「ブルース」の版間の差分
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歌詞は、身近な出来事、感情を表現したものが多い。日常の幸せなことや憂鬱なこと(blues)を12小節に乗せて歌う。[[アメリカ合衆国南部|アメリカ南部]]の黒人は楽器を手に入れることもたいへんだった。初期のブルースやジャズの音楽家は、白人の捨てた楽器を拾って演奏したという逸話も残っている。初期のブルースはアコースティック・ギターの弾き語りによるものが多かった。 |
歌詞は、身近な出来事、感情を表現したものが多い。日常の幸せなことや憂鬱なこと(blues)を12小節に乗せて歌う。[[アメリカ合衆国南部|アメリカ南部]]の黒人は楽器を手に入れることもたいへんだった。初期のブルースやジャズの音楽家は、白人の捨てた楽器を拾って演奏したという逸話も残っている。初期のブルースはアコースティック・ギターの弾き語りによるものが多かった。 |
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ブルースは基本、[[ブルー・ノート・スケール]]と呼ばれているスケール([[音階]])で演奏された。[[ブルー・ノート・スケール]]はメジャー・スケール([[長音階]])にブルー・ノートと呼ばれる短3度(移動ドレミの♭ミ)、短7度(移動ドレミの♭シ)を加えた[[音階]]である。当時の西洋学理上では短3度、短7度ともマイナー([[短調]])固有の音であり、通常はメジャー([[長調]])では使用されなかった。また、マイナー([[短調]])固有の音ではないが、短5度(移動ドレミの♭ソ)も準ブルー・ノートと呼ばれブルースでは多用されている。<ref>『初心者のためのブルース・ギターハンドブック |
ブルースは基本、[[ブルー・ノート・スケール]]と呼ばれているスケール([[音階]])で演奏された。[[ブルー・ノート・スケール]]はメジャー・スケール([[長音階]])にブルー・ノートと呼ばれる短3度(移動ドレミの♭ミ)、短7度(移動ドレミの♭シ)を加えた[[音階]]である。当時の西洋学理上では短3度、短7度ともマイナー([[短調]])固有の音であり、通常はメジャー([[長調]])では使用されなかった。また、マイナー([[短調]])固有の音ではないが、短5度(移動ドレミの♭ソ)も準ブルー・ノートと呼ばれブルースでは多用されている。<ref>『初心者のためのブルース・ギターハンドブック ISBN 4-401-14143-1/浦田泰宏著/シンコー・ミュージック』p.10,p.11</ref><ref>『ポピュラー・音楽理論 ISBN 978-4-8456-1148-5/北川裕編著/リットーミュージック』 p.194,p.195</ref><br>ブルースのシャッフルまたはウォーキング・[[ベース・ギター]]は、反復により[[グルーヴ]]を生み出す。ブルースの特徴であるシャッフルは、[[スウィング・ジャズ]]、ブギウギ、[[R&B]]、ソウル、ロックンロール、ロカビリーなどで使用された。また、[[ブラインド・ブレイク]]や[[ブラインド・ボーイ・フラー]]は、フィンガー・ピッキングの名手としても知られた<ref>{{cite web|url=http://jasobrecht.com/blind-boy-fuller-life-recording-sessions-welfare-records/|title=Blind Boy Fuller: His Life, Recording Sessions, and Welfare Records|website = Jas Obrecht Music Archive|publisher=Jasobrecht.com| access-date=02 January 2022}}</ref>。 |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
2022年9月28日 (水) 23:59時点における版
ブルース | |
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様式的起源 |
アフリカ系アメリカ人によるフォークミュージック 労働歌 スピリチュアル・ミュージック |
文化的起源 | 19世紀後半のアメリカ合衆国南部 |
使用楽器 | ギター、ピアノ、ハーモニカ、ベースギター、ドラム、サックス、ボーカル、トランペット、トロンボーン |
派生ジャンル | カントリー・ミュージック、ジャズ、R&B、ソウル・ミュージック、ロックンロール |
サブジャンル | |
ブギウギ、クラシック・フィメール・ブルース、カントリー・ブルース、デルタ・ブルース、エレクトリック・ブルース、ファイフ・アンド・ドラム・ブルース、ジャンプ・ブルース、ピアノ・ブルース | |
融合ジャンル | |
ブルースロック、ジャズ・ブルース、パンク・ブルース、ソウル・ブルース | |
地域的なスタイル | |
ブリティッシュ・ブルース、カナディアン・ブルース、シカゴ・ブルース、デトロイト・ブルース、イーストコースト・ブルース、カンザスシティー・ブルース、ルイジアナ・ブルース、メンフィス・ブルース、ニューオーリンズ・ブルース、ピードモント・ブルース、セントルイス・ブルース、スワンプ・ブルース、テキサス・ブルース、ウェストコースト・ブルース | |
関連項目 | |
音楽家一覧、音階、ジャグ・バンド、起源 |
ブルース(Blues、英語発音・[blú:z][1][注釈 1])は、米国深南部でアフリカ系アメリカ人の間から発生した音楽の1ジャンルである。19世紀後半ごろに米国深南部で黒人霊歌、フィールドハラー (農作業の際の叫び声)や、ワーク・ソング(労働歌)などから発展したものといわれている。ジャズが楽器による演奏が主体なのに対して、ギターを伴奏に用いた歌が主役である[2]。アコースティック・ギターの弾き語りを基本としたデルタ・ブルース[3]、カントリー・ブルース[4]、エレクトリック・ギターを使用したバンド形式に発展したシカゴ・ブルース[5]など多様に展開している。
概要
悲しみ・憂鬱の感情は英語では「ブルー(blue)」の色でたとえられることに由来している。[6]ブルースは悲しみ・憂鬱の他に「恋の喜び、セクシャルな内容、時事問題、白人社会や人種差別への反発」など、喜怒哀楽、あらゆる感情を表現している。ジョン・リー・フッカーは「ブルース・メイクス・ミー・ハッピー」と語っていた。後にラップが「黒人のCNN」と呼ばれたことを、先取りした音楽との見方もできる。20世紀以降のポピュラー音楽に幅広く影響を与え、ジャズやロックンロールのルーツのひとつとしても知られている。1900年代にも白人がブルースを楽譜化した例があり、また1912年のフィドル奏者ハート・ワンドによる「ダラス・ブルース」は、ブルースをコピーした楽譜が著作権保護された初期の例とされている[7][8]。
ブルースは自由な音楽表現だが、ルールも多い。ブルースの基本的な構成として、12小節形式(ブルース形式)で綴られる場合が多い。12小節形式の基本はA・A・Bの形式をとる。つまり、4小節の同じ歌詞を2度繰り返し、最後の4小節で締めの歌詞を歌う。これがワンコーラスとなる。 ブルース形式(12小節形式)のコード進行
I | I または IV | I | I |
IV | IV | I | I |
V | IV または V | I | I または V |
これらのローマ数字は、コード度数を表している。これが例えばキーがC(ハ長調)だとすると以下の通りとなる。
C | C または F | C | C |
F | F | C | C |
G | F または G | C | C または G |
歌詞は、身近な出来事、感情を表現したものが多い。日常の幸せなことや憂鬱なこと(blues)を12小節に乗せて歌う。アメリカ南部の黒人は楽器を手に入れることもたいへんだった。初期のブルースやジャズの音楽家は、白人の捨てた楽器を拾って演奏したという逸話も残っている。初期のブルースはアコースティック・ギターの弾き語りによるものが多かった。
ブルースは基本、ブルー・ノート・スケールと呼ばれているスケール(音階)で演奏された。ブルー・ノート・スケールはメジャー・スケール(長音階)にブルー・ノートと呼ばれる短3度(移動ドレミの♭ミ)、短7度(移動ドレミの♭シ)を加えた音階である。当時の西洋学理上では短3度、短7度ともマイナー(短調)固有の音であり、通常はメジャー(長調)では使用されなかった。また、マイナー(短調)固有の音ではないが、短5度(移動ドレミの♭ソ)も準ブルー・ノートと呼ばれブルースでは多用されている。[9][10]
ブルースのシャッフルまたはウォーキング・ベース・ギターは、反復によりグルーヴを生み出す。ブルースの特徴であるシャッフルは、スウィング・ジャズ、ブギウギ、R&B、ソウル、ロックンロール、ロカビリーなどで使用された。また、ブラインド・ブレイクやブラインド・ボーイ・フラーは、フィンガー・ピッキングの名手としても知られた[11]。
歴史
19世紀後半ごろに米国深南部で黒人霊歌、フィールドハラー(労働歌)などから発展したものと言われている[12]。
1903年、ミシシッピ州のデルタ地帯を旅行中だった黒人中産階級のW・C・ハンディが、同州タトワイラーで黒人によるブルースの生演奏に遭遇した。この後、彼は楽曲を楽譜にして発表し、ブルースは世間に知られることになった。だが、ハンディはブルースを楽譜におこしただけであり、ブルースの父とすることには批判が多い。この年をブルースの生誕の年とする見方もあり、2003年はブルース生誕100年を記念してアメリカ合衆国議会により、「ブルースの年」と宣言された[13]。
1920年、メイミー・スミスがオーケー・レーベルに初レコーディング。これがブルースのレコーディングとしては初と言われている。彼女の"Crazy Blues"は、初年度75,000枚を売り上げるヒットを記録した[14]。また現在、知名度の高い戦前のブルース・シンガーはロバート・ジョンソン[15]だが、当時はチャーリー・パットンの方が、黒人の間での人気が高かった。
戦前のアメリカにおいて、ブルースは米国深南部からセントルイス、シカゴ、ニューヨークなどへ北上し、各地でスタイルを変えながら発展した。元々ギターの弾き語り中心であったが、都市部に展開するにつれ、ピアノとギターのデュオ形式、バンド形式など、より都会的な洗練された形式へと変わって行った。都市部で展開されたブルースのスタイルをシティ・ブルースという。代表的なミュージシャンは、リロイ・カーなど。しかし都会にあこがれる反面、故郷への想いが強く詩に影響を与えている歌が多い。[14]
シカゴでは、1950年ごろからエレクトリックのバンドによるブルースが登場した。デルタ・ブルースを基調とした泥臭いサウンドで、戦前のシティ・ブルースとは一線を画すものであった。このサウンドはシカゴ・ブルースと呼ばれるようになった。その代表格となるのが、マディ・ウォーターズである。ロックンロールの巨匠、チャック・ベリーもこの頃のブルースに大きく影響を受け、後のロックバンドにも受け継がれているといえる。[16]
1950年代前半にはメンフィスからデビューしていたB.B.キングがモダン・ブルースを確立。 モダンブルースは、よりダウンホームなデルタ・ブルース~シカゴ・ブルースより、テキサス・ブルース及びジャンプ・ブルース等に影響された管楽器を含む洗練されたバンド・サウンドを基調とし、エレキ・ギターによるダイナミックなチョーキングを核にしたスクイーズ・ギターとゴスペルの唱法を持ち込んだ歌を特徴とする[17]。 B.B.が切り開いたモダン・ブルースの影響はシカゴにも及び、当時のシカゴの若手ブルースマン達にも影響を与えた。 このモダン・ブルースに影響を受けたシカゴの若手ブルース・マン達(オーティス・ラッシュ・マジック・サム、バディ・ガイ等)の音楽をモダン・シカゴ・ブルースと呼ぶ。[18]
1960年代には、イギリスにアメリカから多くのブルースのレコードが輸入され、同国でブルース・ロックのブームが起きた。その流れの中で、ローリング・ストーンズ、フリートウッド・マック、クリーム、アニマルズなど、ブルースに影響を受けたバンドが多く登場し、ブルース・ロックが隆盛となった[19]。
代表的なブルース・アーティスト
戦前ブルース(デルタ、カントリー・ブルース)
シカゴ・ブルース
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スワンプ・ブルーステキサス・ブルースファンク・ブルース1980年代以後のアーティストジャンプ・ブルースジャズ・ブルースその他
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日本のブルース・シーン
日本では、1960年代後半から1970年代前半にブルース・ブームが起こったとされる。1971年、B.B.キングが初来日を果たす。1973年にスリーピー・ジョン・エスティスの「スリーピー・ジョン・エスティスの伝説(The Legend of Sleepy John Estes)」がオリコン・チャートに食い込むヒットとなった。
1974年、「第1回ブルース・フェスティバル」開催。同フェスティバルは第3回まで開催され、エスティスを始めロバート・ロックウッド・ジュニア&エイセズ、オーティス・ラッシュらの来日が実現した。京都、大阪を中心にウエスト・ロード・ブルース・バンド、憂歌団、ブレイクダウンなど、ブルース・バンドが登場。日本の独自のブルース・シーンが形成されて行く。 また、楽譜がブルース形式でなくとも、タイトルに「〜ブルース」と付く曲も多く存在する。日本の歌謡曲の中にも、「雨のブルース」「昭和ブルース」[注釈 2]など”ブルース”とタイトルがつく曲も多いが、メロディーやアレンジはアメリカの黒人由来のブルースとは異なる。
日本のブルース・ミュージシャン
ブルース関連書籍
ブルース関連映画
- ワッツタックス/スタックス・コンサート - Wattstax(1973年)/メル・スチュアート監督(ソウルが中心)
- Leadbelly(1976年)/ゴードン・パークス監督(レッドベリーの伝記映画)
- ブルース・ブラザース - The Blues Brothers(1980年)/ジョン・ランディス監督
- クロスロード - Crossroad(1986年)/ウォルター・ヒル監督、ラルフ・マッチオ主演
- モ'・ベター・ブルース - Mo' Better Blues(1990年)/スパイク・リー監督、デンゼル・ワシントン主演
- ディープ・ブルース - Deep Blues(1991年)/ロバート・マッジ監督
- ブルースランド〜ブルースの誕生〜 - Bluesland: A Portrait In American Music(1993年)/ケン・マンデル監督
- ブルース・ブラザース2000 - Blues Brothers 2000(1998年)/ジョン・ランディス監督
- ブルース・ムービー・プロジェクト(マーティン・スコセッシ製作総指揮)(2003年)
- フィール・ライク・ゴーイング・ホーム - Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督
- ソウル・オブ・マン - The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督
- ロード・トゥ・メンフィス - The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督
- デビルズ・ファイアー - Warming By The Devil's Fire/チャールズ・バーネット監督
- ゴッドファーザー&サン - The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督
- レッド、ホワイト&ブルース - Red, White & Blues/マイク・フィギス監督
- ピアノ・ブルース - Piano Blues/クリント・イーストウッド監督
- ライトニング・イン・ア・ボトル - Lightning In A Bottle(2004年)/アントワーン・フークア監督
- Ray/レイ - Ray(2004年)/テイラー・ハックフォード監督、ジェイミー・フォックス主演
- ブルース・イン・ニューヨーク - Lackawanna Blues(2005年)
- オー・ブラザー! - O Brother, Where Art Thou?(2000年)/ジョエル・コーエン監督、ジョージ・クルーニー主演
脚注
注釈
出典
- ^ ニュースクール英和辞典 p.124。研究社
- ^ https://allabout.co.jp/gm/gc/455201/all/
- ^ https://www.allmusic.com/style/delta-blues-ma0000002549
- ^ https://www.allmusic.com/subgenre/country-blues-ma0000002533
- ^ https://www.allmusic.com/style/chicago-blues-ma0000002504
- ^ ベルガミーニ(2000)p.55
- ^ Davis, Francis (1995). The History of the Blues. New York: Hyperion.
- ^ Partridge, Eric (2002). A Dictionary of Slang and Unconventional English. Routledge. ISBN 978-0-415-29189-7.
- ^ 『初心者のためのブルース・ギターハンドブック ISBN 4-401-14143-1/浦田泰宏著/シンコー・ミュージック』p.10,p.11
- ^ 『ポピュラー・音楽理論 ISBN 978-4-8456-1148-5/北川裕編著/リットーミュージック』 p.194,p.195
- ^ “Blind Boy Fuller: His Life, Recording Sessions, and Welfare Records”. Jas Obrecht Music Archive. Jasobrecht.com. 02 January 2022閲覧。
- ^ 『男の隠れ家』 2011年1月号 ロック&ポップスのルーツ、黒人音楽を知りたい pp.24, 47
- ^ 『男の隠れ家』 2011年1月号 ロック&ポップスのルーツ、黒人音楽を知りたい pp.46, 47
- ^ a b 『男の隠れ家』 2011年1月号 ロック&ポップスのルーツ、黒人音楽を知りたい p.48
- ^ https://www.discogs.com/artist/272142-Robert-Johnson
- ^ 『男の隠れ家』 2011年1月号 ロック&ポップスのルーツ、黒人音楽を知りたい pp.48, 49, 54
- ^ 『ブルース&ソウル・レコーズ No.34 /ブルース・インターアクションズ』 p.24
- ^ 『BLUES GUITAR BOOK /シンコー・ミュージック』 p.59
- ^ 『男の隠れ家』 2011年1月号 ロック&ポップスのルーツ、黒人音楽を知りたい pp.78, 79
- ^ 「ブラック・ミュージック」ピーター・バラカン選、p.178、学習研究社
- ^ バラカン、p.169
- ^ 「ブラック・ミュージック」ピーター・バラカン選、p.161。学研
- ^ Koda, Cub. “Slim Harpo – Biography”. AllMusic. 2021年12月8日閲覧。
ビブリオグラフィ
- 『男の隠れ家』 2011年1月号 ロック&ポップスを産んだ黒人音楽の世界 GOSPEL BLUES SOUL JAZZ 朝日新聞出版 (株)グローバルプラネット pp.46-57:妹尾みえ, 78-79, 18-19, 20-23:ピーター・バラカン, 24-27:鈴木啓志, 58-63:大森一輝, 40-45:原田和典
関連項目
外部リンク
- 『ブルース(ポピュラー音楽)』 - コトバンク