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長沢美津

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
長沢ながさわ 美津みつ
誕生 津田 美津
1905年11月14日
日本の旗 日本石川県金沢市
死没 (2005-04-26) 2005年4月26日(99歳没)
日本の旗 日本東京都
職業 歌人国文学者
国籍 日本の旗 日本
教育 文学博士
最終学歴 日本女子大学
ジャンル 短歌
代表作 『女人和歌大系』(1962-1978年)
主な受賞歴 現代短歌大賞(1979年)
勲四等宝冠章(1981年)
デビュー作 『氾青』(1929年)
所属 女人短歌会
ウィキポータル 文学
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長沢 美津(長澤 美津、ながさわ みつ、女性、1905年11月14日[1][2][3] - 2005年4月26日)は、日本の歌人国文学者。「女人短歌会」主宰[2]

経歴

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石川県金沢市出身[1][3]。旧姓:津田[3]。津田全吉・フクの長女として生まれる。近祖に加賀藩漢学者津田鳳卿がいる。県立第一高等女学校(現石川県立金沢二水高等学校)在学中に、和歌を江戸さい子に学ぶ[4]1922年日本女子大学校国文科入学[1]、短歌グループに入る[5]折口信夫万葉講義を聴きに飯田橋の国学院へしばしば出かける[6]。在学中に『目白文学』創刊に参加[7]。恩師・久松潜一に文学史を学び、1926年卒業[3][5][8]。久松の紹介状を持って古泉千樫を訪ね[1]、その後帰郷し古泉に自作を送る[9]。同年同郷の長沢雄次と結婚[7]、上京し荻窪に住む[1]

古泉を中心とする「青垣」の同人となるが、師は1927年に急逝[6][10]今井邦子若山喜志子四賀光子らが1928年結成した「ひさぎ会」に参加する[11][1][7]1929年、第1歌集『氾青(はんじょう)』[注釈 1] を刊行、1935年、第2歌集『垂氷詠(たるひかげ)』、1941年、第3歌集『花芯』刊行[1]1943年夫の仕事の関係で埼玉県大宮市に住む。1945年栃木県宇都宮市に移り同地で終戦を迎え、年末に荻窪の旧居に帰住する[1]

1947年、東京歌和会に参加[1]1949年、北見志保子、川上小夜子、五島美代子、若山喜志子、川口千香枝と共に「女人短歌会」結成に参加、会計・庶務担当常任幹事となる[12]1950年女人短歌』創刊、編集代表[3]。門人の歌集は「女人短歌叢書」として刊行を続ける[13]葛原妙子五島美代子森岡貞香らとともに活動。戦後の新しい女性の生き方を追求し、中城ふみ子が登場した際には擁護をした[14]。「女人短歌」結成メンバーの中では、1997年の終刊までを唯一見届けた人物である[15]

1962年、『女人和歌体系』第1巻刊行[1]、以降1978年まで女性の和歌8万首を収録した全6巻の刊行に尽力する[7][16]1964年練馬に転居[1]1971年、女性和歌の史的研究により国学院大学より学位を授与される[7][17]

1979年、『女人和歌大系』(編)全六巻により第2回現代短歌大賞受賞[2][18]1981年勲四等宝冠章受章。「女性和歌の史的考察」で文学博士の学位を取得

1992年歌会始召人[3][19]。明治期の税所敦子以来[16]、戦後初めて女性として招かれる。和歌文学会、紫式部学会、日本文芸家協会会員[2]

2005年4月26日、肺炎にて死去。99歳。

『女人和歌大系』

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長沢が1962年から1978年にかけて編纂し、風間書房から発行した『女人和歌大系』全6巻の概要は次の通り。

  • 女人和歌大系. 第1巻 (歌謡期・万葉期・勅選集期) 1962年 677p NDL
  • 女人和歌大系. 第2巻 (勅撰集期私家集,歌合) 1965年 898p NDL
    • 第一篇 勅撰集期 私家集:1 伊勢集~53 徽安門院一条集(貞和百首歌)
    • 第二篇 歌合:1 亭子院歌合 延喜13年3月13日(913)~23 千五百番歌合 建仁元年(土御門院御宇)(1202)
    • 掲載歌初句索引
  • 女人和歌大系. 第3巻 (私家集期) 1968年 834p NDL
    • 第一篇 武家系統女性の和歌作品
    • 第二篇 私家集ある女性の和歌作品
    • 第三篇 私家集外に和歌のある女性作品
    • 第四篇 江戸末期女性の和歌作品
    • 第五篇 私撰集収録和歌作品及び狂歌其他の和歌作品
    • 歌道諸派系統表;私家集期主要女性作者一覧;作者略伝(私家集期);索引
  • 女人和歌大系. 第4巻. 1972年 722p NDL
    • 補遺之部:万葉集期;勅撰集期;私家集期
    • 研究之部:勅撰集期:第一篇 八代集における贈答歌と女性歌;第二篇 後拾遺和歌集と女歌人;第三篇 女性歌の断層
    • 研究之部:私家集期 江戸期の女性生活と和歌:第一篇 前江戸期 ;第二篇 江戸初期(封建制度確立途上期);第三篇 江戸中期(階級混淆期);第四篇 江戸末期(思想対立期)
    • 女人和歌大系1,2,3巻にわたる年表;掲載歌初句索引
  • 女人和歌大系. 第5巻 (近代期前編) 1978年 758p NDL
    • 図表:1 総括図;2 近代期(前編)主要女歌人図表
    • 第一篇 明治前期の女性の歌集:歌集:(A)御集;(B)私歌集;(C)特殊歌集
    • 第二篇 明治前期の女性の遺歌集:第一章 概説;第二章 遺歌集:(A)個人歌集;(B)追悼歌集より女性歌抄出
    • 第三篇 明治前期の選集の女性歌:選集:新竹集~勅題歌集
    • 系統図;近代前期女歌人一覧表;作者略伝;索引:作者名;歌集名

著作

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歌集

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  • 氾青 歌集 四海書房 1929 NDL
  • 垂氷影 歌集 青垣会 1935 (青垣叢書) NDL
  • 花芯 青垣会 1941 NDL
  • 雲を呼ぶ 歌集 女人短歌会 1950 (女人短歌叢書) NDL
  • 水面 歌集 長谷川書房 1953 (新選短歌叢書) NDL[20]
  • 雪 歌集 長谷川書房 1955 NDL
  • 汐 歌集 新星書房 1958 (女人短歌叢書) NDL
  • 車 歌集 新星書房 1960 (女人短歌叢書) NDL
  • 往来 歌集 新星書房 1963[21]
  • 地紋 歌集 新星書房 1966[21]
  • 線 歌集 新星書房 1970[21]
  • 五黄 歌集 新星書房 1974(女人短歌叢書) CiNii
  • 烏兎 長沢美津自選歌集 短歌新聞社 1975(現代歌人叢書) CiNii(『雲を呼ぶ』から『五黄』までの歌集からの自選歌426首と、「兼六園百首」を加えたもの)[21]
  • 層塔 歌集 新星書房 1976[22]
  • 墨雫 歌集 新星書房 1980[23][24]
  • 一滴の油 歌集 沖積舎 1981.6 NDL
  • 八十扉 歌集 新星書房 1985.2 (女人短歌叢書) NDL
  • 部類長沢美津家集 新星書房 1985.10 NDL(歌集16冊をまとめた1冊)[25]
  • 青海波 歌集 新星書房 1987.8 (女人短歌叢書) NDL
  • 天地相聞 歌集 1989[26][27]
  • 花鳥行列 歌集 新星書房 1991.2 (女人短歌叢書) NDL
  • 仏眼紋 歌集 新星書房 1993.5 (女人短歌叢書) NDL
  • 卒塔婆 歌集 新星書房 1994.10 (女人短歌叢書) NDL
  • 空 歌集 短歌新聞社 1995.11 (現代女流短歌全集) NDL
  • 氾青 2001.7 (短歌新聞社文庫) NDL

研究書

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  • 女人和歌大系 全6巻(編)風間書房 1962-78(上掲の通り)

随筆

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  • アメリカを行く 新樹社 1959 NDL
  • わすれもの 随筆 新樹社 1970 NDL
  • ひろいもの 随筆 短歌新聞社 1975 NDL
  • みちくさ抄 続 随筆 東京四季出版 1995.11 NDL
  • 文字拾遺 短歌随想 蝸牛社 1978.7 NDL[28]
  • 一日花 随筆 沖積舎 1984 NDL
  • 如何なる星のもとに(編)東京四季出版 1993.6 NDL

評伝

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  • 長沢美津小特集. 『短歌』 27(4) 1980.04 pp125-137 CiNii
  • 山本陽子『長沢美津の短歌』短歌新聞社, 1988.9 NDL
  • 長沢美津論--今を輝く大器 (現代女流歌人の世界<特集>). 『短歌』 38(9) 1991.09 pp161-163 NDL
  • 木田そのえ『長沢美津小論』不識書院, 1994.5 NDL
  • 樋口美世ほか著『歌人長沢美津 : 作品と人間像』短歌新聞社 2000.7 NDL
  • 追悼 長澤美津氏を偲ぶ. 『短歌研究』 62(6) 2005.6 p.82-86 NDL
  • 小議会 特集 長沢美津の歌. 『短歌現代 : 総合短歌雑誌』 30(1) (通号 347) 2006.1 p.116-119 NDL
  • 「長澤美津」. 渡邊澄子『負けない女性の生き方217の方法:明治・大正の女作家たち』博文館新社, 2014, p352-353

脚注

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注釈

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  1. ^ 「氾青」とは、「水の動く現象そのものを捉えたいという気持ちにあてはめ」た、大熊長治郎の命名という(渡邊)

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k 長沢美津『烏兎:長沢美津歌集』短歌新聞社、1975年6月、123-125頁。 
  2. ^ a b c d 『現代日本執筆者大事典77/82. 第3巻』日外アソシエーツ、1984年、483頁。ISBN 4-8169-0403-4 
  3. ^ a b c d e f 『詩歌人名事典 新訂第2版』日外アソシエーツ、2002年、495頁。 
  4. ^ 『文字拾遺』蝸牛社、73頁。 
  5. ^ a b 長沢美津『みちくさ抄 続』東京四季出版、1995年11月、20頁。ISBN 4-87621-766-1 
  6. ^ a b 『みちくさ抄 続』東京四季出版、118頁。 
  7. ^ a b c d e 吉田漱「長沢美津:気根と営為の歌人」『昭和萬葉集 別巻』講談社, 1980, p72
  8. ^ 『文字拾遺』蝸牛社、77頁。 
  9. ^ 『みちくさ抄 続』東京四季出版、27頁。 
  10. ^ 『文字拾遺』蝸牛社、85頁。 
  11. ^ 『みちくさ抄 続』東京四季出版、120-121頁。 
  12. ^ 『みちくさ抄 続』東京四季出版、122頁。 
  13. ^ 『みちくさ抄 続』東京四季出版、125頁。 
  14. ^ 長沢美津『文字拾遺:短歌随想』蝸牛社、1978年7月、10-11頁。 
  15. ^ 三枝むつみ (2021). ねむらない樹 7: 110-111. 
  16. ^ a b 楢崎憲二 (1992). “歌会始の召人に選ばれた長沢美津さん”. 女性情報 (パド・ウィメンズ・オフィス) (60): 66. 
  17. ^ 長澤, 美津 (1971). 女性和歌の史的研究 : 八代集における贈答歌と女性歌、後拾遺和歌集と女歌人、女性歌の断層、江戸期の女性生活と和歌. https://ci.nii.ac.jp/naid/500000396876. 
  18. ^ 一般社団法人 現代歌人協会 | 現代短歌大賞(詳細)”. www.kajinkyokai.com. 2022年11月2日閲覧。
  19. ^ 『みちくさ抄 続』東京四季出版、73-77頁。 
  20. ^ 中野菊夫 (1954-05). “歌集「水面」〔長沢美津〕にふれつつ”. 短歌雑誌 8 (5): 34-36. http://id.ndl.go.jp/bib/000000014512. 
  21. ^ a b c d 前田透「『烏兎』解説. 『烏兎 長沢美津自選歌集』 短歌新聞社 1975, p115-122
  22. ^ 太田絢子 (1977). “書評 『層塔』長沢美津著”. 短歌研究 34 (5): 134. doi:10.11501/7889852. 
  23. ^ 国見純正 (1980). “書評 長沢美津歌集『墨雫』”. 短歌現代 : 総合短歌雑誌 4 (8): 143. doi:10.11501/7951000. 
  24. ^ 林安一 (1980). “書評 長沢美津歌集『墨雫』”. 短歌 27 (10): 258-259. doi:10.11501/7899243. 
  25. ^ 1801003x02 ky 希少本 部類 長澤美津家集 昭和60...”. ヤフオク!. 2022年11月11日閲覧。
  26. ^ 井上靖 (1989). “『天地相聞』随感”. 女人短歌 (161): 34-35. doi:10.11501/2285535. 
  27. ^ 川島みどり (1989). “長沢美津第十八歌集天地相聞について”. 覇王樹 69 (10): 7. doi:10.11501/7920322. 
  28. ^ 相沢一好 (1979-05). “長沢美津著「文字拾遺」を読んで (今日の女流について<特集>)”. 短歌 26 (5): 130-131. http://id.ndl.go.jp/bib/000000014502. 

参考文献

[編集]
  • 渡邊澄子『負けない女の生き方217の方法:明治・大正の女作家たち』博文館新社、2014年、p352-353
  • 日本人名事典