「バキュリテス」の版間の差分
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'''バキュリテス''' / '''バクリテス'''{{Sfn|kb}}([[学名]]:'''{{Lang|la|{{Snamei||Baculites}}}}''')は、{{仮リンク|バキュリテス科|en|Baculitidae}}に属する[[異常巻きアンモナイト]]の属。約1億4020万年前から約6170万年前([[中生代]][[白亜紀]]初期([[前期白亜紀]]初期)[[ベリアシアン]]から[[新生代]][[古第三紀]][[暁新世]]初頭[[ダニアン]])にかけ |
'''バキュリテス''' / '''バクリテス'''{{Sfn|kb}}([[学名]]:'''{{Lang|la|{{Snamei||Baculites}}}}''')は、{{仮リンク|バキュリテス科|en|Baculitidae}}に属する[[異常巻きアンモナイト]]の属。約1億4020万年前から約6170万年前([[中生代]][[白亜紀]]初期([[前期白亜紀]]初期)[[ベリアシアン]]から[[新生代]][[古第三紀]][[暁新世]]初頭[[ダニアン]])にかけ{{Sfn|Fw}}、世界中の海域に棲息していた{{Sfn|PBDG}}。 |
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== 名称 == |
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⚫ | [[学名|属名]] "'''{{Snamei|Baculites}}'''({{Small|[[ラテン語]][[Wikt:音写|音写]]}}:'''バクリーテース'''、{{Small|[[長音]]省略}}:'''バクリテス''')" は、ラテン語で[ baculītēs < bacul- + [[Wikt:en:-ites#Translingual|-ites]](-ītēの[[複数]]形を元にした[[固有名詞]]作成用[[接尾辞]]であり、様々な学術分野で様々な語意を持つトランスリンガルになっている。ここでは[[鉱物]]系。)< [[Wikt:en:baculum#Latin|baculum]](バクルム、=''[[Wikt:en:walking stick|walking stick]]'', ''[[Wikt:en:staff|stasff]]''、[[ステッキ]]、歩行用の[[杖]])<ref name=WordSense_baculum>{{Cite web |title=baculum |url=https://www.wordsense.eu/baculum/#Latin |website=WordSense |language=en |accessdate=2022-10-20 }}</ref>+ [[Wikt:en:-ite#Latin|-ītē]](固有名詞作成用接尾辞)]という語構成になっており{{R|Collins}}、ここでは、"walking stick rock{{R|Collins}}"「杖状石」などといった意味合いで[[造語]]されている。日本ではバクルムを「[[棒]]」と翻訳して{{Sfn|kb}}本属の学名を「棒状の石」を解説する例<ref name=広島空港>{{Cite web|url=https://www.hij.airport.jp/special/dinosaur2020/cambrian/cambrian08.html |accessdate=2021-01-22 |publisher=[[広島空港ビルディング株式会社]] |website=[[広島空港]] |title=生命の歴史 中生代白亜紀(2)}}</ref>も多いが、上述したようにバクルムは主として歩行を補助するための杖([[松葉杖]]を含む)を指し、そこから転じて権威の象徴としての杖などをも指す。 |
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=== 属名 === |
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⚫ | [[学名|属名]] "'''{{Snamei|Baculites}}'''({{Small|[[ラテン語]][[Wikt:音写|音写]]}}:'''バクリーテース'''、{{Small|[[長音]]省略}}:'''バクリテス''')" は、ラテン語で[ baculītēs < bacul- + [[Wikt:en:-ites#Translingual|-ites]](-ītēの[[複数]]形を元にした[[固有名詞]]作成用[[接尾辞]]であり、様々な学術分野で様々な語意を持つトランスリンガルになっている。ここでは[[鉱物]]系。)< [[Wikt:en:baculum#Latin|baculum]](バクルム、=''[[Wikt:en:walking stick|walking stick]]'', ''[[Wikt:en:staff|stasff]]''、[[ステッキ]]、歩行用の[[杖]])<ref name=WordSense_baculum>{{Cite web |title=baculum |url=https://www.wordsense.eu/baculum/#Latin |website=WordSense |language=en |accessdate=2022-10-20 }}</ref>+ [[Wikt:en:-ite#Latin|-ītē]](固有名詞作成用接尾辞)]という語構成になっており{{R|Collins}}、ここでは、"walking stick rock{{R|Collins}}"「杖状石」などといった意味合いで[[造語]]されている。日本ではバクルムを「[[棒]]」と翻訳して{{Sfn|kb}}本属の学名を「棒状の石」を解説する例<ref name=広島空港>{{Cite web|url=https://www.hij.airport.jp/special/dinosaur2020/cambrian/cambrian08.html |accessdate=2021-01-22 |publisher=[[広島空港ビルディング株式会社]] |website=[[広島空港]] |title=生命の歴史 中生代白亜紀(2)}}</ref>も多いが、上述したようにバクルムは主として歩行を補助するための杖([[松葉杖]]を含む)を指し、そこから転じて権威の象徴としての杖などをも指す |
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=== 同名 === |
<!--=== 同名 === |
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「学名は重複してはならない」というのが[[分類学]]における大原則であるが、属名 "{{Snamei|Baculites}}" は非常に珍しい例外の一つであり、重複している。「[[界 (分類学)|界]]」という[[リンネ式階層分類体系]]上きわめて高い階層の[[タクソン|タクソン(分類群)]]である[[クロミスタ]]に属する1属 '''{{Snamei|Baculites}} {{AU|Gruss}}''' |
「学名は重複してはならない」というのが[[分類学]]における大原則であるが、属名 "{{Snamei|Baculites}}" は非常に珍しい例外の一つであり、重複している。「[[界 (分類学)|界]]」という[[リンネ式階層分類体系]]上きわめて高い階層の[[タクソン|タクソン(分類群)]]である[[クロミスタ]]に属する1属 '''{{Snamei|Baculites}} {{AU|Gruss}}''' {{efn2|Gruss は[[記載]]者名であるが、詳細は不明。}}が本属と重複しており、これら2つの学名の関係を指して「両者は[[同名]](ホモニム)である」という。{{仮リンク|系統分類|en|Phylogenetic nomenclature}}{{Enlink|Phylogenetic nomenclature|a=on}}上遠く離れたもの同士であるから日常的に問題は生じず、それゆえに許容されてしまっているものであるが、そうは言っても網羅的に見渡したときに違いの無い名称の存在は具合が悪い。一応、網羅的な資料でそれぞれを書き表す際は、記載者名を省略しないのは無論のこと、本属のほうは「頭足類」の意味で "Mollusca"、クロミスタのほうは "Chromista" と書き添えるなどして混同を防ぐことにはなっている。--><!-- 無出典、またホモニムの許容されている理由が異なること(系統的に遠いためではなく各命名規約に規定がないため)の可能性があるため、コメントアウト)--> |
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⚫ | なお、[[珪藻]]の1種([[キートケロス属]]の1種){{Snamei||Chaetoceros baculites}} には[[学名|種小名]] "baculites" が使われている<ref>{{Cite web |title=''Chaetoceros baculites'' Meunier |url=https://www.itis.gov/servlet/SingleRpt/SingleRpt?search_topic=TSN&search_value=1004007#null |publisher=[[ITIS]] |language=en |accessdate=2022-10-20 }}</ref><ref>{{Cite web |title=''Chaetoceros baculites'' Meunier, 1910 |url=https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=163001 |website={{仮リンク|World Register of Marine Species|en|World Register of Marine Species}} (WoRMS) |language=en |accessdate=2022-10-20 }}</ref>。 |
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== 生物的特徴 == |
== 生物的特徴 == |
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=== 分布 === |
=== 分布 === |
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[[化石]]の産出数は、2022年時点で899件{{Sfn|Fw|loc=2022年10月21日閲覧}}。国家・地域別では次のとおり{{Sfn|Fw|loc=2022年10月21日閲覧}}。[[アメリカ合衆国]](474件)、[[カナダ]](43件)、[[フランス]](38件)、[[日本]](27件)、[[スウェーデン]](20件)、[[南アフリカ共和国]](16件)、[[チリ]](14件)、[[南極大陸]](11件)、[[ドイツ]](11件)、[[ヨルダン]](11件)、[[ニュージーランド]](10件)、[[オランダ]](8件)、[[アンゴラ]](7件)、[[デンマーク]](7件)、[[ベルギー]](7件)、[[グリーンランド]](6件)、[[メキシコ]](6件)、[[スペイン]](4件)。そのほか、[[アルゼンチン]]、[[オーストリア]]、[[エジプト]]、[[モザンビーク]]、[[ナイジェリア]]、以上5か国が各3件、[[オーストラリア]]、[[ハイチ]]、[[ロシア]]、[[タジキスタン]]、[[トルコ]]、[[イギリス]]、[[ウズベキスタン]]、以上7か国が各2件、[[ブラジル]]、[[カメルーン]]、[[インド]]、[[ルーマニア]]、[[チュニジア]]、[[トルクメニスタン]]、[[ベネズエラ]]、以上か国が各1件。 |
[[化石]]の産出数は、2022年時点で899件{{Sfn|Fw|loc=2022年10月21日閲覧}}。国家・地域別では次のとおり{{Sfn|Fw|loc=2022年10月21日閲覧}}。[[アメリカ合衆国]](474件)、[[カナダ]](43件)、[[フランス]](38件)、[[日本]](27件)、[[スウェーデン]](20件)、[[南アフリカ共和国]](16件)、[[チリ]](14件)、[[南極大陸]](11件)、[[ドイツ]](11件)、[[ヨルダン]](11件)、[[ニュージーランド]](10件)、[[オランダ]](8件)、[[アンゴラ]](7件)、[[デンマーク]](7件)、[[ベルギー]](7件)、[[グリーンランド]](6件)、[[メキシコ]](6件)、[[スペイン]](4件)。そのほか、[[アルゼンチン]]、[[オーストリア]]、[[エジプト]]、[[モザンビーク]]、[[ナイジェリア]]、以上5か国が各3件、[[オーストラリア]]、[[ハイチ]]、[[ロシア]]、[[タジキスタン]]、[[トルコ]]、[[イギリス]]、[[ウズベキスタン]]、以上7か国が各2件、[[ブラジル]]、[[カメルーン]]、[[インド]]、[[ルーマニア]]、[[チュニジア]]、[[トルクメニスタン]]、[[ベネズエラ]]、以上7か国が各1件。 |
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* 重複情報(未処理分):日本やアメリカ合衆国、南アフリカ共和国など世界中から化石が産出している<ref>{{Cite web|url=http://www.kmnh.jp/exhibition/11box1/11b1_pyritebaculites.html |title=黄鉄鉱化したバキュリテス |publisher=[[北九州市立いのちのたび博物館]] |accessdate=2021-01-22}}</ref><ref name=辻野2001>{{Cite journal|和書|title=北海道上部白亜系から産出した異常巻アンモナイト・Baculites tanakaeの個体成長と種内変異(23. 中・古生代古生物,口頭発表,一般発表) |journal=日本地質学会学術大会講演要旨 |publisher=[[日本地質学会]] |year=2001 |author=辻野泰之 |url=https://doi.org/10.14863/geosocabst.2001.0_132_1 |doi=10.14863/geosocabst.2001.0_132_1}}{{フリーアクセス}}</ref>。 |
* 重複情報(未処理分):日本やアメリカ合衆国、南アフリカ共和国など世界中から化石が産出している<ref>{{Cite web|url=http://www.kmnh.jp/exhibition/11box1/11b1_pyritebaculites.html |title=黄鉄鉱化したバキュリテス |publisher=[[北九州市立いのちのたび博物館]] |accessdate=2021-01-22}}</ref><ref name=辻野2001>{{Cite journal|和書|title=北海道上部白亜系から産出した異常巻アンモナイト・Baculites tanakaeの個体成長と種内変異(23. 中・古生代古生物,口頭発表,一般発表) |journal=日本地質学会学術大会講演要旨 |publisher=[[日本地質学会]] |year=2001 |author=辻野泰之 |url=https://doi.org/10.14863/geosocabst.2001.0_132_1 |doi=10.14863/geosocabst.2001.0_132_1}}{{フリーアクセス}}</ref>。 |
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=== 形質 === |
=== 形質 === |
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全長は10 - 20[[センチメートル]]<ref name=広島空港/>。殻の形状ゆえに異常巻きアンモナイトにカテゴライズされるが、むしろ殻は巻いておらず、一直線の棒状に伸びているという大きな特徴がある<ref name=辻野2001/>。この殻の進化の過程には2つの仮説が提唱されて |
全長は10 - 20[[センチメートル]]<ref name=広島空港/>。殻の形状ゆえに異常巻きアンモナイトにカテゴライズされるが、むしろ殻は巻いておらず、一直線の棒状に伸びているという大きな特徴がある<ref name=辻野2001/>。この殻の進化の過程には2つの仮説が提唱されており、そのうちの1つは[[エゾセラス]]のような[[ノストセラス科]]の円錐形の巻きが解けてまっすぐになった説、もう1つは[[スカラリテス]]のような[[ディプロモセラス科]]の平面的な螺旋の巻きが解けてまっすぐになった説である<ref>{{Cite journal|title=後期白亜紀異常巻アンモナイト類の初期殻形態 |author1=棚部一成 |author2=小畠郁生 |author3=二上政夫 |journal=日本古生物学會報告・紀事 新編 |publisher=[[日本地質学会]] |year=1981 |volume=1981 |issue=124 |pages=215-234 |url=https://doi.org/10.14825/prpsj1951.1981.124_215 |doi=10.14825/prpsj1951.1981.124_215}}{{フリーアクセス}}</ref>。なお、その殻の形状ゆえに破損しやすく、完全な状態で産出することは多くない<ref name=辻野2001/>。 |
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棒状の形状 |
棒状の形状ゆえに水の抵抗を受けにくく、他のアンモナイトと比較して高速遊泳が可能であったと推測されている。殻には他のアンモナイトと同様に気室があり、浮力を得ていたため、通常時は殻を斜めにして遊泳していたと考えられている<ref name=広島空港/>。 |
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=== ギャラリー === |
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;''B. tanakae'' |
;''B. tanakae'' |
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:[[カンパニアン]]を示す。上部蝦夷層群の最上位層準であるUk部層から多産する。世界で初めて分類学的研究として初期殻が観察されたバキュリテスの種であり、成長初期から後期までほぼ一定の速度で成長し、成長に伴って殻修飾が変化していたことが判明している。また、他の種と比較して殻の修飾大型化を遂げている<ref name=辻野2001/>。 |
:[[カンパニアン]]を示す。上部蝦夷層群の最上位層準であるUk部層から多産する。世界で初めて分類学的研究として初期殻が観察されたバキュリテスの種であり、成長初期から後期までほぼ一定の速度で成長し、成長に伴って殻修飾が変化していたことが判明している。また、他の種と比較して殻の修飾大型化を遂げている<ref name=辻野2001/>。 |
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:[[日本古生物学会]]は[[徳島県立博物館]]に所蔵されている北海道[[苫前町]]産の標本KT2028b-PのCTデータをオンライン上で無料公開して |
:[[日本古生物学会]]は[[徳島県立博物館]]に所蔵されている北海道[[苫前町]]産の標本KT2028b-PのCTデータをオンライン上で無料公開しており、同学会は他にも多くのアンモナイトのCTデータを扱っているが、バキュリテス科ではこの標本のみが公開されている<ref>{{Cite web|url=http://www.palaeo-soc-japan.jp/3d-ammonoids/data/data10.html |title=''Baculites tanakae'' 徳島県立博物館 KT2028b-P |publisher=日本古生物学会 |accessdate=2021-01-22}}</ref>。 |
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;''B. undulatus'' |
;''B. undulatus'' |
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:後期[[チューロニアン]]を示す。北海道[[夕張市]]の士幌加別川で採集され1983年に報告された上部チューロニアン階の中部化石群集の93%を占めるなど、日本で多産する種<ref>{{Cite journal|和書|title=北海道中西部上部チューロニアン・アンモナイトの群集特性:コリンニョニセラス亜科の系統解釈に関する基礎的研究 |author1=二上政夫 |author2=宮田雄一郎 |journal=地質学雑誌 |publisher=[[日本地質学会]] |year=1983 |volume=89 |issue=1 |pages=31-40 |url=https://doi.org/10.5575/geosoc.89.31 |doi=10.5575/geosoc.89.31}}{{フリーアクセス}}</ref>。 |
:後期[[チューロニアン]]を示す。北海道[[夕張市]]の士幌加別川で採集され、1983年に報告された上部チューロニアン階の中部化石群集の93%を占めるなど、日本で多産する種である<ref>{{Cite journal|和書|title=北海道中西部上部チューロニアン・アンモナイトの群集特性:コリンニョニセラス亜科の系統解釈に関する基礎的研究 |author1=二上政夫 |author2=宮田雄一郎 |journal=地質学雑誌 |publisher=[[日本地質学会]] |year=1983 |volume=89 |issue=1 |pages=31-40 |url=https://doi.org/10.5575/geosoc.89.31 |doi=10.5575/geosoc.89.31}}{{フリーアクセス}}</ref>。 |
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;''B. vertebralis'' |
;''B. vertebralis'' |
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: 約7060万年前 - 約6604.3万年前{{Sfn|Fw type}}。[[マーストリヒチアン]]を示す。'''[[タイプ (分類学)|タイプ]]種'''{{Sfn|Fw}}。バキュリテス属の最後の種の一つと考えられてきた<ref>{{Cite web|url=http://fossilworks.org/bridge.pl?a=taxonInfo&taxon_no=129210&is_real_user=1 |title=†Baculites vertebralis Lamarck 1801 (ammonite) |accessdate=2021-01-22 |website=Fossilworks |publisher=[[マッコーリー大学]]}}</ref>。 |
: 約7060万年前 - 約6604.3万年前{{Sfn|Fw type}}。[[マーストリヒチアン]]を示す。'''[[タイプ (分類学)|タイプ]]種'''{{Sfn|Fw}}。バキュリテス属の最後の種の一つと考えられてきた<ref>{{Cite web|url=http://fossilworks.org/bridge.pl?a=taxonInfo&taxon_no=129210&is_real_user=1 |title=†Baculites vertebralis Lamarck 1801 (ammonite) |accessdate=2021-01-22 |website=Fossilworks |publisher=[[マッコーリー大学]]}}</ref>。 |
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2022年10月28日 (金) 12:40時点における版
バキュリテス Baculites | |||||||||||||||||||||
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地質時代 | |||||||||||||||||||||
約1億4020万年前 - 約6170万年前 [1] (中生代白亜紀初期〈前期白亜紀初期〉ベリアシアン - 新生代古第三紀暁新世初頭ダニアン) | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
†Baculites Lamarck, 1799 [1] | |||||||||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||||||||
†Baculites vertebralis Lamarck, 1801 [1][2][3] vide Meek, 1876[4] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
バキュリテス | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
baculites baculite [5][6] | |||||||||||||||||||||
下位分類(種) | |||||||||||||||||||||
本文を参照
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バキュリテス / バクリテス[7](学名:Baculites)は、バキュリテス科に属する異常巻きアンモナイトの属。約1億4020万年前から約6170万年前(中生代白亜紀初期(前期白亜紀初期)ベリアシアンから新生代古第三紀暁新世初頭ダニアン)にかけ[1]、世界中の海域に棲息していた[8]。
名称
属名 "Baculites(ラテン語音写:バクリーテース、長音省略:バクリテス)" は、ラテン語で[ baculītēs < bacul- + -ites(-ītēの複数形を元にした固有名詞作成用接尾辞であり、様々な学術分野で様々な語意を持つトランスリンガルになっている。ここでは鉱物系。)< baculum(バクルム、=walking stick, stasff、ステッキ、歩行用の杖)[9]+ -ītē(固有名詞作成用接尾辞)]という語構成になっており[5]、ここでは、"walking stick rock[5]"「杖状石」などといった意味合いで造語されている。日本ではバクルムを「棒」と翻訳して[7]本属の学名を「棒状の石」を解説する例[10]も多いが、上述したようにバクルムは主として歩行を補助するための杖(松葉杖を含む)を指し、そこから転じて権威の象徴としての杖などをも指す。
なお、珪藻の1種(キートケロス属の1種)Chaetoceros baculites には種小名 "baculites" が使われている[11][12]。
生物的特徴
分布
化石の産出数は、2022年時点で899件[13]。国家・地域別では次のとおり[13]。アメリカ合衆国(474件)、カナダ(43件)、フランス(38件)、日本(27件)、スウェーデン(20件)、南アフリカ共和国(16件)、チリ(14件)、南極大陸(11件)、ドイツ(11件)、ヨルダン(11件)、ニュージーランド(10件)、オランダ(8件)、アンゴラ(7件)、デンマーク(7件)、ベルギー(7件)、グリーンランド(6件)、メキシコ(6件)、スペイン(4件)。そのほか、アルゼンチン、オーストリア、エジプト、モザンビーク、ナイジェリア、以上5か国が各3件、オーストラリア、ハイチ、ロシア、タジキスタン、トルコ、イギリス、ウズベキスタン、以上7か国が各2件、ブラジル、カメルーン、インド、ルーマニア、チュニジア、トルクメニスタン、ベネズエラ、以上7か国が各1件。
形質
全長は10 - 20センチメートル[10]。殻の形状ゆえに異常巻きアンモナイトにカテゴライズされるが、むしろ殻は巻いておらず、一直線の棒状に伸びているという大きな特徴がある[15]。この殻の進化の過程には2つの仮説が提唱されており、そのうちの1つはエゾセラスのようなノストセラス科の円錐形の巻きが解けてまっすぐになった説、もう1つはスカラリテスのようなディプロモセラス科の平面的な螺旋の巻きが解けてまっすぐになった説である[16]。なお、その殻の形状ゆえに破損しやすく、完全な状態で産出することは多くない[15]。
棒状の形状ゆえに水の抵抗を受けにくく、他のアンモナイトと比較して高速遊泳が可能であったと推測されている。殻には他のアンモナイトと同様に気室があり、浮力を得ていたため、通常時は殻を斜めにして遊泳していたと考えられている[10]。
ギャラリー
分類
下位分類
バキュリテス属は数多くの種が記載されている。日本や南アフリカ共和国からの報告によると、コニアシアンから後期カンパニアンにかけて徐々に殻の表面修飾が過大形成進化を遂げていた傾向が読み取れる[15]。以下に主な種を示す。
- B. gaudini
- 北海道・樺太中部軸白亜系で産出。同地域に適用するものとして1942年に松本逹郎が提唱した時代区分である宮古世(国際年代層序においては前期白亜紀のアプチアンおよびアルビアン)の後期に出現し、ギリヤーク世(後期白亜紀のセノマニアンとチューロニアン)の途中で姿を消す[17]。
- なお、2008年にW・J・ケネディは本種をレチテス属(レキテス属)のタイプ種 Lechites (Lechites) gaudini として再分類した[18]。
- B. ovatus
- アメリカ合衆国で記載された最初の種。1820年にトーマス・セイが[19]ニュージャージー州のアトランティック・ハイランズに分布するネイヴシンク累層から産出した単一の標本に基づいて記載した。この標本は後にサミュエル・ジョージ・モートンが描画し、1828年にエッチングを発表した[20]。標本の所有者であったキリスト友会の科学者ルーベン・ヘインズ3世が1831年に死没した後にこの標本は紛失されてしまったが、約180年後の2017年にヘインズの自宅で再発見された[21]。
- B. pacificus
- 後期カンパニアンを示す。北海道では後述するB. rex帯やB. subanceps帯の下に化石帯をなしている[22]。
- B. regina
- 前期マーストリヒチアンを示す。大阪府で確認されていたゴードリセラス・イズミエンゼ帯に属しており、2015年から2016年の発掘調査で伊豆倉正隆が宗谷丘陵に分布する蝦夷層群恵丹白累層で B. regina を発見したことから、大阪府から北海道までゴードリセラス・イズミエンゼに代表される化石群集が分布していたことが明らかになった[23][24]。
- B. rex
- 後期カンパニアンを示す。北海道里平地域で後述するB. subanceps帯の直上に化石帯をなしていることが2019年に確かめられた[22]。
- B. schencki
- コニアシアンを示す。北海道夕張市鳩の巣山に分布する上部蝦夷層群U1部層の転石などから報告されている[25]。
- B. subanceps
- 後期カンパニアンを示し、本種の名を冠した化石帯もある[22][26]。道外では香川県の上部白亜系和泉層群の中通頁岩層から産出しており[27]、道内では浦河町で2016年に初めて確認された[28]。
- B. tanakae
- カンパニアンを示す。上部蝦夷層群の最上位層準であるUk部層から多産する。世界で初めて分類学的研究として初期殻が観察されたバキュリテスの種であり、成長初期から後期までほぼ一定の速度で成長し、成長に伴って殻修飾が変化していたことが判明している。また、他の種と比較して殻の修飾大型化を遂げている[15]。
- 日本古生物学会は徳島県立博物館に所蔵されている北海道苫前町産の標本KT2028b-PのCTデータをオンライン上で無料公開しており、同学会は他にも多くのアンモナイトのCTデータを扱っているが、バキュリテス科ではこの標本のみが公開されている[29]。
- B. undulatus
- 後期チューロニアンを示す。北海道夕張市の士幌加別川で採集され、1983年に報告された上部チューロニアン階の中部化石群集の93%を占めるなど、日本で多産する種である[30]。
- B. vertebralis
- 約7060万年前 - 約6604.3万年前[2]。マーストリヒチアンを示す。タイプ種[1]。バキュリテス属の最後の種の一つと考えられてきた[31]。
- B.yezoensis
- 北海道宗谷地域のSphenoceramus schmidti帯(中部カンパニアン)から産出。B. chicoensisの亜種とされていたが、2019年に有効な属として独立した[32]。
- B. yokoyamai
- コニアシアンを示す。B.schenckiと共産する[25]。
リスト
注釈のない限り、化石のデータベースである Fossilworks に基づく[33]。現在の掲載内容は2021年1月時点の知見による。
- Baculites ambatryensis
- Baculites anceps
- Baculites aquilaensis
- Baculites asper
- Baculites asperiformis
- Baculites baculus
- Baculites bailyi
- Baculites boulei
- Baculites brevicosta
- Baculites buttensis
- Baculites capensis
- Baculites chicoensis
- Baculites cobbani
- Baculites codyensis
- Baculites compressus
- Baculites crickmayi
- Baculites fairbanksi
- Baculites fuchsi
- Baculites haresi
- Baculites huenickeni
- Baculites incurvatus
- Baculites inornatus
- Baculites klingeri
- Baculites knorrianus
- Baculites lechitides
- Baculites leopoliensis
- Baculites lomaensis
- Baculites mclearni
- Baculites minerensis
- Baculites obtusus
- Baculites occidentalis
- Baculites ovatus
- Baculites pacificus [22]
- Baculites pseudovatus
- Baculites rectus
- Baculites rex [22]
- Baculites subanceps
- Baculites subcircularis
- Baculites tanakai
- Baculites taylorensis
- Baculites undatus
- Baculites undulatus
- Baculites vaalsensis
- Baculites vertebralis
- Baculites yezoensis [32]
- Baculites yokoyamai
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e Fw.
- ^ a b Fw type.
- ^ Lamarck, J. P. B. A. de M. de (1801): Systeme des Animaux sans vertebres. The author; Deterville, Paris, vii + 432 pp.
- ^ Meek, F. B. (1876): A report on the invertebrate Cretaceous and Tertiary fossils of the upper Missouri country. In Hayden,F. V. Report of the United States Geological Survey of the Territories, 9, lxiv + 629 pp., 45 pis
- ^ a b c “baculite” (英語). Collins Dictionary. Terms & Conditions. 2022年10月20日閲覧。
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参考文献
- 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “バクリテス”. コトバンク. 2022年10月20日閲覧。
関連項目
外部リンク
- “†family Baculitidae Gill 1871 (ammonite)” (英語). Fossilworks. Macquarie University. 2022年10月20日閲覧。※化石のデータベース。
- “†Baculites Lamarck 1799 (ammonite)”. 2022年10月20日閲覧。
- “†Baculites vertebralis Lamarck 1801 (ammonite)”. 2022年10月20日閲覧。
- “†Baculites Lamarck 1799 (ammonite)”. 2022年10月20日閲覧。
- “検索”. 日本古生物標本横断データベース (jPaleoDB). 2022年10月20日閲覧。※検索キーワード「Baculites」
- “Baculites ✝” (英語). Mindat.org. 2022年10月20日閲覧。※鉱物学データベース。
- “Baculites Lamarck, 1799” (英語). Paleobiology Database (PBDG). 2022年10月20日閲覧。※古生物学データベース。