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シナトネリコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シナトネリコ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 維管束植物 Tracheophyta
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: シソ目 Lamiales
: モクセイ科 Oleaceae
: トネリコ属 Fraxinus
: シナトネリコ F. chinensis
学名
Fraxinus chinensis Roxb.
シノニム
  • Fraxinus densata Nakai
  • Fraxinus szaboana Lingelsh.
  • Fraxinus rhynchophylla Hance var. densata (Nakai) Y. N. Lee
和名
シナトネリコ
英名
Chinese ash[1]

シナトネリコ(支那梣、学名Fraxinus chinensis)は、モクセイ科トネリコ属の植物の一種。中国では白蝋樹(はくろうじゅ、パイラーシュー[注釈 1])と呼ぶ[2]。伝統的な中国医学では樹皮を秦皮(しんぴ)と呼び、痢疾に対する処方とする[2][3]

形態

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落葉喬木で、樹高は 10–12 mに達する[2][4]。樹皮は灰褐色で縦に裂ける[2][4]。奇数羽状複葉でその長さは15–25cm、葉柄は4–6cm[2][4]。葉軸は真っ直ぐ張り、上面には浅い溝がある[2][4]。小葉は通常5–7枚、倒卵長円形から披針形、葉縁は整正鋸歯である[2][4]。円錐花序は頂生および側生し、長さ8–10cm、下垂する[2][4]。4–5月にかけて開花し、7–9月にかけて披針形で扁平な翼果をつける[2][4]雌雄異株で、雄花と雌花は別の個体に生じる[5][2][4]。雄花は密集し、萼は小さく釣り鐘状、長さは約1mm、花冠はなく、葯は花糸と同等の長さ[2][4]。雌花はまばらで萼は大きく桶状、長さは2–3mm、浅く4裂し、花蕊は細く長く、柱頭は2裂する[2][4]

分布

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ベトナム、朝鮮半島および中国大陸の南北各省に分布し、海抜 800 m–1,600 mの地域に生育する[2][4]。湿潤を好み[6]、成長が早く[4]、山地の雑木林の中に多く生える[2][4]。中国での栽培の歴史は古く、分布も広い[4]。特に中国西南部各省での栽培が最も盛んである[4]。貴州省西南部の山間部の栽培種は枝葉が特に広く大きく、常に山地にあって半野生状態を呈する[4]

用途

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シナトネリコの材は強靭で[4]、家具、農具、荷車、合板などの製造に適している[6]。樹皮は、中国伝統医学において秦皮(しんぴ、チンピー[注釈 2])と呼ばれ、内服では解熱、下痢、長血・おりものに、外用では目の充血・腫れ・痛み・かすみ目・角膜混濁に処方される[2][3]。主成分はエスクレチンおよびフラキセチン[2]

中国では、白蝋虫(イボタロウムシ)を接種して養殖し、白蝋(イボタ蝋)を採集する[4]。白蝋樹の名はここに由来する。またシナトネリコは、痩せ地や旱魃に耐え、軽度の塩鹹地でも生育することができ[6]、成長も早い[4]ため、砂漠緑化における固砂樹種に適している[6]

亜種など

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  • チョウセントネリコ Fraxinus chinensis ssp. rhynchophylla (Hance) E. Murray
    • コウリョウトネリコ Fraxinus rhynchophylla Hance var. densata (Nakai) Y. N. Lee
コウリョウトネリコは朝鮮半島の固有種で、和名の「コウリョウ」は、大韓民国抱川(ポチョン)市にある「光陵の森」[注釈 3]で初めて発見・報告されたことにちなむ[7]
コウリョウトネリコのスケッチ(1932年)。この時は独立した新種として、Fraxinus densata と学名が記されている。[8]

脚注

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注釈

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  1. ^ 簡体字: 白蜡树; 繁体字: 白蠟樹; 拼音: báilàshù; 注音: ㄅㄞˊ ㄌㄚˋ ㄕㄨˋ
  2. ^ 拼音: qínpí; 注音: ㄑㄧㄣˊ ㄆㄧˊ
  3. ^ 植民地時代には林業試験場があり、現在は国立樹木園として整備され、ユネスコ生物圏保存地域にも指定されている。

出典

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  1. ^ "Fraxinus chinensis". Natural Resources Conservation Service PLANTS Database. USDA. 2016年10月27日閲覧
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 中医薬学院 (2007年). “白蠟樹 Bailashu” (中国語). 香港浸会大学図書館. 藥用植物圖像數據庫. 香港浸会大学. 2021年8月14日閲覧。
  3. ^ a b 中医薬学院 (2021年). “秦皮 Qinpi” (中国語). 香港浸会大学図書館. 中藥材圖像數據庫. 香港浸会大学. 2021年8月14日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 白蜡树 Fraxinus chinensis” (中国語). iPlant.cn 植物智. 《中国植物志》第61卷 (1992). 中国科学院植物研究所 系统与进化植物学国家重点实验室 植物图像与智能识别平台. p. 植物志 (2019年). 2021年8月14日閲覧。
  5. ^ Wallander, Eva (2008). “Systematics of Fraxinus (Oleaceae) and evolution of dioecy”. Plant Systematics and Evolution 273 (1–2): 25–49. doi:10.1007/s00606-008-0005-3. 
  6. ^ a b c d 白蜡树(木犀科植物)” (中国語). Baidu百科. 2021年8月14日閲覧。
  7. ^ 이소희 (2013年). “물푸레나무” [トネリコ] (朝鮮語). デジタル抱川文化大典. 抱川市. 2021年8月15日閲覧。
  8. ^ 朝鮮総督府林業試験場 編「四 植物區景(寫眞九葉添附)/(イ) 自生植物目錄」『光陵試験林の一班』朝鮮総督府林業試験場、1932年、52頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1232676/47 
  • Bensky, D., Clavey, S., Stöger, E., Gamble, A., Bensky, L. L., & Martin-Kagartsang, J. (2016). Materia Medica (3rd ed.). Schiedlberg: BACOPA.
  • Shou-Zhong, Y., Flaws, B., & Shou-Zhong, Y. (1998). The divine farmer's Materia Medica: A translation of the "Shen Nong Ben Cao Jing." United States: Blue Poppy Press.