装甲列車
装甲列車(そうこうれっしゃ)とは、稼働状態の重武装を施した列車・鉄道車両の総称である。鉄道路線を利用する兵器として、第一次世界大戦および第二次世界大戦で盛んに使われた。
概要
[編集]鉄道網は補給上の重要な施設であり、その防衛は戦線の維持にとって必要不可欠なものである。パルチザン、レジスタンスといった反抗勢力にとって鉄道は格好の目標となるため、その防衛の観点から生み出された。特に、ヨーロッパ、ロシアなど鉄道網の発達した地域、南北戦争時のアメリカや中国など他に有利な移動手段のない地域で有益な兵器であった。
また、列車の搭載能力を生かして、歩兵、砲兵、対空砲兵、工兵、軍医、高性能通信機を装備した通信兵、場合によっては軽戦車や装甲車までも必要物資込みで一度に運搬することが可能であり、小規模ながらも諸兵科を統合した独立作戦部隊としても機能する。
装甲列車は鉄道網の発展とともに発展した。南北戦争やボーア戦争で本格的に使用されるようになった。初期のものは編成も短く比較的武装も貧弱で装甲も薄いものが多かったが、次第に重武装化されていった。第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけての基本的スタイルは、蒸気機関車を改造し装甲を取り付けて防弾性を増した装甲機関車で、同じく装甲を取り付けて丈夫にした貨車を牽引し、その貨車には対空砲座、回転式砲塔、ロケット発射器などの武装を取り付けたものが多かった。
しかし、以下に挙げる理由から、第二次世界大戦を最後に主要国の装備から姿を消した。
- 連合国(特にアメリカ)側の理由。
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- 自動車や航空機の発達によって、前線付近での軍事輸送における鉄道への依存度が大きく低下した。
- 海をまたいだ地域間(例えば、ノルマンディー上陸作戦後の英本土から欧州へ)の列車の輸送と、輸送してから作戦行動が可能な状態にするのに手間がかかる。
- ドイツ軍の部隊移動を妨害する為にドイツ軍展開地域の鉄道網を徹底的に爆撃した為、鉄道に頼れなかった。
- 枢軸国側の理由。
- 両陣営共通の理由。
近年では機関車にディーゼル機関車を利用した物や、司令本部の機能を持った貨車などもある。またアフリカなどでは、1輌のモーターカーからなる簡易装甲鉄道車輌や、通常の装輪装甲車で線路上を走行できるようにしたものなどが、対ゲリラ用兵器・暴徒鎮圧用車輌として用いられている。
2022年ロシアのウクライナ侵攻において、ロシア軍が装甲列車を投入した[1][2]。
主な装甲列車
[編集]- ロシア帝国 / 南ロシア軍・ロシア軍
- ドミートリー・ドンスコーイ (ドミートリー・ドンスコイ)
- エヂーナヤ・ロッスィーヤ (ひとつのロシア)
- フペリョート・ナ・ロージヌ (祖国へ)
- ゲネラール・アレクセーエフ (アレクセーエフ将軍)
- オフィツェール (将校)
- ゲネラール・コルニーロフ (コルニーロフ将軍)
- グローム・ポベードィ (勝利の轟)
- コズィマー・ミーニン (クジマ・ミーニン)
- イリヤー・ムーロメツ (イリヤー・ムーロメツ)
- ゲオルギー・ポベドノーセツ (勝利者聖ゲオルギオス)
- N5017
- クニャージ・ポジャールスキー (ポジャールスキー公)
- No56
- ドィレンコフ装甲列車
- フンフズ級装甲列車
- 西ウクライナ人民共和国
- スィチョヴィー・ストリリツィー (シーチ銃兵隊員)
- ヴィーリナ・ウクライナ (自由なウクライナ)
- ホールトィツャ (ホールトィツャ : ザポロージエ・コサックの根拠地)
- チェルヴォーナ・カルィーナ (赤いカリーナ)
- ザポロージェツィ (ザポロージェツィ)
- ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国 / ソ連
- 第1装甲列車「ザ・スターリナ!」 (スターリンのために!)
- 第6装甲列車
- コローメンスキイ・ラボーチイ (コロームナの労働者)
- ヴォーリャ
- ストレラー
- ヴォルク
- 第98装甲列車「ソヴィエツキー・ロスィーヤ」
- 第152装甲列車「モールニヤ」
- 第36装甲列車「レーニン」 (ウラジーミル・レーニン)
- ПТ-33
- ПЛ-37
- ПЛ-42
- MBV-2
- NKPS-42
- D-2型
- ザームレツ
- BP-1
- BTL-1
- ポーランド共和国
- スロバキア共和国
- 大日本帝国
- クロアチア共和国
- イラク
- 中華民国
- アメリカ合衆国
- キューバ
- グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国
- 南アフリカ共和国
- ローデシア
- モーリタニア
- ベルギー領コンゴ
- フランス
- オーストリア=ハンガリー帝国
- ドイツ帝国
- ナチス・ドイツ
- イタリア
- ユーゴスラヴィア
- アルバニア
- ギリシャ
- フィンランド
- スウェーデン
登場作品
[編集]映画
[編集]- 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』
- 某国軍が管理しているデンザリ刑務所へ囚人を移送する専用列車として登場。手動式の速射砲と対空機関銃を装備する。
- 『スターリングラード』
- 赤軍が、激戦地のスターリングラードへ赤軍将兵を移送するのに使用。
- 『ゴールデンアイ』
- 戦車で追跡するジェームズ・ボンドから逃げ切ったアーカディ・ウルモフ将軍らが搭乗。ジェームズ・ボンドが戦車で線路上に立ちふさがり主砲で砲撃するものの、破壊することが出来ずに逆に粉々に破壊される。
- 『大列車作戦』
- 操車場で装甲機関車が登場するも、連合軍の爆撃で破壊される。
- 『鉄路の闘い』
テレビドラマ
[編集]- 『烈車戦隊トッキュウジャー』
- 「シールドレッシャー」の名称で登場。
小説
[編集]- 『アップフェルラント物語』
- ドイツ帝国の装甲列車(しかし、機銃座が設置された軍用列車に毛の生えた程度の物)がアップフェルラントへ侵攻する。
- 『機神兵団』
- 『群青旅団』
- 『疾走! 千マイル急行』
アニメ・漫画
[編集]- 『アームズラリー』
- 第1話に登場。
- 『銀河鉄道999』
- 三連装砲塔を上下左右に計四基備えた装甲車両を999号に増結。クイーンエメラルダス号を迎撃するも、砲の射程が届かずに無力化される(アニメ版では反撃で、上下砲塔を破壊される)。
- 「卑怯者の長老帝国」ではこれを複数連結した装甲列車が登場するが、惑星からのビームにより破壊され、銀河鉄道管理局より更に強力な無軌道強行装甲列車が派遣され、惑星を破壊する。
- 『クラユカバ』
- 主人公らの主な移動手段として交通兵団所属の軽装甲列車「ソコレ四六三號」が登場。
- 『甲鉄城のカバネリ』
- 『終末のイゼッタ』
- 『進撃の巨人』
- 『新造人間キャシャーン』
- 国連軍所属。アンドロ軍団の鉄の悪党列車を迎撃、退散させる。
- 『大砲とスタンプ』
- 第5話「よもや装甲列車強盗」の回に、装甲列車トゥガーリン・ゼメーヴィチが登場。
- 『太陽の牙ダグラム』
- デロイア7を引きつける囮列車として第1話に登場。蒸気機関車牽引ではないのに、SLのドラフト音を出す謎の列車。警戒用の装甲先導車両も描写されている。
- 『天空の城ラピュタ』
- 軍隊所属のものが登場し、逃走するドーラ一家に対して砲撃を行う。
- 『ハウルの動く城』
- 『端ノ向フ』
- 国防軍所属の軽装甲列車が登場。
- 『パンプキン・シザーズ』
- 『鉄路ゆかば‐義勇装甲列車隊‐』
- 塚原重義監督の3DCGアニメ。重装甲列車「敷島」を用いて、過激派武装集団「革命赤軍」の本拠地へと殴り込むこととなったはぐれ者将校を描く。
ゲーム
[編集]- 『1941 Counter Attack』
- 『19XX -THE WAR AGAINST DESTINY-』
- 『1944 THE LOOP MASTER』
- 『F/A』
- 『War Thunder』
- 『アインハンダー』
- 『アウトフィット』
- 『アクウギャレット』
- 『飛鳥&飛鳥』
- 『アンダーディフィート』
- 『赤い刀』
- 『エースコンバット6 解放への戦火』
- 『ガンバード』
- 『ギガウイング』
- 『ギガウイング2』
- 『空牙』
- 『鋼鉄帝国』
- 『コール オブ デューティ ワールドウォーII』
- 『スクランブルスピリッツ』
- 『ストライカーズ1945』
- 『ストライカーズ1945II』
- 『ストライカーズ1945PLUS』
- 『ストライカーズ1999』
- 『ゼロガンナー2』
- 『戦場のヴァルキュリア』
- 『戦場のヴァルキュリア4』
- 『ソニックウィングス2』
- 『ソニックウィングス スペシャル』
- 『ソニックウィングス リミテッド』
- 『バトルバクレイド』
- 『バトルフィールド1』
- 『飛翔鮫』
- 『鮫!鮫!鮫!』
- 『プロギアの嵐』
- 『メタルスラッグ』
- 『ライデンファイターズ』
- 『ライデンファイターズ2』
- 『ライデンファイターズJET』
- 『ロックマンDASH2 エピソード2 大いなる遺産』
脚注
[編集]- ^ “ウクライナ当局、南部のロシア支配地で武装抵抗拡大と報告”. CNN.co.jp. (2022年5月22日)
- ^ . https://topcor.ru/24379-na-ukrainu-pribyl-rossijskij-bronepoezd.html