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ミノムシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オオミノガから転送)
ミノガ科
ミノムシ
ミノムシ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
下綱 : 新翅下綱 Neoptera
上目 : Panorpida
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
亜目 : Glossata
下目 : Heteroneura
上科 : ヒロズコガ上科 Tineoidea
: ミノガ科 Psychidae
学名
Psychidae
Boisduval1829
タイプ属
Psyche Schrank1801
シノニム
  • Psychoidae Agassiz1848
  • Animulina Herrich-Schäffer, 1855
  • Canephoridae Herrich-Schäffer, 1853
  • Micropsychiniidae Gomez Bustillo, 1979
英名
bagworm moth
亜科

ミノムシ(蓑虫)は、チョウ目ミノガ科学名Psychidae)の幼虫。一般には、その中でもオオミノガ、チャミノガの幼虫を指す。

幼虫が作るが、で作った雨具「」に形が似ているため、日本では「ミノムシ」と呼ばれるようになった[1]

形態・生態

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多くの進化の結果、成虫を持たないが、脚を残している種や痕跡的に退化した翅を持つ種もある。ただし、このような進化を経なかったヒモミノガ類のように雌が同様に羽化して飛翔力を持つ種も存在する。

幼虫はバラ科カキノキ科などの果樹や、サツキ等のを、特に梅雨後の夏期(7月から8月の)に食害する。摂食後の枯葉や枯枝に粘性の糸を絡め、状の巣を作って枝からぶら下がる。

下位分類

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ミノガ科には日本列島では20以上の種が属している。

人間との関わり

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ミノムシは身の回りの繊維であれば、葉や枝でなくても、蓑を作り上げる。このため、毛糸くずや細かく切った色紙の中に蓑を取り去った幼虫を入れると、色鮮やかな蓑を作り上げる。このような実験は、子供の遊びとして広く行われていた。

ミノムシはに蓑を作るため、俳句では秋の季語となった。ミノムシ自体は発声器官を持たないのだが、季語では「蓑虫鳴く」と扱われている。一説によれば、これは秋の深い頃まで枝先で鳴くカネタタキの鳴き声であるという。

化学分野への応用

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ミノムシの糸は蜘蛛]の糸よりも強靭であるという研究結果があり、生体工学バイオミメティクスの分野での応用開発も期待されている[2][3][4]。日本の興和農研機構は、ミノムシの糸を大量に取り出して工業製品に使う技術を開発したと2018年12月5日に発表[5]。農研機構が持つ養蚕技術を応用することで大量生産と製品化に道筋がつき、興亜は2024年に「ミノロン」という名称で製品化した[6]

ミノムシが登場する作品

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  • 随筆
    • 枕草子』 - 「蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれも恐しき心あらんとて、…八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあわれなり」
  • 俳句

類似の虫

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同じように糸で体を包んで、移動する巣を作るガは他にもある。家屋内ではイガが小さいながらも同じような巣を作る。

ミノガ同様、雌の翅が退化する種類のガにフユシャク亜科がある。フユシャク類の雌は翅を全く持たないか、小さく退化した翅を持つ。その代わり胴体や脚は雄より発達している。ミノガの雌と違う点として、ミノガの雌はの段階から翅が無いのに対し、フユシャク類の雌は蛹の段階では翅があるように見える。羽化後に餌を摂らないのもミノガと共通している。

他にもドクガの一種に雌の翅が退化する種がある。夏に発生する雌は翅を持つが、秋に発生する雌のみ翅が退化するヒメシロモンドクガのような特異な種もある。

また、トビケラ類の幼虫は水生昆虫で、多くの種が同じような巣を川底などに作る。

オオミノガ

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オオミノガ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
下綱 : 新翅下綱 Neoptera
上目 : Panorpida
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
亜目 : Glossata
下目 : Heteroneura
上科 : ヒロズコガ上科 Tineoidea
: ミノガ科 Psychidae
亜科 : オオミノガ亜科 Oiketicinae
: Acanthopsychini
: Eumeta
: オオミノガ E. japonica
学名
Eumeta japonica
Heylaerts, 1884[7]
シノニム
  • Eumeta variegata (Snellen, 1879)[8]
  • Clania variegata (Snellen, 1879)[9]

オオミノガ(大蓑蛾、学名: Eumeta japonica)は、チョウ目ミノガ科に属する昆虫。ヤマトミノガともいう。

形態

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日本産で最も大きなミノムシ[10]

成虫が「」の形になるのは雄に限られる。雄はが退化しており、などを吸うことはできない。雄の体長は30〜40mm。雌は無翅、無脚であり、形は小さいに、小さなと体の大半以上を腹部が占める形になる(また、雄同様口が退化する)。したがって「ガ」にはならず、蓑内部の蛹の殻の中に留まる(性的二形)。

生態

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雄は雌のフェロモンに引かれて夕方頃飛行し、蓑内の雌と交尾する。この時、雄は小さな腹部を限界近くまで伸ばし蛹の殻と雌の体の間に入れ、蛹の殻の最も奥に位置する雌の交尾孔を雄の交尾器で挟んで挿入器を挿入して交尾する。交尾後、雄は死ぬ。その後、雌は自分が潜んでいた蓑の中の蛹の殻の中に1,000個以上のを産卵し、卵塊の表面を腹部の先に生えていた淡褐色の微細な毛で栓をするように覆う。雌は普通、卵が孵化するまで蛹の殻の中に留まっていて、孵化する頃にミノの下の穴から出て地上に落下して死ぬ。

20日前後で孵化した幼虫は蓑の下の穴から外に出て、そこから糸を垂らし、多くは風に乗って分散する。葉や小枝などに到着した1齢幼虫はただちに小さい蓑を造り、それから摂食する。6月から10月にかけて7回脱皮を繰り返し、成長するにつれて蓑を拡大・改変して小枝や葉片をつけて大きくし、終令幼虫(8令)に達する。主な食樹は、サクラ類、カキノキイチジクマサキなど[11]

秋に蓑の前端を細く頸って、小枝などに環状になるように絹糸をはいてこれに結わえ付けて越冬に入る。枯れ枝の間で蓑が目立つ。越冬後は普通は餌を食べずにそのまま4月から6月にかけて蛹化する。そして6月から8月にかけて羽化する。

分布

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日本列島本州四国九州対馬屋久島沖縄本島宮古島石垣島西表島[7]に分布する。本種は東南アジアに広く分布する Eumeta variegata と同じ種であるという説も有力である。

近年は後述する外来種ヤドリバエによる寄生により生息個体が激減しており、各自治体レッドリスト絶滅危惧種に選定されるようになってきている。

オオミノガヤドリバエによる寄生

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オオミノガを初めとして、日本ではミノムシは広く見られる一般的な昆虫であったが、1990年代後半からオオミノガは激減している。原因は、オオミノガにのみ寄生する外来種のヤドリバエ科オオミノガヤドリバエ (Nealsomyia rufella) である。

オオミノガヤドリバエは、主にオオミノガの終令幼虫を見つけると、摂食中の葉に産卵し、卵は葉と共に摂食される。口器で破壊されなかった卵はオオミノガの消化器に達し、体内で孵化する。

なお、オオミノガヤドリバエに寄生する寄生蜂キアシブトコバチ (Brachymeria obscurata) など)が存在する[12][13]

ウィキスピーシーズには、オオミノガに関する情報があります。

脚注

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  1. ^ カワセミ通信 No.102”. 戸田市彩湖自然学習センター. 2019年10月31日閲覧。
  2. ^ (研究成果) クモ糸を超えるミノムシの糸、強さの秘密を科学的に解明 農研機構/豊田工業大学(2019年4月2日)2024年12月9日閲覧
  3. ^ 畑邊康浩「クモの糸」を超える「ミノムシの糸」がバイオエコノミーを加速する (2019目7月22日)2024年12月9日閲覧
  4. ^ ミノムシ糸が、クモ糸を超える強さを持つ理由を科学的に解明――高い秩序性階層構造に起因 農研機構と豊田工業大」fabcross for エンジニア(2019年4月3日)2024年12月9日閲覧
  5. ^ 「ミノムシから糸 数百メートル/興和と農研機構 シルク繊維の代替」日本経済新聞』朝刊2018年12月6日(企業2面)2018年12月16日閲覧
  6. ^ ミノムシの糸で繊維開発、医薬品の興和 自動車や航空機向けも狙う朝日新聞デジタル(2024年11月20日)2024年12月9日閲覧
  7. ^ a b 日本産昆虫学名和名辞書(DJI)”. 昆虫学データベース KONCHU. 九州大学大学院農学研究院昆虫学教室. 2014年2月11日閲覧。
  8. ^ 神保宇嗣 (2021年6月3日). “List-MJ 日本産蛾類総目録 version 3β”. 2023年8月15日閲覧。
  9. ^ "Clania variegata". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語). (英語)
  10. ^ イモムシハンドブック』51頁
  11. ^ 昆虫の食草・食樹ハンドブック』53頁
  12. ^ オオミノガヤドリバエ”. 侵入生物DB. 国立環境研究所. 2020年10月5日閲覧。
  13. ^ キアシブトコバチ」『『世界大百科事典 第2版』』https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%96%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%81コトバンクより2020年10月5日閲覧 

参考文献

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  • 森上信夫、林将之「ミノガ科」『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版、2007年、53頁。ISBN 978-4-8299-0026-0 
  • 福田晴夫ほか「ミノガ科」『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方 : 野山の宝石たち』(増補改訂版)南方新社、2009年、58頁。ISBN 978-4-86124-168-0 
  • 安田守「ミノガ科」『イモムシハンドブック』高橋真弓・中島秀雄監修、文一総合出版、2010年、50-51頁。ISBN 978-4-8299-1079-5 
  • 安田守「ミノガ科」『イモムシハンドブック2』高橋真弓・中島秀雄監修、文一総合出版、2012年、33頁。ISBN 978-4-8299-8101-6 
  • 田仲義弘、鈴木信夫「オオミノガ」『校庭の昆虫』全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、1999年、55頁。ISBN 4-88137-073-1 

関連項目

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外部リンク

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