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イエスズメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イエスズメ
イエスズメ雄
イエスズメ雌
イエスズメ Passer domesticus
上: 雄(オーストラリア)、下: 雌(イングランド
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
: スズメ科 Passeridae
: スズメ属 Passer
: イエスズメ P. domesticus
学名
Passer domesticus
(Linnaeus, 1758)
和名
イエスズメ
英名
House Sparrow
亜種
  • P. d. domesticus イエスズメ[2]
  • P. d. italiae[3]
  • P. d. balearoibericus
  • P. d. tingitanus
  • P. d. rufidorsalis
  • P. d. niloticus
  • P. d. biblicus
  • P. d. indicus
  • P. d. hufufae
  • P. d. bactrianus
  • P. d. hyrcanus
  • P. d. persicus
  • P. d. parkini
Passer domesticus domesticus

イエスズメ家雀、学名 Passer domesticus)はスズメ目スズメ科鳥類。和名は学名を含むヨーロッパ各言語からの直訳に由来する。

形態

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全長14-16cm、体重24-38g[4]。大きさはスズメ (Passer montanus) よりやや大きい。翼長6.9-8.5cm[3]。雌雄で体色が異なり、雄はスズメに似るが、頭に帽子を被ったような灰色の部分があり(ただし、イタリア半島コルシカ島産の亜種イタリアスズメ P. d. italiae はこの灰色の部分が赤褐色になっている[3])、頬の黒斑がない。雌や若鳥は全体的に淡い茶褐色をした地味なカナリアといった風情で、特徴的なのは目の上に眉状の模様がある点ぐらいである。くちばしは、スズメ同様、若鳥は黄色いが成鳥は黒い。鳴き声はスズメに似る。

分布

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     自然分布      移入分布

南極を除く全大陸に分布する汎存種で、世界一分布域の広い鳥類である[5][6]アフリカではナイル川下流域と大陸南部、セネガル周辺に分布する。近年はケニアナイロビ周辺でも見られる。

ユーラシアは分布の中心であり、温帯域のヨーロッパ中央アジアを中心として、インド中東東南アジアといった熱帯域、寒帯域のシベリアと、全域に分布する。ただし東アジアは分布の空白域になっており、朝鮮半島、日本列島、台湾フィリピン群島、インドネシアには自然分布していない。中国も分布はしているが数は少ない。こういった空白域にはそのニッチとしてスズメが人里に進出している。

アメリカ大陸には元々生息していなかったが、1850年から1875年の間にイギリスから複数の都市に害虫駆除の目的で放されてから盛んに繁殖し、鉄道網の発達と共に穀類を積んだ貨物列車に便乗して分布域を広げた。同様にして、オーストラリアなどのオセアニア地域や、ハワイなどの島嶼にも導入された。空白域であった東アジアでもインドネシアには人為移入され現在定着している。

日本では、1990年以降に、北海道礼文島[7]利尻島(1990年8月)[8][2]天売島(1998年5月)[2]積丹半島積丹町[7](1992年4月[2][9]で観察されたことがある。利尻島および積丹半島においてはスズメと交雑、繁殖したとされる[7]。これらは、ロシア沿海地方もしくはサハリン州北部から渡ってきた迷鳥と考えられている。同様に迷鳥として秋田県八森町[7](現・八峰町)のほか、舳倉島(1994年5月)や見島(2008年4月)でも認められている[2]

亜種

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生態

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ヨーロッパなどスズメ(Passer montanus)と競合している地域では、スズメを押しのけ人里の主要な野鳥となっており、スズメは人里から離れた森や山などでくらしている(スズメの英名 Tree Sparrow は森のスズメ、学名 Passer montanus は山のスズメという意味である)。スズメに限らず、同属他種と競合している地域ではたいてい体が大きく、都市環境に高度に適合した本種が優先種となって人里に住んでいるが、地域によっては仲良く混成しているところもある。

雑食性で、果実植物種子昆虫類を食べる。本来は種子食性で、クチバシの構造はイネ科植物の種子を割るのに都合の良いよう太く短くなっている。昆虫は成鳥も捕食するが、主としてヒナの餌に用いる。

スズメ同様、春から夏にかけて人家や廃屋などに営巣する。かなり気が強くて横暴なところがあり、営巣に適した場所に他の鳥が巣をかけていると、相手が本種より大きな鳥であってもその巣を横取りしたり、すでにヒナが生まれていた場合はそのヒナを殺して追い出したりする。年2-3回ほど育雛し、一度に5-6羽を若鳥にまで育て上げるが、成鳥になるのはせいぜい年3羽ほどである。

野生下での寿命は2-3年程度だが、飼育下では14年生きた記録がある。

人間との関係

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上がイエスズメ。下はスズメ

典型的なシナントロープであり、もともとの原産地はナイル川下流域にあり、それらが古代エジプトにおきた農耕の伝播と、それに伴う人間の移動につれて世界各地に広がったと考えられている。

現に、シベリアにはもともと生息していなかったが、シベリア鉄道開通後にその沿線から徐々に分布を広げていった経緯が記録されている。ヨーロッパ人の入植したアメリカやオーストラリア、その他太洋島嶼の多くには害虫駆除目的で放鳥され、入植した人間とともに移動して分布域を広げ定着した。発祥の地アフリカにおいても、南アフリカセネガルナイロビ周辺の個体群は同様に移入されたものである。

東アジアにおける分布が手薄なのは米より麦を好む傾向があるからとする説もあるが、稲作の中心地であるタイベトナムには自然分布しているので説得力に欠ける。

本種は都市環境に対する適応力が高く、スズメと異なり、人間の出したゴミ残飯だけで繁殖まで行うことができる。それゆえ、英語にはfeathered mouse(羽ねずみ)と呼ばれるほか、ハワイではファストフード店のゴミ箱で頻繁にみられることからHamburger sparrow(ハンバーガースズメ)とも呼ばれる。こうした呼称からもわかるように、本種はアメリカ合衆国においては法律で保護されていない唯一の鳥類となっている。

ヨーロッパの公園にいる本種は人懐こく、手に取れるような場所まで近寄り、人の手の上の餌をついばむ[12]。これは長年に渡って保護されてきたからであり、保護されていない地域にいる個体は警戒心が強い。1990年以降になってヨーロッパではなぜか個体数が激減している。なお激減の原因はいろいろ指摘されてはいるが、特定できる段階にはない。

脚注

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  1. ^ BirdLife International (2004). "Passer domesticus". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2006. International Union for Conservation of Nature. 2007年9月25日閲覧
  2. ^ a b c d e 日本鳥学会(目録編集委員会)編 編『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会、2012年、342頁。ISBN 978-4-930975-00-3 
  3. ^ a b c d e f Lars Svensson『ヨーロッパ産スズメ目の識別ガイド』文一総合出版、2011年、273-274頁。ISBN 978-4-8299-1192-1 
  4. ^ a b c Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 446. ISBN 978-0-691-13926-5 
  5. ^ Biology of the Ubiquitous House Sparrow: From Genes to Populations by Ted R. Anderson; Oxford University Press; 2006.
  6. ^ "House Sparrow Control" by The North American Bluebird Society
  7. ^ a b c d 真木広造、大西敏一『日本の野鳥590』平凡社、2000年、589頁。ISBN 4-582-54230-1 
  8. ^ 佐野昌男「北海道利尻島におけるイエスズメの生息確認」『日本鳥学会誌』第39巻第1号、日本鳥学会、1990年8月、33-35頁。 
  9. ^ 日本野鳥の会野鳥記録委員会「観察情報・観察記録 1991.8-1992.7」『Strix』第11巻、日本野鳥の会、1992年、377-382頁。 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m Clements, James F. (2007). The Clements Checklist of Birds of the World (6th ed.). Ithaca, New York: Cornell University Press. p. 602. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  11. ^ International Journal of Evolution (2012) The Tangled Evolution of Italian Sparrow
  12. ^ 佐野昌男「日本をめぐる3種のスズメ スズメ、イエスズメ、ニュウナイスズメ」、『週刊朝日百科動物たちの地球』34(スズメ・カラスほか)、1992年。

関連項目

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