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「サクソンウォリアー」の版間の差分

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| 性 = [[牡馬|牡]]<ref name="Racing Post">{{Cite web |title=Saxon Warrior {{!}} Race Record & Form |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/1588345/saxon-warrior/form |website=www.racingpost.com |access-date=2023-01-01 |publisher=[[レーシングポスト|Racing Post]]}}</ref>
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'''サクソンウォリアー'''(''Saxon Warrior''、[[2015年]][[1月26日]] - )は、[[日本]]生産、[[アイルランド]]調教の[[競走馬]][[種牡馬]]<ref name="eng"/>。主な勝ち鞍は[[2017年]]の[[フューチュリティトロフィー|レーシングポストトロフィー]]、[[2018年]]の[[2000ギニー]]
'''サクソンウォリアー'''([[英語|英]]:Saxon Warrior、[[2015年]][[1月26日]] - )は、[[日本]]生産、[[アイルランド]]調教の[[競走馬]][[種牡馬]]である
== 概要 ==
[[競走馬]]として、2歳時の[[レーシングポストトロフィー]]、3歳時の[[2000ギニーステークス]]を無敗で優勝し、[[イギリス]]でG1競走2勝を挙げた。父を[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]、母を[[メイビー (競走馬)|メイビー]]とする[[日本]]産馬であり、同国産馬としては最初のイギリスG1競走およびイギリスクラシック競走勝ち馬である<ref name="futurity61360"/><ref name="okuno2019322" />。2000ギニー以降は5戦して未勝利に終わったが、[[エクリプスステークス]]および[[アイリッシュチャンピオンステークス]]では同年の[[カルティエ賞]]年度代表馬[[ロアリングライオン]]の2着に入った<ref name="okuno2019315">[[サクソンウォリアー#奥野2019|奥野2019、315頁。]]</ref><ref name="okuno2019317">[[サクソンウォリアー#奥野2019|奥野2019、317頁。]]</ref>。


主な勝ち鞍は2017年レーシングポストトロフィー、ベレスフォードステークス、2018年2000ギニーステークス。通算9戦4勝。
==戦績==
=== デビュー前 ===
アイルランドの[[クールモアスタッド]]が[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]の血を求めて2011年の[[カルティエ賞]]最優秀2歳牝馬[[メイビー (競走馬)|メイビー]](Maybe)を日本に送り<ref name="nikkan">奥野庸介. [http://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201712260000054&year=2017&month=12&day=26 来年の英ダービー、主役はディープの子供/コラム]. 日刊スポーツ(2017年12月26日付). 2018年5月5日閲覧</ref>、[[2015年]]1月26日に[[北海道]][[安平町]]の[[ノーザンファーム]]で誕生したのがサクソンウォリアーである<ref name="eng"></ref><ref>[https://www.tokyo-tc.com/members/wp/column/2017/09/26/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%97%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%B8%E7%BF%94%E3%81%B6%EF%BC%81/ コラム|TOKYO THOROUGHBRED CLUB. OFFICAL SITE]. 2018年5月5日閲覧</ref>。離乳後の同年10月に[[アイルランド]]へ渡った<ref>合田直弘. [http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=126656 ディープインパクト産駒サクソンウォリアーが愛G2制し2018年英ダービー1番人気に]. netkeiba.com(2017年9月25日付). 2018年5月8日閲覧</ref>。


2019年からは[[クールモアスタッド]]で[[種牡馬]]として供用されている。
なお、生まれはノーザンファームであるが、日本国外では繁殖牝馬の所有者を生産者とするのが一般的であるため、ノーザンファームによる生産とはされていない<ref>[https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201805290000448&year=2018&month=05&day=29 ディープ産駒、日英仏3カ国制覇なるか/英ダービー]. 日刊スポーツ(2018年5月29日付). 2018年6月3日閲覧</ref>。


== 誕生 - デビュー前 ==
=== 2歳(2017年) ===
2015年1月26日、[[日本]]・[[北海道]][[安平町]]の[[ノーザンファーム]]で生まれる<ref name="hb2019325">[[サクソンウォリアー#『日本の競馬 総合ハンドブック2019』|『日本の競馬 総合ハンドブック2019』、325頁。]]</ref>。
アイルランドの名門[[エイダン・オブライエン]]厩舎の所属となる。8月に[[カラ競馬場]]での新馬戦でデビューし、父譲りの末脚を発揮して初陣を飾る。2戦目のベアスフォードステークス(GII)では[[ライアン・ムーア]]が手綱を取り、デビューからの2連勝で重賞初制覇となった。3戦目は[[イギリス]]・[[ドンカスター競馬場]]で行われる[[フューチュリティトロフィー|レーシングポストトロフィー]](GI)に出走。これまでの2戦とは一転して逃げの手に出て、直線で[[ロアリングライオン]]に一旦は交わされながらも差し返す勝負根性を見せ、無傷の3連勝でGI初制覇を果たした。この勝利により、イギリスの主要[[ブックメーカー]]は揃ってサクソンウォリアーを2018年の[[ダービーステークス|英ダービー]](GI)の1番人気に推した<ref name="nikkan"></ref>。
[[ファイル:Deep Impact(horse)20060430R1.jpg|サムネイル|ディープインパクト(2006年第133回[[天皇賞(春)]])]]
父は、日本・[[社台スタリオンステーション]]の[[種牡馬]][[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]<ref name="Moubray201851" />。2012年以降、連年日本の[[リーディングサイアー]]という地位にあり<ref name="goda201867" />、現役競走馬としての同馬は海外の[[第85回凱旋門賞|凱旋門賞]]で敗戦していたものの、種牡馬として生産した産駒の活躍によってその国際的な評価が改めて高まっていた<ref name="gunshimon180">[[サクソンウォリアー#軍士門2021|軍士門2021、180頁。]]</ref>。なお、日本におけるディープインパクト産駒は、軽い馬場で発揮する瞬発力を長所とするものが多く、[[ヨーロッパの競馬]]で見られるような力の要る馬場は不向きである、と評される面があった<ref name="goda201867">[[サクソンウォリアー#合田2018|合田2018、67頁。]]</ref>。


母は、現役時[[アイルランド]]・[[クールモアスタッド|クールモア]]のチームによって所有され、2011年にデビューからの5連勝で[[モイグレアスタッドステークス]]を勝利し、同年の[[カルティエ賞]]最優秀2歳牝馬に選出された[[ガリレオ (競走馬)|ガリレオ]]牝駒の[[繁殖牝馬]][[メイビー (競走馬)|メイビー]]<ref name="goda201868" />。メイビーの母、すなわち本馬の2代母は、現役時5ハロン戦で勝ち鞍のある[[デインヒル]]牝駒スモラで、その半姉には[[オークスステークス|オークス]]馬[[ダンシングレイン]]がいる<ref name="Moubray201854" />。本馬の4代母であるローズオブジェリコは、その直仔に、ダービー馬[[ドクターデヴィアス]]、[[高松宮杯]]優勝馬[[シンコウキング]]、[[スズカフェニックス]]の母馬ローズオブスズカの3頭などを生産した繁殖牝馬である<ref name="Moubray201854" />。
=== 3歳(2018年) ===
年明け初戦となった[[2000ギニー]]では[[ケンタッキーダービー]]に騎乗するムーアに代わって[[ドナカ・オブライエン]]が手綱を取り、デビュー4連勝でのクラシック制覇を果たした。日本生産馬としては初の[[イギリス]][[クラシック (競馬) |クラシック]]制覇となった<ref>[http://race.sanspo.com/keiba/news/20180506/ove18050605020001-n1.html 日本産馬初!サクソンウォリアー、英クラシック制覇]. サンケイスポーツ(2018年5月6日付). 2018年5月8日閲覧</ref>。この勝利は、[[エイダン・オブライエン]]調教師に[[イギリスクラシック三冠]](2000ギニー、[[ダービーステークス|英ダービー]]、[[セントレジャーステークス|英セントレジャー]])を意識させたほどであった<ref name="nikkan2">[オブライエン師、引退サクソンに英3冠期待していた https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201809180000491&year=2018&month=9&day=18]. 日刊スポーツ(2018年9月18日付). 2018年9月18日閲覧</ref>。無敗の二冠制覇を目指して出走した[[ダービーステークス|英ダービー]]では圧倒的1番人気に支持されるが、中団追走から直線で伸びきれず[[マサー]]の4着に敗れた<ref>[http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=137971 【英ダービー】ディープ産駒サクソンウォリアー敗れる ゴドルフィンのマサーが巻き返しV]. netkeiba.com(2018年6月3日付). 2018年6月3日閲覧</ref>。


本馬の生産当時、40年近く種牡馬ビジネスを経営の中核に置き、これまでに[[サドラーズウェルズ]]、デインヒル、[[モンジュー]]、ガリレオなどの優秀な種牡馬を擁してきたサラブレッド事業体のクールモアスタッドは、ガリレオの後継種牡馬を育成するという課題と並んで、「ガリレオやデインヒルの血脈を含む優秀な牝馬と配合することのできる異父系の一流種牡馬を獲得する」という課題に直面していた<ref name="goda201867" /><ref name="goda201868">[[サクソンウォリアー#合田2018|合田2018、68頁。]]</ref>。そこで、日本の種牡馬であるディープインパクトの血統を求めた同グループは、手元の上質な牝馬を日本へ送り込むという手法を採り{{refnest|ディープインパクトの血統を入手するための手法として、このほかに[[セリ市 (競馬)|競り市]]での落札などの手法があるが、これは、賞金が高い[[日本の競馬の競走体系|日本競馬の競走体系]]を前提としているため、入手した血統馬をアイルランドで競走させるとすれば割高の取引となった<ref name="goda201868"/><ref name="goda201869"/>。特に、競り市の[[セレクトセール]]で取引される産駒は高額であった<ref name="gunshimon177">[[#軍士門2021|軍士門2021、177頁。]]</ref>。|group="注"}}、2012年一杯で現役を引退して繁殖入りしたメイビーを、同国のディープインパクトと2年連続で配合してその産駒を生産したのである{{Refnest|ヨーロッパの生産者が繁殖牝馬を日本に送ってディープインパクトを配合する手法自体は、ディープインパクトの供用初年度となる2007年に、フランスの馬主ウィルデンシュタイン家からリステッド競走勝ち馬バステッドが送り込まれ、供用2年度に再度配合されたバステッドが後のG1競走勝ち馬[[ビューティーパーラー]]を生産したように、早い段階から行われていた<ref name="gunshimon178">[[サクソンウォリアー#軍士門2021|軍士門2021、178頁。]]</ref><ref name="gunshimon179">[[サクソンウォリアー#軍士門2021|軍士門2021、179頁。]]</ref>。しかし、ヨーロッパの最優秀2歳牝馬のメイビーが送り込まれたという出来事は、ディープインパクトのために来日する牝馬の質が、その供用初期と比べて大きく向上したことを一例として示すものであった<ref name="gunshimon181">[[サクソンウォリアー#軍士門2021|軍士門2021、181頁。]]</ref>。|group=注}}<ref name="goda201869">[[#合田2018|合田2018、69頁。]]</ref><ref name="goda201868" />。本馬はその2番仔にあたる<ref name="goda201868" /><ref name="Fidleretal2018194">[[#Fidler et al.2018|Fidler et al.2018, p.194]]</ref>。
[[アイルランドダービー|愛ダービー]]でも圧倒的1番人気に支持されるが、先行する二頭を捕まえられず3着に敗退する<ref>[http://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201807010000698&year=2018&month=7&day=1 サクソンウォリアー3着も師は「満足」/愛ダービー]. 日刊スポーツ(2018年7月1日付). 2018年7月10日閲覧</ref>。ここで陣営は距離短縮を決断し、中6日で[[エクリプスステークス]]に出走。英ダービー馬マサーが出走を取り消して7頭立てとなり、1番人気に支持されたがゴール前で[[ロアリングライオン]]の強襲に遭い、クビ差の2着に惜敗した<ref>[http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=139459 【英・エクリプスS】ロアリングライオンがG1初勝利! 連闘サクソンウォリアーわずか及ばず2着]. netkeiba.com(2018年7月7日付). 2018年7月10日閲覧</ref>。[[インターナショナルステークス]]でもロアリングライオンの後塵を拝し、格下の[[サンダリングブルー]]にも交わされ4着に敗れた<ref>[http://race.sanspo.com/keiba/news/20180824/ove18082405020001-n1.html 【英GI】2番人気ロアリングライオンV]. サンケイスポーツ(2018年8月24日付). 2018年8月26日閲覧</ref>。9月15日の[[アイリッシュチャンピオンステークス]]では好位追走から一旦は先頭に立つも、またもロアリングライオンに交わされ2着となった。続く一戦には2000ギニー以来のマイル戦となる[[クイーンエリザベス2世ステークス]]が予定されていたが、アイリッシュチャンピオンステークスの直後に[[屈腱炎]]が判明して引退、[[種牡馬]]入りが決まった<ref>[http://race.sanspo.com/keiba/news/20180916/ove18091620130004-n1.html 【愛チャンピオンS】ディープ産駒サクソンウォリアー 2着も腱の損傷で電撃引退]サンケイスポーツ、2018年9月16日公開 2018年9月17日閲覧</ref><ref name="nikkan2"></ref>。


現役引退にあ[[エダン・オブイエン]]調教師は2000ギニ後に中長距離路線選択したことについて「たぶん失敗だったと思います。私は彼マイ距離)使い続ければたのかもしません」と[[ランド放送協会]]のインタビューで語っている<ref name="nikkan2"></ref>。主戦騎手の[[ライアーア]]も「最も悲しいは彼がマイル戦走るこを見ことができなくなっことです」とコメトした<ref>[https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201809180000492&year=2018&month=9&day=18 サクソンウォリア引退にムア「すごく残念」]. 日刊スポーツ(2018年918日付). 2018年918日閲覧</ref>。
離乳を終え本馬は2015年10月21日にアランドへと輸出<ref name="goda201868" />。[[ティペラリー州]]で中期育成を受け一般的なディプインパクト産駒とは趣の異なる雄大な馬格得るともに、ヨーロッパ深い芝馬場に合った走法身に付けた<ref name="yoshida201947">[[サクソンウォリアー#吉田2019|吉田2019、47頁。]]</ref>。その後、競走馬として、クーモア共同経営者あるデリック・スミス、ジョン・マグニア夫人、[[マイケル・テイバー]]によって所有さ、母馬メイビー同じく[[ダン・オブイエン]]調教師もとに預託された<ref name="goda201868" />。なお、生まれはノーザファーであるが日本国外では繁殖牝馬所有者生産者一般的あるめ、ノーザファームによる生産とはされていない<ref>[https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201805290000448&year=2018&month=05&day=29 ディプ産駒、日英仏3カ国制覇なるか/英ダービー]. 日刊スポーツ(2018年529日付). 2018年63日閲覧</ref>。

== 競走馬時代 ==

=== 2歳時(2017年) ===
8月27日、サクソンウォリアーは[[アイルランド]]・[[カラ競馬場]]の第1競走として施行された14頭立ての未勝利戦でデビューし、本馬と同じ[[エイダン・オブライエン]]厩舎の所属でありその主戦[[騎手]][[ライアン・ムーア]]が騎乗したクリストファーロビンが単勝1.73倍の1番人気に支持されたなかで、オブライエンの息子である[[ドナカ・オブライエン]]が騎乗した本馬は単勝9倍の3番人気に支持された<ref name="goda2017-08-30">{{Cite web |title=愛でディープ産駒のサクソンウォリアーがデビュー勝ち |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=38128 |website=netkeiba.com |access-date=2022-12-31 |language=ja |author=[[合田直弘]] |publisher=[[netkeiba]]}}</ref>。競走では、道中後方2番手の位置取りから、残り2[[ハロン (単位)|ハロン]]辺りで外目から徐々に進出すると、残り1ハロンで一気に交わし、2着馬に対して3馬身1/4差を付けて優勝した<ref name="goda2017-08-30" />。[[日本]]の競馬評論家である[[合田直弘]]や奥野庸介は、この時の本馬の末脚を取り上げ、父[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]との類似に言及している<ref name="goda2017-08-30" /><ref name="okuno2017-12-26" />。

{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=wrpcrVZNhzk 2017年ベレスフォードステークス At The Races]}}

デビュー戦を勝利したサクソンウォリアーは、2戦目として9月24日ネース競馬場で施行されたベレスフォードステークス(G2、芝8ハロン)に出走<ref name="yushun201711117" />。後続に2馬身1/2差を付けてこれを優勝し、デビューからの2連勝で重賞制覇を達成した<ref name="yushun201711117" />。これによって同競走の17勝および7連覇を達成したオブライエンは、競走後、「彼は来年のクラシックホースだ」と語った<ref name="Fidleretal2018194" />。ムーアが手綱を取って達成したこの勝利を受けて、本馬を翌年の[[ダービーステークス]]前売りにおける1番人気に推す[[ブックメーカー]]も出現した<ref name="Fidleretal2018194" /><ref name="yushun201711117">[[サクソンウォリアー#『優駿』2017年11月号114-117|『優駿』2017年11月号、117頁。]]</ref>。

{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=0Afko_HNX8s 2017年レーシングポストトロフィー At The Races]}}

デビューから2連勝中のサクソンウォリアーは、3戦目として、10月28日に[[イギリス]]・[[ドンカスター競馬場]]で施行された[[レーシングポストトロフィー]](G1、芝8ハロン)に出走<ref name="yushun201712117">[[サクソンウォリアー#『優駿』2017年12月号112-117|『優駿』2017年12月号、117頁。]]</ref>。これまでの2戦とは一転して逃げの手に出て、最終直線では、3連勝中の[[ロアリングライオン]]に一旦は交わされながらも差し返す勝負根性を見せ、無傷の3連勝でG1競走初制覇を果たした<ref name="okuno2017-12-26" />。日本産馬によるイギリスのG1競走勝利は史上初<ref name="futurity61360">[[サクソンウォリアー#『フューチュリティ』Vol.61|『フューチュリティ』Vol.61、360頁。]]</ref>。また、これによってオブライエンは調教師として同年のG1競走26勝目を挙げ、2003年にアメリカの[[ロバート・フランケル]]が残していた年間平地G1競走最多勝記録を更新した{{Refnest|なお、同年のオブライエン厩舎は、最終的にG1競走の年間勝利数を28勝まで積み上げることになる<ref name="okuno2018313">[[#奥野2018|奥野2018、313頁。]]</ref>。|group=注}}<ref name="yushun201712117" />。この勝利により、イギリスの主要[[ブックメーカー]]は揃ってサクソンウォリアーを2018年のダービー1番人気に推した<ref name="okuno2017-12-26">{{Cite web |title=来年の英ダービー、主役はディープの子供 |url=https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201712260000054&year=2017&month=12&day=26 |website=p.nikkansports.com |access-date=2023-01-01 |language=ja |publisher=[[日刊スポーツ]] |author=奥野庸介 |date=2017-12-26}}</ref>。

2017年度の[[カルティエ賞]]では、最優秀2歳牡馬候補にノミネートされた{{Refnest|受賞馬は[[ユーエスネイビーフラッグ]]<ref name="okuno2018316"/>。ほか、[[メンデルスゾーン (競走馬)|メンデルスゾーン]]、ロアリングライオンがノミネートされた<ref name="2017CA"/>。|group=注}}<ref name="2017CA">{{Cite web |title=Enable faces four-way battle for Horse of the Year title |url=https://www.racingpost.com/news/enable-faces-four-way-battle-for-horse-of-the-year-title/308335 |website=www.racingpost.com |access-date=2023-01-01 |last=Lees |first=Jon |publisher=[[レーシングポスト|Racing Post]] |archive-url=https://web.archive.org/web/20230101035757/https://www.racingpost.com/news/enable-faces-four-way-battle-for-horse-of-the-year-title/308335 |archive-date=2023-1-1}}</ref>。2017年度ヨーロピアン2歳クラシフィケーションでは、2歳時の本馬は、レーシングポストトロフィーの勝利によって119ポンドのレーティングを与えられた<ref name="BHA2018-1-23">{{Cite web |title=Another Aidan O’Brien 1-2 as U S Navy Flag and Clemmie are confirmed as Champion two-year-old colt and filly |url=https://www.britishhorseracing.com/press_releases/another-aidan-obrien-1-2-u-s-navy-flag-clemmie-confirmed-champion-two-year-old-colt-filly/ |website=The British Horseracing Authority |access-date=2023-01-01 |language=en-GB |publisher=[[英国競馬統括機構|The British Horseracing Authority]]}}</ref>。このレーティングは、ヨーロッパ調教の2歳馬として、7ハロン戦の[[デューハーストステークス]]を勝ったオブライエン厩舎の僚馬[[ユーエスネイビーフラッグ]](122)に次ぐ同年2位、特に距離8ハロン以上の部門に限れば同年1位に格付けされる評価であった<ref name="BHA2018-1-23" /><ref name="E2yoC">{{Cite web |url=https://www.britishhorseracing.com/wp-content/uploads/2018/01/European-2yo-Classification-2017.pdf |title=European 2yo Classification 2017 |access-date=2022-12-30}}</ref>。

=== 3歳時(2018年) ===

==== 2000ギニーステークス ====
{{External media|width=300px|video1=[https://www.youtube.com/watch?v=ejWnaJB7Ec4 2018年2000ギニーステークス Racing TV]}}
2歳時にロアリングライオンをクビ差退けたG1競走レーシングポストトロフィーを含む3連勝を達成したサクソンウォリアーは、当初の2000ギニーステークスの前売りのオッズでは1番人気に支持されていたが、2000ギニーの前哨戦が施行されると、[[クレイヴンステークス]]において2着馬に9馬身差および3着馬ロアリングライオンには9馬身1/4差を付けて圧勝した[[ゴドルフィン]]所有の[[マサー]]、また、2歳時にスーパーレイティブステークスを勝利して明け3歳の準重賞を勝利したオブライエン厩舎のグスタフクリムトなどがギニー路線の有力馬として台頭した<ref name="Moubray201851" />。これに対して、本馬は、例年のオブライエン厩舎のギニー路線における主力馬と同様、3歳初戦がクラシック競走となった<ref name="Moubray201851">[[サクソンウォリアー#モーブレイ2018|モーブレイ2018、51頁。]]</ref>。

5月5日、サクソンウォリアーは約半年振りの実戦として、[[ニューマーケット競馬場]]で施行された[[2000ギニーステークス]](G1、芝8ハロン)に出走<ref name="yushun201806116">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年6月号114-117|『優駿』2018年6月号、116頁。]]</ref>。厩舎の主戦騎手であるムーアは[[メンデルスゾーン (競走馬)|メンデルスゾーン]]のために[[ケンタッキーダービー]]へ遠征したため、鞍上は代わってドナカ・オブライエンとなった<ref name="Moubray201852">[[#モーブレイ2018|モーブレイ2018、52頁。]]</ref>。人気順は、マサーが単勝3.5倍の1番人気で、これにサクソンウォリアーが単勝4倍の2番人気、グスタフクリムトが単勝5倍の3番人気と続いた<ref>{{Cite web |title=Full Result 3.35 Newmarket {{!}} 5 May 2018 |url=https://www.racingpost.com/results/38/newmarket/2018-05-05/689710 |website=www.racingpost.com |access-date=2022-12-31 |publisher=[[レーシングポスト|Racing Post]]}}</ref><ref name="sweetman2019112" />。

競走では、外枠を引いた馬が直線コースのスタンド側を進行したのに対して、サクソンウォリアーは馬場の中央を通った一団の中で進行した<ref name="Moubray201852" />。先行勢が脱落するなかでグスタフクリムトとタタソールズステークス勝ち馬のイラーカムの両頭が仕掛けられたが、ドナカはサクソンウォリアーを追うことなく外に進路を切り替えた<ref name="Moubray201852" />。残り2ハロンを切って仕掛けられた本馬が先頭に立つと、最後はヨレる走りを見せながら押し切り、2着に入ったタタソールズステークス2着馬ティップトゥーウィンに対して1馬身1/2差を付けて優勝<ref name="yushun201806116" />。外枠から発走したマサーが更にアタマ差遅れて3着で続き、同じく外枠からスタンド側を追走したロアリングライオンは5着<ref name="Moubray201852" />。グスタフクリムトは6着となった<ref name="Moubray201852" />。

これによって、サクソンウォリアーはデビューからの4連勝でG1競走2連勝を達成した<ref name="yushun201806116" />。日本産馬のイギリスクラシック競走勝利は史上初であった<ref name="okuno2019322" />。オブライエンは同競走を9勝目とし、これが平地G1競走通算300勝の節目となった<ref name="yushun201806116" /><ref name="okuno2019322">[[#奥野2019|奥野2019、322頁。]]</ref>。19歳のドナカ・オブライエンもイギリスクラシック競走を初勝利とした<ref name="sweetman2019116">[[サクソンウォリアー#Sweetman2019|Sweetman2019, p.116]]</ref>。競走後、ドナカは、道中ではずっと勝てると思って競走を運んでいたが残り2ハロン地点で早仕掛けをしてしまったと回顧し、本馬については「彼はすでに真のモンスターですから、これ以上成長するかは分かりませんが、今日の走りにはとても感銘を受けました」と評価した<ref name="yushun201806116" />。この勝利を受けて、サクソンウォリアーは平均的な2000ギニー優勝に対する評価となる121ポンドのレーティングを与えられた{{Refnest|ただし、本馬の2000ギニー1着の最終的な評価は、レーティング119ポンドで確定している<ref name="bha"/><ref name="IrishClassification2018"/>。|group=注}}<ref>{{Cite web |title=Newmarket QIPCO Guineas Festival {{!}} Handicappers Blog |url=https://www.britishhorseracing.com/newmarket-qipco-guineas-festival-handicappers/ |website=The British Horseracing Authority |date=2018-05-09 |access-date=2023-01-01 |language=en-GB |publisher=[[英国競馬統括機構|The British Horseracing Authority]] |author=Gardiner-Hill, Dominic; Barnes, Adam |archive-url=https://web.archive.org/web/20230101033524/https://www.britishhorseracing.com/newmarket-qipco-guineas-festival-handicappers/ |archive-date=2023-1-1}}</ref>。

==== ダービーステークス - アイリッシュダービー ====
2000ギニーの後、ダービーの前哨戦が施行され、ヤングラスカルがG3競走[[チェスターヴェース|チェスターヴァーズ]]を、ロアリングライオンがG2競走[[ダンテステークス]]をそれぞれ勝って評価を高めたが、依然として本番のダービーにおける本命馬と目されたのがサクソンウォリアーである<ref name="Moubray201854">[[#モーブレイ2018|モーブレイ2018、54頁。]]</ref>。第239回ダービーステークス(G1、芝12ハロン6[[ヤード]])に出走する本馬には、史上38頭目のイギリスクラシック春二冠が懸かった<ref name="yushun20180764">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年7月号64-65|『優駿』2018年7月号、64頁。]]</ref>。話題はダービーを越えて「[[イギリスクラシック三冠]]」挑戦の夢も語られ<ref name="sweetman2019114">[[サクソンウォリアー#Sweetman2019|Sweetman2019, p.114]]</ref><ref name="yushun201810128" />、競馬メディアなどは1970年の[[ニジンスキー (競走馬)|ニジンスキー]]以来となる三冠馬が誕生する可能性を論じた<ref name="Moubray201854" /><ref name="yushun201810128">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年10月号128|『優駿』2018年10月号、128頁。]]</ref>。また、日本産馬による同競走の出走は史上初の事例であり、このダービーは、日本からも例年以上の注目を集めた<ref name="yushun20180764" /><ref name="yushun20180765">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年7月号64-65|『優駿』2018年7月号、65頁。]]</ref>。競走の人気順は、サクソンウォリアーが単勝オッズ1.8倍の1番人気となり、これにロアリングライオンが7倍の2番人気、ヤングラスカルが9.5倍の3番人気で続いた<ref>{{Cite web |title=Full Result 4.30 Epsom {{!}} 2 June 2018 |url=https://www.racingpost.com/results/17/epsom/2018-06-02/664783 |website=www.racingpost.com |access-date=2022-12-30 |publisher=[[レーシングポスト|Racing Post]]}}</ref>。

競走では、[[ダービートライアルステークス]]勝ち馬ナイトトゥビホールドが速いペースで逃げる展開となり、1番枠から発走したサクソンウォリアーは道中を中団の内側で追走<ref name="yushun20180764" /><ref name="yushun20180765" />。残り3ハロン付近に入って一度他馬に包まれる事態に遭った本馬は、終盤でムーアに追われたが、伸び脚が他馬と同じになって上位馬に迫れず、最後は勝ち馬のマサー、2着馬ディーエックスビー、3着馬ロアリングライオンに続く4着に敗れた<ref name="yushun20180765" />。これによって本馬は初めての敗戦を喫し、デビュー以来の連勝は4で止まる結果となった<ref name="yushun20180765" />。競走後、この敗戦について、オブライエンは「初めてのコースや馬場に圧倒され力を出せなかったかもしれない」、ムーアは「きょうはいつもの末脚に火が付かなかった」と述べた<ref name="yushun20180765" />。

ダービーステークスで4着に敗れたサクソンウォリアーは、その1か月後、オブライエン厩舎の僚馬4頭とともに[[アイリッシュダービー]]へと参戦することとなった<ref name="Moubray201855" />。6月30日、カラ競馬場で施行されたアイリッシュダービー(G1、芝12ハロン)に出走した本馬は、ダービー馬マサーの不在{{Refnest|なお、同馬は、7月初めに観察された脚部不安によって戦線を離脱することになる<ref name="Moubray201855"/>。|group=注}}<ref name="yushun201808115">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年8月号114-117|『優駿』2018年8月号、115頁。]]</ref>、同競走史上最多の12勝を挙げているオブライエン厩舎の実績や地の利<ref name="yushun201808115" /><ref name="sweetman2019114" />、また、ニューマーケットで2000ギニーを制したサクソンウォリアー自身の実績<ref name="sweetman2019114" />などの理由から、前走と同様に競馬ファンから高い支持を集め、単勝2.0倍の1番人気に推された<ref name="yushun201808115" /><ref name="yushun201808114">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年8月号114-117|『優駿』2018年8月号、114頁。]]</ref>。これに対して、ダービーで本馬に先着したディーエックスビーが対抗馬となった<ref name="sweetman2019114" />。競走では、サクソンウォリアーは道中内側の3番手を追走し、最終直線では外から追い上げたが、先行した前の2頭を1馬身差弱ほど捕らえ切れずに3着に敗れた<ref name="yushun201808115" />。勝ち馬は未勝利戦1着以来となるドナカ・オブライエンの騎乗したラトローブであり、2着馬は[[キングエドワード7世ステークス]]2着から転戦したロストロポーヴィチであった<ref name="sweetman2019114" /><ref name="sweetman2019116" />。

==== 10ハロンのG1競走を3戦 - 現役引退 ====
オブライエンは、イギリスとアイルランド両国のダービー競走でそれぞれ4着、3着となったサクソンウォリアーを、所謂「連闘」で転戦させ、距離短縮となる[[エクリプスステークス]](G1、芝9ハロン209ヤード)に参戦させることを決断した{{refnest|この次走選択とローテーションについては、アラン・スウィートマンによる「自暴自棄の行為に見えた」<ref name="sweetman2019116"/>、ジョセリン・ド・モーブレイによる「型破り」<ref name="Moubray201856">[[#モーブレイ2018|モーブレイ2018、56頁。]]</ref>などの評がある。|group="注"}}<ref name="Moubray201855" /><ref name="yushun201808115" />。これによって本馬は、1か月強の間にG1競走を3回、また、2か月の間にはG1競走を4回走ることとなった<ref name="Moubray201855">[[#モーブレイ2018|モーブレイ2018、55頁。]]</ref>。競走では、サクソンウォリアーは先行馬群の直後を追走し、残り1ハロン辺りで一旦先頭に立ったが、道中後方を通ってこれを追撃したロアリングライオンとの叩き合いとなり、3着以下の後続馬に対しては差を付けたが、最後は競り勝ったロアリングライオンにクビ差遅れての2着となった<ref name="Moubray201855" />。

2018年夏、オブライエン厩舎でウィルス性の疾患が流行した出来事は、オブライエンによれば「[[バリードイル調教場|バリードイル]]の二十年で最も深刻な」<ref name="sweetman2019116" />事態を招き、同厩舎全体の成績を不振に陥れ、その影響はサクソンウォリアーにも及んだ<ref name="goda201868" /><ref name="sweetman2019116" />。8月22日、サクソンウォリアーは[[ヨーク競馬場]]で施行された[[インターナショナルステークス]](G1、芝10ハロン56ヤード)に出走し、8頭立ての同競走で6頭のG1競走優勝馬と対戦することになった<ref name="yushun201810116">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年10月号114-117|『優駿』2018年10月号、116頁。]]</ref>。1番人気は[[プリンスオブウェールズステークス (イギリス)|プリンスオブウェールズステークス]]、[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]を連勝していた古馬[[ポエッツワード]]、2番人気はエクリプスステークスを勝った3歳馬ロアリングライオンで、これに続いて本馬は単勝5.5倍の3番人気に支持された<ref name="yushun201810116" /><ref>{{Cite web |title=Full Result 3.35 York {{!}} 22 August 2018 |url=https://www.racingpost.com/results/107/york/2018-08-22/704705 |website=www.racingpost.com |access-date=2023-01-01 |publisher=[[レーシングポスト|Racing Post]]}}</ref>。競走では、本馬は出遅れて後方からの競馬となり、最終的に、好位から抜け出したロアリングライオンの4着に敗れた<ref name="yushun201810116" />。これは、勝ち馬ロアリングライオン、ポエッツワードに先着されたのに加えて、3着に入ったプレレーティング109ポンドの5歳馬[[サンダリングブルー]]からも1馬身1/4差遅れる結果であった<ref name="sweetman2019116" />。競走後、オブライエンは、シーズン末の2戦で予定されている[[アイリッシュチャンピオンステークス]]および[[クイーンエリザベス2世ステークス]]において、本馬は必ず真価を発揮すると断言した<ref name="goda201868" />。

9月15日、サクソンウォリアーは[[レパーズタウン競馬場]]で施行されたアイリッシュチャンピオンステークス(G1、芝10ハロン)に出走し、G1競走2連勝中のロアリングライオンに次ぐ2番人気に支持された<ref name="yushun201811115">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年11月号114-117|『優駿』2018年11月号、115頁。]]</ref><ref name="yushun201811114" />。この対決は、サクソンウォリアーの鞍上ムーアとロアリングライオンの鞍上[[オイシン・マーフィー]]との一騎打ちと目された<ref name="kerr201969">[[サクソンウォリアー#Kerr2019|Kerr2019, p.69]]</ref>。競走では、サクソンウォリアーの僚馬ドーヴィルがペースメーカーとして逃げを打って先導し、本馬はその2番手を追走した<ref name="sweetman2019116" /><ref name="yushun201811114" />。本馬は最終直線に入ってドーヴィルを交わすと、残り1ハロンで早めに抜け出して一旦先頭に立つも、後方から一完歩ごとに差を詰めたロアリングライオンに最後はクビ差差し切られて2着となった<ref name="yushun201811114">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年11月号114-117|『優駿』2018年11月号、114頁。]]</ref>。競走後、本馬は左前肢の[[屈腱炎|腱の損傷]]が判明し、9月16日に現役の引退が発表された<ref name="yushun201811117">[[サクソンウォリアー#『優駿』2018年11月号114-117|『優駿』2018年11月号、117頁。]]</ref>。

2018年度カルティエ賞では、最優秀3歳牡馬候補にノミネートされた{{Refnest|このほか、マサー、{{仮リンク|サンズオブマリ|en|Sands of Mali}}がノミネートされた<ref name="2018CA"/>。|group=注}}<ref name="2018CA">{{Cite web |title=Roaring Lion hands trainer John Gosden a fourth Cartier Horse Of The Year Award |url=https://www.hri.ie/content/press-office/press-releases/roaring-lion-hands-trainer-john-gosden-a-fourth-cartier-horse-of-the-year-award/ |website=www.hri.ie |access-date=2023-01-01}}</ref>。同年の最優秀3歳牡馬および年度代表馬に選出されたのは、アイリッシュチャンピオンステークスの後にクイーンエリザベス2世ステークスを勝ってG1競走4連勝としたロアリングライオンである<ref name="okuno2019317" />。2018年度ワールドベストレースホースランキングでは、エクリプスステークス2着およびアイリッシュチャンピオンステークス2着を評価対象に、インターメディエイト部門で121ポンドのレーティングを与えられた<ref name="IrishClassification2018" />。このレーティングは、同年世界31位タイ<ref name="18ranking">{{Cite web |url=https://jra.jp/datafile/ranking/wrank/pdf/18ranking.pdf |title=LONGINES WORLD'S BEST RACEHORSE RANKINGS 2018 |access-date=2022-12-31 |publisher=[[日本中央競馬会]]}}</ref>、アイルランド調教馬としては[[ジャックルマロワ賞]]1着の[[アルファセントーリ]](124)および[[ブリーダーズカップターフ]]2着の[[マジカル (競走馬)|マジカル]](121)に続く同年3位<ref name="IrishClassification2018" />、アイルランド調教の牡馬としては同年1位の評価であった<ref name="IrishClassification2018">{{Cite web |url=https://www.ihrb.ie/pdf.php?f=IrishClassification2018.pdf |title=IrishClassification2018 |access-date=2022-12-31}}</ref>。


== 競走成績 ==
== 競走成績 ==
以下の内容は、BHA<ref name="bha">{{Cite web |title=Saxon Warrior (JPN) |url=https://www.britishhorseracing.com/racing/horses/horse/#!/2500800 |website=The British Horseracing Authority |access-date=2023-01-01 |language=en-GB |publisher=[[英国競馬統括機構|The British Horseracing Authority]]}}</ref>、Racing Post<ref name="Racing Post" />、JRA-VAN ver.World<ref>{{Cite web |title=サクソンウォリアー(Saxon Warrior) {{!}} 競馬データベース |url=https://world.jra-van.jp/db/horse/H0846/ |website=JRA-VAN ver.World |access-date=2023-01-01 |language=ja}}</ref>の情報に基づく。
以下の内容は、Irish Racing.com<ref name="irish">[https://www.irishracing.com/horse?name=Saxon-Warrior&prt=556591 Saxon Warrior (JPN)]. Irish Racing.com. 2018年9月18日閲覧</ref>の情報に基づく。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size: 85%;"
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size: 85%;"
!出走日!![[競馬場]]!!競走名!![[競馬の競走格付け|格]]!!距離!!着順!![[騎手]]!!着差!!1着(2着)馬
!出走日!![[競馬場]]!!競走名!![[競馬の競走格付け|格]]
!頭数
!オッズ(人気)!!着順!![[騎手]]!!距離馬場
!タイム!!着差!!1着(2着)馬
|-
|-
|[[2017年|2017]].{{0}}8.27||[[カラ競馬場|カラ]]||未勝利||||芝8f
|[[2017年|2017]].{{0}}[[8月27日|8.27]]||[[カラ競馬場|カラ]]||未勝利||
|14
|style="color: darkred;"|1着||[[ドナカ・オブライエン|D.オブライエン]]||3馬身1/4||(Meagher's Flag)
|9.00(3人)
| style="color: darkred;" |1着||[[ドナカ・オブライエン|D.オブライエン]]||芝8[[ハロン (単位)|f]](稍)
|1:40.79||3馬身1/4||(Meagher's Flag)
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}9.24||ナース||ベレスフォードステークス||G2||芝8f
|{{0|0000.}}{{0}}[[9月24日|9.24]]||ナース||ベレスフォードS||G2
|5
|1.83(1人)
|style="color: darkred;"|1着||[[ライアン・ムーア|R.ムーア]]||2馬身1/2||(Delano Roosevelt)
| style="color: darkred;" |1着||[[ライアン・ムーア|R.ムーア]]||芝8f(重)
|1:46.45||2馬身1/2||(Delano Roosevelt)
|-
|-
|{{0|0000.}}10.28||[[ドンカスター競馬場|ドンカスター]]||[[フューチュリティトロフィー|レーシングポストトロフィー]]||G1||芝8f
|{{0|0000.}}[[10月28日|10.28]]||[[ドンカスター競馬場|ドンカスター]]||[[フューチュリティトロフィー|レーシングポストT]]||G1
|12
|2.63(1人)
|style="color: darkred;"|1着||R.ムーア||クビ||([[ロアリングライオン|Roaring Lion]])
| style="color: darkred;" |1着||R.ムーア||芝8f(良)
|1:40.12||クビ||([[ロアリングライオン|Roaring Lion]])
|-
|-
|[[2018年|2018]].{{0}}5.{{0}}5||[[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]||[[2000ギニー|英2000ギニー]]||G1|||芝8f
|[[2018年|2018]].{{0}}[[5月5日|5.{{0}}5]]||[[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]||[[2000ギニー|英2000ギニー]]||G1
|14
|4.00(2人)
|style="color: darkred;"|1着||D.オブライエン||1馬身1/2||(Tip Two Win)
| style="color: darkred;" |1着||D.オブライエン|||芝8f(良)
|1:36.55||1馬身1/2||(Tip Two Win)
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}6.{{0}}2||[[エプソム競馬場|エプソム]]||[[ダービーステークス|英ダービー]]||G1||芝12f
|{{0|0000.}}{{0}}[[6月2日|6.{{0}}2]]||[[エプソム競馬場|エプソム]]||[[ダービーステークス|英ダービー]]||G1
|12
|1.80(1人)
|4着||R.ムーア||4馬身1/2||[[マサー|Masar]]
|4着||R.ムーア||芝12f6[[ヤード|y]](良)
|2:35.74||4馬身1/2||[[マサー|Masar]]
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}6.30||カラ||[[アイリッシュダービー|愛ダービー]]||G1||芝12f
|{{0|0000.}}{{0}}[[6月30日|6.30]]||カラ||[[アイリッシュダービー|愛ダービー]]||G1
|12
|2.00(1人)
|style="color: darkgreen;"|3着||R.ムーア||3/4馬身||Latrobe
| style="color: darkgreen;" |3着||R.ムーア||芝12f(良)
| -||3/4馬身||Latrobe
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}7.{{0}}7||[[サンダウン競馬場|サンダウン]]||[[エクリプスステークス]]||G1||芝10f
|{{0|0000.}}{{0}}[[7月7日|7.{{0}}7]]||[[サンダウン競馬場|サンダウン]]||[[エクリプスステークス|エクリプスS]]||G1
|7
|3.25(2人)
|style="color: darkblue;"|2着||D.オブライエン||クビ||Roaring Lion
| style="color: darkblue;" |2着||D.オブライエン||芝9f209y(良)
|2:04.09||クビ||Roaring Lion
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}8.22||[[ヨーク競馬場|ヨーク]]||[[インターナショナルステークス]]||G1||芝10f
|{{0|0000.}}{{0}}[[8月22日|8.22]]||[[ヨーク競馬場|ヨーク]]||[[インターナショナルステークス|インターナショナルS]]||G1
|8
|5.50(3人)
|4着||R.ムーア||5馬身||Roaring Lion
|4着||R.ムーア||芝10f56y(良)
|2:08.47||5馬身||Roaring Lion
|-
|-
|{{0|0000.}}{{0}}9.15||[[レパーズタウン競馬場|レパーズタウン]]||[[アイリッシュチャンピオンステークス|愛チャンピオンステークス]]||G1||芝10f
|{{0|0000.}}{{0}}[[9月15日|9.15]]||[[レパーズタウン競馬場|レパーズタウン]]||[[アイリッシュチャンピオンステークス|愛チャンピオンS]]||G1
|7
|3.50(2人)
|style="color: darkblue;"|2着||R.ムーア||クビ||Roaring Lion
| style="color: darkblue;" |2着||R.ムーア||芝10f(良)
| -||クビ||Roaring Lion
|}
|}

== 種牡馬時代 ==
== 種牡馬時代 ==
[[2019年]]から[[アイルランド]]の[[クールモアスタッド]]で種牡馬入りする。初年度の種付料は3万ユーロで、クールモアスタッドの新種牡馬5頭の中では最も高額の値付けとなった<ref>[https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201811090000330&year=2018&month=11&day=9 愛のディープ産駒サクソンウォリアー種付け料発表]. 日刊スポーツ(2018年11月9日付). 2018年11月11日閲覧</ref>。同年のシーズンオフからは[[オーストラリア]]でもシャトル供用される。
現役競走馬としてG1競走を2勝したサクソンウォリアーは、[[2019年]]から[[クールモアスタッド]]で[[種牡馬]]入りし、その初年度の種付料は3万[[ユーロ]]に設定された<ref name="hb2019325" />。クールモアスタッドの新種牡馬5頭の中では最も高額の値付けとなった<ref>[https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201811090000330&year=2018&month=11&day=9 愛のディープ産駒サクソンウォリアー種付け料発表]. 日刊スポーツ(2018年11月9日付). 2018年11月11日閲覧</ref>。他方、これは、2016年に種牡馬入りしたG1競走4勝馬[[グレンイーグルス]](6万ユーロ)などと比べれば低額の待遇であった<ref name="goda2018-11-14">{{Cite web |title=欧州各国の種牡馬 来季の種付け料が決定! |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=41706 |website=netkeiba.com |access-date=2023-01-01 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。同年のシーズンオフからは、クールモア・[[オーストラリア]]でも連年シャトル供用された{{Refnest|種付料は、それぞれ[[オーストラリアドル]]で、2019年2万4750ドル、2020年1万7600ドル、2021年1万3750ドル、2022年1万9250ドルと推移した<ref name="breednet"/>。|group=注}}<ref name="breednet">{{Cite web |title=Saxon Warrior - Stallion |url=https://www.breednet.com.au/sire/premium/saxon-warrior |website=www.breednet.com.au |access-date=2023-01-01 |publisher=Breednet |archive-url=https://web.archive.org/web/20230101141237/https://www.breednet.com.au/sire/premium/saxon-warrior |archive-date=2023-1-1}}</ref>。クールモアスタッドにおけ種付料は、2020年には2万7500ユーロ、2021年および2022年には2万ユーロと推移した<ref name="FeeHistory">{{Cite web |title=Saxon Warrior {{!}} Fee History |url=https://www.racingpost.com/profile/horse/1588345/saxon-warrior/fee-history |website=www.racingpost.com |access-date=2023-01-01 |publisher=[[レーシングポスト|Racing Post]]}}</ref>


2022年4月3日、[[フランス]]・ルリオンダンジェ競馬場でサーセッドが勝利して産駒の初出走・初勝利を挙げた<ref>{{Cite web |title=【海外競馬】日本産馬サクソンウォリアーの産駒がフランスで初出走初勝利 {{!}} 競馬ニュース |url=https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=201680 |website=netkeiba.com |accessdate=2022-04-06 |language=ja}}</ref>。
2022年4月3日、[[フランス]]・ルリオンダンジェ競馬場でサーセッドが勝利して産駒の初出走・初勝利を挙げた<ref>{{Cite web |title=【海外競馬】日本産馬サクソンウォリアーの産駒がフランスで初出走初勝利 {{!}} 競馬ニュース |url=https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=201680 |website=netkeiba.com |accessdate=2022-04-06 |language=ja}}</ref>。初年度産駒が2歳を迎えた同年には、ヨーロッパで複数の重賞勝ち馬が現れ、とりわけフランスでコンデ賞を勝った[[ヴィクトリアロード (競走馬)|ヴィクトリアロード]]は、続く[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ブリーダーズカップジュヴェナイルターフ]]を優勝し、サクソンウォリアー産駒としてG1競走の初勝利を挙げた<ref>{{Cite web |title=大成功に終わった今年のブリーダーズC |url=https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=52059 |website=netkeiba.com |access-date=2023-01-01 |language=ja |publisher=[[netkeiba]] |author=[[合田直弘]]}}</ref>。2023年の種付料は、3万5000ユーロに増額された<ref name="FeeHistory" />。


=== 主な産駒 ===
=== 主な産駒 ===
'''太字'''はGI競走を示す
'''太字'''はGI競走を示す
*2020年産
*2020年産
**ヴィクトリアロード / Victoria Road(2022年{{flagicon|FRA}}コンデ賞、{{flagicon|USA}}'''[[ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルターフ|ブリーダーズカップジュベナイルターフ]]''')<ref>{{Cite web|url=https://www.racingpost.com/profile/horse/4273958/victoria-road/form|title=Victoria Road Racerecord|publisher=Racing Post|accessdate=2022-09-18}}</ref>
**[[ヴィクトリアロード (競走馬)|ヴィクトリアロード]] / Victoria Road(2022年{{flagicon|FRA}} コンデ賞、{{flagicon|USA}} '''[[ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルターフ|ブリーダーズカップジュベナイルターフ]]''')<ref>{{Cite web|url=https://www.racingpost.com/profile/horse/4273958/victoria-road/form|title=Victoria Road Racerecord|publisher=Racing Post|accessdate=2022-09-18}}</ref>
**ルミエールロック / Lumiere Rock(2022年{{flagicon|IRE}}スタッフォーズタウンスタッドステークス)
**ルミエールロック / Lumiere Rock(2022年{{flagicon|IRE}} スタッフォーズタウンスタッドステークス)
**ムーンレイ / Moon Ray(2022年{{flagicon|FRA}}ミエスク賞)<ref>{{Cite web|url=https://www.racingpost.com/profile/horse/4518741/moon-ray/form|title=Moon Ray Racerecord|publisher=Racing Post|accessdate=2022-10-30}}</ref>
**ムーンレイ / Moon Ray(2022年{{flagicon|FRA}} ミエスク賞)<ref>{{Cite web|url=https://www.racingpost.com/profile/horse/4518741/moon-ray/form|title=Moon Ray Racerecord|publisher=Racing Post|accessdate=2022-10-30}}</ref>
== 競走馬としての評価 ==

=== 4連勝と5連敗 ===
サクソンウォリアーは、2017年に[[レーシングポストトロフィー]]を含む3戦3勝の成績を残し、2018年初戦には[[2000ギニーステークス]]を制してデビューからの4連勝としたが、その後は1番人気の[[ダービーステークス]]と[[アイリッシュダービー]]で4着と3着、[[エクリプスステークス]]で2着、[[インターナショナルステークス]]で4着、[[アイリッシュチャンピオンステークス]]で2着となり、5連敗を喫した後に現役を引退した<ref name="okuno2019315" /><ref name="Racing Post" />。

[[レーシングポスト]]紙のアラン・スウィートマンは、2018年シーズンのサクソンウォリアーを、華々しく勝利した2000ギニー以降の成績が尻すぼみに終わった点で総評した<ref name="sweetman2019113">[[サクソンウォリアー#Sweetman2019|Sweetman2019, p.113]]</ref>。同氏によれば、サクソンウォリアーは、2歳時には世界的な血統背景を持つ無敗のクラシック候補として「市場の夢を実現する」存在となり、4連勝の間にはオブライエンから「非常に特別な馬」「特別な存在」などと称せられた<ref name="sweetman2019112">[[サクソンウォリアー#Sweetman2019|Sweetman2019, p.112]]</ref>。一方で、その後、1番人気に支持されたイギリスのダービーで4着に敗れると、アイリッシュダービーでも3着と勢いを失い、それに続くエクリプスステークス以降の1マイル1/4路線では、当時の競馬界を牽引したロアリングライオンに対して2度食い下がったものの、勝者としての復活は果たせなかった<ref name="sweetman2019114" /><ref name="sweetman2019116" />。スウィートマンは、本馬は結局、オブライエンが期待した「特別な馬」では無かったのだと示唆した<ref name="sweetman2019116" /><ref name="sweetman2019112" />。

=== 距離適性 ===

サクソンウォリアーは、当初1マイル戦のみを走り、G1競走2勝を含むデビュー4連勝を達成した<ref name="Racing Post" />。距離延長によってさらに良くなると目された本馬は、続いて迎えたダービーステークスでは1番人気に支持されたが、4着に敗れた<ref name="sweetman2019112" /><ref name="sweetman2019114" />。

サクソンウォリアーの現役引退にあたり、エイダン・オブライエン調教師は、2018年を迎えた時には「[[イギリスクラシック三冠]]」を意識したほどであったと振り返ったが、2000ギニー後に中長距離路線を選択したことについて「たぶん、私の失敗だったと思います。私は彼をマイル(の距離)で使い続ければよかったのかもしれません」と[[アイルランド放送協会]]のインタビューで語っている<ref>{{Cite web |title=オブライエン師、引退サクソンに英3冠期待していた |url=https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201809180000491&year=2018&month=09&day=18 |website=p.nikkansports.com |access-date=2023-01-01 |language=ja |publisher=[[日刊スポーツ]]}}</ref>。主戦騎手の[[ライアン・ムーア]]も、「最も悲しいのは彼がマイル戦を走ることを見ることができなくなったことです」とコメントした<ref>{{Cite web |title=サクソンウォリアー引退にムーア「すごく残念」 |url=https://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=201809180000492&year=2018&month=09&day=18 |website=p.nikkansports.com |access-date=2023-01-01 |language=ja |publisher=[[日刊スポーツ]]}}</ref>。血統面では、サクソンウォリアーの[[牝系]]がスタミナよりもスピード寄りであり、そのため、ダービー競走の1マイル半は本馬の適距離ではなかったのではないかという指摘もなされている<ref name="Moubray201854" /><ref name="sweetman2019112" />。ただし、ダービーステークスの敗戦については、距離適性の他に複数の意見がある{{Refnest|競馬評論家のジョセリン・ド・モーブレイは、サクソンウォリアーの敗因として、距離適性を挙げるとともに、本馬がダービーにおける騒音や群衆などの異様な雰囲気を前にして興奮気味であったことを指摘した<ref name="Moubray201854"/>。沢田康文は、残り600[[メートル]]付近で包まれたことによってスムーズさを欠いたこと、開催場の[[エプソム競馬場]]が40メートルの高低差を擁する難コースであることに言及している<ref name="yushun20180765" />。また、アラン・スウィートマンは、大勢には影響しなかったとしつつ、本馬が発馬の際にわずかに躓いたことを取り上げた<ref name="sweetman2019114"/>。|group=注}}。

=== ロアリングライオンとの対戦 ===
[[レーシングポスト]]紙は、同紙の年度表彰として、「ロアリングライオン対サクソンウォリアー」を2018年度のベストライバル関係に選定した<ref name="RacingPostAnnual2019203">[[サクソンウォリアー#Racing Post Annual 2019.203|Racing Post Annual 2019. p.203]]</ref>。この2頭は計6度対戦して、そのうちロアリングライオンが4回相手に先着、サクソンウォリアーが2回相手に先着し、クビ差での決着は3回あった<ref name="RacingPostAnnual2019203" />。

この2頭の対決という見地からすれば、当初、2歳時のレーシングポストトロフィーおよび3歳時の2000ギニーでは、勝ち馬のサクソンウォリアーがともにロアリングライオンを上回っていた<ref name="kerr201969" />。ダービーでは、ロアリングライオン3着、サクソンウォリアー4着となって双方敗北したが、着順はロアリングライオンが本馬を初めて上回った<ref name="kerr201969" />。続くエクリプスステークスおよびインターナショナルステークスではともにロアリングライオンが優勝し、サクソンウォリアーは対ロアリングライオンとの対戦成績で2勝3敗と逆転された<ref name="sweetman2019116" /><ref name="kerr201969" />。続くアイリッシュチャンピオンステークスは、2勝3敗のサクソンウォリアーにとってライバルと「引き分け」に持ち込む機会となったが、ここでもロアリングライオンにクビ差競り負け、本馬は対ロアリングライオンの成績でも4連敗を喫した<ref name="sweetman2019116" /><ref name="kerr201969" />。この対戦の後に[[クイーンエリザベス2世ステークス]]も勝利してG1競走4連勝を達成したロアリングライオンは、同年の[[カルティエ賞]]年度代表馬に選出された<ref name="okuno2019315" /><ref name="okuno2019317" />。

=== 日本産馬、ディープインパクト産駒として ===
[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]産駒のサクソンウォリアーは、[[イギリス]]の2000ギニーを制したことで[[日本]]産馬として初めてイギリスクラシック競走を勝利し、これを[[合田直弘]]は「偉業」とした<ref name="goda201868" />。奥野庸介は、2歳時に頭角を現した本馬について「[[フランケル (競走馬)|フランケル]]に目を奪われていた欧州生産界」に衝撃を与えたと評し<ref name="okuno2018316">[[サクソンウォリアー#奥野2018|奥野2018、316頁。]]</ref>、3歳一杯で現役を終えた本馬については、その競走成績全体を総括して「父の名をおおいに高めたことは間違いない」と評した<ref name="okuno2019315" />。なお、本馬の現役時である2018年には、G1競走7勝のカルティエ賞年度代表馬[[マインディング]]など、クールモアの持つ最上級の[[繁殖牝馬]]がディープインパクトのために送り込まれるまでになっている<ref name="goda201867" /><ref name="goda201868" />。

また、サクソンウォリアーは、2015年に生まれ2018年に3歳クラシックを争ったディープインパクトの産駒として、[[フランス]]のダービー競走[[ジョッケクルブ賞]]を勝利したフランス生産・調教馬の[[スタディオブマン]]、日本のダービー競走[[第85回東京優駿]]を勝利した日本生産・調教馬の[[ワグネリアン (競走馬)|ワグネリアン]]と並んで言及される場合もある<ref name="hb2019325" /><ref name="goda201866">[[サクソンウォリアー#合田2018|合田2018、66頁。]]</ref><ref name="ishida201863">[[サクソンウォリアー#石田2018|石田2018、63頁。]]</ref>。この3頭の活躍によって、ディープインパクト産駒は、「日英仏」3か国のクラシック競走の同一年制覇を達成した<ref name="goda201866" /><ref name="hb2019325" />。


== 血統表 ==
== 血統表 ==
96行目: 191行目:
|flin = Cambrienne系
|flin = Cambrienne系
|FN = [[1号族|1-t]]
|FN = [[1号族|1-t]]
|ref3 = <ref>{{Cite web|author=平出貴昭|url=https://ameblo.jp/tpc-hiraide/entry-12526935746.html|title=覚えておきたい世界の牝系100』掲載牝系一覧|work=競馬“血統”人生/平出貴昭|date=2019-09-18|accessdate=2020-4-16}}</ref>
|ref3 = <ref>{{Cite book|和書|title=覚えておきたい世界の牝系100|date=2019-10-31|year=2019|publisher=[[主婦の友社]]|pages=34-35|author=平出貴昭|isbn=978-4073411499|ref=平出2019}}</ref>
|inbr =[[ノーザンダンサー|Northern Dancer]]5×4×5=12.50%、
|inbr =[[ノーザンダンサー|Northern Dancer]]5×4×5=12.50%、
|ref4 = [https://www.jbis.or.jp/horse/0001208401/pedigree/ サクソンウォリアー 5代血統表]2018年5月5日閲覧
|ref4 = [https://www.jbis.or.jp/horse/0001208401/pedigree/ サクソンウォリアー 5代血統表]2018年5月5日閲覧
130行目: 225行目:
|mmmm = Rose of Jericho
|mmmm = Rose of Jericho
|}}
|}}
== 脚注 ==
*母[[メイビー (競走馬)|メイビー]]は2011年の[[モイグレアスタッドステークス]]勝ち馬で、前述の通り同年の[[カルティエ賞]]最優秀2歳牝馬に選出された。
*祖母の半妹に2011年の[[オークス|英オークス]]・[[ディアナ賞|独オークス]]を制した[[ダンシングレイン]]がいる。
*3代母の半兄に1992年の[[ダービーステークス|英ダービー]]などG1競走3勝の[[ドクターデヴィアス]]、1997年の[[高松宮記念 (競馬)|高松宮記念]]優勝馬[[シンコウキング]]。また、シンコウキングの全妹[[ローズオブスズカ]]の仔に2007年の高松宮記念優勝馬[[スズカフェニックス]]がいる。


== 出典 ==
=== 注釈 ===
<references group="注" />
{{Reflist}}


== 外部リンク ==
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
* {{競走馬成績|netkeiba=2015100991|jbis=0001208401|racingpost=1588345/saxon-warrior}}


== 参考文献 ==
{{Keiba-stub}}
'''書籍'''

* {{Cite book|和書|title=衝撃の彼方 ディープインパクト|date=2021-3-25|year=2021|publisher=三賢社|author=軍士門隼夫|isbn=978-4908655180|ref=軍士門2021}}

'''雑誌記事'''
* {{Cite journal|和書|author=秋山響、沢田康文|year=2017|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 愛チャンピオンS、ほか|journal=優駿|issue=2017年11月号|pages=114-117|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2017年11月号114-117}}
* {{Cite journal|和書|author=秋山響|year=2018|title=[ワールド・レーシング・ニュース] トラヴァーズS、英インターナショナルS、ほか|journal=優駿|issue=2018年10月号|pages=114-117|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2018年10月号114-117}}
* {{Cite journal|和書|author=[[石田敏徳]]|year=2018|date=2018-12-13|title=[クラシックレポート(日本)] ディープインパクト産駒が国内外で存在感を示す|journal=フューチュリティ|issue=Vol.62|pages=63-65|publisher=[[ジェイエス]]|ref=石田2018}}
* {{Cite journal|和書|author=奥野庸介|year=2018|date=2018-4-24|title=2017年海外競馬回顧|journal=日本の競馬 総合ハンドブック2018|pages=312-334|publisher=中央競馬振興会|ref=奥野2018}}
* {{Cite journal|和書|author=奥野庸介|year=2019|date=2019-4-25|title=2018年海外競馬回顧|journal=日本の競馬 総合ハンドブック2019|publisher=中央競馬振興会|ref=奥野2019|pages=312-324}}
* {{Cite journal|和書|author=合田直弘|year=2018|title=[クローズアップ] 世界を駆けるディープインパクトの血 産駒が日英仏クラシック制覇|journal=優駿|issue=2018年10月号|pages=66-69|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=合田2018}}
* {{Cite journal|和書|author=合田直弘|year=2018|title=[合田直弘の海外競馬掘り出しエピソード] ビタースイート・ダービー|journal=優駿|issue=2018年10月号|pages=|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2018年10月号128|page=128}}
* {{Cite journal|和書|author=沢田康文|year=2018|title=[ディープインパクト産駒 英仏ダービー参戦リポート] 第293回英ダービー({{GI}}) 日本産馬サクソンウォリアー4着に敗れる|journal=優駿|issue=2018年7月号|pages=64-65|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2018年7月号64-65}}
* {{Cite journal|和書|author=沢田康文、|year=2018|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 愛ダービー、ほか|journal=優駿|issue=2018年8月号|pages=114-117|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2018年8月号114-117}}
* {{Cite journal|和書|author=[[平松さとし]]、秋山響、ハイランド真理子|year=2017|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 英チャンピオンS、ほか|journal=優駿|issue=2017年12月号|pages=112-117|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2017年12月号112-117}}
* {{Cite journal|和書|author=平松さとし、吉田直哉、秋山響|year=2018|title=[ワールド・レーシング・ニュース] ケンタッキーダービー、英2000ギニー、ほか|journal=優駿|issue=2018年6月号|pages=114-117|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2018年6月号114-117}}
* {{Cite journal|和書|author=平松さとし、沢田康文、秋山響|year=2018|title=[ワールド・レーシング・ニュース] 愛チャンピオンS、ほか|journal=優駿|issue=2018年11月号|pages=114-117|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=『優駿』2018年11月号114-117}}
* {{Cite journal|和書|author=ジョセリン・ド・モーブレイ|year=2018|date=2018-12-13|title=[クラシックレポート(欧州)] 主役はディープインパクト産駒 欧州競馬「春の陣」の興奮|journal=フューチュリティ|issue=Vol.62|pages=51-56|publisher=ジェイエス|ref=モーブレイ2018}}
* {{Cite journal|和書|author=吉田直哉|year=2019|title=[2018年の蹄跡] 日本の種牡馬が海外で躍進 世界に広がる日本発の血統|journal=優駿|issue=2019年2月号|page=47|pages=|publisher=中央競馬ピーアール・センター|ref=吉田2019}}
* {{Cite journal|洋書|author=Fidler, Katherine; Haynes, Jack; Hill, Daniel; Melrose, Keith; Playle, Maddy; Pulford, Nick; Russell, Colin; Sheerin, Brian; Trice, Kitty; Vicarage, Zoe|editor=Nick Pulford|year=2018|date=2018-2-1|title=Annual 20: Ones to watch in 2018|journal=Racing Post Annual 2018|pages=192-197|publisher=Racing Post Books|ref=Fidler et al.2018|isbn=978-1910497098}}
* {{Cite journal|洋書|last=Kerr|first=Tom|editor=Nick Pulford|year=2019|date=2019-2-2|title=Roaring Lion: String of Group I triumphs|journal=Racing Post Annual 2019|pages=68-72|publisher=Racing Post Books|ref=Kerr2019|isbn=978-1910497739}}
* {{Cite journal|洋書|last=Sweetman|first=Alan|editor=Nick Pulford|year=2019|date=2019-2-2|title=Saxon Warrior: Guineas promise unfulfilled|journal=Racing Post Annual 2019|pages=112-116|publisher=Racing Post Books|ref=Sweetman2019|isbn=978-1910497739}}
* {{Cite journal|洋書|editor=Nick Pulford|year=2019|date=2019-2-2|title=Annual Awards: Memorable achievements in 2018|journal=Racing Post Annual 2019|pages=203|publisher=Racing Post Books|ref=Racing Post Annual 2019.203|isbn=978-1910497739}}
* {{Cite journal|和書|year=2018|date=2018-3-25|journal=フューチュリティ|issue=Vol.61|publisher=ジェイエス|ref=『フューチュリティ』Vol.61}}
* {{Cite journal|和書|year=2019|date=2019-4-25|journal=日本の競馬 総合ハンドブック2019|publisher=中央競馬振興会|ref=『日本の競馬 総合ハンドブック2019』}}

== 外部リンク ==
{{競走馬成績|netkeiba=2015100991|jbis=0001208401|racingpost=1588345|racingpostname=saxon-warrior}}
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[[Category:2015年生 (競走馬)|愛さくそんうおりあ]]
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2023年1月10日 (火) 08:13時点における版

サクソンウォリアー
デリック・スミスの勝負服
欧字表記 Saxon Warrior[1]
品種 サラブレッド[1]
性別 [2]
毛色 鹿毛[1]
生誕 2015年1月26日[2]
ディープインパクト[2]
メイビー[2]
母の父 Galileo[2]
生国 日本の旗 日本北海道安平町[1]
生産者 ノーザンファーム[1]
Orpendale, Chelston & Wynatt[2]
馬主 Derrick Smith
Mrs John Magnier
Michael Tabor[2]
調教師 A P O'Brienアイルランドの旗 アイルランド[2]
競走成績
生涯成績 9戦4勝[2]
獲得賞金 1,323,030.92[3] / £1,112,467[2]
WTRR I121 / 2018年[4]
勝ち鞍
G1 レーシングポストT 2017年
G1 2000ギニー 2018年
G2 ベレスフォードS 2017年
テンプレートを表示

サクソンウォリアー:Saxon Warrior、2015年1月26日 - )は、日本生産、アイルランド調教の競走馬種牡馬である。

概要

競走馬として、2歳時のレーシングポストトロフィー、3歳時の2000ギニーステークスを無敗で優勝し、イギリスでG1競走2勝を挙げた。父をディープインパクト、母をメイビーとする日本産馬であり、同国産馬としては最初のイギリスG1競走およびイギリスクラシック競走勝ち馬である[5][6]。2000ギニー以降は5戦して未勝利に終わったが、エクリプスステークスおよびアイリッシュチャンピオンステークスでは同年のカルティエ賞年度代表馬ロアリングライオンの2着に入った[7][8]

主な勝ち鞍は2017年レーシングポストトロフィー、ベレスフォードステークス、2018年2000ギニーステークス。通算9戦4勝。

2019年からはクールモアスタッド種牡馬として供用されている。

誕生 - デビュー前

2015年1月26日、日本北海道安平町ノーザンファームで生まれる[9]

ディープインパクト(2006年第133回天皇賞(春)

父は、日本・社台スタリオンステーション種牡馬ディープインパクト[10]。2012年以降、連年日本のリーディングサイアーという地位にあり[11]、現役競走馬としての同馬は海外の凱旋門賞で敗戦していたものの、種牡馬として生産した産駒の活躍によってその国際的な評価が改めて高まっていた[12]。なお、日本におけるディープインパクト産駒は、軽い馬場で発揮する瞬発力を長所とするものが多く、ヨーロッパの競馬で見られるような力の要る馬場は不向きである、と評される面があった[11]

母は、現役時アイルランドクールモアのチームによって所有され、2011年にデビューからの5連勝でモイグレアスタッドステークスを勝利し、同年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出されたガリレオ牝駒の繁殖牝馬メイビー[13]。メイビーの母、すなわち本馬の2代母は、現役時5ハロン戦で勝ち鞍のあるデインヒル牝駒スモラで、その半姉にはオークスダンシングレインがいる[14]。本馬の4代母であるローズオブジェリコは、その直仔に、ダービー馬ドクターデヴィアス高松宮杯優勝馬シンコウキングスズカフェニックスの母馬ローズオブスズカの3頭などを生産した繁殖牝馬である[14]

本馬の生産当時、40年近く種牡馬ビジネスを経営の中核に置き、これまでにサドラーズウェルズ、デインヒル、モンジュー、ガリレオなどの優秀な種牡馬を擁してきたサラブレッド事業体のクールモアスタッドは、ガリレオの後継種牡馬を育成するという課題と並んで、「ガリレオやデインヒルの血脈を含む優秀な牝馬と配合することのできる異父系の一流種牡馬を獲得する」という課題に直面していた[11][13]。そこで、日本の種牡馬であるディープインパクトの血統を求めた同グループは、手元の上質な牝馬を日本へ送り込むという手法を採り[注 1]、2012年一杯で現役を引退して繁殖入りしたメイビーを、同国のディープインパクトと2年連続で配合してその産駒を生産したのである[注 2][15][13]。本馬はその2番仔にあたる[13][20]

離乳を終えた本馬は、2015年10月21日にアイルランドへと輸出[13]ティペラリー州で中期育成を受け、一般的なディープインパクト産駒とは趣の異なる雄大な馬格を得るとともに、ヨーロッパの深い芝馬場に合った走法を身に付けた[21]。その後、競走馬として、クールモアの共同経営者であるデリック・スミス、ジョン・マグニア夫人、マイケル・テイバーによって所有され、母馬メイビーと同じくエイダン・オブライエン調教師のもとに預託された[13]。なお、生まれはノーザンファームであるが、日本国外では繁殖牝馬の所有者を生産者とするのが一般的であるため、ノーザンファームによる生産とはされていない[22]

競走馬時代

2歳時(2017年)

8月27日、サクソンウォリアーはアイルランドカラ競馬場の第1競走として施行された14頭立ての未勝利戦でデビューし、本馬と同じエイダン・オブライエン厩舎の所属でありその主戦騎手ライアン・ムーアが騎乗したクリストファーロビンが単勝1.73倍の1番人気に支持されたなかで、オブライエンの息子であるドナカ・オブライエンが騎乗した本馬は単勝9倍の3番人気に支持された[23]。競走では、道中後方2番手の位置取りから、残り2ハロン辺りで外目から徐々に進出すると、残り1ハロンで一気に交わし、2着馬に対して3馬身1/4差を付けて優勝した[23]日本の競馬評論家である合田直弘や奥野庸介は、この時の本馬の末脚を取り上げ、父ディープインパクトとの類似に言及している[23][24]

映像外部リンク
2017年ベレスフォードステークス At The Races

デビュー戦を勝利したサクソンウォリアーは、2戦目として9月24日ネース競馬場で施行されたベレスフォードステークス(G2、芝8ハロン)に出走[25]。後続に2馬身1/2差を付けてこれを優勝し、デビューからの2連勝で重賞制覇を達成した[25]。これによって同競走の17勝および7連覇を達成したオブライエンは、競走後、「彼は来年のクラシックホースだ」と語った[20]。ムーアが手綱を取って達成したこの勝利を受けて、本馬を翌年のダービーステークス前売りにおける1番人気に推すブックメーカーも出現した[20][25]

映像外部リンク
2017年レーシングポストトロフィー At The Races

デビューから2連勝中のサクソンウォリアーは、3戦目として、10月28日にイギリスドンカスター競馬場で施行されたレーシングポストトロフィー(G1、芝8ハロン)に出走[26]。これまでの2戦とは一転して逃げの手に出て、最終直線では、3連勝中のロアリングライオンに一旦は交わされながらも差し返す勝負根性を見せ、無傷の3連勝でG1競走初制覇を果たした[24]。日本産馬によるイギリスのG1競走勝利は史上初[5]。また、これによってオブライエンは調教師として同年のG1競走26勝目を挙げ、2003年にアメリカのロバート・フランケルが残していた年間平地G1競走最多勝記録を更新した[注 3][26]。この勝利により、イギリスの主要ブックメーカーは揃ってサクソンウォリアーを2018年のダービー1番人気に推した[24]

2017年度のカルティエ賞では、最優秀2歳牡馬候補にノミネートされた[注 4][29]。2017年度ヨーロピアン2歳クラシフィケーションでは、2歳時の本馬は、レーシングポストトロフィーの勝利によって119ポンドのレーティングを与えられた[30]。このレーティングは、ヨーロッパ調教の2歳馬として、7ハロン戦のデューハーストステークスを勝ったオブライエン厩舎の僚馬ユーエスネイビーフラッグ(122)に次ぐ同年2位、特に距離8ハロン以上の部門に限れば同年1位に格付けされる評価であった[30][31]

3歳時(2018年)

2000ギニーステークス

映像外部リンク
2018年2000ギニーステークス Racing TV

2歳時にロアリングライオンをクビ差退けたG1競走レーシングポストトロフィーを含む3連勝を達成したサクソンウォリアーは、当初の2000ギニーステークスの前売りのオッズでは1番人気に支持されていたが、2000ギニーの前哨戦が施行されると、クレイヴンステークスにおいて2着馬に9馬身差および3着馬ロアリングライオンには9馬身1/4差を付けて圧勝したゴドルフィン所有のマサー、また、2歳時にスーパーレイティブステークスを勝利して明け3歳の準重賞を勝利したオブライエン厩舎のグスタフクリムトなどがギニー路線の有力馬として台頭した[10]。これに対して、本馬は、例年のオブライエン厩舎のギニー路線における主力馬と同様、3歳初戦がクラシック競走となった[10]

5月5日、サクソンウォリアーは約半年振りの実戦として、ニューマーケット競馬場で施行された2000ギニーステークス(G1、芝8ハロン)に出走[32]。厩舎の主戦騎手であるムーアはメンデルスゾーンのためにケンタッキーダービーへ遠征したため、鞍上は代わってドナカ・オブライエンとなった[33]。人気順は、マサーが単勝3.5倍の1番人気で、これにサクソンウォリアーが単勝4倍の2番人気、グスタフクリムトが単勝5倍の3番人気と続いた[34][35]

競走では、外枠を引いた馬が直線コースのスタンド側を進行したのに対して、サクソンウォリアーは馬場の中央を通った一団の中で進行した[33]。先行勢が脱落するなかでグスタフクリムトとタタソールズステークス勝ち馬のイラーカムの両頭が仕掛けられたが、ドナカはサクソンウォリアーを追うことなく外に進路を切り替えた[33]。残り2ハロンを切って仕掛けられた本馬が先頭に立つと、最後はヨレる走りを見せながら押し切り、2着に入ったタタソールズステークス2着馬ティップトゥーウィンに対して1馬身1/2差を付けて優勝[32]。外枠から発走したマサーが更にアタマ差遅れて3着で続き、同じく外枠からスタンド側を追走したロアリングライオンは5着[33]。グスタフクリムトは6着となった[33]

これによって、サクソンウォリアーはデビューからの4連勝でG1競走2連勝を達成した[32]。日本産馬のイギリスクラシック競走勝利は史上初であった[6]。オブライエンは同競走を9勝目とし、これが平地G1競走通算300勝の節目となった[32][6]。19歳のドナカ・オブライエンもイギリスクラシック競走を初勝利とした[36]。競走後、ドナカは、道中ではずっと勝てると思って競走を運んでいたが残り2ハロン地点で早仕掛けをしてしまったと回顧し、本馬については「彼はすでに真のモンスターですから、これ以上成長するかは分かりませんが、今日の走りにはとても感銘を受けました」と評価した[32]。この勝利を受けて、サクソンウォリアーは平均的な2000ギニー優勝に対する評価となる121ポンドのレーティングを与えられた[注 5][39]

ダービーステークス - アイリッシュダービー

2000ギニーの後、ダービーの前哨戦が施行され、ヤングラスカルがG3競走チェスターヴァーズを、ロアリングライオンがG2競走ダンテステークスをそれぞれ勝って評価を高めたが、依然として本番のダービーにおける本命馬と目されたのがサクソンウォリアーである[14]。第239回ダービーステークス(G1、芝12ハロン6ヤード)に出走する本馬には、史上38頭目のイギリスクラシック春二冠が懸かった[40]。話題はダービーを越えて「イギリスクラシック三冠」挑戦の夢も語られ[41][42]、競馬メディアなどは1970年のニジンスキー以来となる三冠馬が誕生する可能性を論じた[14][42]。また、日本産馬による同競走の出走は史上初の事例であり、このダービーは、日本からも例年以上の注目を集めた[40][43]。競走の人気順は、サクソンウォリアーが単勝オッズ1.8倍の1番人気となり、これにロアリングライオンが7倍の2番人気、ヤングラスカルが9.5倍の3番人気で続いた[44]

競走では、ダービートライアルステークス勝ち馬ナイトトゥビホールドが速いペースで逃げる展開となり、1番枠から発走したサクソンウォリアーは道中を中団の内側で追走[40][43]。残り3ハロン付近に入って一度他馬に包まれる事態に遭った本馬は、終盤でムーアに追われたが、伸び脚が他馬と同じになって上位馬に迫れず、最後は勝ち馬のマサー、2着馬ディーエックスビー、3着馬ロアリングライオンに続く4着に敗れた[43]。これによって本馬は初めての敗戦を喫し、デビュー以来の連勝は4で止まる結果となった[43]。競走後、この敗戦について、オブライエンは「初めてのコースや馬場に圧倒され力を出せなかったかもしれない」、ムーアは「きょうはいつもの末脚に火が付かなかった」と述べた[43]

ダービーステークスで4着に敗れたサクソンウォリアーは、その1か月後、オブライエン厩舎の僚馬4頭とともにアイリッシュダービーへと参戦することとなった[45]。6月30日、カラ競馬場で施行されたアイリッシュダービー(G1、芝12ハロン)に出走した本馬は、ダービー馬マサーの不在[注 6][46]、同競走史上最多の12勝を挙げているオブライエン厩舎の実績や地の利[46][41]、また、ニューマーケットで2000ギニーを制したサクソンウォリアー自身の実績[41]などの理由から、前走と同様に競馬ファンから高い支持を集め、単勝2.0倍の1番人気に推された[46][47]。これに対して、ダービーで本馬に先着したディーエックスビーが対抗馬となった[41]。競走では、サクソンウォリアーは道中内側の3番手を追走し、最終直線では外から追い上げたが、先行した前の2頭を1馬身差弱ほど捕らえ切れずに3着に敗れた[46]。勝ち馬は未勝利戦1着以来となるドナカ・オブライエンの騎乗したラトローブであり、2着馬はキングエドワード7世ステークス2着から転戦したロストロポーヴィチであった[41][36]

10ハロンのG1競走を3戦 - 現役引退

オブライエンは、イギリスとアイルランド両国のダービー競走でそれぞれ4着、3着となったサクソンウォリアーを、所謂「連闘」で転戦させ、距離短縮となるエクリプスステークス(G1、芝9ハロン209ヤード)に参戦させることを決断した[注 7][45][46]。これによって本馬は、1か月強の間にG1競走を3回、また、2か月の間にはG1競走を4回走ることとなった[45]。競走では、サクソンウォリアーは先行馬群の直後を追走し、残り1ハロン辺りで一旦先頭に立ったが、道中後方を通ってこれを追撃したロアリングライオンとの叩き合いとなり、3着以下の後続馬に対しては差を付けたが、最後は競り勝ったロアリングライオンにクビ差遅れての2着となった[45]

2018年夏、オブライエン厩舎でウィルス性の疾患が流行した出来事は、オブライエンによれば「バリードイルの二十年で最も深刻な」[36]事態を招き、同厩舎全体の成績を不振に陥れ、その影響はサクソンウォリアーにも及んだ[13][36]。8月22日、サクソンウォリアーはヨーク競馬場で施行されたインターナショナルステークス(G1、芝10ハロン56ヤード)に出走し、8頭立ての同競走で6頭のG1競走優勝馬と対戦することになった[49]。1番人気はプリンスオブウェールズステークスキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを連勝していた古馬ポエッツワード、2番人気はエクリプスステークスを勝った3歳馬ロアリングライオンで、これに続いて本馬は単勝5.5倍の3番人気に支持された[49][50]。競走では、本馬は出遅れて後方からの競馬となり、最終的に、好位から抜け出したロアリングライオンの4着に敗れた[49]。これは、勝ち馬ロアリングライオン、ポエッツワードに先着されたのに加えて、3着に入ったプレレーティング109ポンドの5歳馬サンダリングブルーからも1馬身1/4差遅れる結果であった[36]。競走後、オブライエンは、シーズン末の2戦で予定されているアイリッシュチャンピオンステークスおよびクイーンエリザベス2世ステークスにおいて、本馬は必ず真価を発揮すると断言した[13]

9月15日、サクソンウォリアーはレパーズタウン競馬場で施行されたアイリッシュチャンピオンステークス(G1、芝10ハロン)に出走し、G1競走2連勝中のロアリングライオンに次ぐ2番人気に支持された[51][52]。この対決は、サクソンウォリアーの鞍上ムーアとロアリングライオンの鞍上オイシン・マーフィーとの一騎打ちと目された[53]。競走では、サクソンウォリアーの僚馬ドーヴィルがペースメーカーとして逃げを打って先導し、本馬はその2番手を追走した[36][52]。本馬は最終直線に入ってドーヴィルを交わすと、残り1ハロンで早めに抜け出して一旦先頭に立つも、後方から一完歩ごとに差を詰めたロアリングライオンに最後はクビ差差し切られて2着となった[52]。競走後、本馬は左前肢の腱の損傷が判明し、9月16日に現役の引退が発表された[54]

2018年度カルティエ賞では、最優秀3歳牡馬候補にノミネートされた[注 8][55]。同年の最優秀3歳牡馬および年度代表馬に選出されたのは、アイリッシュチャンピオンステークスの後にクイーンエリザベス2世ステークスを勝ってG1競走4連勝としたロアリングライオンである[8]。2018年度ワールドベストレースホースランキングでは、エクリプスステークス2着およびアイリッシュチャンピオンステークス2着を評価対象に、インターメディエイト部門で121ポンドのレーティングを与えられた[38]。このレーティングは、同年世界31位タイ[4]、アイルランド調教馬としてはジャックルマロワ賞1着のアルファセントーリ(124)およびブリーダーズカップターフ2着のマジカル(121)に続く同年3位[38]、アイルランド調教の牡馬としては同年1位の評価であった[38]

競走成績

以下の内容は、BHA[37]、Racing Post[2]、JRA-VAN ver.World[56]の情報に基づく。

出走日 競馬場 競走名 頭数 オッズ(人気) 着順 騎手 距離馬場 タイム 着差 1着(2着)馬
2017.08.27 カラ 未勝利戦 14 9.00(3人) 1着 D.オブライエン 芝8f(稍) 1:40.79 3馬身1/4 (Meagher's Flag)
0000.09.24 ナース ベレスフォードS G2 5 1.83(1人) 1着 R.ムーア 芝8f(重) 1:46.45 2馬身1/2 (Delano Roosevelt)
0000.10.28 ドンカスター レーシングポストT G1 12 2.63(1人) 1着 R.ムーア 芝8f(良) 1:40.12 クビ Roaring Lion
2018.05.05 ニューマーケット 英2000ギニー G1 14 4.00(2人) 1着 D.オブライエン 芝8f(良) 1:36.55 1馬身1/2 (Tip Two Win)
0000.06.02 エプソム 英ダービー G1 12 1.80(1人) 4着 R.ムーア 芝12f6y(良) 2:35.74 4馬身1/2 Masar
0000.06.30 カラ 愛ダービー G1 12 2.00(1人) 3着 R.ムーア 芝12f(良) - 3/4馬身 Latrobe
0000.07.07 サンダウン エクリプスS G1 7 3.25(2人) 2着 D.オブライエン 芝9f209y(良) 2:04.09 クビ Roaring Lion
0000.08.22 ヨーク インターナショナルS G1 8 5.50(3人) 4着 R.ムーア 芝10f56y(良) 2:08.47 5馬身 Roaring Lion
0000.09.15 レパーズタウン 愛チャンピオンS G1 7 3.50(2人) 2着 R.ムーア 芝10f(良) - クビ Roaring Lion

種牡馬時代

現役競走馬としてG1競走を2勝したサクソンウォリアーは、2019年からクールモアスタッド種牡馬入りし、その初年度の種付料は3万ユーロに設定された[9]。クールモアスタッドの新種牡馬5頭の中では最も高額の値付けとなった[57]。他方、これは、2016年に種牡馬入りしたG1競走4勝馬グレンイーグルス(6万ユーロ)などと比べれば低額の待遇であった[58]。同年のシーズンオフからは、クールモア・オーストラリアでも連年シャトル供用された[注 9][59]。クールモアスタッドにおける種付料は、2020年には2万7500ユーロ、2021年および2022年には2万ユーロと推移した[60]

2022年4月3日、フランス・ルリオンダンジェ競馬場でサーセッドが勝利して産駒の初出走・初勝利を挙げた[61]。初年度産駒が2歳を迎えた同年には、ヨーロッパで複数の重賞勝ち馬が現れ、とりわけフランスでコンデ賞を勝ったヴィクトリアロードは、続くアメリカブリーダーズカップジュヴェナイルターフを優勝し、サクソンウォリアー産駒としてG1競走の初勝利を挙げた[62]。2023年の種付料は、3万5000ユーロに増額された[60]

主な産駒

太字はGI競走を示す

競走馬としての評価

4連勝と5連敗

サクソンウォリアーは、2017年にレーシングポストトロフィーを含む3戦3勝の成績を残し、2018年初戦には2000ギニーステークスを制してデビューからの4連勝としたが、その後は1番人気のダービーステークスアイリッシュダービーで4着と3着、エクリプスステークスで2着、インターナショナルステークスで4着、アイリッシュチャンピオンステークスで2着となり、5連敗を喫した後に現役を引退した[7][2]

レーシングポスト紙のアラン・スウィートマンは、2018年シーズンのサクソンウォリアーを、華々しく勝利した2000ギニー以降の成績が尻すぼみに終わった点で総評した[65]。同氏によれば、サクソンウォリアーは、2歳時には世界的な血統背景を持つ無敗のクラシック候補として「市場の夢を実現する」存在となり、4連勝の間にはオブライエンから「非常に特別な馬」「特別な存在」などと称せられた[35]。一方で、その後、1番人気に支持されたイギリスのダービーで4着に敗れると、アイリッシュダービーでも3着と勢いを失い、それに続くエクリプスステークス以降の1マイル1/4路線では、当時の競馬界を牽引したロアリングライオンに対して2度食い下がったものの、勝者としての復活は果たせなかった[41][36]。スウィートマンは、本馬は結局、オブライエンが期待した「特別な馬」では無かったのだと示唆した[36][35]

距離適性

サクソンウォリアーは、当初1マイル戦のみを走り、G1競走2勝を含むデビュー4連勝を達成した[2]。距離延長によってさらに良くなると目された本馬は、続いて迎えたダービーステークスでは1番人気に支持されたが、4着に敗れた[35][41]

サクソンウォリアーの現役引退にあたり、エイダン・オブライエン調教師は、2018年を迎えた時には「イギリスクラシック三冠」を意識したほどであったと振り返ったが、2000ギニー後に中長距離路線を選択したことについて「たぶん、私の失敗だったと思います。私は彼をマイル(の距離)で使い続ければよかったのかもしれません」とアイルランド放送協会のインタビューで語っている[66]。主戦騎手のライアン・ムーアも、「最も悲しいのは彼がマイル戦を走ることを見ることができなくなったことです」とコメントした[67]。血統面では、サクソンウォリアーの牝系がスタミナよりもスピード寄りであり、そのため、ダービー競走の1マイル半は本馬の適距離ではなかったのではないかという指摘もなされている[14][35]。ただし、ダービーステークスの敗戦については、距離適性の他に複数の意見がある[注 10]

ロアリングライオンとの対戦

レーシングポスト紙は、同紙の年度表彰として、「ロアリングライオン対サクソンウォリアー」を2018年度のベストライバル関係に選定した[68]。この2頭は計6度対戦して、そのうちロアリングライオンが4回相手に先着、サクソンウォリアーが2回相手に先着し、クビ差での決着は3回あった[68]

この2頭の対決という見地からすれば、当初、2歳時のレーシングポストトロフィーおよび3歳時の2000ギニーでは、勝ち馬のサクソンウォリアーがともにロアリングライオンを上回っていた[53]。ダービーでは、ロアリングライオン3着、サクソンウォリアー4着となって双方敗北したが、着順はロアリングライオンが本馬を初めて上回った[53]。続くエクリプスステークスおよびインターナショナルステークスではともにロアリングライオンが優勝し、サクソンウォリアーは対ロアリングライオンとの対戦成績で2勝3敗と逆転された[36][53]。続くアイリッシュチャンピオンステークスは、2勝3敗のサクソンウォリアーにとってライバルと「引き分け」に持ち込む機会となったが、ここでもロアリングライオンにクビ差競り負け、本馬は対ロアリングライオンの成績でも4連敗を喫した[36][53]。この対戦の後にクイーンエリザベス2世ステークスも勝利してG1競走4連勝を達成したロアリングライオンは、同年のカルティエ賞年度代表馬に選出された[7][8]

日本産馬、ディープインパクト産駒として

ディープインパクト産駒のサクソンウォリアーは、イギリスの2000ギニーを制したことで日本産馬として初めてイギリスクラシック競走を勝利し、これを合田直弘は「偉業」とした[13]。奥野庸介は、2歳時に頭角を現した本馬について「フランケルに目を奪われていた欧州生産界」に衝撃を与えたと評し[28]、3歳一杯で現役を終えた本馬については、その競走成績全体を総括して「父の名をおおいに高めたことは間違いない」と評した[7]。なお、本馬の現役時である2018年には、G1競走7勝のカルティエ賞年度代表馬マインディングなど、クールモアの持つ最上級の繁殖牝馬がディープインパクトのために送り込まれるまでになっている[11][13]

また、サクソンウォリアーは、2015年に生まれ2018年に3歳クラシックを争ったディープインパクトの産駒として、フランスのダービー競走ジョッケクルブ賞を勝利したフランス生産・調教馬のスタディオブマン、日本のダービー競走第85回東京優駿を勝利した日本生産・調教馬のワグネリアンと並んで言及される場合もある[9][69][70]。この3頭の活躍によって、ディープインパクト産駒は、「日英仏」3か国のクラシック競走の同一年制覇を達成した[69][9]

血統表

サクソンウォリアー血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 サンデーサイレンス系
[§ 2]

ディープインパクト
2002 鹿毛
父の父
*サンデーサイレンス
Sunday Silence
1986 青鹿毛
Halo Hail to Reason
Cosmah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
父の母
*ウインドインハーヘア
Wind in Her Hair
1991 鹿毛
Alzao Lyphard
Lady Rebecca
Burghclere Busted
Highclere

*メイビー
Maybe
2009 鹿毛
Galileo
1998 鹿毛
Sadler's Wells Northern Dancer
Fairy Bridge
Urban Sea Miswaki
Allegretta
母の母
Sumora
2002 鹿毛
*デインヒル Danzig
Razyana
Rain Flower Indian Ridge
Rose of Jericho
母系(F-No.) Cambrienne系(FN:1-t) [§ 3]
5代内の近親交配 Northern Dancer5×4×5=12.50%、 [§ 4]
出典
  1. ^ サクソンウォリアー 5代血統表2018年5月5日閲覧
  2. ^ サクソンウォリアー 5代血統表2018年5月5日閲覧
  3. ^ [71]
  4. ^ サクソンウォリアー 5代血統表2018年5月5日閲覧

脚注

注釈

  1. ^ ディープインパクトの血統を入手するための手法として、このほかに競り市での落札などの手法があるが、これは、賞金が高い日本競馬の競走体系を前提としているため、入手した血統馬をアイルランドで競走させるとすれば割高の取引となった[13][15]。特に、競り市のセレクトセールで取引される産駒は高額であった[16]
  2. ^ ヨーロッパの生産者が繁殖牝馬を日本に送ってディープインパクトを配合する手法自体は、ディープインパクトの供用初年度となる2007年に、フランスの馬主ウィルデンシュタイン家からリステッド競走勝ち馬バステッドが送り込まれ、供用2年度に再度配合されたバステッドが後のG1競走勝ち馬ビューティーパーラーを生産したように、早い段階から行われていた[17][18]。しかし、ヨーロッパの最優秀2歳牝馬のメイビーが送り込まれたという出来事は、ディープインパクトのために来日する牝馬の質が、その供用初期と比べて大きく向上したことを一例として示すものであった[19]
  3. ^ なお、同年のオブライエン厩舎は、最終的にG1競走の年間勝利数を28勝まで積み上げることになる[27]
  4. ^ 受賞馬はユーエスネイビーフラッグ[28]。ほか、メンデルスゾーン、ロアリングライオンがノミネートされた[29]
  5. ^ ただし、本馬の2000ギニー1着の最終的な評価は、レーティング119ポンドで確定している[37][38]
  6. ^ なお、同馬は、7月初めに観察された脚部不安によって戦線を離脱することになる[45]
  7. ^ この次走選択とローテーションについては、アラン・スウィートマンによる「自暴自棄の行為に見えた」[36]、ジョセリン・ド・モーブレイによる「型破り」[48]などの評がある。
  8. ^ このほか、マサー、サンズオブマリ英語版がノミネートされた[55]
  9. ^ 種付料は、それぞれオーストラリアドルで、2019年2万4750ドル、2020年1万7600ドル、2021年1万3750ドル、2022年1万9250ドルと推移した[59]
  10. ^ 競馬評論家のジョセリン・ド・モーブレイは、サクソンウォリアーの敗因として、距離適性を挙げるとともに、本馬がダービーにおける騒音や群衆などの異様な雰囲気を前にして興奮気味であったことを指摘した[14]。沢田康文は、残り600メートル付近で包まれたことによってスムーズさを欠いたこと、開催場のエプソム競馬場が40メートルの高低差を擁する難コースであることに言及している[43]。また、アラン・スウィートマンは、大勢には影響しなかったとしつつ、本馬が発馬の際にわずかに躓いたことを取り上げた[41]

出典

  1. ^ a b c d e Saxon Warrior(JPN)”. www.jbis.or.jp. JBISサーチ. 2023年1月1日閲覧。
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参考文献

書籍

  • 軍士門隼夫『衝撃の彼方 ディープインパクト』三賢社、2021年3月25日。ISBN 978-4908655180 

雑誌記事

  • 秋山響、沢田康文「[ワールド・レーシング・ニュース] 愛チャンピオンS、ほか」『優駿』2017年11月号、中央競馬ピーアール・センター、2017年、114-117頁。 
  • 秋山響「[ワールド・レーシング・ニュース] トラヴァーズS、英インターナショナルS、ほか」『優駿』2018年10月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、114-117頁。 
  • 石田敏徳「[クラシックレポート(日本)] ディープインパクト産駒が国内外で存在感を示す」『フューチュリティ』Vol.62、ジェイエス、2018年12月13日、63-65頁。 
  • 奥野庸介「2017年海外競馬回顧」『日本の競馬 総合ハンドブック2018』、中央競馬振興会、2018年4月24日、312-334頁。 
  • 奥野庸介「2018年海外競馬回顧」『日本の競馬 総合ハンドブック2019』、中央競馬振興会、2019年4月25日、312-324頁。 
  • 合田直弘「[クローズアップ] 世界を駆けるディープインパクトの血 産駒が日英仏クラシック制覇」『優駿』2018年10月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、66-69頁。 
  • 合田直弘「[合田直弘の海外競馬掘り出しエピソード] ビタースイート・ダービー」『優駿』2018年10月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、128頁。 
  • 沢田康文「[ディープインパクト産駒 英仏ダービー参戦リポート] 第293回英ダービー(GI) 日本産馬サクソンウォリアー4着に敗れる」『優駿』2018年7月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、64-65頁。 
  • 沢田康文、「[ワールド・レーシング・ニュース] 愛ダービー、ほか」『優駿』2018年8月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、114-117頁。 
  • 平松さとし、秋山響、ハイランド真理子「[ワールド・レーシング・ニュース] 英チャンピオンS、ほか」『優駿』2017年12月号、中央競馬ピーアール・センター、2017年、112-117頁。 
  • 平松さとし、吉田直哉、秋山響「[ワールド・レーシング・ニュース] ケンタッキーダービー、英2000ギニー、ほか」『優駿』2018年6月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、114-117頁。 
  • 平松さとし、沢田康文、秋山響「[ワールド・レーシング・ニュース] 愛チャンピオンS、ほか」『優駿』2018年11月号、中央競馬ピーアール・センター、2018年、114-117頁。 
  • ジョセリン・ド・モーブレイ「[クラシックレポート(欧州)] 主役はディープインパクト産駒 欧州競馬「春の陣」の興奮」『フューチュリティ』Vol.62、ジェイエス、2018年12月13日、51-56頁。 
  • 吉田直哉「[2018年の蹄跡] 日本の種牡馬が海外で躍進 世界に広がる日本発の血統」『優駿』2019年2月号、中央競馬ピーアール・センター、2019年、47頁。 
  • Fidler, Katherine; Haynes, Jack; Hill, Daniel; Melrose, Keith; Playle, Maddy; Pulford, Nick; Russell, Colin; Sheerin, Brian; Trice, Kitty; Vicarage, Zoe (2018-2-1). Nick Pulford. ed. “Annual 20: Ones to watch in 2018”. Racing Post Annual 2018 (Racing Post Books): 192-197. ISBN 978-1910497098. 
  • Kerr, Tom (2019-2-2). Nick Pulford. ed. “Roaring Lion: String of Group I triumphs”. Racing Post Annual 2019 (Racing Post Books): 68-72. ISBN 978-1910497739. 
  • Sweetman, Alan (2019-2-2). Nick Pulford. ed. “Saxon Warrior: Guineas promise unfulfilled”. Racing Post Annual 2019 (Racing Post Books): 112-116. ISBN 978-1910497739. 
  • Nick Pulford, ed (2019-2-2). “Annual Awards: Memorable achievements in 2018”. Racing Post Annual 2019 (Racing Post Books): 203. ISBN 978-1910497739. 
  • 『フューチュリティ』Vol.61、ジェイエス、2018年3月25日。 
  • 『日本の競馬 総合ハンドブック2019』、中央競馬振興会、2019年4月25日。 

外部リンク