コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

tert-ブタンスルフィンアミド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
tert-ブタンスルフィンアミド

(R)-tert-butylsulfinamide

(S)-tert-butylsulfinamide
Ball-and-stick model of tert-butanesulfinamide{{{画像alt2}}}
識別情報
CAS登録番号 146374-27-8 (R/S), 196929-78-9 (R)-(+), 343338-28-3 (S)-(-)
PubChem 3382465 (R/S)10964479 (R)-(+)11355477 (S)-(-)
UNII 42F4K704G0 (R/S), 7FEC1T720F (R)-(+), I85YC2ZA8O (S)-(-)
特性
化学式 (CH3)3CS(O)NH2
モル質量 121.20 g/mol
外観 白色から灰色がかった白色の結晶性固体
融点

102 - 105 °C

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

tert-ブタンスルフィンアミド(2-メチル-2プロパンスルフィンアミド、エルマンのスルフィンアミド)は、有機硫黄化合物の1つで、スルフィンアミドの一種である。両鏡像異性体が市販されており、キラル補助基として不斉合成で使用される。アミン合成のためのキラルなアンモニア等価体として利用されることが多い[1][2][3]tert-ブタンスルフィンアミドと関連する合成技法は1997年にジョナサン・A・エルマンドイツ語版らによって発表された[4]

調製

[編集]

非常に高い光学純度を持つtert-ブタンスルフィンアミドは、安価なジ-tert-ブチルジスルフィドのチオスルフィン酸エステル英語版へのエナンチオ選択的酸化とそれに続くリチウムアミドによるジスルフィドの開裂によって調製することができる。エナンチオ選択的酸化は、3,5-ジ-tert-ブチルサリチルアルデヒドとキラルなアミノインダノールの縮合によって調製されたキラル配位子とバナジルアセチルアセトナートを使うことによって行うことができる。

tert-ブタンスルフィンアミドの合成
tert-ブタンスルフィンアミドの合成

エナンチオ選択的アミン合成

[編集]

ケトンおよびアルデヒドとの縮合により対応するN-tert-ブタンスルフィニルアルドイミンおよびケトイミンが得られる。これらの中間体は他のイミン類よりも加水分解に対してより耐性があるが、求核剤に対してはより反応性がある。求核剤はキラル補助基として機能するtert-ブタンスルフィニル基を持つイミン基に対してジアステレオ選択的求核付加する。tert-ブタンスルフィニル基は保護基でもある。塩酸処理によってtert-ブタンスルフィニル基は除去され、キラルな1級アンモニウム塩またはアミン、あるいはキラルな2級アミンが得られる。

典型的な求核剤はグリニャール試薬有機亜鉛化合物有機リチウム化合物、およびエノラートである。

アミンの不斉合成の中間体としてのキラルなスルフィンイミン英語版フランクリン・A・デイヴィズ英語版によって開発されている[5]

出典

[編集]
  1. ^ Ellman, J. A. (2003). “Applications of tert-butanesulfinamide in the asymmetric synthesis of amines”. Pure and Applied Chemistry 75: 39–46. doi:10.1351/pac200375010039. 
  2. ^ Robak, Maryann T.; Herbage, Melissa A.; Ellman, Jonathan A. (2010). “Synthesis and Applications oftert-Butanesulfinamide”. Chemical Reviews 110 (6): 3600–740. doi:10.1021/cr900382t. PMID 20420386. 
  3. ^ Organic Syntheses, Vol. 82, p.157 (2005). Link
  4. ^ Liu, Guangcheng; Cogan, Derek A.; Ellman, Jonathan A. (1997). “Catalytic Asymmetric Synthesis of tert-Butanesulfinamide. Application to the Asymmetric Synthesis of Amines”. Journal of the American Chemical Society 119 (41): 9913. doi:10.1021/ja972012z. 
  5. ^ Davis, Franklin A.; Reddy, Rajarathnam E.; Szewczyk, Joanna M.; Reddy, G. Venkat; Portonovo, Padma S.; Zhang, Huiming; Fanelli, Dean; Zhou, Ping et al. (1997). “Asymmetric Synthesis and Properties of Sulfinimines (ThiooximeS-Oxides)”. The Journal of Organic Chemistry 62 (8): 2555–2563. doi:10.1021/jo970077e. PMID 11671597.