コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ロイガーとツァール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ロイガーLloigor)とツァールZhar)は、クトゥルフ神話に登場する架空の神性。旧支配者、双子神。風の精[1]

オーガスト・ダーレスによって生み出された。初出は、ダーレスがマーク・スコラーとの共著で『ウィアード・テイルズ』1932年8月号に発表した短編『潜伏するもの』(原題:The Lair of the Star-Spawn)。

概要

[編集]

旧神に封印され、ミャンマーの奥地にあるというスン高原の古代都市、アラオザルの地下に閉じ込められている。矮人種族チョー・チョー人が、双子神を崇拝している。復活しかけるも、旧神と星の戦士たちによって滅ぼされる。同作において、ロイガーの姿は長い触手を持った巨大な緑の肉塊であると描写されている。ツァールの姿の描写はない。

双子神であるが、作中での扱いが平等ではない。描写されるのはロイガーのみであり、ツァールは登場すらしない。資料によっては、ツァールのほうがより強大であるとの記述も見られる[2][注 1]が、初出たる『潜伏するもの』フォ=ラン博士のセリフは、文脈上敵へのハッタリとして発したものという側面が強く、双子神の真の関係性は不明である。

さらに『サンドウィン館の怪』にて、ロイガーが再登場する。双子神の片割れが死んでいなかった、とすれば筋が通る[注 2]。また本作から四大霊の風の精に位置付けられるようになる。本作においては、深きものども(水の眷属)に使役され、密室にほんの隙間から侵入して標的の人物を連れ去る。風(大気)属性の「他者をバラバラにして大地から引きはがすことができる」能力を披露した。術者が「クトゥルフイタカをも退ける」と豪語する防御陣を、ロイガーは難なく破ってみせた。

双子神はうしかい座アルクトゥールスに関連ある存在として描写される。『サンドウィン館の怪』においては、ロイガー召喚の条件の一つが、アルクトゥールスが天空に見えることである。また『闇に棲みつくもの[3]では、ウムル・アト=タウィルがツァールをアルクトゥールスから召喚するという説明がある。アルクトゥールスに棲んでいるとされることもある[1]。アルクトゥールスはツァールたちの故郷であるともされている[4]

テーブルトークRPGの『クトゥルフ神話TRPG』では、ツァールとロイガーはまったく同じ能力を持っていると設定されている[5]

日本では風見潤の『クトゥルー・オペラ』に登場する。アルクトゥールスの惑星に封印されていた。それぞれN極単独とS極単独の磁気単極子生命体であり、異形のヒューマノイド姿をしている。

リン・カーターの『陳列室の恐怖』によると、ハスターシュブ=ニグラスの子がイタカ、ロイガー、ツァールとされる。この系譜は風見潤も採用している。

登場作品

[編集]

ロイガー族

[編集]

コリン・ウィルソンの『ロイガーの復活』には、ロイガーと呼ばれる非物種族が登場する。アンドロメダ星雲から宇宙の風に乗って地球に飛来したという。旧支配者であるロイガーと、このロイガー族の関係は明らかではない[8]。『クトゥルフ神話TRPG』では両者を別個の存在として扱っている[9]

なおロイガー族の異称をガタノトーアという。『ウルトラマンティガ』には、超古代先兵怪獣ゾイガー、超古代怨念翼獣シビトゾイガーが登場する。ゾイガーは、邪神ガタノゾーアの眷属である。

フレッド・ペルトンの設定では、ロイガーノス(盲目のもの、空飛ぶポリプ)はロイガーとツァールに仕える眷属種族とされる。

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

【凡例】

  • クト:青心社文庫『暗黒神話大系クトゥルー』、全13巻
  • 新ク:国書刊行会『新編真ク・リトル・リトル神話大系』、全7巻

注釈

[編集]
  1. ^ クトゥルー神話辞典では「齢をかさねている」ともあるが、真クの訳では「ロイガーよりも偉大」としか書かれていないので、東氏の勘違いの可能性もある。
  2. ^ 『潜伏するもの』のフォ=ラン博士は、世間からは殺されたと思われていたが連れ去られて人外種族の協力者にさせられていたという設定の人物であり、理由は「弟の死体が身代わりに残されていたから」。
  3. ^ かつてアルクトゥールスを周回していた二重星キタミールの生物は、ツァトゥグァを崇拝する(銀の鍵の門を越えて)。

出典

[編集]
  1. ^ a b クト13『クトゥルー神話用語集』フランシス・T・レイニイ、337ページ。
  2. ^ 学研『クトゥルー神話事典 第三版』東雅夫、195ページ。
  3. ^ クト4『闇に棲みつくもの』オーガスト・ダーレス
  4. ^ エンサイクロペディア・クトゥルフ英語版』ダニエル・ハームズ、「ツァール」173ページ。
  5. ^ 『マレウス・モンストロルム』スコット・アニオロフスキーほか「ツァールとロイガー、双子のひわいなるもの、星を歩くもの」191ページ。
  6. ^ クト8『潜伏するもの』/新ク2『羅睺星魔洞』オーガスト・ダーレス&マーク・スコラ―
  7. ^ クト3『サンドウィン館の怪』オーガスト・ダーレス
  8. ^ 学研『クトゥルー神話事典 第三版』東雅夫、311ページ。
  9. ^ 『マレウス・モンストロルム』スコット・アニオロフスキーほか「ロイガー、触手のある支配者」121ページ。