タゲリ
タゲリ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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タゲリ Vanellus vanellus
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Vanellus vanellus (Linnaeus, 1758)[2][3][4] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
タゲリ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Northern lapwing[2] |
タゲリ(田鳧、田計里、学名:Vanellus vanellus)は、チドリ目チドリ科タゲリ属に分類される鳥類の一種。タゲリ属の模式種。
分布
[編集]夏季にユーラシア大陸の中緯度の広範囲の地域で繁殖し、冬季はアフリカ大陸北部やユーラシア大陸南部等で越冬する。2011年3月27日にモンゴル国から飛来したカラーフラッグの足環(2008年7月31日に装着されたもの)が取り付けられた個体が、日本の石川県加賀市の柴山潟で確認された[5]。
日本には冬季に越冬のため本州に飛来し(冬鳥)、中部地方や関東地方北部で繁殖した記録もある[6]。北海道と東北地方北部では旅鳥[7]。
形態
[編集]全長が32 cm[7][8]、翼開長が約72 cm[6]。同属のケリよりもひとまわり小さい。背面は光沢のある暗緑色、腹面は白い羽毛で覆われる。足は赤黒い[7]。
頭部には黒い冠羽が発達する。頸部には黒い首輪状の斑紋が入る。雌雄ほぼ同色[7][8]。メスは頭部と胸部の黒い部分に褐色を帯びて、オスは夏羽の喉部が黒い[6]。
-
頭部の後ろに冠羽が長く延びる
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巣と卵
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幼鳥
生態
[編集]河川、湿地、干潟、水田等に生息する[6]。冬季は小規模な群れを形成し生活する。見通しのよい開けた場所におり、警戒心が強い。
食性は動物食で、昆虫類、節足動物、ミミズ等を食べる[6]。足で地面をたたいたり揺するようにして、ミミズなどを地表におびき出して捕食することがある[7][8]。
繁殖形態は卵生。繁殖期にはペア毎に縄張りを形成するが、緩く集団営巣することもある。地面に窪みを掘り枯草を敷いた巣に、3-7月に1回に4個の卵を産む。主にメスが抱卵し、抱卵期間は25-34日。雛は生後29-42日程で飛翔できるようになり独立する。
「ミュー ミュー」とネコのような声で鳴く[6]。この鳴き声から、英語で「Pee Wee」という別名がある。飛び立つ時に鳴くことが多い[8]。フワフワとした飛び方をする[6][8]。
人間との関係
[編集]卵も含めて食用とされる。ベルギーやオランダでは、古くから本種の卵を食用としていたが、近年、種の保護のため採取が禁止された。
種の保全状況評価
[編集]個体数は減少傾向にあり国際自然保護連合(IUCN)により、2004年からレッドリストの軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。
日本では以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[9]。神奈川県茅ヶ崎市西久保ではタゲリの越冬地である田んぼの環境を保全するために、「湘南タゲリ米」というブランドで米を販売している[10]。
- 絶滅危惧II類 - 東京都、神奈川県[11]、三重県[12]、
- 準絶滅危惧 - 埼玉県(近年越冬する群れの数が著しく減少している。)[14]、静岡県、大阪府(宅地開発などで生息地が消滅している。)[15]、鳥取県(県北部で越冬する個体数が減少している。)[16]、高知県、福岡県[17]
- その他
タゲリ属
[編集]タゲリ属(Vanellus Brisson, 1760)は、チドリ目チドリ科の1属[20]。以下の24種に分類されている[3][21][22]。日本にはタゲリとケリの2種が分布する[23]。タゲリに形態が似た種は、ナンベイタゲリ(Vanellus chilensis、英名:Southern Lapwing)である。国際自然保護連合(IUCN)により、多くの種が軽度懸念(LC)の指定を受けている[24]
- Vanellus vanellus (Linnaeus, 1758) - タゲリ
- Vanellus crassirostris (Hartlaub, 1855) - レンカクゲリ
- Vanellus armatus (Burchell, 1822) - シロクロゲリ
- Vanellus spinosus (Linnaeus, 1758) - ツバメゲリ
- Vanellus duvaucelii (Lesson, 1826) - カタグロツバメゲリ
- Vanellus tectus (Boddaert, 1783) - ズグロゲリ
- Vanellus malabaricus (Boddaert, 1783) - キトサカゲリ
- Vanellus albiceps (Gould, 1834) - シロガシラトサカゲリ
- Vanellus lugubris (Lesson, 1826) - シロビタイゲリ
- Vanellus melanopterus (Cretzschmar, 1829) - ハグロゲリ
- Vanellus coronatus (Boddaert, 1783) - オウカンゲリ
- Vanellus senegallus (Linnaeus, 1766) - トサカゲリ
- Vanellus melanocephalus (Rüppell, 1845) - ムナフタゲリ
- Vanellus superciliosus (Reichenow[25], 1866) - チャムネトサカゲリ
- Vanellus cinereus (Blyth, 1842) - ケリ
- Vanellus indicus (Boddaert, 1783) - インドトサカゲリ
- †Vanellus macropterus (Wagler, 1827) - ジャワトサカゲリ、絶滅した種。
- Vanellus tricolor (Vieillot, 1818) - ムナオビトサカゲリ
- Vanellus miles (Boddaert, 1783) - ズグロトサカゲリ
- Vanellus gregarius (Pallas, 1771) - マミジロゲリ
- Vanellus leucurus (Lichtenstein, 1823) - オジロゲリ
- Vanellus cayanus (Latham, 1790) - マダラゲリ
- Vanellus chilensis (Molina, 1782) - ナンベイタゲリ
- Vanellus resplendens (Tschudi, 1843) - アンデスツメバゲリ
-
タゲリ
V. vanellus -
レンカクゲリ
V. crassirostris -
シロクロゲリ
V. armatus -
ツバメゲリ
V. spinosus -
カタグロツバメゲリ
V. duvaucelii -
ズグロゲリ
V. tectus -
キトサカゲリ
V. malabaricus -
シロガシラトサカゲリ
V. albiceps -
シロビタイゲリ
V. lugubris -
ハグロゲリ
V. melanopterus -
オウカンゲリ
V. coronatus -
トサカゲリ
V. senegallus -
ムナフタゲリ
V. melanocephalus -
チャムネトサカゲリ
V. superciliosus -
ケリ
V. cinereus -
インドトサカゲリ
V. indicus -
ジャワトサカゲリ
†V. macropterus -
ムナオビトサカゲリ
V. tricolor -
ズグロトサカゲリ
V. miles -
マミジロゲリ
V. gregarius -
オジロゲリ
V. leucurus -
マダラゲリ
V. cayanus -
ナンベイタゲリ
V. chilensis -
アンデスツメバゲリ
V. resplendens
脚注
[編集]- ^ a b “IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2. (Vanellus vanellus (Linnaeus, 1758)” (英語). IUCN. 2012年3月18日閲覧。
- ^ a b “Vanellus vanellus Linnaeus, 1758” (英語). ITIS. 2012年3月18日閲覧。
- ^ a b “IOC World Bird List 3.2 (Shorebirds & allies)” (英語). 国際鳥類学会議(IOC). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “Northern Lapwing (Vanellus vanellus) (Linnaeus, 1758)” (英語). バードライフ・インターナショナル. 2013年1月14日閲覧。
- ^ “カラーフラッグ付きのタゲリ 一般の方の撮影でモンゴルとの渡り判明” (PDF). 山階鳥類研究所 (2011年8月29日). 2013年1月14日閲覧。
- ^ a b c d e f g ひと目でわかる野鳥 (2010)、91頁
- ^ a b c d e 山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥 (2006)、216-217頁
- ^ a b c d e 水辺の鳥 (2002)、110-111頁
- ^ “日本のレッドデータ検索システム「タゲリ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年1月14日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
- ^ “生きものマーク米一覧” (PDF). 農林水産省. pp. 7 (2010年4月23日). 2013年1月14日閲覧。
- ^ 2010年に茅ヶ崎市、高座郡寒川町、藤沢市でタゲリの一斉調査を行われた。
- ^ “三重県レッドデータブック2005・タゲリ”. 三重県 (2005年). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “千葉県レッドデータブック動物編(2011年改訂版)” (PDF). 千葉県. pp. 100 (2011年). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “埼玉県レッドデータブック2008動物編” (PDF). 埼玉県. pp. 95 (2008年). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “大阪府レッドデータブック・タゲリ”. 大阪府 (2000年3月). 2012年12月13日閲覧。
- ^ “レッドデータブックとっとり (動物)” (PDF). 鳥取県. pp. 56 (2002年). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “福岡県の希少野生生物 RED DATA BOOK 2011 FUKUOKA・タゲリ”. 福岡県 (2011年). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “青森県レッドデータブック(2010年改訂版)” (PDF). 青森県. pp. 204 (2010年). 2013年1月14日閲覧。
- ^ “動物レッドリスト(2012年改訂版)” (PDF). 群馬県. pp. 2 (2012年). 2013年1月14日閲覧。 - 2002年の「注目」から2012年に「情報不足」に変更。
- ^ “Vanellus Brisson, 1760” (英語). ITIS. 2013年1月14日閲覧。
- ^ “Search for Vanellus” (英語). バードライフ・インターナショナル. 2013年1月14日閲覧。
- ^ “動物の輸入届出制度について - 届出書 - 届出対象動物の種類名リスト(鳥類スズメ目以外のもの)”. 厚生労働省. 2013年1月15日閲覧。
- ^ ひと目でわかる野鳥 (2010)、91-92頁
- ^ “IUCN 2012. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2012.2. (Search Results for Vanellus)” (英語). IUCN. 2013年1月14日閲覧。
- ^ Anton Reichenow (1847–1941) Ornithologist and Herpetologist or エドゥアルト・ライヒェナウ (1883-1960) 原生動物学者
参考文献
[編集]- 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、87頁。
- 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥類II』、平凡社、1986年、156頁。
- 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、53頁。
- 高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-水辺の鳥』山と溪谷社、2002年2月1日。ISBN 4635063321。
- 叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』(第2版)山と溪谷社、2006年10月1日。ISBN 4635070077。
- 中川雄三(監修) 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325。
関連書籍
[編集]- 七尾純、むかいながまさ『タゲリ舞う里に』あかね書房〈あかねノンフィクション13〉、2002年11月。ISBN 4251039130。