西肥観光汽船
第一西肥丸 (平戸港・1982年) | |
種類 | 株式会社 |
---|---|
本社所在地 |
日本 長崎県佐世保市鹿子前町1055 |
業種 | 海運業 |
事業内容 | 旅客定期・不定期航路 |
西肥観光汽船株式会社(さいひかんこうきせん)は、長崎県佐世保市に本社のあった西肥自動車グループの海運会社である。佐世保港・鹿子前を拠点として、西海国立公園の九十九島と西海橋を連絡する定期航路を運航していた。
概要
[編集]1955年(昭和30年)3月、それまで佐世保 - 俵ヶ浦 - 鹿子前の沿岸航路を運航していた佐世保海上交通株式会社が、佐世保 - 西海橋 - 鹿子前 - 佐世保の航路を開設した[1]。当時「東洋一のアーチ橋」として完成間近だった西海橋と、九十九島を含む一帯は、同年に西海国立公園として指定され、観光航路として注目されるようになった。
1959年(昭和34年)、佐世保海上交通は西肥自動車の資本によって子会社化され、西肥観光汽船株式会社に社名を変更、以後はバス事業と連携した運航が行われるようになり、昭和30年代には西海橋から大村湾への航路も運航された。
佐世保 - 西海橋 - 鹿子前航路は「シルバールート99」と称され、定期観光バスのコースに組み込まれたほか、貸切バスによる団体利用の割合も高かった[2]。三角航路の形態[注 1]であったが、のちに佐世保寄港は廃止され、鹿子前発着(九十九島経由)西海橋の単純往復となった。当初は佐世保海上交通から継承の木造客船が就航、1962年(昭和37年)に「第二西肥丸」、1968年(昭和43年)には「第一西肥丸」の新造船が投入され、面目を一新した。
旅行形態の変化などから、昭和50年代に入ると次第に利用者が減少し、1982年(昭和57年)12月1日に休航、翌年には事業廃止となった[3]。
航路
[編集]定期航路
[編集]- 佐世保 - 西海橋 - 鹿子前
- 64.0km、当初は4 - 10月の運航、一日1往復[4]
- のち、西海橋 - 鹿子前間・一日2 - 4往復の通年運航となった[5][6][7][8][9]。所要時間1時間20分(鹿子前 - 西海橋・片道)。
- 1982年には高速船[注 2]が投入され、所要時間40分になった[10]。
- 大村 - 西海橋 - 佐世保
不定期航路
[編集]佐世保 - 鹿子前以外はいずれも佐世保近郊の夏期海水浴客向け航路で、西海沿岸商船、県北海運等の他社も同時期に運航した。
- 相浦 - 弁天島
- 佐世保 - 鹿子前
- 26km、3 - 5、8 - 10月運航[8]。
- 1960年代に運航。
- 佐世保 - 白浜
- 鹿子前 - 金重島
船舶
[編集]- 西肥丸[14]
- 1955年7月竣工、九州工材建造、木造。もと佐世保海上交通「つくも丸」。
- 79.01総トン、登録長19.80m、型幅4.80m、型深さ2.00m、ディーゼル1基、機関出力120ps、航海速力9ノット、旅客定員206名。
- 1944年7月竣工、建造所不詳、鋼製。もと佐世保海上交通「つばめ丸」。
- 26.25総トン、ディーゼル1基、機関出力85ps→115ps、航海速力9ノット→最大速力10.5ノット、旅客定員53名→58名。
- アルバトロス丸[7]
- 1944年4月進水、木造。
- 11.59総トン、ディーゼル1基、機関出力85ps、航海速力9.5ノット、旅客定員22名。
- 1954年3月進水、木造。
- 13.10総トン、ディーゼル1基、機関出力85ps、航海速力9ノット、旅客定員26名。
- 第二西肥丸[15]
- 1962年6月進水、前畑造船鉄工建造、船舶整備公団共有、鋼製。
- 106.54総トン、全長24.40m[16]、型幅5.50m、型深さ2.30m、ディーゼル1基、機関出力320ps、航海速力10.30ノット、旅客定員224名。
- 第五西肥丸[8]
- 1963年3月進水、鋼製。
- 22.24総トン、ディーゼル1基、機関出力170ps、航海速力9.5ノット、旅客定員76名。
- シルバーアロー[14]
- 1964年3月竣工、三菱重工業下関造船所建造、軽合金製、水中翼船。
- 4.90総トン、登録長8.00m、型幅2.50m、型深さ1.10m、ガソリンエンジン、機関出力280ps、最大速力40ノット、旅客定員21名。
- 第一西肥丸[17]
- 1968年3月竣工、長崎造船建造、船舶整備公団共有、鋼製。
- 99.13総トン、登録長22.00m、型幅5.40m、型深さ2.30m、ディーゼル1基、機関出力450ps、航海速力11.69ノット、旅客定員210名。
- 第10西肥丸[18]
- 11総トン、木造、1962年「第二西肥丸」建造に伴い廃船。
- 第11西肥丸[18]
- 12総トン、木造、1962年「第二西肥丸」建造に伴い廃船。
脚注
[編集]- ^ 鹿子前→西海橋→佐世保港、またはその逆。定期観光バスでは西海橋で乗降する片道利用となっていたため、佐世保港発着の場合、九十九島は見られなかった。
- ^ 時刻表では「ホーバークラフト」の運航となっている。
出典
[編集]- ^ 佐世保市史編さん委員会 編『佐世保市政七十年史』上巻,佐世保市,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9634464 (参照 2024-08-03)
- ^ 『統計年鑑』第4回(昭和40年),佐世保市総務部企画調査課,1967. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9548962 (参照 2024-08-03)
- ^ 『旅客船 : 機関誌』(147),日本旅客船協会,1984-02. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2811030 (参照 2024-08-03)
- ^ a b c 『旅客定期不定期航路事業現況表』,日本旅客船協会,[1959]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2493516 (参照 2024-08-03)
- ^ a b 『旅客定期・不定期航路事業現況表』,日本旅客船協会,[1960]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2524318 (参照 2024-08-03)
- ^ a b 『旅客定期不定期航路事業現況表』昭和35年8月1日現在,運輸省海運局定期船課,[1961]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2494226 (参照 2024-08-03)
- ^ a b c d e 『旅客定期不定期航路事業現況表』,運輸省海運局定期船課,[1962]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2513296 (参照 2024-08-03)
- ^ a b c d e 『旅客定期不定期・自動車航送貨物定期航路事業現況表』昭和41年8月1日現在,運輸省海運局定期船課,[1967]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2531329 (参照 2024-08-03)
- ^ a b 『旅客定期・不定期自動車航送貨物定期航路事業現況表』昭和57年4月1日現在,運輸省海運局定期船課,[1982]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12121864 (参照 2024-08-03)
- ^ 国鉄監修 交通公社の時刻表 1982年11月号 P.550
- ^ 『旅客定期・不定期自動車航送貨物定期航路事業現況表』昭和51年4月1日現在,運輸省海運局定期船課,[1976]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12061801 (参照 2024-08-03)
- ^ 運輸省海運局 編『旅客定期・不定期自動車航送貨物定期航路事業現況表』昭和52年4月1日現在,運輸省海運局定期船課,[1977]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12065822 (参照 2024-08-03)
- ^ 『旅客定期・不定期自動車航送貨物定期航路事業現況表』昭和53年4月1日現在,運輸省海運局定期船課,[1978]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12069081 (参照 2024-08-03)
- ^ a b c 『日本旅客船船名録』昭和39年版,日本旅客船協会,1964. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2504820 (参照 2024-08-03)
- ^ 『旅客船 : 機関誌』(49),日本旅客船協会,1962-10. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2810932 (参照 2024-08-03)
- ^ 『日本船舶名鑑』1968年版,日本船舶研究所,1967. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2517952 (参照 2024-08-03)
- ^ 『旅客船 : 機関誌』(78),日本旅客船協会,1968-07. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2810961 (参照 2024-08-03)
- ^ a b 『旅客船 : 機関誌』(53),日本旅客船協会,1963-07. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2810936 (参照 2024-08-03)
関連項目
[編集]- 西肥自動車
- 佐世保市営船 - 鹿子前発着の九十九島観光船を運航した同業他社。現在は民営化されている。
- 平戸口運輸 - 鹿子前 - 平戸航路を運営した野母商船グループの同業他社。
- 安田産業汽船 - 大村湾航路を運営する同業他社。1990年代には佐世保航路も運営した。