コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ダルバート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
伝統的なダルバート
ダンプスのホテル「ムーンライト」(ANU GUEST HOUSEに改称)のダルバート。
ネパールカトマンズタメルのインヤンレストランのダルバート

ダルバートネパール語दालभात dālbhāt、ダルバットとも)は、ネパールの代表的な家庭料理で、ダル(daal=挽割り豆のスープ)とバート(bhaat=米飯)の合成語であり、それにカレー味の野菜などのおかず(タルカリー)、漬物アツァール)の2つを加えた4つがセットになった食事をいう。ネパールでは毎日食べられている、日本でいう定食にあたるものである[1]

概要

[編集]

日本でいえば、「味噌汁ご飯副食」の組み合わせにあたるもので、ネパールで普通「料理」といえばダルバートを指す。ネパール料理は一般に、ターメリッククミンコリアンダーなど各種スパイスを使ったカレー味が基本である。インドほど唐辛子は使わないので、ややマイルドであっさりしている。特にダルはマイルドであり、辛い料理との相性がいい[1]

ダル(daal)は、小粒のを使ったスープ。さらっとしており、米飯にかけて指先で混ぜ込んで食べるのが普通である。ネパールは300種類にも及ぶ豆を料理に使うため、ダルが食事の主役といっても過言ではない。レンズマメキマメ黒豆リョクトウケツルアズキなどがよく食べられる[1]

バート(またはバット)(bhaat)は、ライス(米)を意味する。バスマティと呼ばれるインディカ米(長粒種米)であり、細長くパサパサしている。ネパールでは、白米以外の主食として、ディロ(トウモロコシシコクビエなどの粉を熱湯で練ったもの)やローティパン)も食べられる[1]

タルカリー(tarkaarii)はおかずである。炒めた野菜やカレー(野菜が主)などで、ジャガイモカリフラワーニガウリサヤインゲンなどがよく使われる。店によっては素材を日替わりにして、飽きないように工夫を凝らしている。ときに別に肉料理などもつくこともあるが、一般家庭では稀であり、週に一度くらいしか食べない。おかずがない場合はダルとバートだけの組み合わせになることもある。最低ダルとバートだけは入るため、ダルバートと呼ばれ、名の由来ともなっている[1][2]

サーグ(またはサグ)(saag)は、青菜の炒め物の総称。主にカラシナが使われるが、季節や地域によってはホウレンソウとなることもある。

以上のものに、アツァール(またはアチャール、アチャル)(acaar)と呼ばれる辛口の漬物、薬味がつくのが一般的である。アツァールには大根ジャガイモなどがよく使われ、乾燥させたグリーンピース、ティンブール(tinbur サンショウ)、 焦がしたフェヌグリークなどの風味が入り混じる。その他、クルサーニ(खोर्सानी khorsāni) という小型激辛青唐辛子が薬味としてつくこともある。料理の辛みが足りないときは、これを生で齧りながら食べる。

食事全体としては大変に栄養のバランスが取れている[1]

スパイス

[編集]
スパイス(インド食材輸入会社の倉庫)
カトマンズ・タメル地区のレストラン。ほとんどのネパールのレストランではダルバートが食べられる。
ネパールではダルバートはどこのレストランでも食べられる(ポカラのレストラン)

おかずであるタルカリ(tarkaarii)には、スパイスマサラ)が使われ、日本でいうカレーにあたるが、肉は滅多に使われず、野菜が中心である。ジャガイモ、タケノコなどもよく使われる。以下にタルカリに使われる代表的なスパイスを上げるが、中でもよく使われるのは、ベサール(ウコン)、ラッスン(ニンニク)、モリジ(黒コショウ)、アドゥア(ショウガ)、クルサニ(トウガラシ)などである[1]。料理に便利な様々なスパイスをあらかじめ調合したミックスマサラ(ミックススパイス)もあり、「ガラムマサラ」などがその代表的なもの。その他、「カレーパウダー」、「チキンマサラ」、「野菜マサラ」などもネパールの食料品店やスーパーでは市販されている[2]


「ガチネパ」との関連

[編集]

ダルバートは家庭料理であるがゆえに、インド料理店で働いてきたネパール人料理人の中には、そのような料理を出しても売れず、プライドにかかわると考えていたものすらいた[3]。ある時、新大久保のネパール料理店が留学生たちのためにダルバートを提供したところ評判を呼んだ[注釈 1][3]。やがて500円でダルバートを提供する店も出てくるようになったことで、日本人客の注目も集めるようになった[3]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ まかない料理のある飲食店とは違い、語学学校や専門学校には学生食堂がないため、留学生はどうしても外食が必要だった[3]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g 『地球の歩き方 ネパール』D29 2007-2008版
  2. ^ a b ネパール料理教室 特定非営利活動法人ヒマラヤ保全協会
  3. ^ a b c d 山根祐作;小林真樹 (2024年9月20日). “プライドが許さなかった「ガチネパ」の誕生 トレンド最前線は日本に:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2024年9月27日閲覧。

外部リンク

[編集]