucalyptus acmenoides Schauer ホワイトマホガニー[9][11](別名: シロマホガニー[9] white mahogany Eucalyptus亜属、Amentum オーストラリアのクイーンズランド州からニューサウスウェールズ州にかけて 熱帯植物研究会 (1996) では Eucalyptus triantha Link のシノニム扱いとされているが、この E. triantha記載時にタイプの引用が行われなかったこともあって、後に素性が疑わしい学名として扱われている[12]
Eucalyptus alba Reinw. ex Blume ポプラガム[11] white gum, mottled gum Symphyomyrtus亜属ExsertariaSubexsertaeApplanatae亜列 東ティモールニューギニア西オーストラリア州ノーザンテリトリー北部
Eucalyptus amygdalina Labill. ナガバユーカリ black peppermint Eucalyptus亜属AromaticaInsulanae オーストラリアのタスマニア州固有 初島 (1976) ではセイタカユーカリとして紹介。
Eucalyptus blakelyi Maiden ユーカリプタス・ブレークリー[19] Blakely's redgum Symphyomyrtus亜属ExsertariaErythroxylon ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州南東部、ヴィクトリア州
Eucalyptus botryoides Sm. ヒロハユーカリ[20](別名: サウザンマホガニー[11] southern mahogany Symphyomyrtus亜属LatoangulataeAnnulares ニューサウスウェールズ州(南海岸)、ヴィクトリア州東部
Eucalyptus brassiana S.T.Blake ケープヨーク・レッドガム[21] Cape York red gum, gum-topped peppermint Symphyomyrtus亜属ExsertariaPhaeoxylon パプアニューギニア南部; クイーンズランド州(ヨーク岬半島
Eucalyptus caesia Benth. ケショウユーカリ[20] caesia Symphyomyrtus亜属BisectaeDestitutae亜節Caesiae 西オーストラリア州南西部
Eucalyptus camaldulensis Dehnh. セキザイユーカリ(別名: リバー・レッドガム[21]など) river red gum Symphyomyrtus亜属ExsertariaRostratae タスマニア州を除くオーストラリア全土
  • 2020年時点でオーストラリア産ユーカリ属の中で最も分布域が広い種とされている[22]
  • オーストラリア北部のコアラの好物[23][24]
  • 用途は多岐にわたる。詳細は個別記事を参照。
Eucalyptus cinerea F.Muell. ex Benth. ギンマルバユーカリ[20](別名: スパイラルユーカリ[11] Argyle apple, mealy stringybark Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節Argyrophyllae ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州北東部
Eucalyptus cladocalyx F.Muell. ボウガクユーカリ[20] sugar gum Symphyomyrtus亜属Sejunctae 南オーストラリア州固有
Eucalyptus coccifera Hook.f. タスマニアシロユーカリ[25] Tasmanian snow gum Eucalyptus亜属AromaticaInsulanae タスマニア州
Eucalyptus coolabah Blakely & Jacobs coolabah, coolibah Symphyomyrtus亜属AdnatariaApicales亜節AquilonaresProtrusae亜列 西オーストラリア州、ノーザンテリトリー、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、南オーストラリア州 かつては Chippendale (1988:379) 等のように E. microtheca のシノニム扱いとする学者がいた。
Eucalyptus cordata Labill. ギンイロユーカリ[25](別名: エンシンユーカリ[20] heart-leaved silver gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節Orbiculares タスマニア州固有
Eucalyptus cornuta Labill. ユーカリプタス・コルヌータ[26] yate Symphyomyrtus亜属BisectaeHadrotes亜節Cornutae 西オーストラリア州固有
Eucalyptus dalrympleana Maiden ダルリンプルユーカリ[25] mountain (white) gum, white gum, broad-leaved ribbon gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節ViminalesCirculares亜列 ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州、タスマニア州
Eucalyptus deglupta Blume カメレレ[11](別名: カマレレレインボーガム[21] kamarere, rainbow gum[21] フィリピンインドネシアスラウェシモルッカ諸島イリアンジャヤ)、パプアニューギニア(ニューギニア、ビスマルク諸島 樹皮が虹色; オーストラリアに分布しないユーカリの一つ。
Eucalyptus delegatensis R.T.Baker アルパインアッシュ[27][21] alpine ash, gum-topped stringybark, white-top Eucalyptus亜属CineraceaeFraxinales ニューサウスウェールズ州南部、ヴィクトリア州東部、タスマニア州 木材が利用[27]
Eucalyptus diversicolor F.Muell. カリーガム[28](別名: カリー[11][27][21] karri Symphyomyrtus亜属Inclusae 西オーストラリア州固有 木材が利用[11][27]
Eucalyptus dives Schauer ユーカリ・ディベス[29] broad-leaved peppermint, blue peppermint Eucalyptus亜属AromaticaRadiatae ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州南部 アロマセラピー用の精油の原料[29]
Eucalyptus eugenioides Sieber ex Spreng. ホワイトストリンギイバーク[11] thin-leaved stringybark, white stringybark Eucalyptus亜属、CapillulusPachyphloius クイーンズランド州南東部からニューサウスウェールズ州南部
Eucalyptus globulus Labill. ユーカリ[28](別名: ユーカリノキ[28][21]サウザンブルーガム[11] Tasmanian blue gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節GlobularesEuglobulares亜列 ニューサウスウェールズ州(東部)、ヴィクトリア州(中央部、南部)、タスマニア州
Eucalyptus gomphocephala A.Cunn. ex DC. ツワート[11] tuart, tewart[11] Symphyomyrtus亜属Bolites 西オーストラリア州固有 木材が利用[11]
Eucalyptus grandis W.Hill ex Maiden ローズガム[11] flooded gum, rose gum Symphyomyrtus亜属LatoangulataeTransversae ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州北部
Eucalyptus gunnii Hook.f. グングヌユーカリ[20](別名: ハッカゴムノキ[25]ヒメユーカリ[20] cider gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節Orbiculares タスマニア州固有 リズデイルら (2007) は「コマルバユーカリ」の名で紹介。
Eucalyptus haemastoma Sm. ホワイトガム[11] scribbly gum Eucalyptus亜属CineraceaePsathyroxylonHaemastomae亜列 ニューサウスウェールズ州固有 Chippendale (1988) は white gum の名は E. alba にあてている。
Eucalyptus leucoxylon F.Muell. ヤナギユーカリ[20](別名: イエローガム[11] yellow gum, blue-gum, white ironbark Symphyomyrtus亜属AdnatariaTerminales亜節MelliodoraeLeucoxylon亜列 南オーストラリア州南東部、ヴィクトリア州(西部、中央部)、ニューサウスウェールズ州
Eucalyptus longifolia Link ウーリイバット[11] woollybutt Symphyomyrtus亜属Similares ニューサウスウェールズ州海岸部(ヴィクトリア州との境界にまで肉薄)
Eucalyptus macrocarpa Hook. オオミユーカリ[20] mottlecah Symphyomyrtus亜属BisectaeDestitutae亜節CurvipteraXylocarpae亜列 西オーストラリア州固有
Eucalyptus marginata Donn ex Sm. ジャラ[27][21] jarrah Eucalyptus亜属Longistylus節、ArboreaeOccidentales 西オーストラリア州 木材が利用[27]
Eucalyptus melliodora A.Cunn. ex Schauer シダレユーカリ[20](別名: イエローボックス[11]ミツノカユーカリ[20] yellow (iron)box, honey box Symphyomyrtus亜属AdnatariaTerminales亜節MelliodoraeLeucoxylon亜列 クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州
Eucalyptus microcorys F.Muell. タローウッド[11][21] tallow(-)wood Alveolata亜属 ニューサウスウェールズ州北東部、クイーンズランド州
Eucalyptus microtheca F.Muell. ビヤクユーカリ(別名: フラッデッドボックス[11]クーリバー[21] 備考欄参照 Symphyomyrtus亜属AdnatariaApicales亜節AquilonaresProtrusae亜列 西オーストラリア州、ノーザンテリトリー、クイーンズランド州 Chippendale (1988:379) は E. coolabah をシノニムとして含めており、英名として coolibah をあてていた。
Eucalyptus nicholii Maiden & Blakely ユーカリプタス・ニコリー[19] narrow-leaved black peppermint Symphyomyrtus亜属MaidenariaTriangulares亜節Acaciiformes ニューサウスウェールズ州固有
Eucalyptus obliqua L'Hér. メスメート・ストリンギーバルク[27] messmate stringybark Eucalyptus亜属EucalyptusEucalyptus 南オーストラリア州、ヴィクトリア州南部、タスマニア州、ニューサウスウェールズ州東部、クイーンズランド州南東部
  • ユーカリ属のタイプ種。(参照: #歴史
  • 木材が利用[27]
Eucalyptus pauciflora Sieber ex Spreng. ミヤマユーカリ[25](別名: スノーガム[21] snow gum, cabbage gum, white sally Eucalyptus亜属CineraceaePauciflorae クイーンズランド州南東端、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州南部、タスマニア州(中央部、北東部)、南オーストラリア州南東部
Eucalyptus perriniana F.Muell. ex Rodway ツキヌキユーカリ[20] spinning gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節Orbiculares ニューサウスウェールズ州南東部、ヴィクトリア州東部、タスマニア州
Eucalyptus pilularis Sm. ブラックバット[11][21] blackbutt Eucalyptus亜属Pseudophloius ニューサウスウェールズ州南東端からクイーンズランド州南東部にかけて
Eucalyptus piperita J.White シドニーペパーミント(別名: ペパーミントユーカリ[30] Sydney peppermint Eucalyptus亜属CineraceaePiperitales ニューサウスウェールズ州固有
Eucalyptus polyanthemos Schauer シラカネユーカリ[20](別名: ツゲユーカリ[20] red box Symphyomyrtus亜属AdnatariaTerminales亜節Heterophloiae ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州(中央部、東部)
Eucalyptus populnea F.Muell.シノニム: E. populifolia Hook., nom. illeg. ベンビルボックス[11] poplar box, bimbil box Symphyomyrtus亜属AdnatariaApicales亜節BuxealesAmissae亜列 ニューサウスウェールズ州(西部)、クイーンズランド州(中央部、南東部)
Eucalyptus propinqua H.Deane & Maiden グレイガム[11] (small-fruited) grey gum Symphyomyrtus亜属LatoangulataeLepidotae-Fimbriatae ニューサウスウェールズ州からクイーンズランド州南東部にかけて
Eucalyptus pulverulenta Sims マルバユーカリ[20] silver-leaved mountain gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節Orbiculares ニューサウスウェールズ州固有 初島 (1976) は別名として「コマルバユーカリ」を併記。
Eucalyptus punctata DC. グレイアイアンガム[11] grey gum Symphyomyrtus亜属LatoangulataeLepidotae-Fimbriatae ニューサウスウェールズ州南海岸からクイーンズランド州南東部にかけて オーストラリア北部のコアラの好物[24]
Eucalyptus radiata Sieber ex DC. ユーカリ・ラジアータ[29]ユーカリ・ラディアタ[30] narrow-leaved peppermint Eucalyptus亜属AromaticaRadiatae ヴィクトリア州中央部、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州南東部、タスマニア州北部 アロマセラピー用の精油の原料[29]
Eucalyptus regnans F.Muell. セイタカユーカリ(別名: マウンテンアッシュ[27] mountain ash, swamp gum, stringy gum Eucalyptus亜属Regnantes ヴィクトリア州東部高地、タスマニア州(北東部や北部など)
  • 命名者であるミュラー自身の手により E. amygdalina var. regnans と分類されたことがある[31]
  • 木材が利用[27]
Eucalyptus resinifera J.White レッドマホガニー[11] red mahogany, red messmate Symphyomyrtus亜属LatoangulataeAnnulares ニューサウスウェールズ州南海岸からクイーンズランド州にかけて
Eucalyptus robusta Sm. オオバユーカリ[20](別名: ロブスタユーカリ[28]テリハユーカリ[20][11] swamp mahogany, swamp messmate Symphyomyrtus亜属LatoangulataeAnnulares ニューサウスウェールズ州からクイーンズランド州南東部にかけて
Eucalyptus rubida H.Deane & Maiden ユーカリプタス・ルビダ[19] candlebark, ribbon gum, white gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節ViminalesCirculares亜列 タスマニア州東部、ヴィクトリア州、ニューサウスウェールズ州 Chippendale (1988:365) に見られるようにかつては南オーストラリア州にも分布すると考えられていたが、チッペンデールが引用した標本 E.H. Ising s.n. は後にダルリンプルユーカリ(の基本亜種)と再同定されている[32][33][34]
Eucalyptus saligna Sm. シドニーブルーガム[11] (Sydney) blue gum Symphyomyrtus亜属LatoangulataeTransversae ニューサウスウェールズ州南海岸部からクイーンズランド州南東部にかけて
Eucalyptus siderophloia Benth. ブロードリーブドアイアンバーク[11] ironbark Symphyomyrtus亜属AdnatariaApicales亜節SiderophloiaeSubglaucae亜列 クイーンズランド州南部、ニューサウスウェールズ州 Chippendale (1988:404) は broad-leaved ironbark の名は別種 Eucalyptus fibrosa F.Muell. subsp. fibrosa(シノニム: E. siderophloia var. rostrata)にあてている。
Eucalyptus sideroxylon A.Cunn. ex Woolls アカゴムノキ[28](別名: レッドアイアンバーク[11] (red) ironbark, mugga Symphyomyrtus亜属AdnatariaTerminales亜節MelliodoraeSolidae亜列 クイーンズランド州南東部、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州北部
Eucalyptus tereticornis Sm. クーパーユーカリ[20](別名: フォーレストレッドガム[11]モリユーカリ[20] forest red gum, blue gum, red irongum Symphyomyrtus亜属ExsertariaErythroxylon ニューギニア南部、オーストラリア東部3州(クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州)の東部 オーストラリア北部のコアラの好物[23][24]
Eucalyptus urophylla S.T.Blake ウロフィラユーカリ[11] 東ティモール[3] オーストラリアに分布しないユーカリの一つ。
Eucalyptus urnigera Hook.f. ツボミユーカリ[25] urn gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節Orbiculares タスマニア州南東部に固有
Eucalyptus viminalis Labill. リボンガム[11] manna gum, ribbon gum, white gum Symphyomyrtus亜属MaidenariaEuryotae亜節ViminalesLanceolatae亜列 南オーストラリア州南東部、ヴィクトリア州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州
  • オーストラリア南部のコアラの好物[24]
  • Chippendale (1988:358) はクイーンズランド州南東部も分布域に含めていたが、その時引用された標本 L. Pedley 7407 は後に別種 Eucalyptus nobilis L.A.S.Johnson & K.D.Hill と再同定されている[35]
Eucalyptus viridis R.T.Baker ミドリユーカリ[20] green mallee Symphyomyrtus亜属AdnatariaApicales亜節BuxealesContinentes亜列 南オーストラリア州南東部、ヴィクトリア州、ニューサウスウェールズ州中西部、クイーンズランド州

また、以下はユーカリ属に分類されていた段階で「…ユーカリ」という和名がつけられたものの、1995年にCorymbia属に組み替えられたものである[36]。こちらも分布情報は Slee et al. (2020) による。

「…ユーカリ」の名を持つCorymbia属の種
学名 シノニム 和名 英名 分布 備考
Corymbia citriodora (Hook.) K.D.Hill & L.A.S.Johnson Eucalyptus citriodora Hook. レモンユーカリ[20][11] lemon-scented gum, spotted gum オーストラリアのニューサウスウェールズ州からクイーンズランド州にかけて アロマセラピー用の精油の原料[29]
Corymbia ficifolia (F.Muell.) K.D.Hill & L.A.S.Johnson Eucalyptus ficifolia F.Muell. ベニバナユーカリ[20][11](別名: アカバナユーカリ[20]レッドフラワリング・ガム[21] red-flowering gum 西オーストラリア州固有
Corymbia gummifera (Gaertn.) K.D.Hill & L.A.S.Johnson Eucalyptus corymbosa Sm. タマザキユーカリ[37](別名: レッドブラッドウッド[11] red bloodwood クイーンズランド州南東部、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州東端

利用

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オーストラリア先住民アボリジニ)は傷を癒すのに葉を利用した。葉から取れる精油は殺菌作用や抗炎症作用、鎮痛・鎮静作用があるとされ、医薬品やアロマテラピーなどに用いられる。また、健康等としても利用される。ただし、ハーブや精油としての利用は、サプリメント薬物との相互作用の懸念があると考えられている[38]

日本でも鑑賞用などとして栽培・出荷する農家が増えている。ユーカリの近くに植えた他の農作物で鳥獣の食害が減る効果もあり、ユーカリが放つ独特の香りが作用している可能性もある[39]。ユーカリは用土の乾燥を好む品種が多く、日本で良く見かける品種のほとんどが湿地帯に生息する湿潤を好む品種である。

初期成長が早いことが注目され、人工林の樹種として利用されてきた。ブラジルでは、植栽してから6年-7年で製紙用のパルプとして収穫が生産が可能であり、ユーカリの大規模な植林地が造られている[40]

パルプ原料

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ローズガム(ユーカリプタス・グランディス)

ユーカリはオーストラリアの原産で、森の木の4分の3がユーカリと言われる。近年、ローズガム (Eucalyptus grandis) を中心に製紙パルプ用のチップ生産に使われ輸出もされているが、これによってユーカリの森林破壊が進み、有袋類の生息環境が危機にさらされている。

中華人民共和国広東省広西チワン族自治区海南省などでも、製紙用原料として広く植樹が行われている。ブラジルでは、ミナスジェライス州に本社を持つパルプ製造会社セニブラ社が10万ha以上の自社林にユーカリを植栽し、7年サイクルで伐採を行い自社製品の原料としている。

精油

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ユーカリプタス・ラディアータ

サウザンブルーガムことユーカリプタス・グロブルス英語版から抽出されたユーカリ油英語版は、イギリスで医薬品として認証されており、気道のカタル性炎症(内服、外用)やリウマチの諸症状(外用)に利用される[41]。分泌腺の機能亢進、去痰、おだやかな鎮痙効果・局所的充血作用などの効能があり、のど飴や吸入剤、塗布剤、軟膏、消毒薬などに用いられる。咳を静め痰を減らす効果があるとして、気管支炎インフルエンザなどの時に、吸入などの方法で利用されることもある。

香料としても歯磨きや菓子などに調合されている。また、防腐効果が見られる。

ユーカリ油に含まれる成分はシネオールピネンシトロネラール、など。市販されるユーカリプタス・グロブルス、ユーカリプタス・ラディアータ英語版精油は非常に安価であるため、合成成分の添加などの偽和はほとんど行われない[41]。ユーカリプタス・グロブルス、ユーカリプタス・ラディアータ以外のユーカリ属の精油は、毒物学的な試験は行われていない[41]

禁忌・中毒

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ヒトに外用に用いた場合、一般に毒性・感作性・光毒性はないとされるが、外用した場合に精油成分が呼吸器から吸収される可能性がある。内服や蒸気発生装置などでの利用で中毒が見られ、内服で複数の致死例が報告されている[41]喘息患者の気管支炎を悪化させる可能性がある。特に乳幼児への使用は危険であり、近くでの使用も避けるべきである。アメリカのメリーランド大学のMedical Centerは、6歳未満の幼児に精油を含むのど飴を与えたり、吸入させたり、顔の近くで精油を含む製品を使うこと、また大人が精油を内服するなどは、行うべきでないとして注意を促している[38]。ユーカリは精油・ハーブ共に医師の指導の下で使用すべきであり、特に喘息脳卒中肝臓病腎臓病低血圧、妊娠中、授乳中の人、抗がん剤フルオロウラシルを使用中の人は、医師や植物医学分野の有資格者に相談することなく使用しないよう警告している[38]

緑化

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アルカリ性土壌でも強く育つため、土壌がアルカリ性になっている乾燥地帯の緑化に使われることが多い。また、土壌をアルカリ性から酸性へと移行する。そのため、酸性の土壌に育てた場合、土壌の酸性が強くなりすぎる場合がある。

コアラの食料

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ユーカリを食べるコアラ

ユーカリはコアラの食料として知られる。コアラが食べるユーカリの種類は限られており[42]、新芽のみをエサとする。600種類以上あるユーカリのうち、コアラが食べるのは40種類ほど。それぞれのコアラが食べるのは、生育する地方に生える14種類ほどである[43][44](参照: コアラ#コアラが好むユーカリの種類について)。

木材

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ユーカリのなかには木材としての利用価値のあるものが存在する。オーストラリアでは主要な材木であるという関係上、既に述べたパルプのほか建築用から燃料用に至るまで様々な用途に用いられている[4]。材質は樹種により軽軟-重硬、淡色-濃色と多様であるが、気乾比重0.65-1.10程度で重さが中庸-重硬のものが多い[4]。用いられる樹種の例としてはカリーEucalyptus diversicolor; 心材: 帯赤褐色、気乾比重: 0.88)、ジャラEucalyptus marginata; 心材: 暗赤褐色、平均気乾比重: 0.82)、セイタカユーカリEucalyptus regnans; 気乾比重: 0.62)といったものが挙げられる[27]

脚注

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注釈

[編集]
  1. ^ その標本はロンドン自然史博物館に所蔵されている(BM000081839)。

出典

[編集]
  1. ^ a b Eucalyptus Tropicos
  2. ^ 松山亮蔵「ゆーかり」『植物界之智嚢』中興館書店〈新国民理学叢書 ; 第1編〉、1926年、223頁。NDLJP:979066 
  3. ^ a b c d e Slee, A.V.; Brooker, M.I.H.; Duffy, S.M.; West, J.G. (2020). “Lean about eucalypts”. EUCLID: Eucalypts of Australia (4th ed.). https://apps.lucidcentral.org/euclid/text/intro/learn.htm 2022年10月11日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g h 緒方 (2000).
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  6. ^ 自然発火の仕組み | みんなのひろば | 日本植物生理学会
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参考文献

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日本語:

  • 貴島, 恒夫; 岡本, 省吾; 林, 昭三 (1977). 原色木材大図鑑 (改訂 ed.). 保育社. p. 109 
  • 緒方, 健 (2000). “ユーカリ”. 世界大百科事典 (第2版 (CD-ROM版) ed.). 平凡社. https://kotobank.jp/word/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AA%E5%B1%9E-1431351 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、123頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • エイダン・ウォーカー 総編集、ニック・ギブス、ルシンダ・リーチ、ビル・リンカーン、ジェーン・マーシャル、エイダン・ウォーカー 共著 (2006) 『世界木材図鑑』乙須敏紀 訳、産調出版、95-97頁。ISBN 4-88282-470-1(原書: The Encyclopedia of Wood, Quarto, 1989 & 2005.)

英語:

関連項目

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外部リンク

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