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{{redirect|サマータイム}} |
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{{Expand English|Daylight saving time|fa=yes|date=2020年12月}} |
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[[File:DST Countries Map.png|upright=1.5|thumb |
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[[ファイル:DaylightSaving-World-Subdivisions.png|right|350px|thumb| |
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|alt=世界地図。欧州、北米の大部分、南米南部の一部、オーストラリアの南東部など、いくつかの地域で夏時間が採用されている。赤道直下のアフリカの大部分と赤道付近のいくつかの地域では、季節の移り変わりに日光の急激な変化がないので、これまで夏時間が採用されたことはない。これら以外の地域では、かつて夏時間を採用したことがある。|夏時間の採用地域 |
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{{Legend|#1e90ff|夏時間を実施している国・地域}} |
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{{legend|#1a80e6|[[北半球]]の夏期に実施している地域}} |
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{{legend|#ee690a|[[南半球]]の夏期に実施している地域}} |
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{{legend|#c6c6c6|かつて夏時間を採用していた地域}} |
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{{legend|#7f7f7f|夏時間を採用したことがない地域}}]] |
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'''夏時間'''(なつじかん、{{Lang-en-gb-short|summer time}}、{{Lang-en-us-short|daylight saving time(DST)}})、直訳:'''日光節約時間'''(にっこうせつやくじかん)。[[カナダ]]、[[オーストラリア]]でも用いる)とは、1[[年]]のうち[[夏]]を中心とする時期に[[太陽]]が出ている時間帯を有効に利用する目的で、'''[[標準時]]を1時間進める'''[[制度]]またはその進められた[[時刻]]のこと。ただし、[[オーストラリア]]の[[ロード・ハウ島]]では夏時間と通常の時間の差が30分であるなど一律ではない。 |
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'''夏時間'''{{efn2|'''夏時刻'''(なつじこく)とも呼称する<ref>{{Cite web|和書|title=暦Wiki/時刻/夏時刻 - 国立天文台暦計算室|url=https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BBFEB9EF2FB2C6BBFEB9EF.html|website=eco.mtk.nao.ac.jp|accessdate=2022-08-13}}</ref>。日本において[[1948年]]から4か年実施されたが、その根拠となる法律名称が「[[夏時刻法]]」(昭和23年法律第29号)であった。}}(なつじかん、{{lang-en-gb-short|summer time}}{{efn2|英国や欧州連合などでの呼称。}}、'''サマータイム'''<ref name="NICT報告"/>{{efn2|かつては'''サンマータイム'''とも表記した<ref>{{Cite web|和書|title=サンマータイムに関する世論調査|url=https://survey.gov-online.go.jp/s26/S26-09-26-13.html|publisher=内閣府|accessdate=2022-08-15}}</ref>。}})または'''日光節約時間'''<ref name="日光節約時間の件"/>(にっこうせつやくじかん、{{lang-en-us-short|daylight saving time (DST) }}{{efn2|アメリカ合衆国、カナダおよびオーストラリアなどでの呼称<ref name="NICT報告"/>。}})とは、1年のうち[[昼|日中]]の時間が長くなる[[夏]]を中心とする時期に、日中の明るい時間を有効利用するため、[[時計]]を通常よりも進めることで、日が暮れる時刻を遅らせる[[時間]]制度、またはその[[時刻]]のこと<ref name="NICT報告"/><ref name="イミダス"/>。典型的な実施例では、春に時計を1[[時間 (単位)|時間]]進めて{{efn2|これをスプリング・フォワード (spring forward) という<ref name="暦生活"/>。}}サマータイムに移行し、秋に1時間戻して{{efn2|これをフォール・バック (fall back) という<ref name="暦生活"/>。}}[[標準時]]に復帰する<ref name="暦生活"/>。その結果、春頃に1日23時間の日があり、秋頃に1日25時間の日があることになる<ref name="Harvard Health Blog"/>。 |
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[[蝋燭|ロウソク]]を節約するために起床時間を太陽が出ている時間に合わせるというアイデアは、1784年にアメリカの博学者[[ベンジャミン・フランクリン]]が初めて提唱したとされる<ref name="暦生活"/><ref name="The Franklin Institute"/>。フランクリンは、フランスの日刊紙『ジュルナル・ド・パリ』の編集者に宛てた風刺的な寄稿文の中で<ref name="時事20181226"/>、夏は早く起きることでロウソクの使用量を節約できると提案し、かなりの節約になると計算している<ref name="Franklin's essay"/>。1895年、ニュージーランドの昆虫学者で天文学者の{{仮リンク|ジョージ・ハドソン (昆虫学者)|en|George Hudson (entomologist)|label=ジョージ・ハドソン}}が、毎年春に2時間だけ時計を変更するというアイデアを[[ウェリントン哲学協会]]に提案した<ref name="DNZB-Hudson"/>。1907年、イギリスの建築業者[[ウィリアム・ウィレット]]が早朝の時間を有効に使うための方法として同様のアイデアを提案したが、実施には至らなかった<ref name="Ogle"/>。 |
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現在の主な実施[[国家]]・[[地域]]では実施期間が7〜8か月間のため、1年の中で通常時間より夏時間の期間のほうが長くなる。 |
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1908年、カナダのオンタリオ州{{仮リンク|ポート・アーサー (オンタリオ州)|en|Port Arthur, Ontario|label=ポート・アーサー}}において、世界で初めてサマータイムが導入された<ref name="Northern Ontario Travel"/>。初めて全国規模で実施したのは[[ドイツ帝国]]と[[オーストリア=ハンガリー帝国]]で、第一次世界大戦時に[[石炭]]の消費量を減らすため、1916年4月30日に開始した。それ以来、[[各国における夏時間|多くの国]]でサマータイムが幾度も実施されており、特に1970年代の[[オイルショック|石油危機]]以後に普及した。赤道付近では、日の出と日の入の時刻が時間を調整するほど大きく変動することはないので、一般的にサマータイムの習慣はない。また、オーストラリアのように一部の地域でのみサマータイムを実施している国もある。逆に、高緯度地域では、日の出と日の入の時刻の差が大きく、時計を1時間ずらしてもあまり変わらないため、実施されない地域もある。アメリカ合衆国では、ハワイ州とアリゾナ州を除き{{efn2|ただし、アリゾナ州内では[[ナバホ・ネイション]]が、連邦政府の慣例に従い、サマータイムを実施している。}}、サマータイムが実施されている。世界の人口に占める割合から見れば、サマータイムを採用している国・地域は少数派であり、アジアとアフリカの国々では一般的にサマータイムを採用していない。 |
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一般に、昼間の明るいうちに[[労働|仕事]]をし、夜の[[余暇]]時間を長く持つことができる。 |
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[[オーストラリア]]の[[ロード・ハウ島]]では夏時間と通常の時刻の差が30分であるなど一律ではない。 |
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現在の主な実施[[国家]]・[[地域]]では実施期間が7〜8か月間のため、1年の中で標準時より夏時刻の期間のほうが長くなる。 |
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[[緯度]]が高く夏の[[日照時間]]が長い[[欧米]]諸国などで多く導入されている。しかし、[[スイス]]や[[欧州連合]](EU)では、[[省エネルギー]]の効果が乏しく、[[健康]]に悪影響があるという理由で、市民の8割が廃止を望んでおり、EUでは廃止の検討が進んでいる<ref>[https://mainichi.jp/articles/20180830/k00/00m/030/117000c サマータイム EU市民8割超が廃止望む 政策変更検討も] - [[毎日新聞]]</ref><ref>[https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/8276.html サマータイム廃止目指す 「市民望むこと」EU委員長] - [[日本放送協会|NHK]]</ref>。<!--一方通年で夏時間を適用する(標準時そのものを改定する)国も出ている。--> |
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一般に、昼間の明るいうちに[[労働|仕事]]をし、夜の[[余暇]]時間を長く持つことができるといわれてきた[要出典]。 |
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[[緯度]]が高く夏の[[日照時間]]が長い[[欧米]]諸国などで多く導入されている。 |
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== 根本原理 == |
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[[File:Clepsydra-Diagram-Fancy.jpeg|thumb|upright|alt=水時計。時間ごとに目盛りが記されたシリンダーに小さな人形が針を当てて時刻を指し示している。シリンダーは水で動く水車と歯車でつながっており、浮いているその水車も人形を支える部品となっている。| |
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古代の[[水時計]]は季節によって1時間の長さを変化させた。]] |
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[[産業社会|工業化された社会]]では、通常、1年を通して変化することのない時計に基づいたスケジュールに従って日々の活動が営まれている。たとえば、通勤・通学の時間帯や[[公共交通機関]]の運行ダイヤの調整は、普通、年間を通じて一定である。一方、[[農耕社会]]では、仕事や身の回りのことにかかわる日課は、[[昼]]の時間の長さと[[太陽時]]に左右されやすく<ref name="RoSPA"/>、これらは[[地軸#地軸の傾き|地球の軸の傾き]]によって[[季節]]ごとに変化する。[[回帰線]]の南北では、昼の時間が夏は長く、[[冬]]は短くなり、[[赤道]]から離れるほどその影響は大きくなる。 |
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ある地域のすべての時計を同期的に標準時の1時間先に調整すると、時計に基づいたスケジュールに従っている人は、そうでない場合よりも1時間早く目覚める。いやむしろ、まだ暗い早朝に1時間分、早起きすることになる。そして、1時間早く日常業務を始めて終わらせ、就業時間後に1時間余分に日中の時間を利用できるようになる<ref name="Hudson_1895_p734"/>{{sfnp|''Seize the Daylight''|2005|pp=115–118}}。冬の間は、始業時間帯に利用できる日中の時間が1時間少なくなるため、この施策はあまり実用的でない。 |
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サマータイムの推進派は、大多数の人が典型的な「9時から17時まで」の勤務時間の後、日中の時間が長く使えることを好んでいると主張している。また、サマータイムは照明や暖房の需要を減らすことでエネルギー消費を節減するとも主張しているが、エネルギー使用量全体に対する実際の効果については、大いに議論されているところである。 |
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見かけ上の時刻のずれは、実用性によって動機づけられたものでもある。たとえば、アメリカの温帯地域では、夏至の日の出が4時30分頃、日の入が19時30分頃である。多くの人は4時30分には眠っているので、4時30分を5時30分に見せかけて、日の出の時刻に起き、夕方の光を浴びて活動できるようにするのが、より実用的と考えられる。 |
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高緯度地域([[アイスランド]]、[[ヌナブト準州|ヌナブト]]、[[スカンディナヴィア]]、[[アラスカ州|アラスカ]]など)では、低緯度地域に比べて季節による昼夜の長さの変化が激しいため、時間を操作しても日常生活にはほとんど影響を与えない<ref>{{Cite news|title=Bill would do away with daylight savings time in Alaska|url=http://peninsulaclarion.com/stories/031702/leg_031702ala0060001.shtml|accessdate=January 5, 2013|newspaper=Peninsula Clarion|date=March 17, 2002|quote="Because of our high latitudinal location, the extremities in times for sunrise and sunset are more exaggerated for Alaska than anywhere else in the country," Lancaster said. "This makes Alaska less affected by savings from daylight-saving time."|url-status=dead|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131102172846/http://peninsulaclarion.com/stories/031702/leg_031702ala0060001.shtml|archivedate=November 2, 2013}}</ref>。日の出・日の入時刻は、時計の操作にかかわらず、標準的な労働時間帯とは大きくずれてしまう。 |
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赤道付近は1年のうちで昼の時間の変化が小さいため、高緯度地域と同様にサマータイムはほとんど役に立たない<ref name="ThoughtCo"/>。また、サマータイムの効果は、[[時間帯 (標準時)|等時帯]]内でどれくらい東寄りまたは西寄りの場所にいるかによっても異なり、同じ等時帯でも東に位置する場所の方が、西に位置する場所よりもサマータイムによる恩恵が大きい<ref name="washingtonpost_20160311"/>。[[中華人民共和国|中国]]のように東西の幅が何千キロもあるにもかかわらず、政府の命令で国土の全域が一つの等時帯内に収まっている国でも、サマータイムはあまり実用的でない。 |
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== 歴史 == |
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<!-- このセクションでは全世界的なサマータイムの通史を記述します。国・地域ごとの夏時間の歴史については、[[各国における夏時間]]に記述してください。 --> |
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{{See also|各国における夏時間#各国の夏時間の歴史}} |
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[[File:George-Vernon-Hudson-RSNZ.jpeg|thumb|upright|right|alt=口ひげを生やした40歳の男性の頭から肩までを写した、ぼやけた肖像写真。|近代的なサマータイムを発案し、1895年に初めて提唱した[[ジョージ・ハドソン (昆虫学者)|ジョージ・ハドソン]]]] |
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古代文明では、昼の長さに関係なく太陽が出ている時間を12分割した時間単位に分け、春には昼間が徐々に長くなるように、秋には昼間が徐々に短くなるようにし、今日のサマータイム制よりも柔軟に太陽に合わせて一日のスケジュールを調整していた<ref name="Ancient Rome"/>。たとえば、古代ローマ人は月ごとに目盛りの異なる[[水時計]]で時を計っていた。ローマが位置する緯度では、日の出から数えて3番目の刻{{enlink|Terce|''hora tertia''}}は、冬[[至点]]では[[太陽時]]の9時2分からの44分間とされるが、夏至点では太陽時の6時58分からの75分間とされる<ref name="Life in Rome"/>。14世紀以降、時間の間隔が等しい市民時([[定時法]])が、間隔の等しくない従来の市民時([[不定時法]])に取って代わり、[[常用時|市民時]]において時間が季節によって変化することはなくなった。他方で、不定時法は江戸時代の日本でも使用されていた<ref name="SEIKO"/><ref name="学研"/>ほか、少数ではあるが、[[アトス山]]にある修道院や<ref name="Kaplan"/>、ユダヤ教の儀式など<ref name="Tzel"/>、一部の伝統的な場では今なお用いられている。 |
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[[ベンジャミン・フランクリン]]は「早寝早起きすれば、健康に裕福にそして賢くなれる」という格言を書物に残しており<ref name="格言"/>、アメリカ合衆国全権公使としてフランスに派遣された時期(1776-1785)には、日刊『{{仮リンク|ジュルナル・ド・パリ|en|Journal de Paris}}』紙上で発表した匿名の投書の中で、早起きして朝の日光を利用し、ロウソクを節約するよう、風刺的にパリ市民に提案している<ref name="投書"/>。1784年発表のこの風刺文では、窓の鎧戸に課税し、ロウソクを配給制とし、日の出の時刻に合わせて教会の鐘を鳴らしたり号砲を撃ったりして、市民を目覚めさせることを提案している<ref name="投書"/>。よく誤解されているのだが、フランクリンは実際にサマータイムを提唱したわけではなく、18世紀のヨーロッパの人々は正確なスケジュールを守ってさえもいなかった。しかし、鉄道輸送や通信網の発達により、フランクリンの時代にはなかった時刻の標準化が求められるようになり、その流れは変わっていった<ref name="standardization_of_time"/>。 |
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1810年、スペイン国民議会{{仮リンク|コルテス・デ・カディス|en|Cortes of Cádiz}}は、時間の季節的な変化を考慮して、5月1日から9月30日までの間、特定の会議の開会時間を1時間早めるという規則を発表した<ref name="reglamento_cortes_1810"/>が、実際には時計は変更されなかった<ref name="El_Mundo_20180903"/>。また、民間事業者が日光の条件に合わせて営業時間を変更する慣行があることも認めた<ref name="reglamento_cortes_1810"/>が、それは事業者が自らの意思で行なったことである。 |
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[[File:Saving Daylight - Save 1,000,000 tons of coal NMAH-AC0433-0000103.jpg|thumb|upright|right|alt=日光の節約を!時計を1時間進め、戦争に勝利しよう!日光を1時間多く利用して、100万トンの石炭を節約しよう!|第一次世界大戦中の1918年にアメリカで夏時間を促進するために作成されたポスター({{仮リンク|ユナイテッド・シガー・ストアーズ|en|United Cigar Stores|label=ユナイテッド・シガー・ストアーズ社}}作成)]] |
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近代的なサマータイムを初めて提唱したのは、ニュージーランドの昆虫学者{{仮リンク|ジョージ・ハドソン (昆虫学者)|en|George Hudson (entomologist)|label=ジョージ・ハドソン}}である。シフト勤務の仕事をしていたハドソンは、余暇を昆虫採集に費やしていたこともあり、勤務時間外の昼の時間に価値を見出すようになった<ref name="DNZB-Hudson"/>。1895年、ハドソンは[[ニュージーランド王立協会|ウェリントン哲学協会]]に1本の論文を提出した<ref name="DNZB-Hudson"/><ref name="Hudson_1895_p734"/>。その内容は、日光を2時間節約するシフトを提案するもので、[[クライストチャーチ]]では大きな反響があり、ハドソンは1898年にも論文を発表してこれに応えている<ref name="Hudson_paper"/>。一方、イギリスの建築業者でアウトドア好きだった[[ウィリアム・ウィレット]]は<ref name="NZ_time"/>、朝食前の乗馬中にロンドンの人々が夏の一日の大半を眠って過ごしているのを見て、1905年に独自にサマータイムを発案したといわれている<ref name="Willett100"/>。ウィレットは熱心なゴルファーでもあり、夕暮れで自分のラウンドが打ち切りになるのを嫌っていた{{sfnp|''Seize the Daylight''|2005|p=3}}。彼が出した解決策は、夏の間だけ時計を進めるというもので、この提案は2年後に発表された<ref name="Willett"/>。自由党所属の{{仮リンク|ロバート・ピアース (政治家)|en|Robert Pearce (politician)|label=ロバート・ピアース}}議員は英国議会でこの提案を取り上げ、1908年2月12日に最初の日光節約法案 (Daylight Saving Bill) を議会下院に提出した<ref name="1908 first bill"/>。この問題を調査するための特別委員会が設置されたものの、ピアースの提出した法案は成立せず、その後に幾度か提出された他の法案も成立を見ることなく廃案となった<ref name="Ogle"/>。ウィレットは1915年に亡くなるまで、この提案について国内でロビー活動を続けた。 |
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世界で最初にサマータイムが制定された都市は、カナダのオンタリオ州{{仮リンク|ポート・アーサー (オンタリオ州)|en|Port Arthur, Ontario|label=ポート・アーサー}}(現在の[[サンダーベイ (オンタリオ州)|サンダーベイ]])で、1908年7月1日のことだった<ref name="Northern Ontario Travel"/><ref name="Daylight Saving Time"/>。これに続いて、同州[[オリリア]]が市長ウィリアム・ソード・フロストの市政期 (1911–1912) にサマータイムを導入した<ref name="Orillia"/>。初めて全国規模でサマータイムを採用した国は[[第一次世界大戦]]中の[[ドイツ帝国]]({{lang-de|Sommerzeit}} ''ゾマーツァイト'')とその同盟国[[オーストリア=ハンガリー帝国]]で、戦時中に石炭を節約するために1916年4月30日に開始された。イギリスとその[[連合国 (第一次世界大戦)|同盟国]]のほとんど、およびヨーロッパの多くの中立国も、すぐさまこれに追随した。ロシアと他の数か国は翌年まで待機し、アメリカ合衆国は1918年にサマータイムを採用した。1918年の終戦後、カナダ、イギリス、フランス、アイルランド、アメリカ合衆国などの例外を除き、ほとんどの国ではサマータイムが廃止された<ref name="League of Nations"/><ref name="WSJ_WWI100"/>。その後、[[第二次世界大戦]]中に再び採用されて一般化(中にはイギリスのように二重のサマータイム{{efn2|夏期は時計を標準時より2時間先まで進め、冬期は標準時より1時間先まで進めるという方法だった<ref name="WSJ_WWI100"/>。}}を採用した国もあった)し、1970年代に起きた[[オイルショック|石油危機]]以後、アメリカやヨーロッパで広く採用されるようになった。それ以来、世界各地でサマータイムの制定、調整および撤廃の動きが見られる{{sfnp|''Seize the Daylight''|2005|pp=51–89}}。 |
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アメリカ合衆国では、第一次世界大戦中に7か月間の戦時措置として、エネルギー資源を節約するために日光を利用可能な時間を増やす目的で、1918年に[[標準時法 (アメリカ合衆国)|標準時法]]{{enlink|Standard Time Act}}が制定され、初めてサマータイムが実施された<ref name="NPR"/><ref name="TIME magazine"/>。第二次世界大戦中の1942年には<ref name="WSJ_WWI100"/>、一年中サマータイムとする "[[:en:War Time|War Time]]" が実施された<ref name="NPR"/>。戦後、サマータイムを標準化する[[統一時間法]]{{enlink|Uniform Time Act}}が1966年に制定されるまでは、各州や地方にサマータイムの実施の可否や実施期間を自由に選択できる権限が与えられており<ref name="NPR" />、混乱を引き起こす元となっていた<ref name="WSJ_WWI100"/>。1973年から74年の冬のシーズンに恒久的なサマータイムが制定されたが<ref name="WSJ_WWI100"/>、冬の間、暗い中を通学する子どもたちや、真っ暗な中を通勤・始業する労働者から苦情があり、1年後に廃止となった。 |
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== 実施手順 == |
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{{See also|各国における夏時間}} |
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{{multiple image|align=left|direction=vertical|width=165|image1=Begin CEST.svg|alt1=02:00から03:00への移行を示す時計の図解|caption1=夏時間を開始する際には、朝かなり早いうちに時計が1時間(まるで1時間飛ばすかのように)進められる。|image2=End CEST.svg|alt2=03:00から02:00への移行を示す時計の図解|caption2=夏時間を終了して標準時に復帰する際には、朝かなり早いうちに時計が1時間(まるで1時間繰り返すかのように)戻される。時刻の変更を実施する指定時刻は地域により異なる。}} |
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通例、関係当局は平日のスケジュールに混乱を来すことがないよう、週末の[[真夜中]](あるいは、真夜中過ぎ)に時計の時刻を変更する予定を立てる。1時間の変更が慣例となっているが、過去には20分や2時間の変更が実施されたこともある{{efn2|オーストラリアの[[ロード・ハウ島]]では2023年現在も30分の変更が実施されている。}}。季節に応じてサマータイムを実施する(つまり、夏に実施して冬に実施しない)すべての国では、春に時計が標準時からサマータイムに進められ、秋に時計がサマータイムから標準時に戻される。そのため、春に時計に変更を加える日は一日の長さ(常用時)が短くなり、秋に時計に変更を加える日は一日の長さが長くなる。春の深夜0時に行われる変更では、現地時間のデジタル時計表示は23:59:59.9から01:00:00.0に飛ぶかのように見える。同様に、秋に行われる変更では、現地時間は23:59:59.9から23:00:00.0に飛び、深夜0時前の1時間を繰り返すかのように見える。 |
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季節に応じたサマータイムを実施しているほとんどの国では、冬期の時刻は、各地域の中央付近の[[地方平均時]]に一致する標準化されたタイムゾーンの時刻に従って<ref name="Sky&Telescope"/>、法的に「標準時」の名称が付けられている<ref name="Worldwide List"/>。ただし、アイルランドでは例外的に、冬期の時刻はオフセット ([[UTC+0|UTC±00:00]]) と法的な名称([[グリニッジ標準時]])がいずれもイギリスと同じであるが、夏期の時刻はイギリスと同じオフセット ([[UTC+1|UTC+1:00]]) でありながら、[[英国夏時間|イギリス夏時間]]とは対照的に<ref name="TZinUK"/>、法的な名称は「アイルランド標準時」である<ref name="IrishSTA1971"/><ref name="TZinIreland"/>。 |
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サマータイムのために時計を切り替えるほとんどの国では、冬期には標準時、夏期にはサマータイムを実施しているが、[[モロッコ時間|モロッコ]]では(2019年以来){{仮リンク|ラマダーン (暦月)|en|Ramadan (calendar month)|label=ラマダーン月}}以外、毎月サマータイムを実施している。聖なる月であるラマダーン月(当月の日付は[[太陰暦]]によって決められるため、[[グレゴリオ暦]]との対応では年によって日付が変動する)の間は、モロッコ市民の時計は[[西ヨーロッパ時間]](UTC+00:00、地理的に同国の大部分が重なる)に合わせられる。この月の晦日になると、同市民の時計は[[西ヨーロッパ夏時間]] (UTC+01:00) に進められ、翌年の聖なる月を迎えるまでサマータイムを継続する<ref name="MWN190416"/><ref name="sgg.gov 2018"/><ref name="TZinMorocco"/>。 |
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時計の切り替えを行う時刻は、地域により異なっている。[[欧州連合]]では加盟国間で時計の切り替えを行う時刻に関する協定が取り決められており、すべてのタイムゾーン地域で同じ瞬間、[[協定世界時]] (UTC) の01:00(すなわち、[[中央ヨーロッパ時間]] (CET) の02:00、[[東ヨーロッパ時間]] (EET) の03:00)に時計の切り替えが行われる。その結果、欧州のタイムゾーン地域内では時差が常に一定になるように保たれている<ref name="NPL"/><ref name="Myers"/>。北アメリカでは時計の切り替えを行う時刻の調整法は異なっており、各地域において現地時間の02:00に切り替えを行うことになっているため、一時的に通常とは異なる時差(オフセットの差)が生じる。たとえば、[[山岳部標準時]]の場合、秋にやってくる1時間は、通常なら[[太平洋標準時]]の1時間先となるところが0時間先となり、春にやってくる1時間は、太平洋標準時の1時間先となるところが2時間先となる。また、秋のサマータイムから標準時への移行期には、どのタイムゾーンでも01:00から01:59:59までの間の時間が2回発生するが、冬の終わりか春頃の標準時からサマータイムへの移行期には、02:00から02:59:59までの間の時間が消滅する。 |
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時計が変更される期日は地域や年によって異なるため、地域間の時差も1年を通して変化する。たとえば、中央ヨーロッパ時間は、3月と10月・11月の数週間を除いて、通常、[[東部標準時|北アメリカ東部時間]]よりも6時間進んでいる。一方、イギリスとチリ本土は、北半球の夏には時差にして5時間の隔たりがあるが、南半球の夏には3時間、年に数週間は4時間の時差にまで縮まることになる。1996年以来、{{仮リンク|ヨーロッパにおける夏時間|en|Summer time in Europe|label=ヨーロッパのサマータイム}}は3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで実施されているが、それ以前は欧州連合の域内で規則が統一されていなかった<ref name="Myers"/>。2007年以降、アメリカ合衆国とカナダの大部分では、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まで、一年のほぼ3分の2の期間<ref name="織田一朗"/>、サマータイムを実施している<ref name="Times070312"/>。さらに、北半球と南半球では、春と秋が半年ずれているため、サマータイムの開始日と終了日がおおよそ逆になる。たとえば、チリ本土では10月の第2土曜日から3月の第2土曜日まで、現地時間の当日24:00に移行する手順でサマータイムを実施している<ref name="Chilean"/>。アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、メキシコ(過去にはブラジルなども)といった一部の国では、国内の地域ごとにサマータイム制を管轄しており、一部の地域でサマータイムが実施されていても、他の地域では実施されない場合もある{{sfnp|''Seize the Daylight''|2005|pp=179–180}}<ref name="Arizona"/>。 |
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毎年毎年、時計の切り替えを行う期日は、政治的または社会的な理由により、変更されることもある。1966年に制定された{{仮リンク|統一時間法|en|Uniform Time Act|label=統一時間法}}により、アメリカ合衆国のサマータイム実施期間は6か月とすることが正式に決定された<ref name="Downing 2018"/>(それ以前は地域ごとに宣言されていた<ref name="Korch 2015"/>)。この実施期間は1986年には7か月に延長され<ref name="Downing 2018"/>、2005年には8か月までの延長が決定した<ref name="Energy Policy Act 2005"/>。2005年の延長の背景には、[[ハロウィン]](10月31日)をサマータイム期間内に含めることで利益を上げようとする製菓業界のロビー活動があったとされる<ref name="Sweet"/>。最近の歴史を顧みると、オーストラリアの各州では、地域ごとに異なる現地時間に時計の時刻が変更されるだけでなく、時には異なる日に変更されることもあった<ref name="Australia 2008"/>。たとえば、2008年には、サマータイムを採用しているほとんどの州では10月5日に時計を進めたが、[[西オーストラリア州]]では10月26日に時計を切り替えた<ref name="Australia 2008"/>。 |
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== 目的と効果 == |
== 目的と効果 == |
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{{出典の明記|date=2017年9月|section=1}} |
{{出典の明記|date=2017年9月|section=1}} |
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[[ファイル:Begin_CEST.svg|right|thumb|夏時間開始の際には、時計を1時間進める。]] |
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[[ファイル:End_CEST.svg|right|thumb|夏時間終了の際には、時計を1時間戻す。]] |
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以下のような効果が期待できると考えられている。 |
以下のような効果が期待できると考えられている。 |
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* 明るい時間を有効に使えるので[[照明]]の[[節約]]になる。 |
* 明るい時間を有効に使えるので[[照明]]の[[節約]]になる。 |
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* 時刻の切り替え時に一時的に交通事故が増加するという報告もある。[[カナダ]][[ブリティッシュコロンビア州]]では夏時間導入直後の月曜日には、変更直前の月曜日より[[交通事故]]が平均で23 %増加するとして注意を呼びかけている<ref>[http://www.icbc.com/news/mar11-03 ICBC’s top five smart driving tips for Daylight Saving Time] Insurance Corporation of British Columbia</ref>。 |
* 時刻の切り替え時に一時的に交通事故が増加するという報告もある。[[カナダ]][[ブリティッシュコロンビア州]]では夏時間導入直後の月曜日には、変更直前の月曜日より[[交通事故]]が平均で23 %増加するとして注意を呼びかけている<ref>[http://www.icbc.com/news/mar11-03 ICBC’s top five smart driving tips for Daylight Saving Time] Insurance Corporation of British Columbia</ref>。 |
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<!--* もともと定時の終業を厳守する意識の低い[[日本]]では、「明るいうちに帰らせず労働時間([[残業]])を増やす上、最悪[[サービス残業]]の温床になりかねない」、という指摘もある。また、梅雨期や秋雨期にあたり日照時間も欧米のように極端に伸びない(冬季のほうが日照時間の長い地域もある)ため、そもそものあまり意味のないものといえる。--> |
<!--* もともと定時の終業を厳守する意識の低い[[日本]]では、「明るいうちに帰らせず労働時間([[残業]])を増やす上、最悪[[サービス残業]]の温床になりかねない」、という指摘もある。また、梅雨期や秋雨期にあたり日照時間も欧米のように極端に伸びない(冬季のほうが日照時間の長い地域もある)ため、そもそものあまり意味のないものといえる。--> |
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[[スイス]]や[[欧州連合]](EU)では、[[省エネルギー]]の効果が乏しく、[[健康]]に悪影響があるという理由で、市民の8割が廃止を望んでおり、EUでは廃止の検討が進んでいる<ref>[https://mainichi.jp/articles/20180830/k00/00m/030/117000c サマータイム EU市民8割超が廃止望む 政策変更検討も] - [[毎日新聞]]</ref><ref>[https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/8276.html サマータイム廃止目指す 「市民望むこと」EU委員長] - [[日本放送協会|NHK]]</ref>。 |
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== 健康への影響 == |
== 健康への影響 == |
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時計の時間を早めることは[[心臓発作]]のリスクを10%増加させ<ref name="NatGeo Time">{{Cite news |title=Time to Move On? The Case Against Daylight Saving Time |author=Brian Handwerk |publisher=[[National Geographic News]] |date=December 1, 2013 |accessdate=March 9, 2014 |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2013/11/131101-when-does-daylight-savings-time-end-november-3-science/ }}</ref>、[[睡眠]]時間を減少させると同時に睡眠の効果を低下させる<ref>{{Cite journal |author1=Tuuli A. Lahti |author2=Sami Leppämäki |author3=Jouko Lönnqvist |author4=Timo Partonen |title=Transitions into and out of daylight saving time compromise sleep and the rest–activity cycles |journal=BMC Physiology |volume=8 |page=3 |doi=10.1186/1472-6793-8-3 |pmid=18269740 |pmc=2259373 |url=http://www.biomedcentral.com/1472-6793/8/3 |year=2008 }}</ref>。[[概日リズム]]の季節適応には深刻かつ数週間に及ぶ影響を与える<ref>DST and circadian rhythm: |
時計の時間を早めることは[[心臓発作]]のリスクを10%増加させ<ref name="NatGeo Time">{{Cite news |title=Time to Move On? The Case Against Daylight Saving Time |author=Brian Handwerk |publisher=[[National Geographic News]] |date=December 1, 2013 |accessdate=March 9, 2014 |url=http://news.nationalgeographic.com/news/2013/11/131101-when-does-daylight-savings-time-end-november-3-science/ }}</ref>、[[睡眠]]時間を減少させると同時に睡眠の効果を低下させる<ref>{{Cite journal |author1=Tuuli A. Lahti |author2=Sami Leppämäki |author3=Jouko Lönnqvist |author4=Timo Partonen |title=Transitions into and out of daylight saving time compromise sleep and the rest–activity cycles |journal=BMC Physiology |volume=8 |page=3 |doi=10.1186/1472-6793-8-3 |pmid=18269740 |pmc=2259373 |url=http://www.biomedcentral.com/1472-6793/8/3 |year=2008 }}</ref>。[[概日リズム]]の季節適応には深刻かつ数週間に及ぶ影響を与える<ref>DST and circadian rhythm: |
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* {{Cite journal |journal=Biological Rhythm Research |year=2003 |volume=34 |issue=2 |pages=145–155 |doi=10.1076/brhm.34.2.145.14494 |title=Adjustment of the sleep–wake cycle to small(1-2h) changes in schedule |author1=Pablo Valdez |author2=Candelaria Ramírez |author3=Aída García }} |
* {{Cite journal |journal=Biological Rhythm Research |year=2003 |volume=34 |issue=2 |pages=145–155 |doi=10.1076/brhm.34.2.145.14494 |title=Adjustment of the sleep–wake cycle to small(1-2h) changes in schedule |author1=Pablo Valdez |author2=Candelaria Ramírez |author3=Aída García }} |
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* {{Cite journal |journal=Current Biology |year=2007 |volume=17 |issue=22 |pages=1996–2000 |pmid=17964164 |doi=10.1016/j.cub.2007.10.025 |title=The human circadian clock's seasonal adjustment is disrupted by daylight saving time |author=Thomas Kantermann; Myriam Juda; Martha Merrow; [[Till Roenneberg]] |laysummary=http://www.abc.net.au/science/news/stories/2007/2070223.htm |laysource=ABC Science Online, Australia |laydate=2007-10-25 }}</ref>。[[2008年]]の研究によれば、夏時間への移行直後の数週間で男性の自殺率は増加するが、季節適応後にはこれらの関連性は大幅に減少する<ref>{{Cite journal |journal=Sleep and Biological Rhythms |year=2008 |volume=6 |issue=1 |pages=22–25 |title=Small shifts in diurnal rhythms are associated with an increase in suicide: the effect of daylight saving |author1=Michael Berk |author2=Seetal Dodd |author3=Karen Hallam |author4=Lesley Berk |author5=John Gleeson |author6=Margaret Henry |doi=10.1111/j.1479-8425.2007.00331.x }}</ref>。2008年の[[スウェーデン]]の研究によれば、夏時間の最初の3週間において心臓発作は顕著に増加し、夏時間終了後の3週間では顕著に減少する<ref>{{Cite journal |journal=New England Journal of Medicine |year=2008 |volume=359 |issue=18 |pages=1966–1968 |title=Shifts to and from daylight saving time and incidence of myocardial infarction |author1=Imre Janszky |author2=Rickard Ljung |pmid=18971502 |doi=10.1056/NEJMc0807104 |url=http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/18/1966 |laysummary=http://articles.latimes.com/2008/oct/30/science/sci-clocks30 |laysource=Los Angeles Times |laydate=2008-10-30 }}</ref>。一般に夏時間終了時の夜は「1時間長く眠れる」といわれるが、[[2013年]]の論説によれば実際に人々が長く眠っているという[[エビデンス]]はほとんどない。また同じ文献によれば、夏時間開始時には睡眠時間を1時間奪われるため睡眠不足となり、その影響は少なくとも1週間持続する<ref>{{Cite journal|last1=Harrison|first1=Yvonne|title=The impact of daylight saving time on sleep and related behaviours|journal=Sleep Medicine Reviews|date=August 2013|volume=17|issue=4|pages=285–292|doi=10.1016/j.smrv.2012.10.001}}</ref>。[[2015年]]には2人の心理学者が、睡眠への悪影響を理由の一つとして夏時間の中止を提言している<ref>{{Cite journal|last1=Barnes|first1=Christopher M.|last2=Drake|first2=Christopher L.|title=Prioritizing Sleep Health|journal=Perspectives on Psychological Science|date=November 2015|volume=10|issue=6|pages=733–737|doi=10.1177/1745691615598509|url=http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1745691615598509}}</ref>。 |
* {{Cite journal |journal=Current Biology |year=2007 |volume=17 |issue=22 |pages=1996–2000 |pmid=17964164 |doi=10.1016/j.cub.2007.10.025 |title=The human circadian clock's seasonal adjustment is disrupted by daylight saving time |author=Thomas Kantermann; Myriam Juda; Martha Merrow; [[Till Roenneberg]] |laysummary=http://www.abc.net.au/science/news/stories/2007/2070223.htm |laysource=ABC Science Online, Australia |laydate=2007-10-25 }}</ref>。[[2008年]]の研究によれば、夏時間への移行直後の数週間で男性の自殺率は増加するが、季節適応後にはこれらの関連性は大幅に減少する<ref>{{Cite journal |journal=Sleep and Biological Rhythms |year=2008 |volume=6 |issue=1 |pages=22–25 |title=Small shifts in diurnal rhythms are associated with an increase in suicide: the effect of daylight saving |author1=Michael Berk |author2=Seetal Dodd |author3=Karen Hallam |author4=Lesley Berk |author5=John Gleeson |author6=Margaret Henry |doi=10.1111/j.1479-8425.2007.00331.x }}</ref>。2008年の[[スウェーデン]]の研究によれば、夏時間の最初の3週間において心臓発作は顕著に増加し、夏時間終了後の3週間では顕著に減少する<ref>{{Cite journal |journal=New England Journal of Medicine |year=2008 |volume=359 |issue=18 |pages=1966–1968 |title=Shifts to and from daylight saving time and incidence of myocardial infarction |author1=Imre Janszky |author2=Rickard Ljung |pmid=18971502 |doi=10.1056/NEJMc0807104 |url=http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/18/1966 |laysummary=http://articles.latimes.com/2008/oct/30/science/sci-clocks30 |laysource=Los Angeles Times |laydate=2008-10-30 }}</ref>。一般に夏時間終了時の夜は「1時間長く眠れる」といわれるが、[[2013年]]の論説によれば実際に人々が長く眠っているという[[エビデンス (科学)|エビデンス]]はほとんどない。また同じ文献によれば、夏時間開始時には睡眠時間を1時間奪われるため睡眠不足となり、その影響は少なくとも1週間持続する<ref>{{Cite journal|last1=Harrison|first1=Yvonne|title=The impact of daylight saving time on sleep and related behaviours|journal=Sleep Medicine Reviews|date=August 2013|volume=17|issue=4|pages=285–292|doi=10.1016/j.smrv.2012.10.001}}</ref>。[[2015年]]には2人の心理学者が、睡眠への悪影響を理由の一つとして夏時間の中止を提言している<ref>{{Cite journal|last1=Barnes|first1=Christopher M.|last2=Drake|first2=Christopher L.|title=Prioritizing Sleep Health|journal=Perspectives on Psychological Science|date=November 2015|volume=10|issue=6|pages=733–737|doi=10.1177/1745691615598509|url=http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1745691615598509}}</ref>。 |
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[[カザフスタン]]政府は[[2005年]]に夏時間を廃止する際、時刻変更に起因する健康への影響を理由として挙げている<ref>{{Cite news |url=http://engnews.gazeta.kz/art.asp?aid=303024 |title=Kazakhstan canceled shifting to the 'summer' and 'winter' time |date=March 16, 2005 |work=Kazakhstan Today |author=Nataliya Shirinskikh, translator}}</ref>。[[2011年]]3月には、ロシア大統領[[ドミートリー・メドヴェージェフ]]が「時計の針を動かすことによるストレス」が、ロシアが夏時間を通年維持する理由であると述べ、政府関係者は自殺の年次的な増加について指摘している<ref>{{Cite web|url=https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-15512177|title=Russian clocks stay on summertime|work=BBC News|accessdate=2018-08-08}}</ref>。 |
[[カザフスタン]]政府は[[2005年]]に夏時間を廃止する際、時刻変更に起因する健康への影響を理由として挙げている<ref>{{Cite news |url=http://engnews.gazeta.kz/art.asp?aid=303024 |title=Kazakhstan canceled shifting to the 'summer' and 'winter' time |date=March 16, 2005 |work=Kazakhstan Today |author=Nataliya Shirinskikh, translator}}</ref>。[[2011年]]3月には、ロシア大統領[[ドミートリー・メドヴェージェフ]]が「時計の針を動かすことによるストレス」が、ロシアが夏時間を通年維持する理由であると述べ、政府関係者は自殺の年次的な増加について指摘している<ref>{{Cite web|url=https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-15512177|title=Russian clocks stay on summertime|work=BBC News|accessdate=2018-08-08}}</ref>。 |
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}}</ref>。 |
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[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ワシントン大学]]と[[ヴァージニア大学]]の研究者は[[2017年]]に、夏時間によって睡眠時間が減少した[[判事]]は[[判決]]の刑期が長くなる傾向を報告している<ref>{{Cite journal|last1=Cho|first1=Kyoungmin|last2=Barnes|first2=Christopher M.|last3=Guanara|first3=Cristiano L.|title=Sleepy Punishers Are Harsh Punishers|journal=[[Psychological Science]]|date=February 2017|volume=28|issue=2|pages=242–247|doi=10.1177/0956797616678437}}</ref>。 |
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ワシントン大学 (ワシントン州)|ワシントン大学]]と[[ヴァージニア大学]]の研究者は[[2017年]]に、夏時間によって睡眠時間が減少した[[判事]]は[[判決]]の刑期が長くなる傾向を報告している<ref>{{Cite journal|last1=Cho|first1=Kyoungmin|last2=Barnes|first2=Christopher M.|last3=Guanara|first3=Cristiano L.|title=Sleepy Punishers Are Harsh Punishers|journal=[[Psychological Science]]|date=February 2017|volume=28|issue=2|pages=242–247|doi=10.1177/0956797616678437}}</ref>。 |
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また人間の活動時間帯が変わることにより、ドイツでは[[乳牛]]の[[牛乳]]生産量減少、野生動物の交通事故死増が見られるとの報道もある<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASLB47RB6LB4UHBI043.html 【世界発2018】サマータイム ドイツの憂鬱]の第二記事「影響 乳牛や野生動物にも」『朝日新聞』朝刊 2018年10月25日(国際面) 2018年12月11日閲覧。</ref>。 |
また人間の活動時間帯が変わることにより、ドイツでは[[乳牛]]の[[牛乳]]生産量減少、野生動物の交通事故死増が見られるとの報道もある<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASLB47RB6LB4UHBI043.html 【世界発2018】サマータイム ドイツの憂鬱]の第二記事「影響 乳牛や野生動物にも」『朝日新聞』朝刊 2018年10月25日(国際面) 2018年12月11日閲覧。</ref>。 |
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== 歴史 == |
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[[18世紀]]にアメリカの[[ベンジャミン・フランクリン]]が提唱したとされるが、これは時計の針を動かすことなく市民の早寝早起きを推奨したのみであり、フランクリンの時代にはどちらも実現しなかった。現在の方式のサマータイムを提唱したのは[[イギリス]]の[[建設業|建築業者]]であった[[ウィリアム・ウィレット]]である。実際に採用されたのは[[第一次世界大戦]]中の[[ドイツ]]で[[1916年]][[4月30日]]から[[10月1日]]まで、同じくイギリスが1916年[[5月21日]]から10月1日まで採用したのが始まりである。ドイツが第一次世界大戦中に導入し、廃止などを経て[[オイルショック]]後の[[1980年]]に再開したのは省エネが目的であった<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASLB47RB6LB4UHBI043.html 【世界発2018】サマータイム ドイツの憂鬱/元祖なのに EUで廃止主導/省エネより健康被害注目/時間厳守の文化 ストレスに] 『朝日新聞』朝刊2018年10月25日(国際面) 2018年12月11日閲覧。</ref>。 |
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[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では[[1918年]]と[[1919年]]に各7か月間、夏時間が導入されたが、大変に不評のため廃止になった。その後[[第二次世界大戦]]中に資源節約目的で復活し、今に至る。[[1986年]]までは現地時間で4月最終日曜日2時から10月最終日曜日2時までの間、それまでの時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用する「[[1966年]]方式」が主に使われていたが、その後は開始日は4月第1日曜日となり、[[2007年]]からは「包括エネルギー法案」の可決により期間が約1か月延び、開始日は3月の第2日曜日、終了は11月の第1日曜日となった。なお、議会で法案が通れば、その自治体は夏時間を使用しなくてもよいため、2008年現在、低緯度の[[ハワイ州]]は州全体、[[アリゾナ州]]では大半の自治体で夏時間を採用していない。なお、2005年まで大半の自治体で夏時間を採用していなかった[[インディアナ州]]は、[[2006年]]から州全域で夏時間を採用している。 |
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日本では、[[連合国軍占領下の日本|占領軍の施政下]]にあった[[1948年]]([[昭和]]23年) - [[1951年]](昭和26年)の間のみ実施されていた([[夏時間#日本における夏時間|後述]])。 |
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稀な事例だが、2段階のサマータイムが実施された例がある。 |
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[[連合軍軍政期 (ドイツ)|連合国占領下のドイツ]]で[[1945年]]と[[1947年]]に実施された([[:de:Sommerzeit]])。 |
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1945年の場合は、[[独ソ戦]]終了前から通常のサマータイムが実施されていたが、5月の独ソ戦終了まもなくから9月まで、[[ソ連占領地域]]と[[ベルリン]]において+2時間のサマータイムが実施され、当時サマータイムを導入していなかった[[ソビエト連邦]]の首都[[モスクワ]]と同じ時刻になった(通常のサマータイムは11月まで)。 |
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1947年の場合はドイツ全土において、[[4月6日]]に第1段階のサマータイム(+1時間)を開始、[[5月11日]]から[[6月29日]]まで2段階目(+2時間)を実施し、[[10月5日]]にサマータイムを終了した。 |
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EUは夏時間の開始日(3月の最終日曜日)と冬時間の開始日(10月の最終日曜日)を[[1998年]]に統一。長らく運用が続けられてきたが、「夏時間および冬時間を[[2020年]]に終了し[[2021年]]以降は運用しない案」を[[2019年]]3月に可決。EU加盟国は夏時間と冬時間のどちらかを[[標準時]]として選択することとなった<ref>{{Cite web |date=2020-10-25 |url=https://www.afpbb.com/articles/-/3311795 |title=欧州で最後の「冬時間」に、2021年に「夏時間」廃止で |publisher=AFP |accessdate=2020-10-24}}</ref>。しかし、2020年から[[新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)|新型コロナウイルスの流行]]が始まり、EU各国が流行に対処するため、夏時間廃止後の方向性の議論を進めることができず、2022年現在、廃止に至っていない。 |
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== 主な地域の実施時間 == |
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''2022年現在'' |
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* {{Flag|アメリカ合衆国}}([[アリゾナ州]]、[[ハワイ州]]を除く) |
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* {{Flag|カナダ}}(一部除く) |
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: 上記2ケ国では、3月第2日曜日2時 - 11月第1日曜日2時(現地時間基準<ref name=":0">開始日には2時が3時となり、終了日には2時が1時となるため、開始日の1日が23時間、終了日は逆に25時間になる。</ref>) |
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* {{Flag|メキシコ}}(一部除く) |
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: 4月第1日曜日2時 - 10月最終日曜日2時(現地時間基準<ref name=":0" />) |
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* [[ヨーロッパ]]各国({{Flagicon|EU}} [[欧州連合]]加盟国及び非加盟国含む、一部除く) |
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: 3月最終日曜日1時 - 10月最終日曜日1時([[協定世界時|UTC]]基準) |
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* {{Flagicon|AUS}} [[オーストラリア時間#夏時間|オーストラリア]](北部は実施なし、[[西オーストラリア州|西部]]は[[2006年]]度から3年間試行) |
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: 10月第1日曜日2時 - 翌年4月第1日曜日3時(現地時間基準、[[2008年]]から) |
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* {{Flag|ニュージーランド}}(一部除く) |
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: 9月最終日曜日2時 - 翌年4月第1日曜日3時(現地時間基準) |
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== 国別実施状況 == |
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=== サマータイムを実施していたが廃止した主な地域 === |
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* {{Flag|アイスランド}} |
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* {{Flag|アゼルバイジャン}} |
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* {{Flag|アメリカ合衆国}}の一部([[ファイル:Flag of Arizona.svg|border|25x20px]] [[アリゾナ州]]) |
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* {{Flag|アルゼンチン}} |
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* {{Flag|イラク}} |
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* {{Flag|インド}} |
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* {{Flag|オーストラリア}}北部・西部([[1917年]]、[[1942年]] - [[1944年]]) |
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* {{Flag|カザフスタン}} |
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* {{Flag|カナダ}}の一部([[ファイル:Flag of British Columbia.svg|border|25x20px]] [[ブリティッシュコロンビア州]][[ピースリバー地域]]、[[ファイル:Flag of Nunavut.svg|border|25x20px]] [[ヌナブト準州]][[サウサンプトン島]]、[[ファイル:Flag of Quebec.svg|border|25x20px]] [[ケベック州]][[コート・ノール地域]]、[[ファイル:Flag of Saskatchewan.svg|border|25x20px]] [[サスカチュワン州|サスカチュワン州全域]]、[[ファイル:Flag of Yukon.svg|border|25x20px]] [[ユーコン準州]]全域) |
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* {{Flag|キルギス}} |
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* {{Flag|コロンビア}} |
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* {{Flag|トルコ}} |
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* {{Flag|ナミビア}} |
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* {{Flag|フィリピン}} |
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* {{Flag|ブラジル}} |
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* {{Flag|モンゴル}} |
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* {{Flag|リビア}} |
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* {{Flag|ロシア}}({{Flag|ソビエト連邦}}の1917年 - [[2011年]]) |
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* {{Flag|日本}}([[1948年]] - [[1951年]]、後述) |
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* {{Flag|香港}}([[1941年]] - [[1976年]]、[[1978年]]、[[1979年]]) |
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* {{Flagicon|KOR}} [[韓国標準時#夏時間|韓国]](1948年 - 1951年、[[1955年]] - [[1960年]]、[[1987年]]、[[1988年]]) |
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* {{Flag|中華人民共和国}}([[1986年]] - [[1992年]]) |
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* {{Flag|中華民国}}([[台湾]])([[1945年]] - [[1961年]]、[[1974年]]、[[1975年]]、1979年) |
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=== サマータイムを実施したことがない地域 === |
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* {{Flag|ベトナム}}、{{Flag|タイ}}、{{Flag|インドネシア}}、{{MYS}}、{{SIN}}など、[[東南アジア]]諸国の大半 |
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* {{Flag|スリランカ}}、{{Flag|バングラデシュ}}、{{MDV}}、{{PAK}}、{{Flag|アフガニスタン}}、{{Flag|ネパール}}、{{Flag|ブータン}}の[[南アジア]] |
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* {{ARE}}、{{YEM}}、{{OMN}}、{{QAT}}、{{SAU}}、[[アラビア半島]]に位置する全国家 |
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* {{Flag|パプアニューギニア}} |
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* {{Flag|ベネズエラ}}とその近隣諸国 |
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* {{Flag|エチオピア}}、{{Flag|ケニア}}など[[アフリカ]]の30カ国以上 |
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* {{PRK}} |
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== 日本における夏時間 == |
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=== 連合国軍占領期 === |
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[[ファイル:DST on 3 April 1949 in Japan.JPG|thumb|250px|[[1949年]]([[昭和]]24年)[[4月3日]]より実施されたサマータイム]] |
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{{Main|夏時刻法}} |
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日本において夏時間は、第二次世界大戦[[日本の降伏|敗北]]後の[[連合国軍占領下の日本|連合国軍占領期]]に[[連合国軍最高司令官総司令部|GHQ]]指導下で公的に導入され、[[1948年]]([[昭和]]23年)[[4月28日]]に公布された[[夏時刻法]]に基づき、同年[[5月2日]]の0時から[[9月11日]]にかけて初めて実施された<ref name="takahashi">『大衆文化事典』「サンマータイム」の項([[鷹橋信夫]])、弘文堂、1991年、pp.299-300</ref>。 |
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以後、毎年5月(ただし、[[1949年]](昭和24年)のみ4月)第1土曜日24時(=日曜日0時)から9月第2土曜日25時(=日曜日0時)までの間に夏時間が実施されることとなったが、[[残業]]増加や寝不足を引き起こすなどとして不評を呼び、[[1951年]](昭和26年)度は[[日本国との平和条約|サンフランシスコ講和条約]]が締結された第2金曜日の[[9月7日]]で打ち切られ<ref name="takahashi"/>、翌[[1952年]](昭和27年)[[4月27日]]の占領終了と同月28日の条約発効による日本の主権回復に先立ち、夏時刻法は同年[[4月11日]]に廃止された。 |
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なお、当時の人々や[[マスメディア]]の[[日本語]]表記は、サマータイムではなく'''サンマータイム'''だった<ref name="takahashi"/>。 |
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=== 平成における議論過程 === |
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前述の通り、日本での公的な夏時間の実施は1948年から4回(4シーズン)だけで終わったが、[[1995年]]([[平成]]7年)頃からは[[省エネルギー]]などを名目としたサマータイムの再導入が一部議員を中心に検討され始めた。 |
|||
衆参両院超党派の100名超の[[日本の国会議員|国会議員]]らにより[[2004年]](平成16年)8月に「サマータイム制度推進議員連盟」が設立された。会長は[[第1次小泉内閣]]([[小泉純一郎]]首相)の[[経済産業大臣]]だった[[平沼赳夫]]([[経済産業省]]は電力などエネルギー分野を管掌)。[[2005年]](平成17年)に法案提出の動きがあったができなかった。平沼自身は、[[郵政選挙]]で自民党を離党し、政治権力の中心から離れるとともに“反自民”の象徴となった。以降この議連による動きは止まったままである。 |
|||
[[2007年]](平成19年)春には、[[日本経済団体連合会]](日本経団連)が[[自由民主党 (日本)|自由民主党]]に対して夏時間の導入を提案した。同年[[8月1日]]から[[8月31日|31日]]までの1か月間、日本経団連は[[経団連会館]]内で、始業・終業時刻を通常より1時間繰り上げる(早める)「サマータイム勤務」(エコワーク)を実施した。 |
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[[福田康夫内閣]]([[福田康夫]]首相)は地球環境(特に[[地球温暖化への対策|地球温暖化対策]])と[[生活者]]の重視を旗印にしており、自由民主党は[[2008年]](平成20年)4月に[[地球温暖化対策推進本部]]を立ち上げた。 |
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会長は[[野田毅]]元自治相であり「'''(国民の)地球温暖化対策に対する意識変化'''を国民運動的に求めていく」として、サマータイムを政府のなすべき温暖化対策・環境対策の切り札として位置付けていた。2008年(平成20年)[[5月13日]]、自民党地球温暖化対策推進本部は、サマータイム法制化・完全導入への作業を本格的に開始した。 |
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[[麻生内閣]]([[麻生太郎]]首相)は[[2009年]](平成21年)[[6月28日]]の[[李明博]]韓国大統領との日韓首脳会議後、「日韓同時にサマータイムを導入すれば[[経済効果]]が高い」と認識を示していた。 |
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2009年(平成21年)[[9月9日]]に、[[鳩山由紀夫内閣]]下で、[[鳩山由紀夫]]首相との日韓首脳会議で、李明博韓国大統領が日韓同時導入を、韓国政府が提案する方向で検討していると発表した。 |
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[[2020年]]に開催される[[2020年東京オリンピック|東京オリンピック]]では開催時期に猛暑が予想されることから、[[2018年]](平成30年)7月には、組織委員会会長の[[森喜朗]](元内閣総理大臣)が日本国政府に対して、サマータイムの導入を[[内閣総理大臣]][[安倍晋三]]に申し入れ、導入の検討が開始された<ref>{{Cite news|url=https://www.sankei.com/politics/news/180727/plt1807270020-n1.html|title=安倍晋三首相、サマータイム導入が「解決策かも」 東京五輪暑さ対策、森喜朗元首相の提案に|work=産経ニュース|newspaper=[[産経新聞]]|date=2018-07-27|accessdate=2018-08-06}}</ref>。同年8月の時点では、[[2019年]]、2020年限定で6〜8月に2時間の時刻繰り上げを行うこととし、必要な法整備は超党派による議員立法により行うという案が与党内で取り沙汰されていた<ref>{{Cite news|url=https://www.sankei.com/politics/news/180806/plt1808060002-n1.html|title=酷暑対策でサマータイム導入へ 秋の臨時国会で議員立法 31、32年限定|work=産経ニュース|newspaper=[[産経新聞]]|date=2018-08-06|accessdate=2018-08-06}}</ref>。 |
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しかし、[[情報技術]]機器や[[地震計]]の[[コンピュータプログラム]]変更には、実施に4〜5年かかるため、2020年には間に合わないと専門家は反対している<ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180902/k10011604931000.html?utm_int=news_contents_news-main_002 “準備期間短すぎる”サマータイムに反対相次ぐ IT専門家] - [[日本放送協会|NHK]]{{リンク切れ|date=2020年2月}}</ref>。2018年(平成30年)[[11月21日]]、自民党はサマータイムの導入を断念することを正式決定した<ref>{{Cite news | url = https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38025970R21C18A1000000/ | title = 五輪サマータイム断念表明 自民、法案提出困難 | newspaper = [[日本経済新聞]] | publisher = [[共同通信社]] | date = 2018-11-21 | accessdate = 2018-12-03 }}</ref>。 |
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=== サマータイム制への賛否 === |
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前述の通り、日本では過去にサマータイム制を導入しながらも廃止した経緯がある。 |
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[[NHKオンライン]]が2005年(平成17年)[[8月12日]]に実施した[[アンケート]]<ref>[https://web.archive.org/web/20051211043743/http://www.nhk.or.jp/toppage/enquete2005/050812.html]</ref>では、反対派が賛成派をわずかに上回った。同じくNHKが2018年(平成30年)8月に実施した世論調査では、東京オリンピックの暑さ対策として「サマータイム」の導入に「賛成」が51%、「反対」が12%、「どちらともいえない」が29%であった<ref>[https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180807/k10011567031000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002 NHK世論調査] NHKオンライン、2018年8月7日{{リンク切れ|date=2020年2月}}</ref>。同じく2018年(平成30年)8月の朝日新聞の世論調査によると「賛成」が53%、「反対」が32%、「その他・答えない」が15%となっている<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASL855GWDL85UZPS007.html 世論調査―質問と回答〈8月4、5日実施〉] 朝日新聞デジタル 2018年8月6日(2018年8月18日アクセス)</ref>。 |
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以下は、サマータイムに反対する理由である。 |
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* [[日本列島]]は東西に細長いため、[[東日本]]と[[西日本]]で[[日の出]]・[[日の入り]]の時刻に大きな差があり、全国一律にサマータイムを導入するには不適。 |
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* 日本は[[湿度]]が高く、日没後も蒸し暑いため、帰宅後の[[冷房]]需要が他国と比べて大きい(特に[[関東]]以西の地域ではそれが顕著)。 |
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* 日本の周辺国の多くはサマータイム制を導入していないので、欧米のサマータイムに合わせる必要性が薄い。 |
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=== 北海道サマータイム === |
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北海道サマータイムは時計をいじらず、出退勤時間を早めるという時差出勤の一種であり、本来の「サマータイム」とは異質な制度である。 |
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高[[緯度]]である[[北海道]]の[[夏]]は[[日中]]時間が日本一長いため、北海道全域を[[日本標準時|中央標準時]]より1時間又は2時間加えることによって、明るい時間を有効に利用しようという「北海道サマータイム特区構想」にからんだ[[社会実験]]として実施されている。 |
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最終的には北海道全域に限り4月第1日曜日から9月最終日曜日までの期間、1時間又は2時間時計を進める仮構想が提唱されている<ref>[http://www.sapporo-cci.or.jp/summer/index.html 北海道サマータイム] 札幌商工会議所{{リンク切れ|date=2020年2月}}</ref>。 |
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[[札幌商工会議所]]は、2004年(平成16年)7月の1か月間、[[北海道]]内の企業、官公庁に対し、就業時間を1時間繰り上げる(早める)よう呼びかける「北海道サマータイム月間」を実施。2005年(平成17年)は[[6月20日]]から[[7月31日]]までの期間内で実施。企業へのアンケートでもおおむね好評<ref>[http://www.sapporo-cci.or.jp/summer/pdf/summer-houkoku-2005.pdf 『2005北海道サマータイム月間』アンケート調査結果] 北海道サマータイムサイト内{{リンク切れ|date=2020年2月}}</ref>で、夏の[[イベント]]としての定着が進められている。なお2007年(平成19年)以降は実施する[[企業]]が激減し、[[景気後退|景気低迷]]の長期化でエネルギー消費量が減っているために「省エネ」の効果が出にくくなっているとの理由から、[[2010年]](平成22年)はサマータイムを実施しないことに決定した。また、[[2011年]](平成23年)は7月の1カ月間に限って実施したが、傘下の企業への参加呼びかけは行わなかった。 |
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=== 滋賀県庁 === |
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[[2003年]](平成15年)7・8月には、[[滋賀県]]庁で職員を対象にサマータイム導入実験が行われた。 |
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=== 奥州サマータイム === |
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2006年(平成18年)6月 - 8月にかけ[[岩手県]][[奥州市]]において、水沢[[日本青年会議所|青年会議所]]が主導となりサマータイム導入実験が行われた。 |
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=== 奈良県庁 === |
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[[奈良県庁]]は節電や、仕事と生活を調和させる「[[ワーク・ライフ・バランス]]」につながるとして、[[2012年]](平成24年)に導入。 7・8月は開庁時間を30分前倒ししてきた。 ところが[[2016年]](平成28年)に実施したアンケートで、サマータイムを「やめるべきだ」と答えた職員は43%、「見直すべき」が23%となり、不評だったため、2017年はやめることを決めた<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/20170601-OYT1T50116.html YOMIURI ONLINE] サマータイムやめます 職員に不評 2017年6月2日{{リンク切れ|date=2020年2月}}</ref>。 |
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== コンピュータにおける扱い == |
== コンピュータにおける扱い == |
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[[デジタルカメラ]]などの画像ファイルで使われる[[EXIF]]ではGPS関連の項目を除いてUTCや[[タイムゾーン]]などは考慮されていない。このため、夏時間を採用している地域では、画像を読み込む時期によって撮影時刻の記録・表示が1時間ずれる。 |
[[デジタルカメラ]]などの画像ファイルで使われる[[EXIF]]ではGPS関連の項目を除いてUTCや[[タイムゾーン]]などは考慮されていない。このため、夏時間を採用している地域では、画像を読み込む時期によって撮影時刻の記録・表示が1時間ずれる。 |
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== 各国・地域における導入状況 == |
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{{main|各国における夏時間}} |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Reflist|2}} |
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=== 出典 === |
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{{reflist|2|refs= |
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<ref name="日光節約時間の件">{{Cite web|和書|url=https://www.digital.archives.go.jp/img/2809488|title=日光節約時間採用に関する件(閣議決定案)(総審)|publisher=内閣官房|date=1948-04-12|accessdate=2022-08-14}}</ref> |
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<ref name="NICT報告">{{Cite journal|和書|url=https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku65-2_HTML/index.html|title=時空標準技術特集 3-1 日本標準時の維持と運用 3.4 サマータイム|journal=情報通信研究機構研究報告|publisher=[[情報通信研究機構]]|volume=65|issue=2|pages=17-18|date=2019-12|accessdate=2022-08-14}}</ref> |
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<ref name="イミダス">{{Cite web|和書|url=https://imidas.jp/genre/detail/K-108-0010.html|title=サマータイム|時事用語事典イミダス|author=内山洋司|authorlink=内山洋司|publisher=集英社|date=2008-03|accessdate=2022-08-14}}</ref> |
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<ref name="暦生活">{{Cite web|和書|url=https://www.543life.com/campus4.html|title=こよみの学校 第4回「スプリング・フォワードからフォール・バックまでのサマータイム」|暦生活|author=中牧弘允|authorlink=中牧弘允|publisher=新日本カレンダー株式会社|date=2013-03-21|accessdate=2022-08-14}}</ref> |
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<ref name="Harvard Health Blog">{{Cite web|title=Daylight Saving Time "fall back" doesn't equal sleep gain|url=https://www.health.harvard.edu/blog/daylight-saving-time-fall-back-doesnt-equal-sleep-gain-201311012514|publisher=Harvard Health Publishing|language=en|date=April 18, 2020|accessdate=August 14, 2022}}</ref> |
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<ref name="時事20181226">{{Cite news|title=サマータイム制度、世界で分かれる賛否【再掲】|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3203973|author=Camille Camdessus|agency=AFP|date=2018-12-26|accessdate=2022-08-22}}</ref> |
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<ref name="DNZB-Hudson">{{DNZB|last= Gibbs|first= George|id= 3H42|title= Hudson, George Vernon|accessdate=August 14, 2022}}</ref> |
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<ref name="Australia 2008">{{Cite web|url=http://www.bom.gov.au/climate/averages/tables/dst_times.shtml|title=Implementation dates of daylight saving time within Australia|publisher=Bureau of Meteorology|date=September 22, 2009|access-date=July 11, 2007|archive-date=April 4, 2016|archive-url=https://web.archive.org/web/20160404124201/http://www.bom.gov.au/climate/averages/tables/dst_times.shtml|url-status=live|language=en}}</ref> |
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== 参考文献 == |
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* {{cite book |author=Michael Downing |title=Spring Forward: The Annual Madness of Daylight Saving Time |publisher=Shoemaker & Hoard |year=2005 |isbn=978-1-59376-053-3 |ref={{harvid|''Spring Forward''|2005}} |url=https://archive.org/details/springforwardann00down }} |
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* {{cite book |author=David Prerau |title=Seize the Daylight: The Curious and Contentious Story of Daylight Saving Time |publisher=Thunder's Mouth Press |year=2005 |isbn=978-1-56025-655-7 |ref={{harvid|''Seize the Daylight''|2005}}|url=https://archive.org/details/seizedaylightcur0000prer }} The British version, focusing on the UK, is {{cite book |title=Saving the Daylight: Why We Put the Clocks Forward |publisher=Granta Books |isbn=978-1-86207-796-6 |author=<!--David Prerau--> |year=<!--2005--> |ref={{harvid|''Saving the Daylight''|2005}}}} |
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2024年9月24日 (火) 14:13時点における最新版
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夏時間[注 1](なつじかん、英: summer time[注 2]、サマータイム[2][注 3])または日光節約時間[4](にっこうせつやくじかん、米: daylight saving time (DST) [注 4])とは、1年のうち日中の時間が長くなる夏を中心とする時期に、日中の明るい時間を有効利用するため、時計を通常よりも進めることで、日が暮れる時刻を遅らせる時間制度、またはその時刻のこと[2][5]。典型的な実施例では、春に時計を1時間進めて[注 5]サマータイムに移行し、秋に1時間戻して[注 6]標準時に復帰する[6]。その結果、春頃に1日23時間の日があり、秋頃に1日25時間の日があることになる[7]。
ロウソクを節約するために起床時間を太陽が出ている時間に合わせるというアイデアは、1784年にアメリカの博学者ベンジャミン・フランクリンが初めて提唱したとされる[6][8]。フランクリンは、フランスの日刊紙『ジュルナル・ド・パリ』の編集者に宛てた風刺的な寄稿文の中で[9]、夏は早く起きることでロウソクの使用量を節約できると提案し、かなりの節約になると計算している[10]。1895年、ニュージーランドの昆虫学者で天文学者のジョージ・ハドソンが、毎年春に2時間だけ時計を変更するというアイデアをウェリントン哲学協会に提案した[11]。1907年、イギリスの建築業者ウィリアム・ウィレットが早朝の時間を有効に使うための方法として同様のアイデアを提案したが、実施には至らなかった[12]。
1908年、カナダのオンタリオ州ポート・アーサーにおいて、世界で初めてサマータイムが導入された[13]。初めて全国規模で実施したのはドイツ帝国とオーストリア=ハンガリー帝国で、第一次世界大戦時に石炭の消費量を減らすため、1916年4月30日に開始した。それ以来、多くの国でサマータイムが幾度も実施されており、特に1970年代の石油危機以後に普及した。赤道付近では、日の出と日の入の時刻が時間を調整するほど大きく変動することはないので、一般的にサマータイムの習慣はない。また、オーストラリアのように一部の地域でのみサマータイムを実施している国もある。逆に、高緯度地域では、日の出と日の入の時刻の差が大きく、時計を1時間ずらしてもあまり変わらないため、実施されない地域もある。アメリカ合衆国では、ハワイ州とアリゾナ州を除き[注 7]、サマータイムが実施されている。世界の人口に占める割合から見れば、サマータイムを採用している国・地域は少数派であり、アジアとアフリカの国々では一般的にサマータイムを採用していない。
根本原理
[編集]工業化された社会では、通常、1年を通して変化することのない時計に基づいたスケジュールに従って日々の活動が営まれている。たとえば、通勤・通学の時間帯や公共交通機関の運行ダイヤの調整は、普通、年間を通じて一定である。一方、農耕社会では、仕事や身の回りのことにかかわる日課は、昼の時間の長さと太陽時に左右されやすく[14]、これらは地球の軸の傾きによって季節ごとに変化する。回帰線の南北では、昼の時間が夏は長く、冬は短くなり、赤道から離れるほどその影響は大きくなる。
ある地域のすべての時計を同期的に標準時の1時間先に調整すると、時計に基づいたスケジュールに従っている人は、そうでない場合よりも1時間早く目覚める。いやむしろ、まだ暗い早朝に1時間分、早起きすることになる。そして、1時間早く日常業務を始めて終わらせ、就業時間後に1時間余分に日中の時間を利用できるようになる[15][16]。冬の間は、始業時間帯に利用できる日中の時間が1時間少なくなるため、この施策はあまり実用的でない。
サマータイムの推進派は、大多数の人が典型的な「9時から17時まで」の勤務時間の後、日中の時間が長く使えることを好んでいると主張している。また、サマータイムは照明や暖房の需要を減らすことでエネルギー消費を節減するとも主張しているが、エネルギー使用量全体に対する実際の効果については、大いに議論されているところである。
見かけ上の時刻のずれは、実用性によって動機づけられたものでもある。たとえば、アメリカの温帯地域では、夏至の日の出が4時30分頃、日の入が19時30分頃である。多くの人は4時30分には眠っているので、4時30分を5時30分に見せかけて、日の出の時刻に起き、夕方の光を浴びて活動できるようにするのが、より実用的と考えられる。
高緯度地域(アイスランド、ヌナブト、スカンディナヴィア、アラスカなど)では、低緯度地域に比べて季節による昼夜の長さの変化が激しいため、時間を操作しても日常生活にはほとんど影響を与えない[17]。日の出・日の入時刻は、時計の操作にかかわらず、標準的な労働時間帯とは大きくずれてしまう。
赤道付近は1年のうちで昼の時間の変化が小さいため、高緯度地域と同様にサマータイムはほとんど役に立たない[18]。また、サマータイムの効果は、等時帯内でどれくらい東寄りまたは西寄りの場所にいるかによっても異なり、同じ等時帯でも東に位置する場所の方が、西に位置する場所よりもサマータイムによる恩恵が大きい[19]。中国のように東西の幅が何千キロもあるにもかかわらず、政府の命令で国土の全域が一つの等時帯内に収まっている国でも、サマータイムはあまり実用的でない。
歴史
[編集]古代文明では、昼の長さに関係なく太陽が出ている時間を12分割した時間単位に分け、春には昼間が徐々に長くなるように、秋には昼間が徐々に短くなるようにし、今日のサマータイム制よりも柔軟に太陽に合わせて一日のスケジュールを調整していた[20]。たとえば、古代ローマ人は月ごとに目盛りの異なる水時計で時を計っていた。ローマが位置する緯度では、日の出から数えて3番目の刻 (hora tertia) は、冬至点では太陽時の9時2分からの44分間とされるが、夏至点では太陽時の6時58分からの75分間とされる[21]。14世紀以降、時間の間隔が等しい市民時(定時法)が、間隔の等しくない従来の市民時(不定時法)に取って代わり、市民時において時間が季節によって変化することはなくなった。他方で、不定時法は江戸時代の日本でも使用されていた[22][23]ほか、少数ではあるが、アトス山にある修道院や[24]、ユダヤ教の儀式など[25]、一部の伝統的な場では今なお用いられている。
ベンジャミン・フランクリンは「早寝早起きすれば、健康に裕福にそして賢くなれる」という格言を書物に残しており[26]、アメリカ合衆国全権公使としてフランスに派遣された時期(1776-1785)には、日刊『ジュルナル・ド・パリ』紙上で発表した匿名の投書の中で、早起きして朝の日光を利用し、ロウソクを節約するよう、風刺的にパリ市民に提案している[27]。1784年発表のこの風刺文では、窓の鎧戸に課税し、ロウソクを配給制とし、日の出の時刻に合わせて教会の鐘を鳴らしたり号砲を撃ったりして、市民を目覚めさせることを提案している[27]。よく誤解されているのだが、フランクリンは実際にサマータイムを提唱したわけではなく、18世紀のヨーロッパの人々は正確なスケジュールを守ってさえもいなかった。しかし、鉄道輸送や通信網の発達により、フランクリンの時代にはなかった時刻の標準化が求められるようになり、その流れは変わっていった[28]。
1810年、スペイン国民議会コルテス・デ・カディスは、時間の季節的な変化を考慮して、5月1日から9月30日までの間、特定の会議の開会時間を1時間早めるという規則を発表した[29]が、実際には時計は変更されなかった[30]。また、民間事業者が日光の条件に合わせて営業時間を変更する慣行があることも認めた[29]が、それは事業者が自らの意思で行なったことである。
近代的なサマータイムを初めて提唱したのは、ニュージーランドの昆虫学者ジョージ・ハドソンである。シフト勤務の仕事をしていたハドソンは、余暇を昆虫採集に費やしていたこともあり、勤務時間外の昼の時間に価値を見出すようになった[11]。1895年、ハドソンはウェリントン哲学協会に1本の論文を提出した[11][15]。その内容は、日光を2時間節約するシフトを提案するもので、クライストチャーチでは大きな反響があり、ハドソンは1898年にも論文を発表してこれに応えている[31]。一方、イギリスの建築業者でアウトドア好きだったウィリアム・ウィレットは[32]、朝食前の乗馬中にロンドンの人々が夏の一日の大半を眠って過ごしているのを見て、1905年に独自にサマータイムを発案したといわれている[33]。ウィレットは熱心なゴルファーでもあり、夕暮れで自分のラウンドが打ち切りになるのを嫌っていた[34]。彼が出した解決策は、夏の間だけ時計を進めるというもので、この提案は2年後に発表された[35]。自由党所属のロバート・ピアース議員は英国議会でこの提案を取り上げ、1908年2月12日に最初の日光節約法案 (Daylight Saving Bill) を議会下院に提出した[36]。この問題を調査するための特別委員会が設置されたものの、ピアースの提出した法案は成立せず、その後に幾度か提出された他の法案も成立を見ることなく廃案となった[12]。ウィレットは1915年に亡くなるまで、この提案について国内でロビー活動を続けた。
世界で最初にサマータイムが制定された都市は、カナダのオンタリオ州ポート・アーサー(現在のサンダーベイ)で、1908年7月1日のことだった[13][37]。これに続いて、同州オリリアが市長ウィリアム・ソード・フロストの市政期 (1911–1912) にサマータイムを導入した[38]。初めて全国規模でサマータイムを採用した国は第一次世界大戦中のドイツ帝国(ドイツ語: Sommerzeit ゾマーツァイト)とその同盟国オーストリア=ハンガリー帝国で、戦時中に石炭を節約するために1916年4月30日に開始された。イギリスとその同盟国のほとんど、およびヨーロッパの多くの中立国も、すぐさまこれに追随した。ロシアと他の数か国は翌年まで待機し、アメリカ合衆国は1918年にサマータイムを採用した。1918年の終戦後、カナダ、イギリス、フランス、アイルランド、アメリカ合衆国などの例外を除き、ほとんどの国ではサマータイムが廃止された[39][40]。その後、第二次世界大戦中に再び採用されて一般化(中にはイギリスのように二重のサマータイム[注 8]を採用した国もあった)し、1970年代に起きた石油危機以後、アメリカやヨーロッパで広く採用されるようになった。それ以来、世界各地でサマータイムの制定、調整および撤廃の動きが見られる[41]。
アメリカ合衆国では、第一次世界大戦中に7か月間の戦時措置として、エネルギー資源を節約するために日光を利用可能な時間を増やす目的で、1918年に標準時法 (Standard Time Act) が制定され、初めてサマータイムが実施された[42][43]。第二次世界大戦中の1942年には[40]、一年中サマータイムとする "War Time" が実施された[42]。戦後、サマータイムを標準化する統一時間法 (Uniform Time Act) が1966年に制定されるまでは、各州や地方にサマータイムの実施の可否や実施期間を自由に選択できる権限が与えられており[42]、混乱を引き起こす元となっていた[40]。1973年から74年の冬のシーズンに恒久的なサマータイムが制定されたが[40]、冬の間、暗い中を通学する子どもたちや、真っ暗な中を通勤・始業する労働者から苦情があり、1年後に廃止となった。
実施手順
[編集]通例、関係当局は平日のスケジュールに混乱を来すことがないよう、週末の真夜中(あるいは、真夜中過ぎ)に時計の時刻を変更する予定を立てる。1時間の変更が慣例となっているが、過去には20分や2時間の変更が実施されたこともある[注 9]。季節に応じてサマータイムを実施する(つまり、夏に実施して冬に実施しない)すべての国では、春に時計が標準時からサマータイムに進められ、秋に時計がサマータイムから標準時に戻される。そのため、春に時計に変更を加える日は一日の長さ(常用時)が短くなり、秋に時計に変更を加える日は一日の長さが長くなる。春の深夜0時に行われる変更では、現地時間のデジタル時計表示は23:59:59.9から01:00:00.0に飛ぶかのように見える。同様に、秋に行われる変更では、現地時間は23:59:59.9から23:00:00.0に飛び、深夜0時前の1時間を繰り返すかのように見える。
季節に応じたサマータイムを実施しているほとんどの国では、冬期の時刻は、各地域の中央付近の地方平均時に一致する標準化されたタイムゾーンの時刻に従って[44]、法的に「標準時」の名称が付けられている[45]。ただし、アイルランドでは例外的に、冬期の時刻はオフセット (UTC±00:00) と法的な名称(グリニッジ標準時)がいずれもイギリスと同じであるが、夏期の時刻はイギリスと同じオフセット (UTC+1:00) でありながら、イギリス夏時間とは対照的に[46]、法的な名称は「アイルランド標準時」である[47][48]。
サマータイムのために時計を切り替えるほとんどの国では、冬期には標準時、夏期にはサマータイムを実施しているが、モロッコでは(2019年以来)ラマダーン月以外、毎月サマータイムを実施している。聖なる月であるラマダーン月(当月の日付は太陰暦によって決められるため、グレゴリオ暦との対応では年によって日付が変動する)の間は、モロッコ市民の時計は西ヨーロッパ時間(UTC+00:00、地理的に同国の大部分が重なる)に合わせられる。この月の晦日になると、同市民の時計は西ヨーロッパ夏時間 (UTC+01:00) に進められ、翌年の聖なる月を迎えるまでサマータイムを継続する[49][50][51]。
時計の切り替えを行う時刻は、地域により異なっている。欧州連合では加盟国間で時計の切り替えを行う時刻に関する協定が取り決められており、すべてのタイムゾーン地域で同じ瞬間、協定世界時 (UTC) の01:00(すなわち、中央ヨーロッパ時間 (CET) の02:00、東ヨーロッパ時間 (EET) の03:00)に時計の切り替えが行われる。その結果、欧州のタイムゾーン地域内では時差が常に一定になるように保たれている[52][53]。北アメリカでは時計の切り替えを行う時刻の調整法は異なっており、各地域において現地時間の02:00に切り替えを行うことになっているため、一時的に通常とは異なる時差(オフセットの差)が生じる。たとえば、山岳部標準時の場合、秋にやってくる1時間は、通常なら太平洋標準時の1時間先となるところが0時間先となり、春にやってくる1時間は、太平洋標準時の1時間先となるところが2時間先となる。また、秋のサマータイムから標準時への移行期には、どのタイムゾーンでも01:00から01:59:59までの間の時間が2回発生するが、冬の終わりか春頃の標準時からサマータイムへの移行期には、02:00から02:59:59までの間の時間が消滅する。
時計が変更される期日は地域や年によって異なるため、地域間の時差も1年を通して変化する。たとえば、中央ヨーロッパ時間は、3月と10月・11月の数週間を除いて、通常、北アメリカ東部時間よりも6時間進んでいる。一方、イギリスとチリ本土は、北半球の夏には時差にして5時間の隔たりがあるが、南半球の夏には3時間、年に数週間は4時間の時差にまで縮まることになる。1996年以来、ヨーロッパのサマータイムは3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで実施されているが、それ以前は欧州連合の域内で規則が統一されていなかった[53]。2007年以降、アメリカ合衆国とカナダの大部分では、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まで、一年のほぼ3分の2の期間[54]、サマータイムを実施している[55]。さらに、北半球と南半球では、春と秋が半年ずれているため、サマータイムの開始日と終了日がおおよそ逆になる。たとえば、チリ本土では10月の第2土曜日から3月の第2土曜日まで、現地時間の当日24:00に移行する手順でサマータイムを実施している[56]。アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、メキシコ(過去にはブラジルなども)といった一部の国では、国内の地域ごとにサマータイム制を管轄しており、一部の地域でサマータイムが実施されていても、他の地域では実施されない場合もある[57][58]。
毎年毎年、時計の切り替えを行う期日は、政治的または社会的な理由により、変更されることもある。1966年に制定された統一時間法により、アメリカ合衆国のサマータイム実施期間は6か月とすることが正式に決定された[59](それ以前は地域ごとに宣言されていた[60])。この実施期間は1986年には7か月に延長され[59]、2005年には8か月までの延長が決定した[61]。2005年の延長の背景には、ハロウィン(10月31日)をサマータイム期間内に含めることで利益を上げようとする製菓業界のロビー活動があったとされる[62]。最近の歴史を顧みると、オーストラリアの各州では、地域ごとに異なる現地時間に時計の時刻が変更されるだけでなく、時には異なる日に変更されることもあった[63]。たとえば、2008年には、サマータイムを採用しているほとんどの州では10月5日に時計を進めたが、西オーストラリア州では10月26日に時計を切り替えた[63]。
目的と効果
[編集]以下のような効果が期待できると考えられている。
夏時間導入に対する反対論
[編集]夏時間の導入については反対論も存在する。夏時間に対する反対意見としては、以下のようなものが主張されている。
- 健康への悪影響(次項を参照)。
- カレンダーと時計機能を利用する各種システム(OSやソフトウェア、家電製品の時計機能など)を更新しなければならないなど、移行コストがかかる。
- 時刻の切り替え時に一時的に交通事故が増加するという報告もある。カナダブリティッシュコロンビア州では夏時間導入直後の月曜日には、変更直前の月曜日より交通事故が平均で23 %増加するとして注意を呼びかけている[64]。
スイスや欧州連合(EU)では、省エネルギーの効果が乏しく、健康に悪影響があるという理由で、市民の8割が廃止を望んでおり、EUでは廃止の検討が進んでいる[65][66]。
健康への影響
[編集]夏時間は健康へ様々な影響を及ぼす。労働時間が一定している社会では、夏時間の導入により午後の明るい時間に戸外での運動が増える傾向にある[67]。また日光を浴びる時間が変わるので、居住地や生活時間によっては皮膚内のビタミンD生成を促す等のメリットがある。しかし、皮膚がんの恐れを増す場合もある[68]。夏時間は起床時間を早めるため鬱状態の改善につながるとの指摘もあるが[69]、その逆を指摘する者もある[70]。また夏時間への変更直後の2日間では虚血性発作の発生率が増加するが、1週間後には平常値に戻る[71]。
時計の時間を早めることは心臓発作のリスクを10%増加させ[72]、睡眠時間を減少させると同時に睡眠の効果を低下させる[73]。概日リズムの季節適応には深刻かつ数週間に及ぶ影響を与える[74]。2008年の研究によれば、夏時間への移行直後の数週間で男性の自殺率は増加するが、季節適応後にはこれらの関連性は大幅に減少する[75]。2008年のスウェーデンの研究によれば、夏時間の最初の3週間において心臓発作は顕著に増加し、夏時間終了後の3週間では顕著に減少する[76]。一般に夏時間終了時の夜は「1時間長く眠れる」といわれるが、2013年の論説によれば実際に人々が長く眠っているというエビデンスはほとんどない。また同じ文献によれば、夏時間開始時には睡眠時間を1時間奪われるため睡眠不足となり、その影響は少なくとも1週間持続する[77]。2015年には2人の心理学者が、睡眠への悪影響を理由の一つとして夏時間の中止を提言している[78]。
カザフスタン政府は2005年に夏時間を廃止する際、時刻変更に起因する健康への影響を理由として挙げている[79]。2011年3月には、ロシア大統領ドミートリー・メドヴェージェフが「時計の針を動かすことによるストレス」が、ロシアが夏時間を通年維持する理由であると述べ、政府関係者は自殺の年次的な増加について指摘している[80]。
夏時間で一般に予期されていなかった悪影響として、夜明け前に生じるラッシュアワーと自動車の排気ガスが日中よりも過酷な大気汚染を生じさせるという指摘がある[81]。
アメリカのワシントン大学とヴァージニア大学の研究者は2017年に、夏時間によって睡眠時間が減少した判事は判決の刑期が長くなる傾向を報告している[82]。
また人間の活動時間帯が変わることにより、ドイツでは乳牛の牛乳生産量減少、野生動物の交通事故死増が見られるとの報道もある[83]。
コンピュータにおける扱い
[編集]以前は、夏時間の期間に入るまたは終わる度に手動でコンピュータに内蔵されている時計の時刻を合わせていたが、近年のオペレーティングシステムは、自動的に内蔵時計を修正する機能をもっている。ファイルのタイムスタンプの扱いは、使用するファイルシステムおよびオペレーティングシステムによって異なる。例えば、FATのようなタイムスタンプの記録にローカルタイムを利用するファイルシステムの場合、夏時間内で修正されたファイルを、夏時間外で読み込んだ場合、時刻が1時間ずれる。一方、NTFSのような、タイムスタンプを協定世界時(UTC)で記録するファイルシステムを利用している場合、このような問題は起きない。
時刻の内部管理にUTCを使うことにより、夏時間を意識せずにファイルの読み書きができるものの、オペレーティングシステム上での取り扱いは、各システムによって異なる。Windows系の場合、Windows XP以前のOSでは、時刻は現在有効な標準時に合わせて表示される。例えば、夏時間の期間中にタイムスタンプが9時であった場合、期間外では10時と表記される。この方式では表示される時刻が実際の時刻と異なることがある。一方で、夏時間の期間の前後で時刻に不連続が発生しなくなるという利点がある。また、時代・地域による期間・調整時間の差異や、未来の時刻を取り扱う時に実施当日までに変更される可能性がある夏時間規則を考慮する必要がない。一方、WindowsでもWindows 7以降およびmacOSの場合は、期間中に9時であったものは、期間外になっても9時と表記される。この方式の利点・欠点は前者の逆である[84]。
LinuxやBSD系オペレーティングシステムではtz databaseを用いて夏時間を管理している。
デジタルカメラなどの画像ファイルで使われるEXIFではGPS関連の項目を除いてUTCやタイムゾーンなどは考慮されていない。このため、夏時間を採用している地域では、画像を読み込む時期によって撮影時刻の記録・表示が1時間ずれる。
各国・地域における導入状況
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 夏時刻(なつじこく)とも呼称する[1]。日本において1948年から4か年実施されたが、その根拠となる法律名称が「夏時刻法」(昭和23年法律第29号)であった。
- ^ 英国や欧州連合などでの呼称。
- ^ かつてはサンマータイムとも表記した[3]。
- ^ アメリカ合衆国、カナダおよびオーストラリアなどでの呼称[2]。
- ^ これをスプリング・フォワード (spring forward) という[6]。
- ^ これをフォール・バック (fall back) という[6]。
- ^ ただし、アリゾナ州内ではナバホ・ネイションが、連邦政府の慣例に従い、サマータイムを実施している。
- ^ 夏期は時計を標準時より2時間先まで進め、冬期は標準時より1時間先まで進めるという方法だった[40]。
- ^ オーストラリアのロード・ハウ島では2023年現在も30分の変更が実施されている。
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関連項目
[編集]- アラスカ夏時間(AKDT)
- 太平洋夏時間(PDT)
- 山岳部夏時間(MDT)
- 中部夏時間(CDT)
- 東部夏時間(EDT)
- 大西洋夏時間(ADT)
- ニューファンドランド夏時間(NDT)
- 英国夏時間(BST)
- 西ヨーロッパ夏時間(WEST)
- 中央ヨーロッパ夏時間(CEST)
- 東ヨーロッパ夏時間(EEST)
- モスクワ夏時間(MST)
- 西アフリカ夏時間(WAST)
- 夏時刻法
- ゆう活
- 冬時間