第76回天皇賞
1977年11月27日に東京競馬場で開催された第76回天皇賞(だい76かいてんのうしょう)について記述する。
レース施行時の状況
[編集]宝塚記念でテンポイントを一蹴し健在ぶりを示したトウショウボーイが単枠指定の1番人気、天皇賞(春)でテンポイントの2着に入ったクラウンピラードが2番人気、『TTG』の一角を担う菊花賞馬のグリーングラスが3番人気であった。
なお、当時の天皇賞は勝ち抜け制であった為、既に天皇賞馬となっているテンポイントには出走権が無かった。
トウショウボーイはクラシック、有馬記念の疲労の蓄積と深管骨瘤で、競走馬となって初の長い休養から春後半に復帰。宝塚記念・高松宮杯を勝利して迎えた秋、中山芝1600mのオープン戦で2着カネコフジに7馬身差の圧勝。勝ち時計の1分33秒6は当時の日本レコードであった[1]。父・テスコボーイ譲りの天性のスピード馬であったため、距離3200mに一抹の不安はあったものの人気の中心であった。
エイトクラウンを母に持つクラウンピラードは半兄がナオキ。天皇賞に挑戦し続けたが、短距離系の父・サウンドトラックの血に泣いていた。父・ダイハードと変わった同馬は5歳にして素質が開花し、天皇賞(春)で12番人気ながらテンポイントの2着。秋はオープン戦4、2着、初東上の目黒記念(秋)2着と来ていた。
グリーングラスは年明けのAJCC、7月の日本経済賞を共にレコード勝ちしたが、『TTG』の一角と言われながらも天皇賞(春)4着、揃い踏みの宝塚記念3着。古馬となってからはトウショウボーイ、テンポイントとは明らかに差のある戦績で、主戦騎手が安田富男から嶋田功に交代していた。今回は脚部不安や熱発から7月以来のぶっつけとなったが、鞍上の嶋田は前年のアイフルに続く天皇賞(秋)2連覇が懸かっていた。
その他では今回がラストランとなるロングホーク。1972年生まれの同馬はカブラヤオーと同期で、クラシックは皐月賞2着、東京優駿6着、カブラヤオーが戦列を離れた菊花賞はコクサイプリンスの5着。そこから重賞3勝を含む6連勝と快進撃の活躍を見せ、前年の天皇賞(春)は堂々の1番人気に支持されたが、『天才』福永洋一が手綱を握るエリモジョージの大駆けの前にクビ差2着。京都で行われた宝塚記念ではフジノパーシアの2着、オープン戦3着・3着、天皇賞(秋)はアイフルの3着、阪神大賞典2着、淀短距離S4着、オープン戦1着・3着・2着。決して不調ではなかったものの、重賞勝ちすらままならない成績で、馴れない短距離も走るなど迷走していた。
トウショウボーイと同じテスコボーイを父に持つホクトボーイは対照的に長距離を得意とし、4歳秋までは条件馬という晩成タイプであった。阪神大賞典でロングホークを破ると、古馬になって挑んだ天皇賞(春)は10番人気ながらテンポイントの3着に入り、グリーングラス・クライムカイザーに先着。秋は朝日CCを勝つ上々の滑り出しで、京都大賞典はテンポイントの6着と敗れたが、京都記念(秋)でシンザン産駒のシルバーランドに勝利。天皇賞(秋)を目指して初東上。
カシュウチカラは4歳16戦、5歳11戦目と走って走った叩き上げ。オープンクラスに昇格したばかりの身で挑んだ目黒記念(春)を8番人気で制し、その後の不振で評価を落とした京王杯AHは11番人気で制した。
カーネルシンボリは新馬から5連勝で弥生賞を制し8戦7勝。期待されたクラシックは骨折で全休。復帰と脚部不安を繰り返しながら、2年前の天皇賞(秋)でフジノパーシアの2着に入った。
トウショウボーイと同厩、かつて同馬に騎乗した池上昌弘騎乗のシタヤロープは、大井で9戦8勝、3着1回という成績を引っ提げて4歳春に中央入りしたが、屈腱炎、繋靭帯炎に悩まされ、オープン戦3、7、4、2着、僅か4戦で6歳秋を迎えていた。
出走馬と枠順
[編集]枠番 | 馬番 | 競走馬名 | 性齢 | 騎手 | オッズ | 調教師 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | トウショウロック | 牡7 | 加賀武見 | 75.0(11人) | 阿部正太郎 |
2 | 2 | トウカンタケシバ | 牡5 | 中野栄治 | 58.7(10人) | 浅野武志 |
3 | 3 | クラウンピラード | 牡5 | 佐々木昭次 | 8.5(2人) | 田中康三 |
4 | 4 | トウフクセダン | 牡5 | 宮田仁 | 30.9(8人) | 大久保末吉 |
5 | カシュウチカラ | 牡6 | 出口明見 | 17.5(6人) | 矢倉玉男 | |
5 | 6 | トウショウボーイ | 牡5 | 武邦彦 | 2.3(1人) | 保田隆芳 |
6 | 7 | ランスロット | 牡5 | 中島啓之 | 81.0(12人) | 高松三太 |
8 | ロングホーク | 牡6 | 松田幸春 | 13.1(4人) | 松田由太郎 | |
7 | 9 | ホクトボーイ | 牡5 | 久保敏文 | 17.0(5人) | 久保道雄 |
10 | グリーングラス | 牡5 | 嶋田功 | 8.5(3人) | 中野隆良 | |
8 | 11 | カーネルシンボリ | 牡7 | 柴田政人 | 22.0(7人) | 黒坂洋基 |
12 | シタヤロープ | 牡6 | 池上昌弘 | 44.6(9人) | 保田隆芳 |
レース展開
[編集]レースはトウカンタケシバが2番枠を生かして単騎先頭に立つと、トウショウボーイが2番手に付ける。後はトウショウロック、ロングホーク、グリーングラスなどがひと塊となったが、ホクトボーイは1頭ポツンと離れての最後方であった。
向正面でトウショウボーイが先頭に立つと、すかさず外からグリーングラスが並びかけた。先に動いたトウショウボーイにグリーングラスが絡んで行き、2頭が後続を引き離した。思いもよらぬ展開に場内はどよめいたが、そのまま2頭は並んだまま直線に入った。最後の正念場となる直線で振り切るべく、お互いが競り落とそうと懸命に走ったが、競り合いが早過ぎたところを突いたクラウンピラードが2頭の内から伸び、代わって先頭に立った。トウショウボーイ、グリーングラスは負けじと脚を回転させるが、脚が動かない状態に陥り、最後方にいたホクトボーイが鬼脚を炸裂させて、大外から吹っ飛んできた。クラウンピラードをも抜き去り、2馬身半の圧倒的な差をつけてゴールした。ホクトボーイが後方待機から漁夫の利を得た形となり、3着には同じく直線に賭けたシタヤロープが入った。
トウショウボーイとグリーングラスは両者共倒れの7、5着に終わり、引退レースのロングホークは11着であった。
競走結果
[編集]着順 | 枠番 | 馬番 | 競走馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 7 | 9 | ホクトボーイ | 3.22.5 | |
2 | 3 | 3 | クラウンピラード | 3.22.9 | 2.1/2馬身 |
3 | 8 | 12 | シタヤロープ | 3.23.2 | 1.1/2馬身 |
4 | 4 | 4 | カシュウチカラ | 3.23.4 | 1.1/2馬身 |
5 | 7 | 10 | グリーングラス | 3.23.4 | アタマ |
6 | 6 | 7 | ランスロット | 3.23.6 | 1.1/4馬身 |
7 | 5 | 6 | トウショウボーイ | 3.23.8 | 1馬身 |
8 | 8 | 11 | カーネルシンボリ | 3.24.4 | 3.1/2馬身 |
9 | 2 | 2 | トウカンタケシバ | 3.24.5 | アタマ |
10 | 4 | 4 | トウフクセダン | 3.25.1 | 3.1/2馬身 |
11 | 6 | 8 | ロングホーク | 3.25.2 | 3/4馬身 |
12 | 1 | 1 | トウショウロック | 3.25.2 | アタマ |
払戻金
[編集]単勝式 | 9 | 1,260円 |
複勝式 | 9 | 380円 |
3 | 190円 | |
12 | 540円 | |
連勝複式 | 7-3 | 1,120円 |