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2022年11月23日 (水) 09:44時点における版

昭和新山
標高 398 m
所在地 日本の旗 日本
北海道有珠郡壮瞥町
位置 北緯42度32分33秒 東経140度51分52秒 / 北緯42.54250度 東経140.86444度 / 42.54250; 140.86444座標: 北緯42度32分33秒 東経140度51分52秒 / 北緯42.54250度 東経140.86444度 / 42.54250; 140.86444
山系 有珠山
種類 溶岩ドーム
最新噴火 1944年
昭和新山の位置(北海道南部内)
昭和新山
昭和新山
昭和新山 (北海道南部)
昭和新山の位置(北海道内)
昭和新山
昭和新山
昭和新山 (北海道)
昭和新山の位置(日本内)
昭和新山
昭和新山
昭和新山 (日本)
プロジェクト 山
テンプレートを表示
昭和新山の位置(100x100内)
昭和新山
昭和新山
洞爺カルデラと有珠山(中央下)と
昭和新山の位置関係

昭和新山(しょうわしんざん)は、北海道有珠郡壮瞥町にある火山支笏洞爺国立公園内にあり[1]、国の特別天然記念物に指定されている[2]。また、有珠山とともに日本の地質百選に選定され[3]、周辺地域が洞爺湖有珠山ジオパークとして「日本ジオパーク」「世界ジオパーク」に認定されている。

昭和19年(1944年)に始まった噴火活動で隆起した。当時は太平洋戦争下であったが、壮瞥郵便局長だった三松正夫が観測記録(ミマツダイヤグラム)を残した[4]。昭和新山は私有地で、三松正夫の孫娘と結婚した三松正夫記念館館長の三松三朗が2022年時点の所有者である[5]。尚、昭和新山の命名者は日本地球物理学の先駆者である田中舘愛橘の養子、田中舘秀三である。

地質

有珠山側火山デイサイト質の粘性の高い溶岩により溶岩円頂丘が形成されている。形成当初の標高は400メートルを超えていたが、現在では、それが温度低下や浸食などの影響で、398mまで縮んでいる[6]

有珠山の麓にあった平地に火山が形成された。山肌が赤色に見えるのは、かつての土壌が溶岩の熱で焼かれて煉瓦のように固まったからである。そして、川に運ばれ平地の地下に埋まるなどしていた石が溶岩によって持ち上げられたため、昭和新山の中腹には河原にあるような丸い石が場違いに転がっているのも見ることができる。なお、形成当初は全山が不毛の土地であったが、後述するように、昭和新山は私有地にあるため、登山などで自由に人が立ち入りすることができない。

生い立ち

噴火活動前

かつてこの地域は「東九万坪」という広大な畑作地帯で、壮瞥川の川沿いには「フカバ」という集落があった。集落名は孵化場があったことに由来している。辺りはのどかな田園地帯であったが、山の隆起とともに集落は消滅した。その痕跡は崩壊した国鉄胆振線の橋脚跡などに残っている[7]

昭和新山誕生までの噴火活動

昭和新山の初期(1944年10月)
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
昭和新山のステレオ空中写真(1976年)国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
  • 1943年昭和18年)
  • 1944年(昭和19年)
    • 1月4日 フカバ集落の湧水の温度が上昇し、20だったものが43℃に達する。
    • 1月5日 洞爺湖に巨大な渦巻きが発生。同日、レールの隆起により胆振線が不通となる。
    • 2月 - 5月 フカバ集落・柳原集落・東九万坪・西九万坪一帯で隆起活動が続く。中でも柳原集落は前年比で31mも隆起した。
    • 6月21日 壮瞥川が川底の隆起によって氾濫。
    • 6月23日 午前8時15分、東九万坪台地より第1次大噴火。第1火口形成。
    • 6月27日 午前6時、第2次大噴火。第2火口形成。   
    • 7月2日 午前0時頃に第3次大噴火。第3火口形成。苫小牧千歳方面に降灰
    • 7月3日 午前8時30分に第4次大噴火。室蘭登別方面に降灰。
    • 7月11日 午前10時40分に第5次大噴火。噴煙が強風に倒され、洞爺湖畔を襲う。
    • 7月13日 午後6時10分に第6次大噴火。第4火口形成。
    • 7月15日 午後9時に第7次大噴火。
    • 7月24日 午前5時に第8次大噴火。
    • 7月25日 午前5時10分に第9次大噴火。
    • 7月29日 午後2時20分に第10次大噴火。登別、白老方面に降灰。亜硫酸ガス噴出で山林が荒廃。
    • 8月1日 午後11時55分に第11次大噴火。室蘭方面に降灰。
    • 8月4日 午後10時に第12次大噴火。    
    • 8月20日 午前6時に中噴火。第5火口形成。
    • 8月26日 午後2時20分に第13次大噴火。壮瞥町滝之上地区で、睡眠中の幼児1名が火山灰により窒息死。
    • 9月8日 午後4時15分に第14次大噴火。フカバ集落で火山弾による火災。5戸が全半焼。
    • 9月16日 中爆発。第6火口形成。
    • 10月1日 午前0時30分に第15次大噴火。第7火口形成。
    • 10月16日 午後7時50分に第16次大噴火。
    • 10月30日 午後9時30分に第17次大噴火。これを最後に降灰を伴う噴火は収束。
    • 12月 溶岩ドームの推上が始まる。
  • 1945年(昭和20年)
    • 1月10日 溶岩ドームの高さ、地表より10 - 20m。
    • 2月11日 溶岩ドームは高さ40 - 50mに成長。
    • 2月26日 溶岩ドーム主塔の脇に副塔が確認される。
    • 5月 主塔の高さ85mに達する。
    • 9月20日 全活動停止。溶岩ドーム主塔の高さ175m。

噴火観測と保護

三松正夫記念館

有珠山とともに気象庁による常時観測火山に指定されている[8]。山への立ち入りは禁止されており、特別な許可がなければ入山することができない[9]

昭和新山は1943年(昭和18年)12月から1945年(昭和20年)9月までの2年間に17回の活発な火山活動を見せた溶岩ドームである。当時は第二次世界大戦の最中であり、世間の動揺を抑えるために噴火の事実は伏せられ、公的な観測を行うことができなかった[10][11]。そのような状況下で、地元の郵便局長であった三松正夫は、新山が成長していく詳細な観察記録を作成し[10]、後に「ミマツダイヤグラム」と命名され貴重な資料として評価された[12]。火山の形成過程を人類が詳細に記録した唯一の例である[4]

また、三松はこの世界的に貴重な火山の保護と家や農場を失った住民の生活の支援のために、山になってしまった土地を買い取った[10]。そのため昭和新山は三松家の私有地であり、ニュージーランドホワイト島等と同じく世界でも珍しい私有地にある火山となっている。1951年(昭和26年)国の天然記念物に指定され、1957年(昭和32年)には特別天然記念物に指定された[2]

山麓には1988年(昭和63年)4月開館の三松正夫記念館があり、三松による観測記録の資料が展示されている[13]。館長の三松三朗は大学在学中、正夫の研究活動に感銘を受けて面会を求め、後にその孫娘と結婚した。記念館は2021年の日本火山学会普及啓発賞を受賞した[4]

周辺

麓には観光施設が集積しており、有珠山へのロープウェイが運行している。1989年平成元年)から麓で開催されている雪合戦昭和新山国際雪合戦」は北海道遺産の一つに選定されている[14]

参考画像

アクセス

道央自動車道伊達IC虻田洞爺湖ICからともに車で約15分。国道453号北海道道2号洞爺湖登別線から北海道道703号洞爺湖公園線を利用する。

脚注

  1. ^ 支笏洞爺国立公園”. 環境省. 2014年8月9日閲覧。
  2. ^ a b 昭和新山 - 文化遺産オンライン文化庁
  3. ^ 日本の地質百選・地質情報”. 全国地質調査業協会連合会・地質情報整備活用機構. 2014年8月1日閲覧。
  4. ^ a b c 「三松記念館に火山学会賞」『読売新聞』朝刊2021年6月18日(北海道苫小牧・室蘭・函館地区版)
  5. ^ 【ほっかいどう顔】三松正夫記念館館長■三松三朗/火山 共生と警戒考える『読売新聞』朝刊2021年7月30日(北海道面)
  6. ^ “昭和新山爆発70年フォーラムで防災や観光考える”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2014年6月24日). http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2014/06/24/20140624m_07.html 2014年8月9日閲覧。 
  7. ^ 昭和新山鉄橋遺構公園がオープンしました!” (PDF). 壮瞥町. 2015年4月15日閲覧。
  8. ^ 有珠山 観測点配置図”. 気象庁. 2015年4月15日閲覧。
  9. ^ 昭和新山登山会”. 洞爺湖有珠山ジオパーク (2010年10月5日). 2014年8月9日閲覧。
  10. ^ a b c 火山誕生を見守り続けた郵便局長 三松正夫記念館” (PDF). 産業技術総合研究所 地質調査総合センター. 地質ニュース597号. pp. 52-59 (2004年5月). 2014年8月10日閲覧。
  11. ^ 伊達警察署が『有珠山地震・九万坪噴火干(関)係書類 保存永久 伊達警察署』という1943年12月 - 1944年8月の地図、図、文書など350枚、写真10枚の記録を作成し、2015年1月に発見され、2015年7月27日報道陣に公開された。
  12. ^ 北海道文化賞 受賞者一覧” (PDF). 北海道文化賞. 北海道. 2014年8月10日閲覧。。三松正夫は1949年(昭和24年)「第1回 北海道文化賞」受賞者の1人。
  13. ^ “昭和新山資料一堂に 三松記念館オープン”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (1988年4月24日) 
  14. ^ 北海道遺産・分布図”. 北海道. 2014年8月1日閲覧。

参考文献

  • 三松正夫『昭和新山 - その誕生と観察の記録』講談社、1970年。 
  • 三松正夫『昭和新山物語 - 火山と私の一生』誠文堂新光社〈自然の記録シリーズ 〉、1974年。ISBN 4-416-20010-2 
  • 三松三朗『火山一代 - 昭和新山と三松正夫』北海道新聞社〈道新選書〉、1990年。ISBN 4-89363-936-6 
  • 新田次郎『昭和新山』文藝春秋、1971年。 /〈文春文庫〉、1977年。
三松正夫をモデルに執筆。『文藝春秋』1969年11月号に掲載。『新田次郎全集 第11巻 ある町の高い煙突・笛師』(新潮社、1975年)に収録。雑誌掲載・単行本の出版年は、この資料の記載による。

関連項目

外部リンク

観光
防災