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ニュートン・ガウス線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  ニュートン・ガウス線。対角線の中点L, M, Nを通る。

幾何学において、ニュートン・ガウス線[1](ニュートン・ガウスせん、: Newton–Gauss line, Gauss–Newton line)あるいは単にニュートン線[2]は、完全四辺形英語版の3つの対角線中点を結ぶ直線である。

四角形の2つの対角線の中点を結ぶ直線であるニュートン線とは区別される。四角形の辺を延長して、完全四辺形を作れば、四角形のニュートン線は完全四辺形のニュートン・ガウス線となる。

完全四辺形

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一般の位置英語版にある(どれも平行でないかつ共点でない)4つの四辺形は、完全四辺形英語版を成す。この配置英語版は4本の直線とその6つの交点から成る[3]。この6点のうち任意の2点を端点とする線分が、もと4直線の交点以外で交わるように、6つの交点を3組に分割することができる。この3つの線分を完全四辺形の対角線という。

ニュートン・ガウス線の存在証明

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Labels used in proof concerning complete quadrilateral
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完全四辺形の対角線の中点が共線であることはとても有名な定理である[4]。証明方法も多く存在しており、例えば面積[4]楔積[5]ガウス・ボーデンミラーの定理[1]を用いるものなどがある。ここでは、1920年のHillyerによるメネラウスの定理を用いた証明を紹介する[6]

対角線がAA', BB', CC'であるような完全四辺形ABCA'B'C'について、線分AA', BB', CC',BC, CA', A'Bの中点をそれぞれL, M, N, P, Q, Rとする。明らかにL, Q, Rは共線である。同様にM, R, PN, P, Qも共線であるから、三角形の相似より次の関係式が成立する。

ただし、直線A’B'C ABC' にメネラウスの定理を用いて、3つの式の右辺の積は-1となる。したがって左辺の積は-1となるから、PQRにメネラウスの定理の逆を使用して、点 L, M, Nは共線である。

円に内接する四角形への応用

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BarbuとPatrascuによる、円に内接する四角形から作られる完全四辺形のニュートン・ガウス線を用いた定理を挙げる[7]

等しい角

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図1: 角の等価性。

円に外接する四角形ABCDの対角線AC, BDの交点をF、対辺AB, CDの交点をEEFの中点をNBCの中点をMとする(図1)。

定理

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BFの中点をPとすれば、完全四辺形ABCDEFのニュートン・ガウス線と直線PMによって決定される角PMNEFDと等しい。

証明
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三角形 NPM, △EDF相似を示す。

BEPNFCPMからNPM = ∠EACが分かる。また、である。

円に外接する四角形の性質より、

したがってNPM = ∠EDF

R1, R2EDB, △FCD外接円半径として、正弦定理を使用することにより、

BE = 2 · PNFC = 2 · PMよりPMN, △DFEの相似からNMP = ∠EFD

備考
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FCの中点をQとすれば、同様にしてNMQ = ∠EFAが成立する。

図2:等角共役線。

等角共役線

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定理

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完全四辺形ABCDEFのニュートン・ガウス線のEを通る平行線は、BECにおける直線EF等角共役線である[7]

証明
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三角形EDF, △NPM は相似であるから、DEF = ∠PNMである。完全四辺形ABCDEFのニュートン・ガウス線NMEを通る平行線とBCの交点をE'とする。

PNBENMEE' より、BEF = ∠PNF, FNM = ∠E'EF

したがって、

ニュートン・ガウス線を共有する2つの共円四角形

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図3:四角形MPGN, MQHN は円に内接する。

補題

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GHを、点Fのそれぞれ直線AB,CDにおける直交射影とする。

四角形MPGN, MQHNは円に内接する[7]

証明
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前項で示したように、EFD = ∠PMN。 点PNはそれぞれ直角三角形BFG, △EFG外心であるからPGF = ∠PFGFGN = ∠GFNが成立する。

したがって、

よってMPGNは円に内接する。同様にして、MQHNも円に内接する。

図4:完全四辺形EDGHIJ, ABCDEFはニュートン・ガウス線を共有する。

定理

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GF, HFの延長線は、それぞれEC, EBI, Jで交わるとする。

完全四辺形 EFGHIJ, ABCDEFのニュートン・ガウス線は一致する[7]

証明
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2つの完全四辺形は対角線EFを共有する。Nは双方のニュートン・ガウス線上に位置する。四角形EGFHが円に内接することと、その円の中心がNであることより、NG,H等距離英語版である。

GMP, △HMQ合同ならば、MHG垂直二等分線上に位置するから、 直線MNは線分GHの中点を含むみ、完全四辺形EFGHIJのニュートン・ガウス線となる。

GMP, △HMQの合同を示す。BF, BCの中点がM, Pであることより、PMQF平行四辺形である。

したがって

更に、

よって、

したがって、二辺夾角相等よりGMPHMQは合同。

備考
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GMP, △HMQが合同であることから、 MPGN, MQHNの外接円も合同である。

他の性質

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歴史

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ニュートン・ガウス線はアイザック・ニュートンカール・フリードリヒ・ガウスの名を冠する[要出典]。この定理の最初の枠組みはニュートン線における定理、ニュートンの定理であり、ニュートンは四角形に内接する円錐曲線の中心はニュートン・ガウス線上にあることを示した[9]

ガウスとボーデンミラー(Bodenmiller)は、完全四辺形の対角線を直径とする3つの円は共軸であることを示した(ガウス・ボーデンミラーの定理)[10]

出典

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  1. ^ a b Evan Chen 著、兒玉太陽, 熊谷勇輝, 宿田彩人, 平山楓馬 訳『数学オリンピック幾何への挑戦 ユークリッド幾何学をめぐる船旅』日本評論社、2023年3月10日、274頁。ISBN 9784535789784 
  2. ^ a b 窪田忠彦『幾何学の基礎 第3版 (岩波全書 ; 第104)』岩波書店、1946年、102頁。doi:10.11501/1211294 
  3. ^ Alperin, Roger C. (6 January 2012). “Gauss–Newton Lines and Eleven Point Conics”. Research Gate. 2024年11月16日閲覧。
  4. ^ a b Johnson 2007, p. 62
  5. ^ Pedoe, Dan (1988) [1970], Geometry A Comprehensive Course, Dover, pp. 46–47, ISBN 0-486-65812-0 
  6. ^ Johnson 2007, p. 152
  7. ^ a b c d Patrascu. “Some Properties of the Newton–Gauss Line”. Forum Geometricorum. 29 March 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。29 April 2019閲覧。
  8. ^ 森本清吾『初等幾何学』朝倉書店、1953年、50,76頁。NDLJP:1372292 
  9. ^ Wells, David (1991), The Penguin Dictionary of Curious and Interesting Geometry, Penguin Books, p. 36, ISBN 978-0-14-011813-1, https://archive.org/details/penguindictionar0000well/page/36 
  10. ^ Johnson 2007, p. 172

参考文献

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外部リンク

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