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アカデミック・ロモノソフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アカデミック・ロモノソフ
ムルマンスクからペヴェクに回航途上の水上原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」
基本情報
船種 人工浮島 (原子力発電所)
船籍 ロシアの旗 ロシア
所有者 ロスアトム
建造所 セヴマシュ (2007–2008)
バルチック造船所 (2008–2010)
建造費 3億3600万USドル (設計時)
経歴
起工 2007年4月15日
進水 2010年6月30日[1]
就航 2020年
現況 運用中
要目
排水量 21,500トン
長さ 144.4m
30m
高さ 10m
喫水 5.6m
搭載人員 69人
その他 改修型KLT-40S原子炉(砕氷船型)x2、
発電能力:52MWx2基
または熱出力:300MW
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アカデミック・ロモノソフ(: Академик Ломоносов)は、ロシアで建造された水上原子力発電所。アカデミシアン・ロモノソフとも呼ばれる。ロシア科学アカデミー会員のミハイル・ロモノーソフに因んで名づけられている。

歴史

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アカデミック・ロモノソフは2007年4月15日に[2]セヴェロドヴィンスクセヴマシュ潜水艦造船所で建設が始まった。祝賀行事にはロシアの第1副首相であったセルゲイ・イワノフロスアトム社長のセルゲイ・キリエンコが出席した[3] 。 元々、アカデミック・ロモノソフはセヴェロドヴィンスクとセヴマシュに電力を供給する予定であったが、2008年8月、ロシア政府はセヴマシュからサンクトペテルブルクバルチック造船所に建造の移動を承認した[4]

1基目の原子炉は2009年5月、2基目は8月に納入された[2]。アカデミック・ロモノソフは2010年6月30日に進水した[5]。アカデミック・ロモノソフはロシアの極東カムチャッカ地方ヴィリュチンスクに展開される予定であった[2]が、老朽化したビリビノ原子力発電所の代替としてチュクチ自治管区ペヴェクに展開されることになった[6]。2011年に突如として造船所の親会社が破綻し、それに連鎖して造船所も破綻したため、債権者による差し押さえを予防する目的で、サンクトペテルブルクの裁判所に差し押さえられた[7]。2013年の終わりに建造を終え引き渡されることが期待されていた[8]が、破産手続きの遅れなどにより、2016年9月の予定と報じられていた[9]。2017年10月30日の時点では、2018年5月にムルマンスク曳航して10月に核燃料を装荷した上で、同年11月に運転開始が予定されていた[10]。2018年4月28日にムルマンスクに曳航するため造船所を出発[11]し、5月17日に到着した[12]。原子炉への燃料装荷は7月24日に始まり、10月2日に完了した[13]

11月2日には2基の原子炉のうち1基が初臨界を達成した[14]。2019年6月27日には許認可を担当する連邦環境・技術・原子力監督局英語版から10年間の運転認可が下りたことから、8月下旬にペヴェクへの回航を行い、同年末から試運転を始める予定と発表された[15]。回航は8月23日に始まり[16]、9月14日にペヴェクに到着した[17]。運転が始まれば同地で稼働する鉱山などに電力および熱を供給する予定である[18]。 2019年12月19日には送電網に同期し、電力の供給が始まった[19]。2020年5月22日営業運転開始[20]。熱供給は2020年に開始される見込みである。

詳細

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アカデミック・ロモノソフは長さ144m、幅30mほどの船であり、排水量が21,500トンで、69人の乗員を予定している[21]。発電のために、2基の改修型KLT-40Sを積んでおり、70MWの電力と300MWの熱を供給可能である。原子炉はアトムエネルゴプロムの子会社のOKBMアフリカントフによって設計され、同じくアトムエネルゴプロムの子会社のアトムエネルゴプロエクト(Atomenergoproekt)のニジニノヴゴロド研究開発所で製造された。原子炉容器はイジョルスキェ・ザボーディが製造した[2]。蒸気タービン発電機はカルーガタービンプラントが提供した[4]

原子炉

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原子炉[22] 原子炉形式 正味発電量 総発電量 建設開始 送電網同期 商用運転 停止
1号炉(Akademik Lomonossow 1) KLT-40S 52 MW - MW 2007年4月15日 2019年12月19日 2020年5月22日
2号炉(Akademik Lomonossow 2)

耐用期間は40年を想定している。4年おきに核燃料として低濃縮ウランを補給し、12年おきに使用済み核燃料の船外搬出が必要とされる[23]

脚注

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  1. ^ “Baltiysky Shipyard launches the Akademik Lomonosov, part of nuclear powered plant”. PortNews. (30 June 2010). http://en.portnews.ru/news/22977/ 2010年7月20日閲覧。 
  2. ^ a b c d “Reactors ready for floating plant”. World Nuclear News. (2009年8月7日). http://www.world-nuclear-news.org/NN-Reactors_ready_for_first_floating_plant-0708094.html 2010年5月1日閲覧。 
  3. ^ Kukushkin, Mikhail (2007年4月16日). “Плавучие АЭС готовят к экспорту [Floating NPS are ready for export]” (Russian). Vremya Novostey. http://www.vremya.ru/2007/66/8/176264.html 2008年11月8日閲覧。 
  4. ^ a b “Russia relocates construction of floating power plant”. World Nuclear News. (2008年8月11日). http://www.world-nuclear-news.org/NN-Russia_relocates_construction_of_floating_power_plant-1108084.html 2008年12月30日閲覧。 
  5. ^ Stolyarova, Galina (2010年7月1日). “Nuclear Power Vessel Launched”. The St. Petersburg Times. http://www.times.spb.ru/index.php?action_id=2&story_id=31865 2010年7月20日閲覧。 
  6. ^ ロシア:海上浮揚式原子力発電所の係留予定地で陸上設備の建設開始
  7. ^ Russia's First Floating Nuclear Plant Seized by Court Order(IEEE)
  8. ^ “Media: Borei Subs to Have New Infrastructure”. Izvestija (Russian Navy). (2012年3月14日). http://rusnavy.com/news/navy/index.php?ELEMENT_ID=14566 2012年3月15日閲覧。 
  9. ^ Russia announces yet newer delivery date for first floating nuclear power plant(bellona)
  10. ^ Russian floating plant cargo arrives at Pevek”. World Nuclear News (2017年10月30日). 2018年1月4日閲覧。
  11. ^ Floating nuclear power plant starts journey north”. World Nuclear News (2018年4月30日). 2018年5月6日閲覧。
  12. ^ Floating plant arrives at Murmansk for fuelling”. World Nuclear News (2018年5月21日). 2018年5月22日閲覧。
  13. ^ Russia loads fuel into floating power reactor”. World Nuclear News (2018年10月3日). 2018年10月4日閲覧。
  14. ^ First reactor on Russia's floating plant starts up”. World Nuclear News (2018年11月5日). 2018年11月7日閲覧。
  15. ^ Russia gets operating licence for floating plant”. World Nuclear News (2019年6月27日). 2019年6月28日閲覧。
  16. ^ Russia's floating plant heads for final destination”. World Nuclear News (2019年8月23日). 2019年8月25日閲覧。
  17. ^ Russia's floating plant reaches final destination”. World Nuclear News (2019年9月16日). 2019年9月17日閲覧。
  18. ^ ロシアの海上原発、北極海へ出発 「海上のチェルノブイリ」と批判も”. CNN (2019年7月1日). 2019年7月1日閲覧。
  19. ^ Russia connects floating plant to grid”. World Nuclear News (2019年12月19日). 2019年12月20日閲覧。
  20. ^ ロシアの海上浮揚式原子力発電所が営業運転開始 - 原子力産業新聞
  21. ^ “Two floating nuclear plants for Chukotka”. World Nuclear News. (2007年4月5日). http://www.world-nuclear-news.org/newsarticle.aspx?id=13196&LangType=2057 2008年12月30日閲覧。 
  22. ^ Power Reactor Information System / IAEA: „Russian Federation: Nuclear Power Reactors“ Archived 2012年5月7日, at the Wayback Machine. (englisch)
  23. ^ 「北極圏に船舶型原発/ロスアトム、輸出も視野」『日経産業新聞』2019年10月24日(グローバル面)。