チドリノキ
チドリノキ | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
雄花序 福島県会津地方 2012年5月
| ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||
Acer carpinifolium Siebold et Zucc. (1845)[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
チドリノキ(千鳥の木)、ヤマシバカエデ[1] | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Hornbeam Maple |
チドリノキ(千鳥の木[2]、学名: Acer carpinifolium)はムクロジ科[注 1]カエデ属の落葉小高木ないし落葉高木。日本固有種で、山地の沢沿いなどに生える。雌雄異種。別名、ヤマシバカエデ。
名称
[編集]和名「チドリノキ」は、実に翼があり、その形を千鳥(ちどり)が飛ぶ様子に見立てて名付けられたものである[3][2]。別名で「ヤマシバカエデ」ともよばれる[1]。
分布と生育環境
[編集]日本固有種。本州の岩手県以南、四国および九州に分布し、温帯の山地の沢沿いに生育する[3]。山形県以北の日本海側にはなく、北陸地方には少ない[4]。
特徴
[編集]落葉広葉樹の小高木[2]から高木で[3]、樹高は8 - 10メートル (m) になる。樹皮は黒赤色、あるいは暗灰色で滑らかである[3][4]。一年枝は、灰褐色や紫褐色をしている[4]。
葉は花がつく枝に1対、花のつかない枝に1 - 5対、対生する[2]。葉身は、長さ8 - 13センチメートル (cm) 、幅2.5 - 5.5 cmの卵状長楕円形で、先端は尾状に鋭くとがり、基部は浅心形から円形になり、葉縁は大小の二重鋸歯になる[3][2]。若葉の表面の葉脈上と裏面全体に伏軟毛があるが、成葉では裏面の葉脈上だけに残る。側脈は平行して18 - 25対あり、カバノキ科のサワシバやクマシデの葉に似る[2]。葉柄は長さ0.5 - 2 cmあり、花時には軟毛がある。秋に紅葉し、黄色に染まってから次第に褐色を帯びる[2]。秋に紅葉した後は、そのまま落葉せずに枯れ葉をつけたまま越冬することが多い[3]。
花期は4 - 5月ごろ[3][4]。雌雄異種[3]。長さ5 - 10 cmの総状花序を有花枝の先端から下垂させる。花は淡緑色で4数性[3]。雄花序は花が15個内外つき、花柄は長さ5 - 10ミリメートル (mm) 、萼片は4個まれに5個で、長さ3.5 - 7 mmになる楕円形、雄花に花弁はなく[3]、雄蕊は4 - 10個で萼片より短い。雌花序は花が3 - 7個つき、花柄は長さ1 - 3 cm、萼片は長さ4 - 7 mm、花弁は萼片とほぼ同長、退化雄蕊は長さ1.5 mm、萼片より短い。子房には全体に白色の長軟毛があり、花柱は長さ3 mmで2裂し、花後6 - 8 mmに伸びる。
果期は8 - 9月。果実は翼果で、分果の長さは2.5 - 3 cmになり、翼果はほぼ直角から鈍角に開く。
冬芽は長さ5 - 10 mmになる卵形の鱗芽で、先端はとがり、紫紅色をしている[4]。鱗片(芽鱗)は8 - 12対あり、瓦重ね状に並び、基部に毛があって、芽鱗の縁は色が淡い[4]。枝先に仮頂芽を2個、ときに1個つけ、側芽は枝に対生する[4]。葉痕はV字形やU字形で上に毛があり、維管束痕が3個つく[4]。鱗片葉は長さ6 - 7 cmになるへら形で、赤みを帯び、葉が展開した後落ちる。
カバノキ科のサワシバ(学名: Carpinus cordata var. cordata)と葉が似ているが、チドリノキは冬でもよく残り、樹皮が滑らかで、冬芽が対生するので見分けられる[4]。
利用
[編集]材は、装飾用の建築材や器具材、薪炭として利用される[3]。また、庭木として植栽される。
下位分類
[編集]- オオバチドリノキ Acer carpinifolium Siebold et Zucc. f. magnificum Sugim. - 葉が大きく、葉身の長さ20cmになるもの。オオバヤマシバカエデともいう。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、114頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、252頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本Ⅱ』平凡社、1989年2月。ISBN 4-582-53505-4。
- 茂木透 写真、石井英美ほか、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花:離弁花 2』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 4〉、2000年10月。ISBN 4-635-07004-2。
- 猪狩貴史『カエデ識別ハンドブック』文一総合出版、2010年11月。ISBN 978-4-8299-1175-4。