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船舶に乗り組む衛生管理者

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
衛生管理者適任証書から転送)
衛生管理者
英名 Health Supervisor
実施国 日本の旗 日本
資格種類 国家資格
分野 海運・労働衛生
試験形式 筆記・実技
認定団体 国土交通大臣
根拠法令 船員法船舶に乗り組む医師及び衛生管理者に関する省令
公式サイト https://www.mlit.go.jp/about/file000070.html
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船舶に乗り組む衛生管理者[注 1](えいせいかんりしゃ、: Health Supervisor[注 2])とは、船員法に規定する必置資格者のひとつで、船内の衛生管理に必要な業務に従事する者をいう[2]。別称は船舶衛生管理者。日本国内および日本政府があらかじめ申し合わせを行った改正STCW条約締約国で効力を有する[3]。学校等における教育を必須とせず試験の合格並びに証書の交付により、診察・投薬・注射・縫合などの医療行為が部分的に可能となる日本で唯一の資格である。

概要

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近海区域以遠を航行区域とする総トン数3000トン以上の船舶などでは、乗組員の中から衛生管理者を選任する必要がある[4]。衛生管理者は次節に述べる衛生管理者適任証書を有する者の中から選任する[4]が、やむを得ない場合は国土交通大臣の許可を得たうえで、資格を有していない者を選任することができる[5]。衛生管理者を乗り組ませる船舶は、2019年8月時点で349隻である[6]

衛生管理者は、必要に応じ医師の指導を受けながら、船員の健康管理や保健指導、作業環境衛生、居住環境衛生、食料と用水の衛生保持など、船内の衛生管理に関する業務に従事する[7]

厚生労働省管轄の労働安全衛生法による衛生管理者と類似しているが、船舶の乗組員においては海上労働の特殊性に鑑み労働基準法等の代わりに船員法が適用される[8]ため、両資格は根拠法及び主務大臣も異なる「衛生管理者」として並存している。両資格の業務面での決定的な相違点は、緊急時には医師の助言等を受け投薬・注射などの医療行為を部分的に許されていることである[6][9]。このほか血圧の測定、止血なども行うため、船内では医務室などで勤務する[要出典]

なお、近海区域以遠を航行区域とする総トン数3000以上の船舶のうち、最大搭載人員100人以上の船舶では、船舶に乗り組む医師(船医)を乗船させることになっている[6][10]。また、船医や衛生管理者を乗り組ませない船舶では、一定の海技免状を有するなどの条件を満たす乗組員から「衛生担当者」を選任し、衛生管理の業務を担当させる[6][11]。「衛生担当者」は、海員が常時10名以下の船舶などでは船長兼務することができる[6][12]

衛生管理者適任証書

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資格の認定

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国土交通大臣(受付窓口は地方運輸局等)から衛生管理者適任証書の交付を受けるには、大臣が執行する衛生管理者試験に合格するか、大臣がこれと同等以上の知識・技能を有すると認定する者である必要がある[13]。 後者には、以下の者などが該当する[14]

適任証書には、船員法に基づく衛生管理者であることとともに、改正STCW条約第6章第4規則に適合するものであることが明記されている[1]

試験

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衛生管理者試験は通例、西暦の奇数年12月に関東運輸局本局(横浜市)、偶数年12月に神戸運輸監理部本庁舎(神戸市)にて国土交通省が直接実施する。試験日の1ヶ月前までに国土交通大臣が官報公示する[15]

受験資格

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  • 満20歳以上の者[16]

試験科目

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  • 筆記(7科目) - 労働生理、船内衛生、食品衛生、疾病予防、保健指導、薬物、労働衛生法規[17]
  • 実技(2科目) - 救急処置、看護法[17]

登録講習

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先述の通り、講習を修了する事によっても、衛生管理者適任証書の交付を受ける事ができる[14]

唯一の大臣登録講習機関となっている船員災害防止協会(船災防)が行う講習は以下の3種類あり、最終日の検定試験に合格すると修了となる[18]

  • 衛生管理者登録講習
受講資格は、検定試験の前日において満20歳以上の者。講習時間は100時間(約4週間)。近年は東京都名古屋市の2箇所にて年間各1回異時実施。
  • 船舶衛生管理者講習(B)
東京海洋大学海洋工学部又は神戸大学海洋政策科学部(従前の海事科学部を含む)の乗船実習課程を修め卒業した者、及びそれらの前身である東京商船大学神戸商船大学を卒業した者は、時間を短縮した講習を受けることができる。また2018年8月の国土交通省基準改正により、商船系高等専門学校、水産系高等学校の本科を卒業した者、及び先の大学を含めこれら学校で57時間以上の衛生に関する授業を履修した者も対象となった。講習時間は43時間(約10日間)。近年は東京都、横浜市または名古屋市、神戸市の3箇所にて年間1回同時実施。
  • 船舶衛生管理者講習(C)
2018年8月の国土交通省基準改正により新設。水産系高等学校本科卒業者のうち、45時間以上のに衛生に関する授業を履修したものが対象。講習時間は55時間(約12日間)。横浜市にて年間1回実施。

再講習

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一定条件の外航船舶(特定船舶)に乗り組む衛生管理者に限り、5年ごとに大臣に登録された再講習の受講が義務付けられている。一般社団法人外航船員医療事業団が唯一の大臣登録再講習機関となっており、横浜掖済会病院名古屋掖済会病院大阪掖済会病院神戸掖済会病院のいずれかを会場に年1-2回、100時間の講習を行っている。

他の資格の受験資格

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衛生管理者適任証書の交付を受けたあと労働衛生の実務に1年以上従事した者は、衛生管理者試験(第一種、第二種)を受験する事ができ、申請により「労働生理」の科目の免除を受けることができる[19]

脚注

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注釈

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  1. ^ 船員法上の名称は「衛生管理者」だが、安衛法による「衛生管理者」との区別のためしばしば「船舶に乗り組む衛生管理者」とも表記される。
  2. ^ 衛生管理者適任証書の英語表記部分[1]より

出典

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  1. ^ a b 省令 第2号様式
  2. ^ 船員法 82条の2 第4項
  3. ^ 国土交通省 STCW条約に基づく船員の資格証明書等 2021年4月最終確認
  4. ^ a b c d 関東運輸局. “衛生管理者資格の申請”. 2021年4月1日閲覧。
  5. ^ 船員法 82条の2 第2項
  6. ^ a b c d e 国土交通省海事局『船員向け産業医の確保について』(レポート)2020年4月https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001340480.pdf2021年4月1日閲覧 
  7. ^ 省令 16条
  8. ^ 北陸信越運輸局. “船員法のご案内”. 2021年4月1日閲覧。
  9. ^ 条約第6章第4規則、同条約コードA部第6-4節1から6
  10. ^ 船員法 82条
  11. ^ 船員労働安全衛生規則 7条
  12. ^ 船員労働安全衛生規則 7条第2項
  13. ^ 船員法 82条の2 第3項2号
  14. ^ a b 省令 12条
  15. ^ 省令 11条
  16. ^ 省令 10条
  17. ^ a b 省令 9条
  18. ^ 船員災害防止協会. “講習のご案内”. 2021年4月1日閲覧。
  19. ^ 安全衛生技術試験協会. “受験資格(第一種衛生管理者・第二種衛生管理者)”. 2021年4月1日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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