コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ディプロモセラス科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ディプロモセラス科
スカラリテス・スカラリス
地質時代
後期白亜紀チューロニアン[1] - マーストリヒチアン[2]
99.7–66.043 Ma
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
亜綱 : アンモナイト亜綱 Ammonoidea
: アンモナイト目 Ammonitida
: ディプロモセラス科 Diplomoceratidae
学名
Diplomoceratidae Spath, 1926[3]

本文参照

ディプロモセラス科(学名:Diplomoceratidae)は、後期白亜紀の海に生息していたアンモナイトの科。このグループに属するアンモナイトは全て異常巻きアンモナイトであり、同じく異常巻きアンモナイトであるノストセラス科に起源を持つ。

命名

[編集]

ディプロモセラス科はディプロモセラスをタイプ属としてSpathが1926年に提唱した[2]

特徴

[編集]
ポリプチコセラス

かつて異常巻きアンモナイトは単一のグループが衰退し絶滅に近づく時期に見せた異常な進化の行き止まりと考えられていたが、種数や個体数が豊富であることから適応放散の結果と見なされるようになった[4]。形状としては、湾曲成長した螺環が互いに接していない状態で巻いているもの(スカラリテス属ほか)や、トロンボーンゼムクリップに似た形状をしたもの(ポリプチコセラス属ほか)などがいる。ノストセラス科の螺環が円錐形など立体的な形状を示すのに対し、ディプロモセラス科の巻きは平面的である。

進化

[編集]

ディプロモセラス科は同じく異常巻きアンモナイトであるノストセラス科から枝分かれした分類群であることが指摘されている[5]。1981年の棚部らの論文ではトリアングリテス属・リオプチコセラス属・スカラリテス属が最初期の属とされ、このうちスカラリテス属から他の属が派生したとされた[6]。また、岡本隆からはスカラリテス属がユーボストリコセラス属(ノストセラス科)より派生したディプロモセラス科最初期の属とされ、少なくともポリプチコセラス属とライオプチコセラス属がスカラリテス属から直接派生したと考えられている[5]

また、真っ直ぐな殻を持つバキュリテスに代表されるバキュリテス科英語版がディプロモセラス科から進化した可能性も棚部らにより1981年に指摘された[注 1][6]

産地

[編集]

化石は世界各地から産出しており、Fossilworksによるとアンゴラ南極大陸アルゼンチンアルメニアオーストラリアオーストリアベルギーブラジルブルガリアカナダチリコロンビアデンマークエジプトフランスドイツグリーンランドインドイランイラク日本マダガスカルメキシコオランダニュージーランドナイジェリアオマーンロシア南アフリカ共和国スペインスウェーデンタジキスタンチュニジアウクライナアラブ首長国連邦イギリスアメリカ合衆国ベネズエラで報告されている[2]

[編集]

ディプロモセラス科の形状・大きさの多様性は大きく、特にディプロモセラス属には殻の長さが1.5メートルを超える世界最大の異常巻きアンモナイトがいる[7]。以下、注釈のないものは古生物データベースのFossilworksに基づく[注 2][2]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ バキュリテス科がハイファントセラスをはじめとするノストセラス科に起源を持つ可能性も同論文中に示されている。
  2. ^ ユーディプロモセラス(Eudiplomoceras)属は Kennedy and Summesberger(1987)でディプロモセラス属のジュニアシノニムとされている[8]ため省略した。

出典

[編集]
  1. ^ 白亜紀ディプロモセラス科アンモナイトの適応放散に関する進化古生物学的研究”. 科学研究費助成事業データベース (2016年4月21日). 2021年1月25日閲覧。
  2. ^ a b c d †family Diplomoceratidae Spath 1926 (ammonite)”. Fossilworks. マッコーリー大学. 2021年1月25日閲覧。
  3. ^ Spath L. F. 1926. A Monograph of the Ammonoidea of the Gault; Part VI. Palaeontographical Society London
  4. ^ 森伸一『北海道羽幌地域のアンモナイト』羽幌古生物研究会(編)(第2版)、北海道新聞社事業局出版センター、2012年、81頁。ISBN 978-4-86368-029-6 
  5. ^ a b c 白亜紀ディプロモセラス科アンモナイトの適応放散に関する進化古生物学的研究”. 科学研究費助成事業データベース (2016年4月21日). 2021年1月19日閲覧。
  6. ^ a b c 棚部一成; 小畠郁生; 二上政夫 (1981). “後期白亜紀異常巻アンモナイト類の初期殻形態”. 日本古生物学會報告・紀事 新編 (日本地質学会) 1981: 215-234. doi:10.14825/prpsj1951.1981.124_215. https://doi.org/10.14825/prpsj1951.1981.124_215. 閲覧は自由
  7. ^ 理工学研究科修了生 増川玄哉さんの論文が国際学術誌" Cretaceous Research"に掲載”. 茨城大学 (2018年10月4日). 2020年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月25日閲覧。
  8. ^ William James Kennedy; Herbert Summesberger (1987). “Lower Maastrichtian Ammonites from Nagoryany (Ukrainian. SSR)”. Beitr. Paläont. Österr volume=13: 32. https://www.zobodat.at/pdf/Beitr-Palaeontologie_13_0025-0078.pdf 2021年2月7日閲覧。.