コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

電子ゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
LSIゲームから転送)

電子ゲーム(でんしゲーム、w:Electronic game)は操作する人と電子機器との間での相互作用に基づいたゲームである。1970年代にテレタイプ端末を用いたものが最初期であり、ゲーム内蔵型の専用ゲーム機英語版や電子装置を備えたピンボール機器、エレメカパチンコなどの償還ゲーム英語版スロットマシンなどがある。またコンピュータゲーム全般を指すこともある。

日本においては特に、内蔵された大規模集積回路(LSI)チップによって制御されるソフトウェア内蔵型の小型携帯型ゲーム機のことを指し、液晶画面(LCD)を見ながら操作ボタンを押して遊ぶもので、電子LSIゲームLSIゲームとも呼ばれる。一部の商品ではLSIゲームよりも小型なものをLCDゲームと呼んでいるが、通常は液晶画面を持たないものはLCDゲームの範疇には含まれない。

以下、本記事では主に小型携帯型ゲーム機における電子ゲームについて述べる。

概要

[編集]

ゲーム機本体は安価であるがソフトウェアが内蔵された電子回路と一体になっているため、ソフトウェアを交換して別のゲームで遊ぶことはできない。卓上時計や電卓などの付加価値機能として、これら電子ゲーム様の機能を持つ機器もある。また同時期には真空管の一種である蛍光表示管(FL管)を使ったFLゲームも発売された。やや大型で消費電力も大きく高価だったものの色彩豊かな表示と見やすい画面を特徴としており、これらFLゲームも電子ゲームと呼ばれた。

液晶電卓と同程度の製造技術・設備で生産できるため、玩具メーカーや家電メーカー、更には電卓や時計のメーカーといった非常に多くのメーカーが参入した。ブーム最盛期には玩具店や時計店、文具店といった一般小売店の一角に商品が積み上げられた。

ゲームのジャンルはアクションゲームパズルゲームが代表的である。今日では『たまごっち』に代表される、プレイヤーといつでも一緒にいることを前面に押し出した物や、ロッドを振ったりリールを巻き取る釣りゲーム、あるいは歩数計と一体化したものなど、専用のハードウェアが必要な物も登場している。さらには任天堂の『ポケモンミニ』のように、ロムカセット交換により複数のゲームが遊べる電子ゲームも登場するなどの多様化を見せている。その他、1000円未満の安価なキーチェーン型の小型ゲーム機も多数販売されている。

また赤外線によるワイヤレス通信機能があるものや消費電力が小さいことから、太陽電池で動くものも発売された。

電子ゲームのうち、液晶画面を使ったものは以下の特徴を備えている。

  • コンパクトで、ポケットに収まる。
  • 消費電力が小さく、ボタン電池で1ヶ月以上は遊べる。
  • 多くはモノクロ液晶で画面表示。後にカラーの物も開発・発売された。
  • 数千円前後、ものによっては数百円程度と安価である。
  • 内蔵されたソフトウェアは取り出したり、他のソフトウェアと交換できない。
  • 電子ブザーで音は出せるが、複雑なメロディを奏でることはできない。ただし、ビーマニポケットシリーズなどのように、サンプリング音源を駆使して3パート以上のメロディを奏でているものも存在する。

なお登場初期の液晶画面は現在の液晶ディスプレイに用いられるドットマトリックス表示ではなく、今日でも電卓で使われる7セグメントディスプレイのように表示の絵柄があらかじめ固定されその絵柄表示/非表示でゲームを表現していた。

歴史

[編集]

電子ゲームが市場に出現した経緯は、1970年代半ばにゲームセンターでのビデオゲームの出現が引き起こした、爆発的なコンピュータゲームブームに起源を持つ。ブロック崩しやカーレース・風船割りといった素朴な内容のコンピュータゲームが出始めた頃、それを模したような電動の玩具が一般向けに発売され始めた。ただしこれらは模型用の小型モーターや絵を印刷したプラスチックフィルムなどを使用したものであり、電子的な制御機構をもたないため電子ゲームのジャンルには入らない。これらは初期のエレメカのように、電気接点や歯車・カムといった機械要素によって動作していた。

Mattel Auto Race(1976)
並んで取り付けられたLEDを表示機能とする素朴な電子機器でスイッチの切り替えで自車の位置(走行車線)とギア(画面の変化速度)を切り替え、他の車に接触せず追い抜いていく内容。

1976年アメリカマテルが『Mattel Auto Race』を発売。これが世界初の携帯型電子ゲーム機とされる。同社が翌1977年に発売した『Mattel Football』はヒット商品となり、その後1980年代初頭にかけ各社から様々な製品が登場した。

日本では1978年タイトーの『スペースインベーダー』がゲームセンターに登場したことにより、家庭でもこのゲームができないだろうかという需要が発生した。同ゲームに関しては、こういった家庭向け・個人向けニーズに絡んで様々な現象が発生している(スペースインベーダーの項を参照)。

家庭向けの電子的なゲームとしては、1978年米澤玩具が『サイモン』(アメリカ製)を日本で販売している。このゲームは豆電球の点滅を電子制御することでゲームとしての機能を実現したが、専らモグラ叩きの延長的な単純なものである。バンダイからは『チャンピオンレーサー』や『サブマリン』などの、発光ダイオード(LED)を使用する電子ゲームが発売されている。トミーから『ミサイル遊撃作戦』が発売、この辺りが日本国内初のLSIゲームとされる。なお、ミサイル遊撃作戦はFL管を使用したゲームとしては世界初である。その後『スペースインベーダー』を模したLSIゲームが雨後の筍の如く各社から発売され、電子ゲームは一気に玩具業界の一角を占めるまでになった。

中小メーカーからもこれに追従する形で様々な製品が発売されている。バンダイの『ミサイルベーダー』[注 1]や『スーパーミサイルベーダー』、エポック社の『デジコムベーダー』[注 2]学研の『インベーダー』、シンセイ(新正工業)の『ゲキメツ(撃滅)インベーダー』[注 3]など「インベーダーゲーム」だけでも十数種類以上数社から発売されている。

この当時、ゲームセンターで人気を誇ったビデオゲームを模した電子ゲームも多数発売されている。バンダイの『クレイジークライミング』(クレイジー・クライマーのライセンス作品)、トミーの『パックマン』、学研の『平安京エイリアン』など様々な製品が登場した。

1980年には任天堂の『ゲーム&ウオッチ』シリーズが発売され、一頃は社会現象にまでなった。その後はロムカセットでゲームの交換が可能なコンシューマーゲームの発達に伴い、LEDやFLを使用したLSIゲームは徐々に衰退して行き、日本でのFLゲームの販売は1985年8月に発売された『スペースハリケーン』を最後に太く短い歴史の幕を閉じた。アメリカでもこの時期が電子ゲーム市場の衰退末期にあたり、1982年発売されたLED・カセット式「アドベンチャービジョン」などは流通量の希少さから、今やマニア間で高値売買されている。

しかし小型で安価かつ単純な液晶画面を使用した電子ゲームはその後も「安価である」という一点を以て生き残っている。これらでは『CUBE WORLD』のような「インテリア的な、ゲーム機能もある何か」や、『デジリーマン』のように「大人のための(息抜き)玩具」に変化したものもみられる。

社会現象

[編集]

1970年代後半に登場して最初のブームが訪れて以来、幾度か流行り廃りを繰り返している。その背景には常に「ゲームボーイ」を始めとするカートリッジの交換が可能な、より上位の携帯型ゲームの存在がある。

1970年代
1970年代後半、ゲームセンターでのビデオゲームの進出に併せICやLSI等の集積回路は製造技術の発達(→歩留まりの向上)も伴い急速な価格下落と性能向上によって玩具への転用が可能になった。こうしてLEDとFL管を用いた電子ゲームが登場した。ただFL管を使用したものは消費電力が大きく、また当時の半導体は省電力化がまだ行われておらず大量の電力を必要としていたことや、乾電池の性能の低さもあって動作時間が極端に短く連続で数時間も遊べないものも多かった。また戸外での使用を前提としておらず、輝度の低さから直射日光のもとでは表示が見えなかった。その辺りの事情が、後のLCDを用いたゲーム&ウオッチの爆発的ヒットに繋がって行った。
1980年代
任天堂ゲーム&ウオッチの爆発的なヒットにより、様々なメーカーが参入した。この時期、同ゲーム機を学校に持ってくる児童は後を絶たず、ゲーム機の盗難や貸し借りにまつわる破損などのトラブルが急増。ついには「学校持ち込み禁止令」が出るなどした。また当時の児童が持つ金銭水準から見てこれら電子ゲーム機が些か高価で、同時期に玩具店では店頭展示のゲーム機が盗難に遭うなどの被害が急増し補導者が多数出るなどの問題も取り沙汰され電子ゲーム機の販売自体が芳しくない社会現象として扱われた。
この頃は電子ゲームが高価であったため、ゲーム目的で電子ゲームを沢山持っている裕福な家庭の子供と友達になる低年齢層が多く見受けられた[1]
任天堂の「ゲーム&ウオッチ」は時間を簡単に潰すことができ、かつ手軽に遊ぶことができるサラリーマンをターゲット層として開発・発売されたといい、子供の電子ゲームをためしにプレイしたら親の方がより没頭してしまったという例もある[1]。また「ゲーム&ウオッチ」の『ジャッジ』は2人対戦ができるが、小さな筐体を使って2人で遊ぶには必然とかなり寄り添うことになる。これを利用して異性との身体接触を狙う低年齢層がいたとされる[1]
その後のLSI高度化に伴う処理機能の汎用化で、ロムカートリッジにより複数のゲームソフトが使える携帯ゲーム機の登場に押されて次第に市場から姿を消していった。
1990年代
バーコードバトラー(黒)
1991年バーコードの付いたカードを読み取る電子ゲーム機・バーコードバトラーが発売。1996年から、『テトリン55』を始めとする『テトリス』をモチーフとした小型サイズのキーチェーンゲームがブームとなった。同年秋、バンダイが従来の電子ゲームとは一線を画す育成ゲーム『たまごっち』を発売。当初はマイナー商品として細々と売られていたが次第に口コミで流行して同年末には「幻の商品」と化し、最終的に日本国内外で累計4000万個を売り上げるオバケ商品となった。最盛期には生産が間に合わず、プレミアム価格で定価の数倍という高値がついたりリバースエンジニアリングによって内蔵ソフトウェアまでもをコピーしたコピー商品が多数出回り、露天商が路上販売していて摘発されるなどの混乱を招いた。この時期の電子ゲームのブーム自体は1998年になるころには沈静化し「ゲームボーイカラー」や「ゲームボーイアドバンス」に移行していくこととなった。2001年からはiアプリを初めとした携帯電話でゲームができる環境が登場し、急速に普及、定着していった。
2000年代
2004年に『たまごっち』の新シリーズが発売され、初期のブームを知らない低年齢層の女児を中心に第2次ブームを起こしている。1990年代に流行ったようなキーチェーンゲームなども再び見かけるようになり、携帯電話でゲームをすることができない低年齢層を中心に静かに流行している。
また、電子ゲームのフルカラー化が進行した。2001年頃、バンダイはセグメントディスプレイの表示をフルカラー化した『カラーゲームキッズ』シリーズを開始し、2008年には『たまごっち』もフルカラー化された。カラー化された『たまごっち』は小学生女子を中心に人気となった[2]
2010年代
スマートフォンの流行に伴い、スマートフォン型の電子ゲームが増えていき、人気となった[3]。また、子供向けアーケードゲームの流行とも重なり、『プリティーリズム スマートポッドタッチ』(2012年)や『アイカツフォンスマート』(2013年)などのアーケードゲームとの連携が可能な電子ゲームも登場した。
また、スマートウォッチの登場により、『たまごっち! ラッキーチェック! ウォッチリン』(2013年)や『ジュエルペット ジュエルウォッチ』(2015年)、『ディズニー キャラクター Magical Watch マジカルウォッチ』(2015年)などの腕時計型の電子ゲームが再登場した。

電子ゲームの一覧

[編集]

発売メーカー

[編集]

ミニゲームまたはシューティング

[編集]

育成型または対戦型ゲーム

[編集]

音楽ゲーム

[編集]

女児向け

[編集]

その他

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 当時の小売価格は3980円。社会的ブームとなったインベーダーゲームが家庭用としてコンパクトに持ち歩き、遊べると話題になったLED式のマシン。左手全体で本体を持ち、右手のボタンで砲台を操作する。インベーダーは一機のみで、左右に高速移動しながらミサイルを撃つ。本体横に配置された砲台のミサイルボタンを親指で押し、敵を撃破する。インベーダーが1点、UFOが5点。ミサイルは50発あるが、50発目を発射した瞬間にゲームオーバーとなるので、パーフェクトはUFOを49回撃破した245点となる。当時、伊藤ハムのキャンペーン用として特別版もプレゼントされた。
    コアムックシリーズNO.682『電子ゲーム なつかしブック』p.22.
  2. ^ 当時の小売価格は7800円。アーケード版のインベーダーゲームをシンプルに再現している作品。レーダーのような丸いスクリーンに縦長の画面が表示され、上部から次々とインベーダーが現れ、下に行くほど色が変化していく。16匹のカラフルなインベーダーが攻撃しながら襲ってくるので、手元のレバーで時機を左右に移動させ、ミサイルで撃破。最高得点だとファンファーレが鳴る。
    コアムックシリーズNO.682『電子ゲーム なつかしブック』p.23.
  3. ^ 1980年発売、9500円。当時発売されていた数多くのインベーダーゲームとは異なり、大量に出現するUFOの撃墜がメイン。UFOが時折インベーダーに変身し、攻撃を仕掛けてくるので、自機の基地からのミサイルで撃墜する。左右に移動しながら下に降りてくるインベーダーが3往復するまでに撃破しないとミスとなる。
    コアムックシリーズNO.682『電子ゲーム なつかしブック』p.25.

出典

[編集]
  1. ^ a b c コアムックシリーズNO.682『電子ゲーム なつかしブック』p.88.
  2. ^ たまごっち最新作が「初代の面白さ」に回帰する理由 P.3 日経トレンディネット 2016年6月9日
  3. ^ スマホ型玩具が人気 ゲーム、メール…遊び方も多彩 産経デジタル 2014年1月13日
  4. ^ 懐かしの電子ゲーム ゲームソフト検索 主婦の友インフォス

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]