TR-107
原開発国 | アメリカ合衆国 |
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開発企業 | ノースロップ・グラマン |
目的 | 低費用推力調整可能ブースターエンジン |
液体燃料エンジン | |
推進薬 | 液体酸素 / RP-1 (ケロシン) |
サイクル | 酸素リッチ二段燃焼サイクル(ORSC) |
性能 | |
推力 (SL) | 4,900 kN (1,100,000 lbf) |
燃焼室圧力 | 17.7メガパスカル (177 bar) |
TR-107は2002年にNASAと国防総省の予算でノースロップ・グラマンによってスペース・ローンチ・イニシアティブ(SLI)での使用を目的として設計された試作段階の酸素リッチ二段燃焼サイクル(ORSC)のロケットエンジンである。推進剤は液体酸素/RP-1で出力調整が可能で推力は4,900 kN (1,100,000 lbf)で燃焼室の圧力は17.7メガパスカル (177 bar)でこれまでに製造された最も強力なエンジンの一つである[1] [2]。
本機に採用された酸素リッチ二段燃焼サイクルはこれまでソビエト、ロシアのNK-33やRD-170、RD-180でしか実現していなかった。
歴史
[編集]TR-107はTRW社による推力をおよそ半分まで調整可能なLOX/LH2を推進剤とする類似のTR-106エンジン開発計画の成功を基に製造された。以前、ノースロップ社の推進装置部門の副社長だったトム・ミューラーはTR-106とTR-107エンジンの開発管理者だった。
2002年、SLI計画の中止後、ミューラーはイーロン・マスクとスペースXを共同で設立して推進装置担当の副社長になった[3]。
設計
[編集]エンジンは管状冷却を主燃焼室に採用しており、ケロシンの煤の堆積を最少に抑える材料が使用される。
管は燃焼室の壁面から隔離された燃料でケロシンの気化潜熱で燃焼室の温度を維持して冷却を制御する事を企図する。この方法は競合する設計と比較してエンジンを単純化する。再生冷却系を廃した事により、多くの大型のマニホールドと付随するポンプ等の機器も同様に廃され、潜在的な失敗を減らし、エンジンの信頼性が増した。TR107エンジンは酸素リッチ二段燃焼サイクル(ORSC)による高温ガスでターボポンプを駆動する。開発目標は大型で廉価で製造の容易なブースターエンジンを製造する事である。[2][4]
現状
[編集]ノースロップグラマンはTR-107エンジンを次世代の打ち上げ、宇宙輸送システムへの使用を想定する。[5]
関連項目
[編集]- マーリン 1D スペースXで開発されたRP-1を燃料とするエンジン
- ラプター スペースXで開発が進められる次世代のメタン/液体酸素を推進剤とするエンジン
- SLI Prototype engines
- RS-84 ロケットダインが開発を進めていた二段燃焼サイクルのエンジン
- NK-33 ソビエト製の二段燃焼サイクルのエンジン、現在はオービタル・サイエンシズによってアンタレスロケットで使用するために復活したが、打ち上げ失敗で先行きは不明
- RD-170 エネルギアで使用された酸素リッチ二段燃焼サイクルのエンジン
- RD-180 現在アメリカのアトラスVで使用されるRP-1を燃料とするエンジン
- TR-106 同じくノースロップ・グラマンで開発された液体水素/液体酸素を推進剤とするエンジン
- BE-4 ブルーオリジンで開発が進められる次世代のメタン/液体酸素を推進剤とするエンジン
出典
[編集]- ^ “Northrop Grumman Awarded NASA Contract for Next Generation Launch Technology”. Primezone. (May 5, 2003) May 22, 2014閲覧。
- ^ a b “TR-107”. Astronautix.com. March 12, 2014閲覧。
- ^ “Tom Mueller Bio”. SpaceX. May 21, 2014閲覧。
- ^ “TR107 Engine Component Technologies”. NASA Marshall Space Flight Center. (November 2003) May 22, 2014閲覧。
- ^ Northrop Grumman booster vehicle engines