童夢・F111/3
童夢・F111/3(どうむ・エフ111/3)は、童夢が開発した、国際自動車連盟(FIA)フォーミュラ・リージョナル規格のフォーミュラカーで、日本の自動車レース、フォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップの競技車両である。
概要
[編集]FIAが2018年より提唱している「フォーミュラ・リージョナル」に適合したシャシーであり、フォーミュラ・リージョナルのプライスキャップ(シャシー77,000ユーロ、エンジン23,000ユーロ)に従う形で販売される。安全装備としてHaloの搭載にも対応している。
エンジンはフォーミュラ リージョナル ヨーロピアン選手権やF3 アジア選手権 等で使用されているアウトテクニカ・モトーリがチューニングしたアルファロメオ製 1,750cc 直列4気筒 ターボエンジン[1]を使用。ECUやデータロガーなどはマレリ製を採用している。理由として、2019年時点では「プライスキャップに適合するエンジンが今の所これしかない」ため、将来的には日本メーカーのエンジンに切り替えたいとの意向を示していたが[2]、後に「外国メーカーなので、日本人ドライバーにとってはニュートラルなエンジン」「ヨーロッパに渡った際も同じエンジン・制御系なのでハンデが少ない」として、現行パッケージの優位性をアピールしている[3]。
同車両の特徴として、フロントのダンパーカバーの一部にBcomp社と共同開発した天然繊維を使用している。これは、内部にGPSアンテナを内蔵しておりCFRPの様な電波遮蔽性のある材料が使えない為である。従来ではGFRPやケブラーを使用しているが、海外のGT4などにも採用が進む天然繊維を日本国内のFIA/JAF公認車両では初めて採用された例と言える[4]。
2019年9月10日に岡山国際サーキットでシェイクダウンが行われ、加藤寛規、金丸ユウ、片山義章の現役ドライバーによってテストが行われた[5][6]。同年9月27日には、シリーズの概要含め岡山国際サーキットで記者会見を行った。
2021年は、FIAの安全規則改訂を受けてリアストラクチャーとギヤBOXを結ぶ、2kJテザーが新たに追加された。また、同年の車両の最低重量規則は+10kgとなり680kg(ドライバー込)に改められている。
童夢は、2024年にFIA F4のシャシーが新型に切り替わるタイミングで、F111/3と同一モノコックを使用する「F111/4」の開発も計画していたが[7]、FIA F4は2024年より東レ・カーボンマジック製のマシンを採用するため、この計画は事実上消滅したとみられる。
諸元
[編集]※2020年1月時点[8]
- 全長:4,891mm
- 全幅:1,850mm
- 全高:957mm
- ホイルベース:2,950mm
- トレッド:F 1,540mm / R 1,414mm
- 車重:670kg (ドライバー込)
- タイヤ:ダンロップ(FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP):F 250/575R13 / R 300/590R13
- ホイル:エンケイ製アルミホイール 脱落防止機構付きセンターロック・F 13x10J / R 13x12J
- エンジン:水冷直列4気筒インタークーラーターボ・排気量1,750cc・最大出力270hp/6,000rpm
- サスペンション:ダブルウィッシュボーン(インボードタイプ)&コイルスプリング+アンチロールバー
- ブレーキ:ADVICS製4POT対向キャリパー&ベンチレーテッドディスクフローティングタイプ
- 空カデバイス:多段フラップ付きフロントウィング(調整式)・フラップ付きリアウイング&ミッドウイング・左右分割式アンダーパネル・リアディフューザー
- ギヤボックス:SADEV製6速パドルシフト+機械式LSD装備
- 安全装備:フロントストラクチャ・サイドストラクチャ・リアストラクチャ・FIA公認6点式シートハーネス・エクストラダブルシート・ヘッドレスト・ニーレスト・サイドミラー・FIA公認6KJテザー(前後8本)・FIA公認レインライト
- FIA公認2kJリアストラクチャーテザー(2021年より追加)
各サーキットでのベストラップ
[編集]サーキット | ラップタイム(ドライバー) | |
---|---|---|
富士スピードウェイ | 1'36.080 (阪口晴南/2020年第1戦) | |
スポーツランドSUGO | 1'16.744 (高橋知己/2020年第2戦) | |
ツインリンクもてぎ | 1'59.623 (阪口晴南/2020年第4戦) | |
岡山国際サーキット | 1'25.897 (阪口晴南/2020年第5戦) | |
オートポリス | 1'42.850 (古谷悠河/2020年第6戦) |
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ “F3 ASIAN CAR”. 2019年9月12日閲覧。
- ^ “童夢の新型レースマシンが初テスト! F1登竜門レースカテゴリーが2020年より国内で開催”. AutoMesseWeb. (2019年9月11日)
- ^ FIA-FR:童夢F111/3がアルファロメオエンジンを採用した深い理由 - Motorsport Forum・2020年8月28日
- ^ “ダンパーカバーにBcomp社材料を採用”. 童夢. 2021年6月9日閲覧。
- ^ 『FIA FORMULA REGIONAL規格レース車両 シェイクダウン』(プレスリリース)株式会社童夢、2019年9月11日 。2019年9月12日閲覧。
- ^ “童夢のリージョナルF3用シャシー『F111/3』がシェイクダウン。加藤寛規、金丸ユウがステアリング握る”. autosport web (2019年9月11日). 2019年9月12日閲覧。
- ^ “「クールジャパン」のレーシングコンストラクターが復活! 再び動き出した「童夢の野望」とは? 【後編】”. CARSMEET WEB. (2019年3月12日)
- ^ SPECIFICATIONS - 童夢