ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート1989
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ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート1989(ドイツ語: Neujahrskonzert der Wiener Philharmoniker 1989)は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による1989年のニューイヤーコンサート。指揮者はカルロス・クライバーが務めた(初登場)。
エピソード
[編集]指揮するにあたってクライバーは、プログラムの企画のためにヨハン・シュトラウス協会の会長フランツ・マイラーと意見を交わした。マイラーによると、クライバーほど入念に準備する指揮者をそれまで見たことがなかったという[1]。
彼はシュトラウスについて書いたわたしの本をすべて読む予定にしていた。その中で≪田園のポルカ≫作品二七六について思い当るものを発見した。その発見がとても気に入って彼はこう言った、『これはぜひ使わなくちゃ』[1]。 — フランツ・マイラーの回想
1988年12月29日に始まったゲネプロについて、『クーリエ』紙はこう報じた。
「 | 入場券を求める激しい風が吹きまくったかと思うと、あっという間に消えてしまった。(中略)クライバーは本当に指揮するのかという、おきまりの疑い深い質問など、この際すべき筋合いのものではない。彼はするのだ[2]。 | 」 |
コンサート当日の早朝7時、神経過敏のあまりクライバーは青ざめてウィーン楽友協会の周りを数百回も駆け回ったという。ウィーン国立歌劇場音楽監督クラウス・ヘルムート・ドレーゼは、クライバーを「ウィンナ・ワルツの新しい帝王」と評した[3]。ソニー・クラシカルは、50万マルクという記録的な高値に釣り上げたうえでCDの販売権を獲得した[4]。バランスを取ろうとしたクライバーは、ビデオの発売権はドイツ・グラモフォンに譲渡した[4]。ドイツ・グラモフォンの社長経験者は、この時のCDの契約についてこう語っている。
「 | ソニーは高すぎる金額を提示した。我々は思った、『たかがダンス音楽に?だったらベートーヴェンの作品のCDを一枚出すのにどんな額になる?』[4]。 | 」 |
演奏曲目
[編集]第1部
[編集]- 『加速度円舞曲』(ヨハン・シュトラウス2世)
- 『田園のポルカ』(ヨハン・シュトラウス2世)
- ワルツ『わが家で』(ヨハン・シュトラウス2世)
- ポルカ・マズルカ『とんぼ』(ヨーゼフ・シュトラウス)
- オペレッタ『こうもり』序曲(ヨハン・シュトラウス2世)
第2部
[編集]- ワルツ『芸術家の生活』(ヨハン・シュトラウス2世)
- ポルカ『水車』(ヨーゼフ・シュトラウス)
- ポルカ・シュネル『ハンガリー万歳!』(ヨハン・シュトラウス2世)
- ポルカ『クラップフェンの森で』(ヨハン・シュトラウス2世)
- ワルツ『春の声』(ヨハン・シュトラウス2世)
- 『ピツィカート・ポルカ』(ヨハン・シュトラウス2世&ヨーゼフ・シュトラウス)
- 『騎士パズマンのチャールダーシュ』(ヨハン・シュトラウス2世)
- ポルカ・シュネル『おしゃべりなかわいい口』(ヨーゼフ・シュトラウス)
アンコール
[編集]- ポルカ『騎手』(ヨーゼフ・シュトラウス)
- ワルツ『美しく青きドナウ』(ヨハン・シュトラウス2世)
- 『ラデツキー行進曲』(ヨハン・シュトラウス1世)
出典
[編集]- ^ a b ヴェルナー(2010) p.261
- ^ ヴェルナー(2010) p.259
- ^ ヴェルナー(2010) p.262
- ^ a b c ヴェルナー(2010) p.263
参考文献
[編集]- アレクサンダー・ヴェルナー 著、喜多尾道冬・広瀬大介 訳『カルロス・クライバー (下) ある天才指揮者の伝記』音楽之友社、2010年10月10日。ISBN 978-4-276-21795-9。