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硝酸水銀(II)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
硝酸水銀(II)
Mercury(II) nitrate
識別情報
CAS登録番号 10045-94-0(無水物) チェック
7783-34-8 (一水和物)
EC番号 233-152-3
国連/北米番号 1625
RTECS番号 OW8225000
特性
化学式 Hg(NO3)2
モル質量 324.7 g/mol
外観 無色の結晶ないし白色の粉末
密度 4.3 g/cm3 (一水和物)
融点

79 ℃ (一水和物)

への溶解度 可溶
溶解度 硝酸に可溶
アルコールに不溶
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0980
EU分類 強毒性 (T+)
環境に対する危険性 (N)
EU Index 080-002-00-6
NFPA 704
0
3
2
Rフレーズ R26/27/28, R33, R50/53
Sフレーズ (S1/2), S13, S28, S45, S60, S61
引火点 不燃性
関連する物質
その他の陰イオン 硫酸水銀(II)
塩化水銀(II)
その他の陽イオン 硝酸亜鉛
硝酸カドミウム
関連物質 硝酸水銀(I)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

硝酸水銀(II)(しょうさんすいぎん(II)、: Mercury(II) nitrate)は水銀硝酸塩で、化学式Hg(NO3)2で表される無機化合物

性質

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熱した濃硝酸と水銀との反応で得ることができる。吸湿性があり、加水分解する。また光により分解するため、乾燥した冷暗所で保管する。無水物水和物があり、通常は一水和物として流通している。かつては毛皮フェルト製造時の処理に使用されたが、毒性と環境への影響が強いため使用されなくなった。

安全性

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日本の毒物及び劇物取締法では毒物に分類される。ラットに経口投与した場合の半数致死量(LD50)は26mg/kg、皮膚からも吸収されやすく、ラットに経皮投与した場合のLD50は75mg/kgである。眼、皮膚、気道への腐食性がある。摂取した場合は特に腎臓神経系への影響が大きい。

これ自体は不燃性であるが、酸化剤であり周囲での燃焼を助長する。加熱による分解で腐食性・毒性のある煙霧を生じることがある。ホスフィン酸エタノールアセチレンとの反応により、衝撃に敏感な化合物を生成する[1][2]

備考

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不思議の国のアリス』の登場人物である「帽子屋」は、mad as a hatter という当時よく用いられていた表現をもとにしたキャラクターであるが、この言い回しは帽子の材料となるフェルトを処理する(羊毛表面を覆うキューティクルを絡み合わせて固める)ために硝酸水銀(II)が用いられていたことが背景にある。作業場に排出される高濃度の水銀蒸気にさらされる作業者は水銀中毒になるリスクが高く、癇癪や極度の人見知りといった行動・性格の変化をもたらす神経症状を発症することも多かった[3]

脚注

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  1. ^ 国際化学物質安全性カード
  2. ^ 製品安全データシート(安全衛生情報センター)
  3. ^ 環境省環境保健部水銀対策推進室『【詳解】不思議な水銀の話』環境省、2021年、226-227頁https://www.env.go.jp/chemi/tmms/husigi-sk.html