ゾティーク
ゾティーク、またはゾシーク (ZOTHIQUE) は、クラーク・アシュトン・スミスの小説の舞台の一つである遠い未来の大陸の名、およびそれを舞台とする小説群のシリーズ名。
概要
[編集]スミスの作品中、作品点数と規模において最も大きな部分を占めるものである。ファンタジージャンルに属するもので、より詳しい分類によれば「終末もの」および「ダイイング・アースもの」に分類される。
未来の或る時期において海から隆起した大陸であるとされる。現代から遥かな時間が経過して太陽の力は弱くなり、地球は老いて科学文明が滅び、太古の魔法が復活した世界である事が特徴。大瀧啓裕はスミスの作品の中でも「スミスがこよなく愛したもの」[1]としている。また、1953年11月3日付けのL・スプレイグ・ディ・キャンプへの手紙でスミスは次のように記している。
作品一覧
[編集]「ゾティーク」シリーズには16の短編、1つの戯曲[3]、および未完成原稿や草稿が存在する。以下は邦訳のあるもの。
- ゾティーク(詩) / Zothique / The Dark Chateau And Other Poems, 1951
- 降霊術師の帝国 / The Empire of the Necromsncers / WT1932/09
- 拷問者の島 / The Isle of the Tortures / WT1933/03
- 死体安置所の神 / The Charnel God / WT1934/03
- 暗黒の魔像 / The Dark Eidolon / WT1935/01
- エウウォラン王の航海 / The Voyage of King Euvoran / 1933年の私家版『二重の影その他の幻想』、WT1947/09(短縮版)[4]
- 地下納骨所に巣を張るもの / The Weaver in the Vault / WT1934/01
- 墓の落とし子 / The Tomb Spawn / WT1934/05
- ウルアの妖術 / The Witchcraft of Ulua / WT1934/02
- クセートゥラ / Xeethra / WT1934/12
- 最後の象形文字 / The Last Hieroglyph / WT1935/04
- ナートの降霊術 / Necromancy in Naat / WT1936/07
- プトゥームの黒人の大修道院長 / The Black Abbot of Puthuum / WT1936/03
- イラロタの死 / The Death of Ilalotha / WT1937/09
- アドムファの庭園 / The Garden of Adompha / WT1938/04
- 蟹の支配者 / The Master of Crabs / WT1948/03
- モルテュッラ / Morthylla / 1953/03
順序は創元推理文庫『ゾティーク幻妖怪異譚』の収録順に則る。初出の出典も同書[1]。WTは『ウィアード・テイルズ』の略。ゾティークの小説16編は全てWT誌に掲載されている[4]。
邦訳単行本
[編集]未訳
[編集]- The Dead Will Cuckold You(死者が汝の妻を寝取るだろう)
戯曲。竹岡啓がサイトで私訳を公開している[6]。1951年に書かれたが、清書稿が行方不明となり、またスミスの手元にあった原稿も火災で欠損し、最終的にスミスは自力で内容を復元して、没後1963年に発表された[7]。
ゾティークの地理
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
幾人かのアーティストによって地図が描かれているが、アーティストの想像によって補われた部分の多いものばかりである。今日に至るまで全てのストーリーと矛盾の無い、「完全」な地図は存在しない。単行本『魔術師の帝国』にも地図が掲載されている[5]。
島々
[編集]ゾティークの西、東、南には島々が存在する。北方の地理ははっきりしない。
中央大陸
[編集]数々の領土や王国、都市が存在する。
失われた王国
[編集]人口の減り続けている世界であり、王国の興亡に伴い見捨てられた都市の廃墟などが存在する。
ゾティークの神々、魔神たち
[編集]ゾティークは多神教的な社会であり、多くの神々が信奉されている。いくつかは寺院や司祭をもった公然の信仰であるが、邪神も秘密裏に信奉されている。太古の時代にヒュベルボレオスやムー、ポセイドニス(アトランティス)で信仰された神々が、はるかな時代を経て、異なる名前でゾティークへと戻ってきたということになっている。[8]
- アリラ (Alila)
- 『ウルアの妖術』で言及されている地獄の女王。邪悪全ての女神とされている。
- ウェルガマ (Vargama)
- 『最後の象形文字』に登場する。ゾティーク最強と称されるが、謎が多い。象形文字の記された書物を持っている。
- オジュハル (Ojhal)
- 『プトゥームの黒人の大修道院長』で言及される。処女の女神。
- ゲオル (Geol)
- 『エウウォラン王の航海』で言及される。大地の神。
- タサイドン (Thasaidon)
- 悪の魔王。詳細はタサイドンを参照。頻出。
- タモゴルゴス (Thamogorgos)
- 『暗黒の魔像』で言及される。深淵の王。
- ニオス・コルガイ (Nios-Korghai)
- 『墓の落とし子』に登場する。彗星に乗って地上に飛来した魔物。クトゥルフ神話に取り込まれている。
- バサタン (Basatan)
- 『蟹の支配者』で言及される。海神。容姿は不明だが、呪具にはクラーケンが象られている。
- モルディッギアン (Mordiggian)
- 『死体安置所の神』に登場する。供物に死体を受け取る奇妙な神。クトゥルフ神話に取り込まれている。
- ユクラ (Yuckla)
- 『地下納骨所に巣を張るもの』で言及される。笑いを司るグロテスクな小神。その力は慈悲深いものとされている。
その他
[編集]日本では、クトゥルフ神話漫画『邪神伝説シリーズ』の第1話『ラミア』に登場する。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 創元推理文庫『ゾティーク幻妖怪異譚』解説(大瀧啓裕)、437-438ページ。
- ^ Clark Ashton Smith (2003). Selected Letters of Clark Ashton Smith. Arkham House. ISBN 0-87054-182-X
- ^ 創元推理文庫『ゾティーク幻妖怪異譚』解説(大瀧啓裕)、441ページ。
- ^ a b 創元推理文庫『ゾティーク幻妖怪異譚』解説(大瀧啓裕)、448ページ。
- ^ a b ナイトランド叢書『魔術師の帝国1 ゾシーク篇』7-8ページ。
- ^ 竹岡啓. “大凡々屋「死者が汝の妻を寝取るだろう」”. 2021年1月11日閲覧。
- ^ 竹岡啓. “新・凡々ブログ「死者が汝の妻を寝取るだろう」”. 2021年1月11日閲覧。
- ^ 『暗黒の魔像』冒頭に説明あり。