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82年生まれ、キム・ジヨン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
82年生まれ、キム・ジヨン
82년생 김지영
著者 チョ・ナムジュ
訳者 斎藤真理子
発行日 大韓民国の旗 2016年10月14日
日本の旗 2018年12月6日
発行元 大韓民国の旗 民音社朝鮮語版
日本の旗 筑摩書房
大韓民国の旗 韓国
言語 朝鮮語
形態 四六判
ページ数 192
コード ISBN 978-4-480-83211-5
ウィキポータル 文学
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82年生まれ、キム・ジヨン
各種表記
ハングル 82년생 김지영
漢字 82年生김지영
発音 パルシビニョンセン キムジヨン
題: Kim Ji Young, Born in ’82
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82年生まれ、キム・ジヨン』(はちじゅうにねんうまれ、キム・ジヨン、朝鮮語: 82년생 김지영)は、韓国の作家チョ・ナムジュ小説。韓国で130万部以上の販売部数を記録するベストセラーとなった[1][2]

日本イギリスフランススペインイタリアを含む16か国で翻訳されている[3]

概要

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本作は、主人公である「キム・ジヨン」という女性の記憶に基づいた告白と、その告白を裏付ける各種統計資料と記事という二つの軸で語られている。1982年に生まれたキム・ジヨンというありふれた名前の女性の少女時代から結婚、出産に至るまでの人生を通して、韓国ジェンダー意識に関わる現代史や社会問題を織り交ぜながら、女性が負う重圧や生きづらさを映し出す。過去と比較すれば制度的な性差別は緩和された時代において、未だ残存する見えない差別がどのように女性の人生を制約し、抑圧するのかを著者は本書で描いている[4]

主人公の氏名は、韓国で最も一般的な名字の一つである「김(キム)」と、1970年代後半から1980年代初期に産まれた女子に最も多く名付けられた名前である「지영(チヨン)」を組み合わせたものである[5]

著者のチョ・ナムジュ[6]は、2001年梨花女子大学を卒業後に韓国の社会派テレビ番組『PD手帳』の放送作家として10年間務めたが、育児のため止むを得ず専業主婦になったという経歴を持ち、本書は彼女自身の話でもある[7]

2016年10月から2017年5月14日までの教保文庫の統計によれば、韓国における本書の主な購買層は20~30代女性で、購買者の38.1%が30代女性であり、27.0%が20代女性だった。30代男性が9.4%、40代女性が9.1%と続いた[8]

2017年5月には、魯会燦正義党院内代表が文在寅大統領の就任記念に「82年生まれ、キム・ジヨンを抱きしめてください」というメッセージを添えて文夫妻に本書を贈り、話題になった[9]

2018年11月、出版から2年余りで100万部を突破。2009年に出版されたシン・ギョンスクによる小説『ママをお願い』以来、初めて100万部を突破した韓国小説となった[10]

2018年12月8日には、筑摩書房から邦訳版が出版された[3]。発売2日目にしてアマゾンジャパンのアジア文学部門でベストセラー1位となり、重版が決定。2019年8月までに計13万部以上が販売された[11][12]

あらすじ

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主人公のキム・ジヨンは33歳の主婦。3歳年上の夫・デヒョンと1歳になる娘と共に韓国ソウル郊外で暮らしている。1982年生まれの韓国の女性で最も多い名前を持つ、どこにでもいそうな女性・ジヨン。彼女は誕生から学生時代、就職、結婚、出産に至るまで様々な女性差別に苦しみながらも必死に生きてきた。

しかし、ある日、通りすがりの男性から侮辱されたことをきっかけに心のバランスを崩したジヨンは、精神科病院に通い始める[13]。物語は、彼女が病院で話した半生を聞き取って記したカルテという形式で進んでいく。

主な登場人物

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キム・ジヨン
1982年4月1日生まれ、33歳(2015年現在)。ソウル特別市在住。大学卒業後は広告代理店で勤務していたが、前年の娘の出産に伴い、退職。以降は専業主婦をしている。

映画

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82年生まれ、キム・ジヨン
82년생 김지영
監督 キム・ドヨン朝鮮語版
脚本 ユ・ヨンア
原作 チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』
出演者 チョン・ユミ
コン・ユ
キム・ミギョン
音楽 キム・テソン
撮影 イ・ソンジェ
編集 チョン・ビョンジン
製作会社 春風映画社
配給 大韓民国の旗 ロッテエンタテインメント
日本の旗 クロックワークス
公開 大韓民国の旗 2019年10月23日
日本の旗 2020年10月9日
上映時間 118分
製作国 大韓民国の旗 韓国
言語 朝鮮語
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小説を基にした同名タイトルの映画が、2019年10月23日韓国で公開された[14]。本作の製作会社である春風映画社の創設者キム・ドヨン朝鮮語版の長編映画監督デビュー作[15]。主演はチョン・ユミコン・ユ[16]。韓国で観客動員数367万人を記録した[17][18]日本では2020年10月9日に公開された[19][20][21]

オーストラリア香港台湾フィリピンシンガポールマレーシアベトナムラオスタイなど37の国と地域に先行販売された[22]

キャスト

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※括弧内は日本語吹替[23]

  • キム・ジヨン:チョン・ユミ有賀由樹子
  • ジヨンの夫 チョン・デヒョン:コン・ユ諏訪部順一
  • ジヨンの母 ミスク:キム・ミギョン朝鮮語版反町有里
  • ジヨンの姉 キム・ウニョン:コン・ミンジョン (木村涼香)
  • ジヨンの弟 キム・ジソク:キム・ソンチョル
  • ジヨンの父 ヨンス:イ・オル
  • ジヨンの同僚 ヘス:イ・ボンリョン
  • ジヨンの元上司 キム・ウンシル:パク・ソンヨン
  • デヒョンの母:キム・ミギョン
  • デヒョンの父:ソン・ソンチャン
  • ジヨンの父方の祖母:カン・エシム
  • 高校時代のジヨン:パク・セヒョン
  • 12歳のジヨン:キム・ハヨン
  • ジヨンの娘 チョン・アヨン:リュ・アヨン
  • チェ・ソヨン医師:キム・ジョンヨン
  • ヨンホの母親:チェ・ヒジン
  • 果物店の娘:ウ・ドイム
  • デヒョンの姉 チョン・スヒョン:ユン・サボン
  • スヒョンの夫:チョン・ヒョンシク
  • 広告主の男性社員:イ・ヘウン
  • 14歳のウニョン:イ・ナユン
  • ジヨンの同僚男性 ビョンシク:ウ・ジヒョン
  • パク課長:イ・ジェイン
  • チョン課長:イ・ジュウォン
  • スビンの母親:キム・グニ
  • 男性社員1:イ・スンヨン
  • ジヨンの母方の祖母:イェ・スジョン朝鮮語版 ※特別出演
  • 過去のスカーフの女:ヨム・ヘラン朝鮮語版 ※特別出演

評価

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この映画は韓国国内で若い女性観客の圧倒的な支持を受けており、CJ CGVによると、公開2日目の2019年10月25日の時点でこの映画の観客のうち20代と30代が70%を占め、性別では女性観客が81%、男性観客が19%であった[24]ユ・アインペ・スジチェ・ウシクら、いくつかの俳優もこの映画の観覧を勧めた[25]

一方、公開初期はネット上での男女別の評価が大きく分かれ、特に映画を見ていない男性による低評価が多かった[26]。公開3日目の10月26日午前9時30分の時点でのポータルサイトネイバーの映画レビューサービス「ネイバー映画」によると、合計1万8569人のネットユーザーが点数をつけたが、女性利用者が付けた点数の平均値は9.48点に対し、男性利用者が付けた点数の平均値は1.87点であり、平均点数は5.62点となった。一方、実際に映画を見た観客の評価によると平均点数は9.53点で、うち女性観客がつけた点数の平均値は9.59点、男性観客がつけた点数の平均値は9.43点でそれほど大きな差がなかった[25]江南大教授の映画評論家のカン・ユジョンは原作の小説について「女性読者は小説の多くの部分に共感する反面、男性はむしろ反感を持った」とした上、若い男性がフェミニズムの台頭に対し、家父長制の特権の失墜に自動連想的で過度に反応したとの考えを示した[26]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ “韓国で130万部超の『82年生まれ、キム・ジヨン』 書店員が伝えるその魅力”. 朝日新聞デジタル じんぶん堂. (2020年2月5日). https://book.asahi.com/jinbun/article/13099159 2020年2月5日閲覧。 
  2. ^ “『82年生まれ、キム・ジヨン』韓国で100万部なぜ売れた?女性たちの反撃は日本でも共感されるか”. Business Insider Japan. (2019年2月20日). https://www.businessinsider.jp/post-185606 2019年2月20日閲覧。 
  3. ^ a b “韓国で社会現象『82年生まれ、キム・ジヨン』邦訳刊行。女性から絶大な共感”. CINRA.NET. (2018年12月14日). https://www.cinra.net/article/column-201812-82nenkimjiyoung 2018年12月14日閲覧。 
  4. ^ “82년생 김지영 책 소개”. 民音社. http://minumsa.minumsa.com/book/10628/ 2020年3月5日閲覧。 
  5. ^ “김지영씨, 잘 지내나요”. (2016年10月24日). https://www.sisain.co.kr/?mod=news&act=articleView&idxno=27405 2019年1月15日閲覧。 
  6. ^ 1978年生まれ。
  7. ^ “‘100만의 김지영’이 쏘아 올린 페미니즘”. (2018年11月27日). http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=201811272116005 2019年1月15日閲覧。 
  8. ^ “'김지영'은 세상의 공감을 어떻게 얻었나”. 韓国日報. (2017年5月22日). http://hankookilbo.com/v/6602caaf7155410192f2a80b5931dd55 2018年5月21日閲覧。 
  9. ^ “노회찬 원내대표가 문재인 대통령 부부에게 선물한 책?”. ハンギョレ. (2017年5月19日). http://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/795460.html 2020年3月5日閲覧。 
  10. ^ “조남주의 '82년생 김지영' 밀리언셀러 됐네”. 朝鮮日報. (2018年11月28日). http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2018/11/28/2018112800084.html 2019年1月15日閲覧。 
  11. ^ “『82년생 김지영』 아마존 재팬 아시아문학 부문, 베스트셀러 1위”. 民音社ブログ. (2018年12月14日). https://blog.naver.com/minumworld/221419098072 2019年1月15日閲覧。 
  12. ^ “'82년생 김지영' 日서 13만부 팔린 이유?…작가와 번역가 대화”. 聯合ニュース. (2019年8月2日). https://www.yna.co.kr/view/AKR20190802044000371 2020年3月5日閲覧。 
  13. ^ 病名は解離性同一性障害
  14. ^ “コン・ユ&チョン・ユミ主演映画「82年生まれ、キム・ジヨン」撮影から美術・音楽まで…ディテールに凝った作品に期待高まる”. Kstyle. (2019年10月16日). https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2128168 2019年10月16日閲覧。 
  15. ^ “「82年生まれ、キム・ジヨン」キム・ドヨン監督“映画学校に入った年齢は40代半ばだった””. Kstyle. (2019年11月19日). https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2128740 2019年11月19日閲覧。 
  16. ^ “チョン・ユミ&コン・ユ主演映画「82年生まれ、キム・ジヨン」3つの観覧ポイントを公開”. Kstyle. (2019年10月22日). https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2128567 2019年10月22日閲覧。 
  17. ^ “チョン・ユミ&コン・ユ主演映画「82年生まれ、キム・ジヨン」累計観客動員数が300万人突破”. Kstyle. (2019年11月10日). https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2129884 2019年11月30日閲覧。 
  18. ^ ボックスオフィス”. 韓国映画振興委員会 歴代ボックスオフィス. 2020年3月5日閲覧。
  19. ^ “悩めるすべての女性たちへ…韓国ベストセラーの映画化『82年生まれ、キム・ジヨン』公開決定”. シネマカフェ. (2020年3月5日). https://www.cinemacafe.net/article/2020/03/05/66111.html 2020年3月5日閲覧。 
  20. ^ “「82年生まれ、キム・ジヨン」10月に公開、チョン・ユミとコン・ユが共演”. 映画ナタリー. (2020年3月5日). https://natalie.mu/eiga/news/369732 2020年3月5日閲覧。 
  21. ^ “「82年生まれ、キム・ジヨン」10月9日から日本公開!チョン・ユミ&コン・ユが初の夫婦役に”. 映画.com. (2020年3月5日). https://eiga.com/news/20200305/5/ 2020年3月5日閲覧。 
  22. ^ “チョン・ユミ&コン・ユ主演映画「82年生まれ、キム・ジヨン」世界37ヶ国で先行販売”. Kstyle. (2019年10月23日). https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2128679 2019年10月23日閲覧。 
  23. ^ 82年生まれ、キム・ジヨン”. クロックワークス公式サイト. 2021年2月28日閲覧。
  24. ^ ‘9대 1’ 평점 전쟁…영화 ‘82년생 김지영’, 제2의 ‘걸캅스’?” (朝鮮語). 세계일보 (2019年10月25日). 2023年2月2日閲覧。
  25. ^ a b 박미애 (2019年10月25日). “'82년생 김지영', 성별로 갈리는 평점…지지 움직임도” (朝鮮語). 이데일리. 2023年2月2日閲覧。
  26. ^ a b 나원정 (2019年10月27日). “평점테러 당한 '82년생 김지영' 관람뒤 남녀 평점은 같았다” (朝鮮語). 중앙일보. 2023年2月2日閲覧。

外部リンク

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