コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

知床型給油艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
能登呂型給油艦から転送)
知床型給油艦
公試中の「鶴見」(1922年)[1]
公試中の「鶴見」(1922年)[1]
基本情報
種別 運送艦[2](給油艦[3])
命名基準 の名
運用者  大日本帝国海軍
同型艦 7隻[2](#同型艦を参照)
前級 野間
次級 隠戸型給油艦
要目 (計画値)
基準排水量 公表値 14,050トン[4]
常備排水量 15,400トン[4][5]
満載排水量 約16,400トン[5]
全長 470 ftin (143.48 m)[5]
垂線間長 455 ft 0 in (138.68 m)[5]
最大幅 58 ft 0 in (17.68 m)[5]
深さ 35 ft 0 in (10.67 m)[5]
吃水 26 ft 6 in (8.08 m)[5]
ボイラー 円缶4基[6][注釈 1]
主機 直立3気筒3段レシプロ[7] 1基[6]
推進器 1軸 x 80rpm[6]
直径5.486m、ピッチ5.943m[6]
出力 約3,750I.H.P.(常備)[5]
約5,850I.H.P.(1/5載貨)[5]
または 5,000実馬力(機関計画)[6]
速力 12ノット(常備)[5]
15ノット(1/5載貨)[5]
航続距離 約7,000カイリ / 10ノット[5][注釈 2]
燃料 石炭1,350トン(常備)[5]
搭載能力 重油 常備8,000トン、タンク容量約8,400トン[5]
乗員 定員 157名[8][注釈 3]
兵装 45口径三年式12cm砲 単装2門(知床、能登呂、襟裳)[9]
50口径三年式14cm砲 単装2門(佐多、鶴見、尻矢、石廊)[9][注釈 4]
40口径三年式8cm単装高角砲 2門[9]
(竣工時に砲は装備していない[10])
搭載艇 1924年11月 内火艇1隻、カッター2隻、通船1隻[3]
トンはすべて英トン
テンプレートを表示

知床型給油艦(しれとこがたきゅうゆかん)は、大日本帝国海軍給油艦能登呂型給油艦または襟裳型給油艦とも呼ばれる。

概要

[編集]

能登呂型給油艦として、大正6年度の八四艦隊計画で2隻、7年度の八六艦隊計画で5隻の計7隻が建造された。当初は計8隻の建造が計画されていたが、うち1隻は給糧艦として建造される事となり、給糧艦「間宮」として竣工した[11]。能登呂型給油艦として竣工した7隻のうち、1番艦「能登呂」が後に水上機母艦となったため、一般的に知床型給油艦と呼ばれる。更に2番艦「知床」は給兵艦戦艦砲塔輸送艦)兼給炭艦に改装されたため、3番艦の名称から襟裳型給油艦とも呼ばれる。「佐多」は後に潜水艦救難設備を搭載している。

計画当時、大小合わせて4隻のタンカーしか所有していなかった日本海軍が初めて同型艦を多数建造した給油艦で、船体は商船式だった。当初は外国からの重油輸送に使用されたが、大正末期ごろからその任務を民間タンカーに譲り、洋上給油装置を装備して艦隊に随伴し給油を行うようになった。海軍のタンカーは民間のタンカーとは違い、同乗者の居住区画や補給用真水タンクなどがあり、補給任務にも使用出来るようになっていた。一例としては、襟裳は太平洋戦争での南方作戦時にボイラー用および内火機械用重油8,000トンと真水606トンを搭載した実績がある[12]

同型艦

[編集]

竣工日(建造所)。喪失日、理由(喪失場所)

能登呂(のとろ)
1920年8月10日竣工(川崎造船所)。1934年6月1日水上機母艦へ類別変更。シンガポールで大破のまま終戦、戦後海没処分。
知床(しれとこ)
1920年9月20日竣工(川崎造船所)。1945年2月1日、爆撃により沈没着底(シンガポール)。戦後解体。
襟裳(えりも)
1920年12月16日竣工(川崎造船所)。1942年3月4日、アメリカ潜水艦S-39 (USS S-39, SS-144) の雷撃を受け沈没(ジャワ海)。戦後除籍
佐多(さた)
1921年2月24日竣工(横浜船渠)。1944年3月31日、パラオ大空襲により沈没(パラオ)。
鶴見(つるみ)
1922年3月4日竣工(大阪鉄工所)。1944年8月5日、アメリカ潜水艦セロ (USS Cero, SS-225) の雷撃を受け沈没(ミンダナオ島南方)。
尻矢(しりや)
1922年2月8日竣工(横浜船渠)。1944年9月22日、アメリカ潜水艦トリガー (USS Trigger, SS-237) の雷撃を受け沈没(台湾北方)。
石廊(いろう)
1922年3月4日竣工(大阪鉄工所)。1944年3月31日、パラオ大空襲により大破擱座、船体放棄(パラオ)。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ #日本海軍特務艦船史p.17では「石廊は艦本式水管缶4基」としている。
  2. ^ 基準速力はタイプを打ち直しており『1? knot』(?は不明瞭)となっている。#T14公文備考42/特務艦要目の実際の航続力から10ノットと判断した。
  3. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1付表第二その三「大正十二年三月調艦艇要目等一覧表 その三 潜水艦、水雷艇、特務艦」によると1923年3月調べで142名(石廊157名)
  4. ^ #日本海軍特務艦船史p.17では「(佐多、鶴見、尻矢は14cm50口径3年式単装砲2基)」としている。

出典

[編集]
  1. ^ #写真日本の軍艦第13巻p.12上の写真と解説。
  2. ^ a b #海軍制度沿革巻八pp.105『大正十五年十一月二十九日(内令二三九) 特務艦類別等級別表ノ通定ム (別表省略)』種別:運送艦、等級:(空白)、艦型:知床型、特務艦名:知床、能登呂、襟裳、佐多、鶴見、尻矢、石廊。
  3. ^ a b #T14公文備考42/特務艦要目画像5-18、特務艦要目表(大正13年11月調)海軍省軍務局
  4. ^ a b #海軍制度沿革巻十一の2pp.1057-1087、昭和3年2月14日附内令第43号、艦船要目公表範囲。うちpp.1084-1085。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n #T7公文備考20/特務艦製造画像27、(参考)能登呂級給油船 Partioulars of 8,000 Ton Oil Steamer. July 12th, 1918.
  6. ^ a b c d e #海軍造船技術概要p.1726
  7. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1付表第四その二「昭和十三年三月調艦艇要目等一覧表 その二 潜水艦、水雷艇、特務艦、特務艇、新造艦船」
  8. ^ #海軍制度沿革巻十の2pp.645『大正九年八月一日(内令二七七) 海軍定員令中左ノ通改正セラル 附表ノ通運送艦定員表其四ヲ加フ(附表略)』能登呂定員表の計欄、士官11人、特務士官2人、准士官3人、下士官26人、兵115人。同書p.647大正9年9月18日内令335知床追加、p.649同年12月16日内令497襟裳追加、p.651大正10年2月24日内令57佐多追加、p.658大正11年2月8日内令42尻矢追加、p.659同年3月14日内令77鶴見追加、p.663同年10月30日内令364石廊追加。#S19-10-31内令提要1上/第3類 定員(13)画像50、#S19-10-31内令提要1上/第3類 定員(14)画像1などから昭和19年まで戦時増員を除き定員の合計人数に変化はない。
  9. ^ a b c #戦史叢書31海軍軍戦備1付表第二その三「大正十二年三月調艦艇要目等一覧表 その三 潜水艦、水雷艇、特務艦」
  10. ^ 作成:阿部安雄「日本海軍補助艦艇要目表」#日本補助艦艇物語pp.388-391、特務艦の注1
  11. ^ 片桐, 600ページ
  12. ^ 『戦史叢書24』378ページ

参考文献

[編集]
  • アジア歴史資料センター(公式)(防衛省防衛研究所)
    • 『大正7年 公文備考 巻20 艦船1/特務艦製造』。Ref.C08021104600。 
    • 『大正14年 公文備考 巻42 艦船止/特務艦要目』。Ref.C08051419000。 
    • 『昭和19年10月31日現在 10版 内令提要 巻1上/第3類 定員(13)』。Ref.C13072049000。 
    • 『昭和19年10月31日現在 10版 内令提要 巻1上/第3類 定員(14)』。Ref.C13072049100。 
  • 海軍省 編『海軍制度沿革 巻八』 明治百年史叢書 第180巻、原書房、1971年10月(原著1941年)。 
  • 海軍省 編『海軍制度沿革 巻十の2』 明治百年史叢書 第183巻、原書房、1972年4月(原著1940年)。 
  • 海軍省 編『海軍制度沿革 巻十一の2』 明治百年史叢書 第185巻、原書房、1972年5月(原著1941年)。 
  • 片桐大自『聯合艦隊軍艦銘銘伝 全八六〇余隻の栄光と悲劇』光人社、1993年、ISBN 4-7698-0386-9
  • 『世界の艦船増刊第47集 日本海軍特務艦船史』、海人社、1997年3月。 
  • 福井静夫『日本補助艦艇物語』 福井静夫著作集第10巻、光人社、1993年12月。ISBN 4-7698-0658-2 
  • 防衛研究所戦史室編『戦史叢書24 比島・マレー方面海軍進攻作戦』朝雲新聞社、1969年
  • 防衛庁防衛研修所戦史室『海軍軍戦備<1> 昭和十六年十一月まで』 戦史叢書第31巻、朝雲新聞社、1969年。 
  • 牧野茂福井静夫 編『海軍造船技術概要』今日の話題社、1987年5月。ISBN 4-87565-205-4 
  • 雑誌「丸」編集部 編『写真 日本の軍艦 第13巻 小艦艇I』光人社、1990年8月。ISBN 4-7698-0463-6 

関連項目

[編集]