第35回世界遺産委員会
第35回世界遺産委員会(だい35かいせかいいさんいいんかい)は、2011年6月19日から29日の間、パリのユネスコ本部で開催された[1]。当初の開催予定地はバーレーンの首都マナーマだったが、2011年バーレーン騒乱による政情不安などを考慮して変更された[2][3]。開催地の変更はSARSの影響で蘇州での開催が変更された第27回世界遺産委員会(2003年)以来である。文化遺産21件、自然遺産3件、複合遺産1件の計25件が登録された結果、世界遺産リスト登録物件の総数は936件となった[3]。
委員国
[編集]委員国は以下の通りである[1]。地域区分はUNESCOに従っている。
議長国 | バーレーン | 議長シェイハ・マイ・ビント・モハンマド・アール・ハリーファ |
アジア・太平洋 | カンボジア | 副議長国 |
中国 | ||
タイ | ||
オーストラリア | ||
アラブ諸国 | アルジェリア | |
アラブ首長国連邦 | ||
イラク | ||
ヨルダン | ||
アフリカ | 南アフリカ共和国 | 副議長国 |
マリ | 報告担当国。報告担当者はアリ・ウルド・シディ。 | |
エチオピア | ||
エジプト | ||
ナイジェリア | ||
ヨーロッパ・北アメリカ | スイス | 副議長国 |
エストニア | 副議長国 | |
スウェーデン | ||
フランス | ||
ロシア | ||
カリブ・ラテンアメリカ | バルバドス | 副議長国 |
ブラジル | ||
メキシコ |
審議対象の推薦物件一覧
[編集]物件名に * 印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録などを示す。太字は正式登録(既存物件の拡大などについては申請用件が承認)された物件。英語名とフランス語名は審議開始前の文書に基づいており[4][注釈 1]、登録時に名称が変更された場合にはその名称を説明文中で太字で示してある。
第35回世界遺産委員会の審議で新規に世界遺産保有国となったのは、アラブ首長国連邦、バルバドスの2か国である。この時点で、世界遺産条約を締約している187か国のうち、世界遺産を保有していない国は33か国となった。
自然遺産
[編集]画像 | 推薦名 | 推薦国 | 勧告 | 決議 |
---|---|---|---|---|
ニンガルー・コースト | オーストラリア | 登録 | 登録 | |
Ningaloo Coast | ||||
Côte de Ningaloo | ||||
ニンガルー・コーストはオーストラリア北西部の沿岸礁やカルスト地形がおりなす自然美と、そこで育まれる生物多様性が評価された[5][6]。適用された世界遺産登録基準は (7) と (10) である。 | ||||
パンジャリ国立公園(ニジェールのW国立公園の拡大)* | ベナン | 登録延期 | 登録延期 | |
Pendjari National Park (extension of W National Park of Niger, Niger) | ||||
Parc national de la Pendjari [extension du Parc national du W du Niger, Niger] | ||||
文化遺産(アボメイの王宮群)しか保有していないベナンにとって、初の自然遺産登録を目指したが、登録には至らなかった。第41回世界遺産委員会(2017年)で正式登録されることになる。 | ||||
五大連池国立公園 | 中国 | 不登録 | ―― | |
Wudalianchi National Park | ||||
Parc national de Wudalianchi | ||||
不登録勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。 | ||||
ドイツの古代ブナ林(カルパティア山脈のブナ原生林の拡大登録)* | ドイツ | 登録延期 | 登録 | |
Ancient Beech Forests of Germany (extension of the Primeval Beech Forests of the Carpathians, Slovakia and Ukraine) | ||||
Forêts anciennes de hêtres d’Allemagne [extension des Forêts primaires de hêtres des Carpates, Slovaquie et Ukraine] | ||||
スロバキアとウクライナの世界遺産であったブナ原生林の拡大登録。これに伴い、正式登録名が「カルパティア山脈のブナ原生林とドイツの古代ブナ林」に変更された。第41回世界遺産委員会でさらなる拡大が行われることになる。 | ||||
西ガーツ山脈 | インド | 登録延期 | 情報照会 | |
Western Ghats | ||||
Ghâts occidentaux | ||||
翌年の第36回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
ハラ保護地域 | イラン | 不登録 | ―― | |
Harra Protected Area | ||||
Aire protégée de Harra | ||||
不登録勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。 | ||||
小笠原諸島 | 日本 | 登録 | 登録 | |
Ogasawara Islands | ||||
Iles d'Ogasawara | ||||
適応放散による陸貝の固有種の多さなどが評価された[5][8]。適用された世界遺産登録基準は (9) である。 | ||||
大地溝帯にあるケニアの湖沼群 | ケニア | 登録 | 登録 | |
Kenya Lake System in the Great Rift Valley | ||||
Réseau des lacs du Kenya dans la vallée du Grand Rift | ||||
エルメンテイタ湖・ナクル湖・ボゴリア湖の3つの湖で構成される世界遺産であり、絶滅危惧種13種を含む鳥類の重要な生息地であることなどが評価された[5][9]。適用された世界遺産の登録基準は (7)、(9)、(10) である。 | ||||
サンガ川流域の3か国保護地域 | コンゴ共和国/ カメルーン/ 中央アフリカ |
登録延期 | 情報照会 | |
Trinational Sangha | ||||
Trinational de la Sangha | ||||
ロベケ国立公園など3か国の国立公園で構成される国際的な保護地域。翌年の第36回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
フォンニャ=ケバン国立公園* | ベトナム | 登録延期 | 情報照会 | |
Phong Nha – Ke Bang National Park | ||||
Parc national de Phong Nha – Ke Bang | ||||
この国立公園はアジア最古の形成とも言われるカルスト地形が評価され、基準 (8) のみが適用されて2003年に登録されていた[10]。新たに、登録基準 (10) の適用を目指したが、認められなかった。 |
複合遺産
[編集]画像 | 推薦名 | 推薦国 | 勧告 | 決議 |
---|---|---|---|---|
ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズ国立公園 | ジャマイカ | (自然)不登録 (文化)登録延期 |
(自然)情報照会 (文化)登録延期 | |
Blue and John Crow Mountains National Park | ||||
Parc national des montagnes Bleues et des monts John Crow | ||||
コーヒーの銘柄ブルーマウンテンで知られるブルーマウンテン山脈とジョン・クロウ山脈などを含む保護区で、ジャマイカ初の世界遺産登録を目指したが、認められなかった。2015年の第39回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
ワディ・ラム保護地域 | ヨルダン | (自然)情報照会 (文化)登録延期 |
登録 | |
Wadi Rum | ||||
Zone protégée du Wadi Rum | ||||
砂漠の自然美とペトログリフ群などが評価された[11][12]。事前勧告では自然・文化の両面が留保されていたが、いずれも正式な登録が認められた。適用された世界遺産登録基準は (3)、(5)、(7) である。なお、正式登録にあたり、英語登録名が Wadi Rum Protected Area となった。 | ||||
サルーム・デルタ | セネガル | (自然)不登録 (文化)登録 |
(自然)情報照会 (文化)登録 | |
Saloum Delta | ||||
Delta du Saloum | ||||
貝の加工が古くから営まれてきた地域で、多くの貝塚が形成されてきた[13]。ひとまず文化遺産としての登録となり、適用された世界遺産登録基準は (3)、(4)、(5) である。 |
文化遺産
[編集]画像 | 推薦名 | 推薦国 | 勧告 | 決議 |
---|---|---|---|---|
真珠採り、島の経済を物語るもの | バーレーン | 登録延期 | 情報照会 | |
Pearling, Testimony of an Island Economy | ||||
Activités perlières, témoignage d’une économie insulaire | ||||
翌年の第36回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
ブリッジタウン歴史地区とギャリソン | バルバドス | 登録延期 | 登録 | |
Bridgetown and its Garrison | ||||
Centre historique de Bridgetown et sa garnison | ||||
ブリッジタウンは元来大英帝国が築いた植民都市であり、スペイン帝国、オランダ海上帝国などが中南米に築いた碁盤目状とは異なる都市計画が保存されている[14][15]。適用された登録基準は (2)、(3)、(4) で、バルバドス初の世界遺産となった。 | ||||
杭州西湖の文化的景観 | 中国 | 登録 | 登録 | |
West Lake Cultural Landscape of Hangzhou | ||||
Paysage culturel du lac de l’Ouest de Hangzhou | ||||
西湖の景観は中国の詩人や画家を触発してきただけにとどまらず、日韓の庭園設計にまで影響を及ぼした点などが評価された[5][16]。適用された登録基準は (2)、(3)、(6) である。 | ||||
コーヒー産地の文化的景観 | コロンビア | 登録延期 | 登録 | |
Coffee Cultural Landscape | ||||
Paysage culturel du café | ||||
コロンビア・コーヒーの歴史を伝える18都市6農業地域を対象とする[17][18]。適用された登録基準は (5)、(6) であり、正式登録に際し「コロンビアのコーヒー産地の文化的景観」と改称された。 | ||||
コンソの文化的景観 | エチオピア | 登録延期 | 登録 | |
Konso Cultural Landscape | ||||
Paysage culturel du pays Konso | ||||
乾燥した高地に適応したコンソ人の伝統的集落と段々畑を対象とする[14][19]。適用された登録基準は (3)、(5) である。 | ||||
コースとセヴェンヌ | フランス | 情報照会 | 登録 | |
The Causses and the Cévennes | ||||
Les Causses et les Cévennes | ||||
適用された登録基準は (3)、(5) であり、登録に際して正式登録名が「コースとセヴェンヌの地中海農牧業の文化的景観」と改称された。 | ||||
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- | フランス/ スイス/ ベルギー/ ドイツ/ アルゼンチン/ 日本 |
不登録 | 登録延期 | |
The architectural work of Le Corbusier, an outstanding contribution to the Modern Movement | ||||
L'œuvre architecturale de Le Corbusier, une contribution exceptionnelle au Mouvement Moderne | ||||
2009年の「情報照会」決議を受けて、コンセプトと構成資産を練り直して臨んだが、登録には至らなかった[20]。第40回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
アルフェルトのファグス工場 | ドイツ | 登録 | 登録 | |
Fagus Factory in Alfeld | ||||
Usine Fagus à Alfeld | ||||
ヴァルター・グロピウス設計の産業建築であり、バウハウスに先んじるモダニズム建築の例であることなどが評価された[21][22]。適用された登録基準は (2)、(4) である。 | ||||
ペルシア式庭園 | イラン | 登録 | 登録 | |
The Persian Garden | ||||
Le jardin persan | ||||
ゾロアスター教の影響などを反映した、紀元前6世紀以来の9つの庭園を対象とする[13][23]。適用された登録基準は (1)、(2)、(3)、(4)、(6) である。 | ||||
ユダヤ低地の洞窟と隠棲の地、マレシャ、ベト・グヴリン、アドゥラム | イスラエル | 登録延期 | ―― | |
Land of Caves and Hiding in the Judean Lowlands, Maresha, Bet-Guvrin and Adulam | ||||
Pays des grottes et des refuges des basses terres de Judée, Maresha, Bet-Guvrin et Adulam | ||||
登録延期勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。2014年の第38回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
ダンの三連アーチ門 | イスラエル | 「延期」 | 「延期」 | |
The Triple-arch Gate at Dan | ||||
Porte des trois arches de Dan | ||||
法的・技術的状況の確認によって、昨年までと同様に登録が見送られた(「登録延期」決議とは異なる)[24]。 | ||||
イタリアのロンゴバルド族:権勢の足跡 (568-774年) | イタリア | 登録 | 登録 | |
The Longobards in Italy, Places of Power, 568 - 774 A.D. | ||||
Les Lombards en Italie, lieux de pouvoir (568-774 après J.C.) | ||||
ロンゴバルド王国時代の文化的融合と時代の移行を示す7件の建造物群を対象としている[25][26]。適用された登録基準は (2)、(3)、(6) である。 | ||||
平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群- | 日本 | 登録 | 登録 | |
Hiraizumi – Temples, Gardens and Archaeological Sites Representing the Buddhist Pure Land | ||||
Hiraizumi - Temples, jardins et sites archéologiques représentant la Terre pure bouddhiste | ||||
浄土思想が投影された5件の寺院や庭園などを対象とする世界遺産である[14][27]。適用された登録基準は (2)、(6) である。 | ||||
モンバサのジーザス要塞 | ケニア | 登録延期 | 登録 | |
Fort Jesus, Mombasa | ||||
Fort Jésus à Mombasa | ||||
16世紀ポルトガルの軍事建築の傑作であり、その設計にはルネサンスの思想が投影されている[21][28]。適用された登録基準は (2)、(4) である。 | ||||
フンディドラ・モンテレイの高炉群 | メキシコ | 不登録 | ―― | |
Fundidora Monterrey Blast Furnaces | ||||
Hauts-fourneaux de la Fundidora Monterrey | ||||
不登録勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。 | ||||
パラオとヤップのヤップ石貨遺跡群 | パラオ/ ミクロネシア連邦 |
登録延期 | 登録延期 | |
Yapese Stone Money Sites in Palau and Yap | ||||
Sites de monnaie de pierre de Yap aux Palaos et à Yap | ||||
パラオ、ミクロネシア連邦の双方にとって、初の世界遺産登録を目指したが、認められなかった。 | ||||
モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群 | モンゴル | 登録延期 | 登録 | |
Petroglyphic Complexes of the Mongolian Altai | ||||
Ensembles pétroglyphiques de l’Altaï mongolien | ||||
およそ12,000年にわたる北アジア一帯の文化的移行を伝えるペトログリフ群を対象とする[25][29]。適用された登録基準は (3) である。 | ||||
レオン大聖堂 | ニカラグア | 情報照会 | 登録 | |
León Cathedral | ||||
Cathédrale de León | ||||
18世紀半ばから19世紀初頭に建築されたバロック様式と新古典主義様式の折衷による建物で、自然光を活用した内装にも特色がある[14][30]。適用された登録基準は (2)、(4) である。 | ||||
オケ=イダンレの文化的景観 | ナイジェリア | 不登録 | ―― | |
Oke-Idanre Cultural Landscape | ||||
Paysage culturel d’Oke-Idanre | ||||
不登録勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。 | ||||
歴史都市ジッダ | サウジアラビア | 不登録 | ―― | |
Historical City of Jeddah | ||||
Ville historique de Djeddah | ||||
不登録勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。2014年の第38回世界遺産委員会で登録されることになる。 | ||||
トラムンタナ山脈の文化的景観 | スペイン | 登録延期 | 登録 | |
Cultural Landscape of the Serra de Tramuntana | ||||
Paysage culturel de la Serra de Tramuntana | ||||
マヨルカ島山岳地帯の険しい自然に適用した水利システムなどを伝える農業景観が評価された[21][31]。ICOMOSは、比較分析が十分でないと勧告していた。
適用された登録基準は (2)、(4)、(5) である。 | ||||
メロエ島の考古遺跡群 | スーダン | 登録延期 | 登録 | |
Archaeological Sites of the Island of Meroe | ||||
Sites archéologiques de l’île de Méroé | ||||
クシュ王国時代の中心地に残る遺跡群を対象としている[17][28]。適用された登録基準は (2)、(3)、(4)、(5) である。 | ||||
アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群 | スイス/ フランス/ ドイツ/ イタリア/ オーストリア/ スロベニア |
登録 | 登録 | |
Prehistoric Pile dwellings around the Alps | ||||
Sites palafittiques préhistoriques autour des Alpes | ||||
新石器時代から青銅器時代にかけての111件の杭上住居を対象としている[25]。登録基準は (4)、(5) が適用された。6か国で共有する世界遺産であり、これ以前に登録された世界遺産でこれを上回るのはシュトルーヴェの測地弧(10か国)のみである。 | ||||
シリア北部の古代村落群 | シリア | 登録 | 登録 | |
Ancient villages of Northern Syria | ||||
Villages antiques du Nord de la Syrie | ||||
1世紀から10世紀までの約40の集落遺跡を対象としており、多神教からキリスト教社会へと移行した文化を伝えている[17][32]。適用された登録基準は (3)、(4)、(5) である。 | ||||
アランヤの旧市街と城壁群およびセルジューク朝時代の造船所 | トルコ | 不登録 | ―― | |
Old City and Ramparts of Alanya with Seljuk Shipyard | ||||
Vieille ville et remparts d’Alanya et chantier naval seldjoukide | ||||
不登録勧告を受けて、審議前に取り下げられた[7]。第37回世界遺産委員会で構成資産を練り直して再推薦されるが、再び「不登録」勧告を受けて、取り下げられることになる。 | ||||
セリミエ・モスクとその社会的複合施設 | トルコ | 登録 | 登録 | |
Selimiye Mosque and its social Complex | ||||
Mosquée Selimiye et son ensemble social | ||||
ミマール・スィナンが古都エディルネに建てた16世紀のモスクと、周辺の図書館やマドラサなどを対象としている[13][33]。適用された登録基準は (1)、(4) である。 | ||||
ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅 | ウクライナ | 登録延期 | 登録 | |
Residence of Bukovinian and Dalmatia Metropolitans | ||||
Résidence des métropolites de Bucovine et de Dalmatie | ||||
19世紀の歴史主義建築の代表例であるとともに、ハプスブルク帝国の宗教寛容政策などを伝える建築物として評価された[25][34]。適用された登録基準は (2)、(3)、(4) である。 | ||||
アル・アインの文化的遺跡群(ハフィート、ヒーリー、ビダー・ビント・サウドとオアシス群) | アラブ首長国連邦 | 登録延期 | 登録 | |
Cultural Sites of Al Ain (Hafit, Hili, Bidaa Bint Saud and Oases Areas) | ||||
Sites culturels d’Al Aïn (Hafit, Hili, Bidaa Bint Saud et les oasis) | ||||
新石器時代から鉄器時代にかけての砂漠地域での文化的変遷を伝える遺跡群、オアシス等が対象である[21][32]。アラブ首長国連邦では初の世界遺産で、適用された登録基準は (3)、(4)、(5) であり。 | ||||
胡朝の城塞 | ベトナム | 登録延期 | 登録 | |
Citadel of the Ho Dynasty | ||||
Citadelle de la dynastie Hô | ||||
14世紀末に風水なども考慮して建造された城塞である[17][35]。適用された登録基準は (2)、(4) である。 |
危機遺産
[編集]危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リストからは1件が除去され、2件が新規に記載された。その結果、危機遺産の総数は35件となっている[3]。なお、コミ原生林は危機遺産リスト入りが有力視されたが、ロシア当局や一部の委員国の反対によって見送られた[36]。
リストからの除去
[編集]画像 | 登録名 | 保有国 | 世界遺産登録年 | 危機遺産登録年 |
---|---|---|---|---|
マナス野生生物保護区 | インド | 1985年 | 1992年 | |
希少生物の生息域として世界遺産リストに登録されたが、少数民族の独立運動に関連する戦闘行為などによって危機遺産リストに加えられていた[37]。しかし、インド政府の努力によって状況が改善したとして、危機遺産リストから除去された[3]。 |
リストへの新規登録・再登録
[編集]画像 | 登録名 | 保有国 | 世界遺産登録年 |
---|---|---|---|
スマトラの熱帯雨林遺産 | インドネシア | 2004年 | |
3つの国立公園に含まれる自然美や希少生物の生息域が評価されて登録されたが[38]、森林伐採や密猟などによる環境の悪化から危機遺産リストに登録された[39]。 | |||
リオ・プラタノ生物圏保護区 | ホンジュラス | 1982年 | |
密猟などを理由に1996年から2007年まで危機遺産リストに登録されていた。状況が改善されたとして一度は危機遺産リストから除去されたが、森林伐採、密猟に加え、付近でのダム建設の計画が持ち上がったことなどによって、再度登録された[39]。 |
名称変更
[編集]以下の3件の登録名が変更された[40]。
登録名 | 保有国 | ||
---|---|---|---|
旧 | ジェームズ島と関連遺跡群 | ガンビア | |
James Island and Related Sites | |||
Île James et sites associés | |||
新 | クンタ・キンテ島と関連遺跡群 | ||
Kunta Kinteh Island and Related Sites | |||
Île Kunta Kinteh et sites associés | |||
旧 | ロイヤル・チトワン国立公園 | ネパール | |
Royal Chitwan National Park | |||
Parc national de Royal Chitwan | |||
新 | チトワン国立公園 | ||
Chitwan National Park | |||
Parc national de Chitwan | |||
旧 | 港町ウィレムスタット市内の歴史地区 | オランダ | |
Historic Area of Willemstad, Inner City and Harbour | |||
Zone historique de Willemstad, centre ville et port | |||
新 | キュラソー島の港町ウィレムスタット市内の歴史地区 | ||
Historic Area of Willemstad, Inner City and Harbour, Curaçao | |||
Zone historique de Willemstad, centre ville et port, Curaçao |
その他の議題
[編集]この年は、上の表にも示されているように、諮問機関の「登録」勧告通りに登録された物件よりも、「情報照会」「登録延期」勧告だったものが逆転で登録された物件の数が上回った[3]。このような状態は世界遺産リストの信頼性を失うことにつながるのではないかという懸念も示された[36]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 35th session of the Committee(世界遺産センター、2014年2月16日閲覧)
- ^ 35th session of the World Heritage Committee to meet in Paris in June 2011(世界遺産センター、2014年2月17日閲覧)
- ^ a b c d e 吉田 2012, p. 26
- ^ World Heritage Centre 2011a
- ^ a b c d 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 23
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 363
- ^ a b c d e f g 市原 2012, p. 22
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 46
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 338
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 242
- ^ 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 24
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 234
- ^ a b c 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 22
- ^ a b c d 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 20
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 309
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 197
- ^ a b c d 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 18
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 329
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 307
- ^ 西 2012, pp. 10–11
- ^ a b c d 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 19
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 223
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 227
- ^ World Heritage Centre 2011b, p. 235
- ^ a b c d 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 21
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 67
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, pp. 90–92
- ^ a b 世界遺産検定事務局 2012a, p. 293
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 226
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 323
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 190
- ^ a b 世界遺産検定事務局 2012a, p. 152
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 219
- ^ 世界遺産事務局 2012b, p. 241
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 124
- ^ a b 吉田 2012, pp. 26–27
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 246
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 244
- ^ a b 日本ユネスコ協会連盟 2012, p. 48
- ^ World Heritage Centre 2011b, pp. 168–169
参考文献
[編集]- World Heritage Centre (2011a), Nominations to the World Heritage List (WHC-11/35.COM/8B)(English /Français)
- World Heritage Centre (2011b), Decisions Adopted by the Word Heritage Committee at its 35th Session (UNESCO, 2011) (WHC-11/35.COM/20)
- 市原富士夫「世界遺産一覧表に新規記載された文化遺産の紹介」『月刊文化財』第580号、15-22頁、2012年1月。
- 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典・上』マイナビ、2012年3月30日。世界遺産アカデミー監修。(2012a)
- 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典・下』マイナビ、2012年3月30日。世界遺産アカデミー監修。(2012b)
- 西和彦「第35回世界遺産委員会の概要」『月刊文化財』第580号、10-14頁、2012年1月。
- 日本ユネスコ協会連盟『世界遺産年報2012』東京書籍、2012年。
- 吉田正人 著「第35回世界遺産委員会ニュース」、日本ユネスコ協会連盟 編『世界遺産年報2012』東京書籍、2012年。