献灯使
献灯使 The Emissary | ||
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著者 | 多和田葉子 | |
イラスト | 堀江栞 | |
発行日 |
単行本:2014年10月31日 文庫版:2017年8月8日 | |
発行元 | 講談社 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 |
四六判上製本 文庫版:文庫判 | |
ページ数 |
単行本:274 文庫版:272 | |
公式サイト |
単行本:献灯使 単行本 講談社 文庫版:献灯使 文庫版 講談社 | |
コード |
単行本:ISBN 978-4-06-219192-0 文庫版:ISBN 978-4-06-293728-3 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『献灯使』(けんとうし、英: The Emissary)は、日本の小説家多和田葉子による小説である。
単行本は、2014年10月31日に講談社より刊行された[1]。単行本の装幀は、セキネシンイチ制作室による。単行本の装画・挿絵は、堀江栞による[2][3]。文庫版は、2017年8月8日に講談社文庫より刊行された[4]。
2018年4月、マーガレット満谷 (Margaret Mitsutani) による英訳版 “The Emissary” がニューヨークの出版社、ニューダイレクションズ社 (New Directions Publishing) より刊行される[5][6][7]。同年7月、満谷による英訳版 “The Last Children of Tokyo” がロンドンの出版社、グランタ社 (en:Granta_Books) より刊行される[8]。同年11月、英訳版 “The Emissary” が全米図書賞〈翻訳文学部門〉を受賞する[9][5][10][11]。
著者の多和田は、受賞の知らせを受けて、「『献灯使』という小説には日本語でしかできない言葉遊びがとても多いので、いろんな技を使って英語に訳してくれた翻訳者の功績が大きいです」[12]と述べている。
収録作品とあらすじ
[編集]- 献灯使(初出は 『群像』2014年8月号)
- 大きな災厄に襲われてから、日本では鎖国政策が敷かれ、外来語を使ってはいけなくなり、インターネットも自動車も消えてなくなっている。100歳を過ぎている作家の義郎は、身体が軟弱なひ孫の無名の世話をしながら、仮設住宅で暮らしている。
- 韋駄天どこまでも(初出は『群像』2014年2月号)
- 東田一子は、夫が亡くなった後、生け花教室に通うようになる。その教室には、「てんちゃん」と呼ばれている、束田十子という名の女性が休むことなく通っており、その女性のことが一子は気になり始める。
- 不死の島(初出は『それでも三月は、また』 2012年、講談社)
- 放射性物質によって、死ぬ能力が人々から奪われてしまった日本では、電力の供給が全体的に減少していた。そんな中、能に想を得た「夢幻能ゲーム」という遊びが流行し始める。
- 彼岸(初出は 『早稲田文学』2014年秋号)
- 日本は、原子力発電所の事故によって、壊滅的な状態に陥った。そのため、日本に住む人々は、中国大陸へ亡命しなければならなくなった。
- 動物たちのバベル(初出は 『すばる』2013年8月号)
- 大きな洪水が起こった後、人類がいなくなった状況の下で、イヌやネコの他に、リスやウサギ、クマやキツネが議論を行っており、やがて、バベルの塔を建設するという計画が持ち上がる。
登場する主な人物・動物
[編集]- 献灯使
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- 義郎 - 100歳を過ぎた作家。
- 無名 - 義郎のひ孫。
- 韋駄天どこまでも
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- 東田一子 - 女性。
- 束田十子 - 女性。
- 不死の島
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- ピント - ポルトガル人。
- 彼岸
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- 瀬出 - 元参議院議員。
- 動物たちのバベル
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- イヌ
- ネコ
- リス
- ウサギ
- クマ
- キツネ
書評
[編集]東京大学教授の阿部公彦は、「圧倒的なのは語りの勢いだ。言葉がどんどん走り、あれよあれよと連なる」「真面目なのかふざけているのかわからなくて落ち着かない、と思う読者もいるだろう。正しい反応である。その落ち着かなさが私たちの足元を突き崩す。多和田ワールドはそうやって私たちを引きこむのだ」[13][14]と評価している。
東京学芸大学准教授の小澤英実は、「多和田の朗読やパフォーマンスはよく『ドイツ語も日本語も分からないけれど面白かった』と言われると聞くが(例えば『ユリイカ』の「多和田葉子自筆年譜」を参照)、あたかも『飛魂』のヒロインの朗読を思わせるようなこうした感想を引き出す言葉の身体性、その意味をゆるがす文字のパフォーマンスこそが、多和田作品の類いまれなる力なのだ」[15]と評価している。
事件
[編集]2022年12月14日、26歳の男が講談社に侵入し新聞紙などに火をつけていたところを逮捕されたが[16]、裁判の中で容疑者は自身の生い立ちを交えつつ、動機に講談社が『献灯使』を出版したことをあげた[17]。
脚注
[編集]- ^ “献灯使 単行本”. 講談社. 2019年6月8日閲覧。
- ^ 『献灯使』 2014.
- ^ “多和田葉子「献灯使」特設サイト”. 講談社文庫. 2019年6月8日閲覧。
- ^ “献灯使 文庫版”. 講談社. 2019年6月8日閲覧。
- ^ a b “多和田葉子さん『献灯使』の英語版 全米図書賞を受賞”. 講談社 (2018年11月15日). 2019年6月8日閲覧。
- ^ “Author Yoko Tawada ’82 wins 2018 National Book Award for ‘The Emissary’”. 早稲田大学 (2018年11月15日). 2019年6月8日閲覧。
- ^ “36年ぶり全米図書賞翻訳部門、でも肝心の翻訳者の名がない…”. ブックバン (2018年12月13日). 2019年6月8日閲覧。
- ^ “The Last Children of Tokyo”. グランタ社. 2019年6月8日閲覧。
- ^ “The Emissary - Winner, National Book Awards 2018 for Translated Literature”. National Book Foundation. 2019年6月8日閲覧。
- ^ “トレンドワード 多和田葉子”. 日本放送協会 (2018年11月15日). 2019年6月8日閲覧。
- ^ “逆流をつくる人たち、アメリカ 全米図書賞翻訳文学部門受賞・多和田葉子”. 産経新聞. (2019年1月31日) 2019年6月8日閲覧。
- ^ “米最高権威の文学賞 芥川賞作家の多和田葉子さんが受賞”. 日本放送協会 (2018年11月15日). 2018年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月8日閲覧。
- ^ 阿部公彦 (2018年12月22日). “36年ぶりの快挙!全米図書賞を受賞した多和田葉子作品の静かな迫力”. 講談社. 2019年6月8日閲覧。
- ^ 『群像』 2019, p. 98.
- ^ 小澤英実 (2018年12月24日). “日本語の未知の力を教えてくれる…多和田葉子の翻訳作品の魅力”. 講談社. 2019年6月8日閲覧。
- ^ “講談社敷地内に侵入、新聞紙に着火の大学生を逮捕…「出版物に不満」”. 読売新聞. (2022年12月16日) 2023年3月29日閲覧。
- ^ 事件番号:東京地裁令和4年刑(わ)第3299号
参考文献
[編集]- 多和田葉子『献灯使』講談社、2014年10月。ISBN 978-4-06-219192-0。
- 『群像』第74巻第1号、講談社、2019年1月。