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「ゼロコロナ政策」の版間の差分

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しかし、[[2021年]]7月20日、[[江蘇省]][[南京市]]の空港職員9人の感染により、デルタ株は中国国内にも広がったことが確認される。南京市政府は、市民800万人に[[PCR検査]]と[[抗原検査]]を実施、184人の陽性者が確認された。さらに同月末までに8つの省、22の市で感染者が発生、9月には[[福建省]]の[[厦門市]]、[[莆田市]]、[[泉州市]]などで470人の陽性者が確認された。2021年10月までのデルタ株の感染者は計1000人を超えたとされ、中国政府に大きな衝撃を与えた。この事実は国内世論に大きな影響をもたらせ、デルタ株の出現を機に、ゼロコロナ政策を転換し、「ウイルスとの共存(ウィズコロナ政策)」を目指すべきとする見方も専門家の間で上るようになる。これに対して中国のメディアは次々と批判的な記事を掲載、「他国政府は無策の結果、仕方なくゼロコロナを諦めざるを得なくなったに過ぎないのに、なぜ中国が追随する必要があるのか」など、世論も多数は政府に寄り添ったものであった。こうした動きの中、中国政府はより厳格な隔離体制を推し進め、[[広東省]]の国際空港近くで敷地面積25万㎡、5000室の隔離施設「[[広州市国際健康ステーション]]」を建設、9月下旬に運用を開始。ゼロコロナの維持のためには、市中に散在するホテルでは対処しきれないための措置で、最新設備を備えた専門施設であった。コロナ関連規制撤廃の動きを見せる欧米諸国とはあきらかに一線を画し、事実上の「鎖国状態」に近い状態で、ゼロコロナの維持に向けての長期戦の構えを見せた<ref name="wis"/>。
しかし、[[2021年]]7月20日、[[江蘇省]][[南京市]]の空港職員9人の感染により、デルタ株は中国国内にも広がったことが確認される。南京市政府は、市民800万人に[[PCR検査]]と[[抗原検査]]を実施、184人の陽性者が確認された。さらに同月末までに8つの省、22の市で感染者が発生、9月には[[福建省]]の[[厦門市]]、[[莆田市]]、[[泉州市]]などで470人の陽性者が確認された。2021年10月までのデルタ株の感染者は計1000人を超えたとされ、中国政府に大きな衝撃を与えた。この事実は国内世論に大きな影響をもたらせ、デルタ株の出現を機に、ゼロコロナ政策を転換し、「ウイルスとの共存(ウィズコロナ政策)」を目指すべきとする見方も専門家の間で上るようになる。これに対して中国のメディアは次々と批判的な記事を掲載、「他国政府は無策の結果、仕方なくゼロコロナを諦めざるを得なくなったに過ぎないのに、なぜ中国が追随する必要があるのか」など、世論も多数は政府に寄り添ったものであった。こうした動きの中、中国政府はより厳格な隔離体制を推し進め、[[広東省]]の国際空港近くで敷地面積25万㎡、5000室の隔離施設「[[広州市国際健康ステーション]]」を建設、9月下旬に運用を開始。ゼロコロナの維持のためには、市中に散在するホテルでは対処しきれないための措置で、最新設備を備えた専門施設であった。コロナ関連規制撤廃の動きを見せる欧米諸国とはあきらかに一線を画し、事実上の「鎖国状態」に近い状態で、ゼロコロナの維持に向けての長期戦の構えを見せた<ref name="wis"/>。


2021年11月中旬からは、特に首都・[[北京]]の新型コロナウイルス対策が厳しくなり、北京市内に入るすべての人を対象に、48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示が義務付けられた。市外に出た場合、日帰りでも北京に戻る前にPCR検査が必要となる。同時に、過去14日以内に1人でも感染者が出た地域を訪問した者が、市内へ立ち入ることを制限する方針も打ち出された。これは[[2022年北京オリンピック]]と3月の全国人民代表大会対策と考えられる<ref name="news.yahoo">{{Cite web|date=|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/98628cba0e876a6065c39dee333404fe43478f91|title=産経新聞 - 外信コラム「ゼロコロナ」いつまで… 重要イベント控える北京|publisher=Yahoo!ニュース|accessdate=2021-12-5}}</ref>。12月23日には、[[陝西省]][[西安市]]において累計1000人を超える感染者数が確認されたことを受けて、[[ロックダウン (封鎖)|ロックダウン]]が実施され住民の外出が原則禁止にされた<ref>{{Cite web|date=|url=https://mainichi.jp/articles/20211230/k00/00m/030/323000c|title=五輪目前、中国「ゼロコロナ」正念場 西安で累計1000人超感染 |publisher=毎日新聞|accessdate=2021-12-31}}</ref>。
2021年11月中旬からは、特に首都・[[北京]]の新型コロナウイルス対策が厳しくなり、北京市内に入るすべての人を対象に、48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示が義務付けられた。市外に出た場合、日帰りでも北京に戻る前にPCR検査が必要となる。同時に、過去14日以内に1人でも感染者が出た地域を訪問した者が、市内へ立ち入ることを制限する方針も打ち出された。これは[[2022年北京オリンピック]]と3月の全国人民代表大会対策と考えられる<ref name="news.yahoo">{{Cite web|date=|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/98628cba0e876a6065c39dee333404fe43478f91|title=産経新聞 - 外信コラム「ゼロコロナ」いつまで… 重要イベント控える北京|publisher=Yahoo!ニュース|accessdate=2021-12-5}}</ref>。12月23日には、[[陝西省]][[西安市]]において累計1000人を超える感染者数が確認されたことを受けて、[[ロックダウン (政策)|ロックダウン]]が実施され住民の外出が原則禁止にされた<ref>{{Cite web|date=|url=https://mainichi.jp/articles/20211230/k00/00m/030/323000c|title=五輪目前、中国「ゼロコロナ」正念場 西安で累計1000人超感染 |publisher=毎日新聞|accessdate=2021-12-31}}</ref>。


[[雲南省]][[瑞麗市]]では、[[国境]]と隣接する[[ミャンマー]]からの感染者流入の予防対策として、2021年3月から断続的に封鎖措置が取られた。これにより経済活動は低迷し、多くの市民の収入は激減、「地獄だ」との声もネット上に散見された。厳しい制限をかいくぐり市外に脱出する人も多く、「40万人の人口が10万人強に減った」と伝える新聞もあった<ref name="">{{Cite web|date=2021-11-21|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/144054|title=中国の看板政策「ゼロコロナ」どうなる? 市民に疲れや不満 五輪控え当局は誇示|publisher=東京新聞|accessdate=2021-12-5}}</ref>。
[[雲南省]][[瑞麗市]]では、[[国境]]と隣接する[[ミャンマー]]からの感染者流入の予防対策として、2021年3月から断続的に封鎖措置が取られた。これにより経済活動は低迷し、多くの市民の収入は激減、「地獄だ」との声もネット上に散見された。厳しい制限をかいくぐり市外に脱出する人も多く、「40万人の人口が10万人強に減った」と伝える新聞もあった<ref name="">{{Cite web|date=2021-11-21|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/144054|title=中国の看板政策「ゼロコロナ」どうなる? 市民に疲れや不満 五輪控え当局は誇示|publisher=東京新聞|accessdate=2021-12-5}}</ref>。

2022年1月7日 (金) 08:09時点における版

ゼロコロナ政策(ゼロコロナせいさく)は、主に中国共産党が推し進める、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を厳格な行動制限などで完全な封じ込めをはかる政策日本では立憲民主党が提唱した[1]

概要

中国では、COVID-19発生後、「国内に新型コロナウイルスの存在を許さない(零容認=ゼロコロナ)」方針を掲げ、厳格な行動制限を伴う非常に厳しい政策を取り、2020年半ばには国内の新規感染がほぼ抑え込まれ、事実上「ゼロコロナ」に近い状況が実現させた。中国政府はこれを「政治・社会体制の勝利」としてプロパガンダに利用し、特にアメリカを筆頭とする西側先進国など他国の政府や政治体制の無策ぶりをメディアが書きたてるなどした。しかし、その当時の状況では欧米諸国や日本も含め、基本的にすべての国が新型コロナの完全な終息を目指しており、「ゼロコロナ」という表現は、見られなかった。「ゼロコロナ」が注目され始めたのは、デルタ株出現以降である。この従来型ウイルスの2倍以上の強い伝染性があるとされる強力な感染性を持つデルタ株の出現に、欧米諸国などでは次々に「ゼロコロナ」の実現を放棄し、新型コロナウイルスの消滅は不可能との前提に立ち、治療薬の開発とワクチン接種の拡大などを軸に、同ウイルスとの共存を目指しながら社会を正常化させる「ウィズコロナ政策」に転換させた[2]

しかし、2021年7月20日、江蘇省南京市の空港職員9人の感染により、デルタ株は中国国内にも広がったことが確認される。南京市政府は、市民800万人にPCR検査抗原検査を実施、184人の陽性者が確認された。さらに同月末までに8つの省、22の市で感染者が発生、9月には福建省厦門市莆田市泉州市などで470人の陽性者が確認された。2021年10月までのデルタ株の感染者は計1000人を超えたとされ、中国政府に大きな衝撃を与えた。この事実は国内世論に大きな影響をもたらせ、デルタ株の出現を機に、ゼロコロナ政策を転換し、「ウイルスとの共存(ウィズコロナ政策)」を目指すべきとする見方も専門家の間で上るようになる。これに対して中国のメディアは次々と批判的な記事を掲載、「他国政府は無策の結果、仕方なくゼロコロナを諦めざるを得なくなったに過ぎないのに、なぜ中国が追随する必要があるのか」など、世論も多数は政府に寄り添ったものであった。こうした動きの中、中国政府はより厳格な隔離体制を推し進め、広東省の国際空港近くで敷地面積25万㎡、5000室の隔離施設「広州市国際健康ステーション」を建設、9月下旬に運用を開始。ゼロコロナの維持のためには、市中に散在するホテルでは対処しきれないための措置で、最新設備を備えた専門施設であった。コロナ関連規制撤廃の動きを見せる欧米諸国とはあきらかに一線を画し、事実上の「鎖国状態」に近い状態で、ゼロコロナの維持に向けての長期戦の構えを見せた[2]

2021年11月中旬からは、特に首都・北京の新型コロナウイルス対策が厳しくなり、北京市内に入るすべての人を対象に、48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示が義務付けられた。市外に出た場合、日帰りでも北京に戻る前にPCR検査が必要となる。同時に、過去14日以内に1人でも感染者が出た地域を訪問した者が、市内へ立ち入ることを制限する方針も打ち出された。これは2022年北京オリンピックと3月の全国人民代表大会対策と考えられる[3]。12月23日には、陝西省西安市において累計1000人を超える感染者数が確認されたことを受けて、ロックダウンが実施され住民の外出が原則禁止にされた[4]

雲南省瑞麗市では、国境と隣接するミャンマーからの感染者流入の予防対策として、2021年3月から断続的に封鎖措置が取られた。これにより経済活動は低迷し、多くの市民の収入は激減、「地獄だ」との声もネット上に散見された。厳しい制限をかいくぐり市外に脱出する人も多く、「40万人の人口が10万人強に減った」と伝える新聞もあった[5]

効果

中国疾病予防コントロールセンターの呉尊友は2021年11月28日、「ゼロコロナ政策」によって、中国は少なくとも4,784万人の感染を防ぐことができ、95万人の死亡を防いだとの見解を示した[6]。2021年2月を例にとると、中国の新型コロナ感染発生時から約1年間の香港台湾を除く全死者数は4500人ほどで、アメリカの1日の死者数5463人(2021年2月12日)よりも少なく、その効果は絶大だった。中国政府は、いかにアメリカ社会が悲惨な状況に陥り、経済は疲弊し、失職者が街にあふれ、それに比較し中国の社会制度がいかに優れているかを強調した。中国当局が自国のゼロコロナ政策の有効性をアピールし、諸外国の政府の対応をネガティブに伝えたことで、国民は常日頃の強権的な体制に不満を持ちながらも、新型コロナ対策については、世論はほぼ政府支持一色となるとともに、自国への誇りと安心感が芽生えたと同時に、有効な対策を取れない諸外国に対して優越感、時には哀れみや嘲笑に近い視線を作り出すことに成功した。中国で広く接種されている「不活化ワクチン」というタイプのワクチンは、ファイザーモデルナなど欧米諸国で開発されたmRNAワクチンに比べると効果は低いが、接種後に深刻な副反応が表れる例は少なく、運搬・保存が容易とされる。2021年10月4日現在、22億1456万回の接種を完了させ、人口カバー率で8割、12歳以上に限れば9割を超えた。しかし、中国政府はさらに中国製mRNAワクチンの開発を急いだ。これは復星医薬集団のもので、ファイザー製ワクチンと呼ばれるものとほぼ同様の製品となる。また、国有企業のシノファーム(SINOPHARM、中国医薬集団)も2022年の発売を目指してmRNAワクチンを開発中と伝えられる[2][7]

2021年12月には、新たに発生したオミクロン株への警戒が強まる中、中国の衛生局は「ゼロコロナ政策」を堅持すべきとの考えを示した。中国国家衛星健康委員会は、「最近、中国国内で確認された感染例のすべては海外からのものである」との認識を示し、「ゼロコロナ政策」は政策が感染をコントロールする「宝物」と表現した。さらに、「ゼロコロナ政策」とは異なる政策を実施している国の対応は、効果が不十分だとした上で、厳しい対策に伴う社会的損失を最小限に抑えるためには、封鎖管理と大規模な検査の早急な実施が必要で、7日間以内に感染を制御すべきとの認識を示した[8]

北京2022 オリンピック・パラリンピックとの関連

2022年に予定されている、北京オリンピックパラリンピックの開催は、中国政府の威信がかかっており、2020年の東京大会が1年延期の末に無観客開催となったことで、完全な形での開催は国家としての力量を世界に顕示できるとの思惑もあるとされる。同年10月3日、中国冬季オリンピック組織委員会は、海外から参加する選手・役員は基本的に中国社会との接触を避け、一定の領域内での行動に限定する「閉鎖式管理」の実施と、国外への観戦チケットの販売は行わないことを発表した[2]

日本

日本では、立憲民主党の枝野幸男代表が2021年2月、「ウィズコロナからゼロコロナへ」を提唱。まずは新型コロナの感染を徹底的に抑え込み、その後に経済活動を再開するとする政策を発表したが、これに対し与党自民党は「そこまで待てば日本経済は死ぬ」と反論。感染症学者からも「ゼロコロナ政策」支持の声が上がっている。日本政府が採った「ウィズコロナ政策」は、新型コロナウイルスの根絶を目指せば経済損失は莫大となるため、医療崩壊を起こさない程度に感染を抑えて、長く新型コロナと付き合っていくしかないというスタンスである。これに対しゼロコロナ政策は、感染者を一旦ゼロに抑え込めれば、その後、経済を復活させることができるため、台湾ニュージーランドのように長期的には経済的にも利益になるとする考え方である。しかし、一度ゼロにすれば、後は自由に経済活動ができるわけではなく抑制策は必要である。両方の政策にはメリット・デメリットがあり、さらに変異株の出現では戦略の再考を迫られる[1][9]

脚注

  1. ^ a b 「ゼロコロナ」をほぼ実現すれば、経済活動は元通りにできるのか 原田 泰:名古屋商科大学ビジネススクール教授”. DIAMONDonline (2021年3月25日). 2021年12月5日閲覧。
  2. ^ a b c d 「ゼロコロナ」の呪縛から逃れられるか中国の政策に見るナショナリズムの変化”. 田中 信彦 - business leaders square wisdom (2021年10月22日). 2021年12月5日閲覧。
  3. ^ 産経新聞 - 外信コラム「ゼロコロナ」いつまで… 重要イベント控える北京”. Yahoo!ニュース. 2021年12月5日閲覧。
  4. ^ 五輪目前、中国「ゼロコロナ」正念場 西安で累計1000人超感染”. 毎日新聞. 2021年12月31日閲覧。
  5. ^ 中国の看板政策「ゼロコロナ」どうなる? 市民に疲れや不満 五輪控え当局は誇示”. 東京新聞 (2021年11月21日). 2021年12月5日閲覧。
  6. ^ ゼロコロナ政策、最低4700万人の感染防止”. ANA ASIA. 2021年12月5日閲覧。
  7. ^ 中国衛生当局トップ「ゼロコロナ政策を堅持すべき」”. Yahoo!ニュース. 2021年12月5日閲覧。
  8. ^ 中国衛生局トップ「ゼロコロナ政策を堅持すべき」”. テレ朝NEWS (2021年12月2日). 2021年12月5日閲覧。
  9. ^ 立民「ゼロコロナ」提唱、与党は「そこまで待てば日本経済は死ぬ」”. 讀賣新聞オンライン (2021年2月6日). 2021年12月8日閲覧。

外部リンク