塵埃を踏み歩くもの
『塵埃を踏み歩くもの』(じんあいをふみあるくもの、原題:英: The Treader of the Dust)は、アメリカ合衆国のホラー小説家クラーク・アシュトン・スミスによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話関連作品で、『ウィアード・テールズ』1935年8月号に掲載された。
東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて、「オリジナルの魔道書『カルナマゴスの遺言』と魔物クアキル・ウッタウスの妖異が描かれる」と解説している。[1]
神クァチル・ウタウスが登場するが、クトゥルフ神話として描かれた作品ではなく、またアヴェロワーニュやゾティークとも関係がない、独立した作品であった[注 1][2]。しかし、リン・カーターによって、文献「カルナマゴスの遺言」が「エイボンの書」と共に古代の魔術師の墓から発見されたとされ、後付けでクトゥルフ神話に導入される[3]。その後、この神と文献はTRPGにも導入される。
ジョセフ・ペイン・ブレナンの小説『The Keeper of the Dust』には、カ=ラースという神が登場し、この神はクァチル・ウタウスによく似ている。ブレナンは1952年にウィアード・テールズでデビューした作家であり、当作品もアーカムハウスの単行本に収録されている。
あらすじ
[編集]魔術師カルナマゴスは、古代の魔術師がクアキル・ウッタウスと呼んでいたある神性の召喚法を書物に記録する。
オカルト研究家であるジョン・シバスチャンの周りでは、周囲の物が老朽化して崩壊する怪事象が相次いでいた。彼自身も急に老け込んだような感じがし、漠然とした不安に駆られて家を飛び出す。三日後、錯覚だろうと思い返したシバスチャンは帰宅し、老使用人のティマーズがいないことに気づく。シバスチャンが書斎に入ると、古書「カルナマゴスの遺言」がページを開かれたまま置かれ、部屋の物全てが不可解なほどに埃にまみれていた。シバスチャンは、ティマーズが本を読んで、自分がかねてより警戒していたクアキル・ウッタウスを召喚してしまったことを理解する。逃げ出したいが、体がもはや動かず、シバスチャンは崩壊して塵となる。そこへクアキル・ウッタウスが現れ、シバスチャンの成れの果てである塵埃の上に、足跡を残していく。
主な登場人物
[編集]- ジョン・シバスチャン - 主人公。オカルト研究家。
- ティマーズ - 老使用人。ギリシア語が読める。
- カルナマゴス -いにしえの邪悪な賢者。 「カルナマゴスの遺言」という書物を残した。
用語
[編集]- Quachil Uttaus / クアキル・ウッタウス / クァチル・ウタウス
- 幼児のミイラのような姿をした邪神。あらゆるものを老朽化して崩壊させる。「塵埃を踏み歩くもの」の異名をとる。
- J・P・ブレナンの作品に登場する神Ka-Rath(カ=レト / カ=ラース)はよく似ている。
- カルナマゴスの遺言 / カルナマゴスの誓約
- ギリシア語で書かれた書物。原本は失われ、2冊の写本が作られたが、1冊は宗教裁判で処分され、最後の1冊をシバスチャンが入手した。
収録
[編集]関連作品
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 邦訳は文庫『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』に収録されているが、本短編自体はアヴェロワーニュ作品ではなく、広義の降霊術を扱った「降霊術綺譚」に仮カテゴリされている。