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「シジミチョウ科」の版間の差分

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{{混同|志染町|x1=兵庫県三木市の地区名}}
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{{生物分類表
{{生物分類表
| 名称 = シジミチョウ科 Lycaenidae
| 名称 = シジミチョウ科
| 画像 = [[画像:Peablue October 2007 Osaka Japan.jpg|250px]]
| 画像 = [[File:Lycaena phlaeas in Japan, Kochi pref.jpg|220px]]
| 画像キャプション = [[ウラナミシジミ]] ''Lampides boeticus''
| 画像キャプション = [[ベニシジミ]] {{Snamei||Lycaena phlaeas}}, <small>日本</small>
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| 目 = [[鱗翅目|鱗翅目(チョウ目]] {{Sname|species|Lepidoptera}}
| 亜目階級なし = {{生物分類表/階級なし複数
| 上科 = [[アゲハチョウ上科]] [[:w:Papilionoidea|Papilionoidea]]
| [[有吻類]] {{Sname|species|Glossata}}
| 科 = '''シジミチョウ科''' [[:w:Lycaenidae|Lycaenidae]]<br />Leach, [[1815年|1815]]<ref>{{Cite web |url=http://www.itis.gov/servlet/SingleRpt/SingleRpt?search_topic=TSN&search_value=117236 |title=Lycaenidae (Leach, 1815) |publisher=[[ITIS]] |language=英語 |accessdate=2012-02-21}}</ref>
| [[異脈類]] {{Sname|species|Heteroneura}}
| [[二門類]] {{Sname|species|Ditrysia}}}}
| 上科 = [[アゲハチョウ上科]] {{Sname|species|Papilionoidea}}
| 科 = '''シジミチョウ科 {{Sname|species|Lycaenidae}}'''
| タイプ属 = [[ベニシジミ属]]{{Sfn|日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013a}}<br/>{{Snamei|species|Lycaena}} <small>[[:species:Johan Christian Fabricius|Fabricius]], 1807</small>{{Sfn|ELIOT|1973|p=422}}
| 学名 = '''{{Sname|Lycaenidae}} <small>[[:species:William Elford Leach|Leach]], 1815</small>'''{{Sfn|ELIOT|1973|p=422}}
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[[#分類|本文参照]]
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}}


'''シジミチョウ科'''([[学名]]:'''{{Sname|Lycaenidae}}'''; [[漢字]]表記:小灰蝶科{{Sfn|高野|1907|pp=218-220}})は[[チョウ]]の[[科 (分類学)|科]]のひとつ。
'''シジミチョウ科'''(シジミチョウか、小灰蝶、蜆蝶 Lycaenidae)は、[[チョウ目]](鱗翅目)[[アゲハチョウ上科]]内のひとつの分類単位。いっぱんに成虫は小型で、卵または幼虫で越冬、幼虫は小判型である。日本に分布する種は樹頂性の[[ミドリシジミ亜科]]・草原性の[[ヒメシジミ亜科]]の2種類に大別される。名前は[[シジミ|シジミ貝]]の形に似た羽根の形に由来する<ref>[http://insects.life.coocan.jp/Specimens/Shijimichou.htm 昆虫館 シジミチョウ科]</ref>。


いっぱんに[[成虫]]は小型で、[[幼虫]]は[[ワラジムシ]]型の種が多い。本科の[[生物の分類|分類]]にかんしては議論があり、[[シジミタテハ科]] {{Sname||Riodinidae}} を[[亜科]]として含む分類体系などがあるが、本項では基本的にシジミタテハ科を含めない(狭義の)シジミチョウ科を扱う。
== 概要 ==
[[南極大陸]]を除く全ての[[大陸]]に分布する。多くの[[亜科]]・[[属 (分類学)|属]]に分けられ、種類数は6,000種を越える<ref name="蝶 (2006)、138頁">[[#蝶|蝶 (2006)、138頁]]</ref>。
全世界に15,000-20,000種いるチョウのうち、40[[パーセント|%]]ほどをシジミチョウが占めている。


== 分布と多様性 ==
[[成虫]]の前翅長は1-3 [[センチメートル|cm]]ほどで、チョウ全体で見ると小型である。成虫の[[昆虫の翅|翅]]は特に突起がなく三角形だが、後翅に[[アゲハチョウ]]のような細い[[尾状突起]]をもつものも多い。翅の模様は多彩で、種類やオス・メスによって異なるが、属によってだいたいの傾向がある。また、翅の表と裏では色や模様が異なるのもシジミチョウの特徴である。たとえば[[ミドリシジミ]]や[[ルリシジミ]]、[[ムラサキツバメ (蝶)|ムラサキツバメ]]など、翅色にちなんだ[[和名]]がついた種類がいるが、これらはほとんど翅の表側の色を指しており、翅の裏側は地味な褐色や灰色のものが多い。成虫は翅を閉じて止まるので、翅裏の地味な色は周囲にまぎれる[[保護色]]となる。
世界からおよそ 5200[[種 (分類学)|種]]が知られる{{Sfn|van Nieukerken|Kaila|Kitching|Kristensen|2011}}{{Efn|シジミタテハ科を亜科として含む場合、本科の種数は6000種を超え、チョウ全体の三分の一を占める{{Sfn|New|1993|pp=1-4}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|p=734}}。}}。[[南極大陸]]以外のすべての[[大陸]]、[[ニュージーランド]]、および[[小笠原諸島]]や[[ハワイ諸島]]、[[タヒチ]]などのいくつかの[[海洋島]]に分布する。種多様性がもっとも高いのは[[東洋区]]で、次いで[[エチオピア区]]で高く、[[南北アメリカ大陸]]では種多様性が低い。下位分類群によっては分布する[[生物地理区]]が局限されるものも見られる。[[新熱帯区]]を多様性の中心とするシジミタテハ科とは対照的な分布パターンを示すことから、両科の起源と分散の過程が異なる可能性が示唆されている{{Sfn|ELIOT|1973|pp=457-465}}。


==== 日本に分布する種 ====
[[幼虫]]は太くて短い[[ケムシ]]状のものや、[[ワラジムシ]]のような形のものがいる。食性も多種多様で、[[シダ植物]]、[[ソテツ]]、[[菌類]]、[[地衣類]]などを食べる種類も少数ながら存在するが、おおむね新芽やつぼみのような柔らかく[[タンパク質]]に富んだ部位を食べるものが多い。さらに変わったものでは[[アリ]]と[[共生]]する[[クロシジミ]]、アリの[[卵]]や幼虫を食べる[[ゴマシジミ]]や[[アリノスシジミ]]、[[アブラムシ]]を食べる[[ゴイシシジミ]]などもいる。ただし、アリとの共生やそれに伴う蜜腺などの形質はシジミチョウ科の様々な系統で散発的に見られ、もともとはシジミチョウ科全体の共有形質であったのが後に様々な系統で失われたのではないかという説も有力である。
日本には[[ヒメシジミ亜科]] 39種、[[ミドリシジミ亜科]] 36種、[[ベニシジミ亜科]]、[[アシナガシジミ亜科]]、[[ウラギンシジミ亜科]]がそれぞれ 1種ずつ分布するとされる{{Sfn|猪又|松本|2006|p=138}}{{Efn|[[亜科]]については[[#分類]]節を参照。}}。一部の種は[[昆虫類レッドリスト_(環境省)#チョウ目(鱗翅目)|環境省によって絶滅危惧種に指定]]されており、そのうち[[オガサワラシジミ]] {{Snamei|species|Celastrina ogasawaraensis}} は2021年時点で[[絶滅]]状態にある可能性が高いとされている{{Sfn|苅部 (2020-2021)}}。


== 形態 ==
[[蛹]]は帯蛹型で、尾部のカギ状突起と胸の部分の帯糸で自分の体をぴったりと固定する。
成虫はいっぱんに小型の種が多く、[[翅|前翅]][[翼幅|開帳]]が最小で 6-7 [[ミリメートル|mm]]になる {{Snamei||Brephidium exilis}} や {{Snamei|species|Micropsyche ariana}} は世界最小のチョウとされる{{Sfn|New|1993|p=1}}。後翅には[[尾状突起]]を有する種が多く{{Sfn|New|1993|p=8}}、とくにミドリシジミ亜科で多く見られる。この尾状突起は[[:w:Anti-predator adaptation|捕食者の攻撃から身を守る]]ために役立っていると考えられており、とくに、捕食者からの攻撃をそらせるための「偽の頭部(false head)」として機能しているという仮説がよく知られているが{{Sfn|ELIOT|1973|pp=398-399}}{{Sfn|Novelo Galicia|Luis Martínez|Cordero​|2019}}、尾状突起の形状は多様であり、また、被食回避効果を実際に検証・評価した研究はすくない{{Sfn|Novelo Galicia|Luis Martínez|Cordero​|2019}}。翅の斑紋には[[性的二型]]が見られる種が多い{{Sfn|New|1993|p=7}}。


本科を[[形態学 (生物学)|形態的特徴]]から厳密に定義づけるのはむずかしいとされている{{Sfn|ELIOT|1973|pp=375-381}}{{Sfn|DE JONG|VANE-WRIGHT|ACKERY|1996}}{{Sfn|Shiraiwa (1996-2021)}}。たとえば、本科においては多数の[[属 (分類学)|属]]で[[雄]]成虫の[[六脚類##胸部|前脚]][[関節肢#肢節の名称と数|跗節]]が[[退化]]することが知られているが、これは科内で普遍的に見られる特徴ではなく、雄の前脚が退化しない属も多い{{Sfn|ELIOT|1973|pp=394-396}}。シジミタテハ科を含む(広義の)本科の成虫は、[[触角]]の基部と密接した[[複眼]]が部分的に凹むことによって定義づけることができるとされる{{Sfn|DE JONG|VANE-WRIGHT|ACKERY|1996}}。
温帯や冷帯に分布する種類は[[越冬]]を行う。チョウは[[科 (分類学)|科]]や亜科によって越冬する成長段階(越冬態)がだいたい決まっているが、シジミチョウの越冬態は同じ亜科でもばらつきがある。
* 卵 - [[アカシジミ]]、[[ミドリシジミ]]など
* 幼虫 - [[ベニシジミ]]、[[ゴマシジミ]]、[[ヤマトシジミ (蝶)|ヤマトシジミ]]、[[ツバメシジミ]]など
* 蛹 - [[ルリシジミ]]、[[コツバメ]]など
* 成虫 - [[ムラサキツバメ (蝶)|ムラサキツバメ]]、[[ムラサキシジミ]]、[[ウラギンシジミ]]など


幼虫は一部を除き、いっぱんにワラジムシのような形態([[:wikt:en:onisciform|onisciform]])を示し{{Sfn|Shiraiwa (1996-2021)}}{{Sfn|ELIOT|1973|pp=409-414}}、発達した[[六脚類#胸部|前胸]]の下に[[六脚類#頭部|頭部]]をひっこめて隠すことのできるものが多いが{{Sfn|ELIOT|1973|pp=409-414}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-738}}{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}、幼虫期が未知の種も多い{{Sfn|ELIOT|1973|pp=409-414}}。
== 分類 ==
多くの[[亜科]]に分けられる。ウラギンシジミ亜科などは独立した科として扱われることもある。
* [[コケシジミ亜科]] Lipteninae
* [[ホウセキシジミ亜科]] [[:w:Poritiinae|Poritiinae]]
* [[アリノスシジミ亜科]] Lyphyrinae - [[アリノスシジミ]]
* Ogyrinae
* [[ミドリシジミ亜科]] [[:w:Theclinae|Theclinae]] - [[ミドリシジミ]]類、[[ムラサキシジミ]]、[[ムラサキツバメ (蝶)|ムラサキツバメ]]、[[アカシジミ]]、[[コツバメ]]など
* [[ヒメシジミ亜科]] [[:w:Polyommatinae|Polyommatinae]] - [[クロシジミ]]、[[ヤマトシジミ (蝶)|ヤマトシジミ]]、[[ルリシジミ]]、[[ツバメシジミ]]、[[ゴマシジミ]]、[[ウラナミシジミ]]、[[ヒメシジミ]]など
* [[ベニシジミ亜科]] [[:w:Lycaeninae|Lycaeninae]] - [[ベニシジミ]]
* [[アシナガシジミ亜科]](カニアシシジミ亜科) [[:w:Miletinae|Miletinae]] - [[ゴイシシジミ]]
* [[ウラギンシジミ亜科]] [[:w:Curetinae|Curetinae]] - [[ウラギンシジミ]]
=== 日本で見られる種 ===
日本には、ミドリシジミ亜科(36種)、ヒメシジミ亜科(39種)、ベニシジミ亜科(ベニシジミ1種)、アシナガシジミ亜科(ゴイシシジミの1種)、ウラギンシジミ亜科(ウラギンシジミの1種)が生息していることが知られている<ref name="蝶 (2006)、138頁" />。


一部の種は[[絶滅危惧種]]に指定されている(「[[昆虫類レッドリスト (環境省)|昆虫類レッドリスト]]」のチョウ目(鱗翅目)参照)。このうち[[小笠原諸島]]の[[固有種]]であるオガサワラシジミは、[[多摩動物公園]]で保護・増殖が進められていたが<ref>[https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/ogasawarashijimi.html オガサワラシジミ]環境省、2018年1月13日閲覧</ref><ref>[http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=&link_num=24502 オガサワラシジミの周年飼育に新たに成功しました──2016~17年 第7世代まで誕生(多摩動物公園)]東京ズーネット(2017年11月9日)2018年1月13日閲覧</ref>、2020年8月25日にこれらが全滅し、絶滅したとされる<ref>[https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=&link_num=26374 オガサワラシジミの生息域外個体群の繁殖途絶について(多摩動物公園)]東京ズーネット(2020年8月27日)2020年8月31日閲覧</ref>。
<gallery>
<gallery>
File:Pseudolycaena damo.jpg|<small>{{Snamei||Pseudolycaena|Pseudolycaena damo}}, [[メキシコ]]. 本種の尾状突起は「偽の頭部」として機能している可能性が高い{{Sfn|Novelo Galicia|Luis Martínez|Cordero​|2019}}</small>
ファイル:Patrinia scabiosifolia and Lycaena phlaeas side 2011-09-25.jpg| <small>ベニシジミ亜科<br />[[ベニシジミ]]<br />''Lycaena phlaeas daimio''</small><br /><small>日本産亜種<br />日本から[[中央アジア]]を経て<br />[[ヨーロッパ]]まで広く分布する。<br />日当たりの良い草地でよく見られる</small>
File:Davidraju Buxa (8).jpg|<small>{{Snamei||Zeltus amasa}}, インド.</small>
ファイル:Maculinea teleius.jpg| <small>ヒメシジミ亜科<br />[[ゴマシジミ]]<br />''Maculinea teleius''</small><br /><small>日本の冷涼な地方からヨーロッパ<br />まで分布する。幼虫は最初<br />[[ワレモコウ]]の花を食べるが<br />成長すると[[アリ]]の巣に運ばれ<br />アリの卵や幼虫を食べる。</small>
File:Karner blue butterfly, U, face close-up, Indiana 2013-04-23-12.32.02 ZS PMax (8678832842).jpg|<small>{{Snamei||Lycaeides melissa samuelis}} の老齢幼虫(下面), [[アメリカ]].</small>
ファイル:Lepidoptera 001.jpg|<small>ヒメシジミ亜科<br />[[ルリシジミ]]<br />''Celastrina argiolus''</small>
ファイル:Pale Grass Blue October 2007.jpg|<small>ヒメシジミ亜科<br />[[ヤマトシジミ (蝶)|ヤマトシジミ]]<br />''Pseudozizeeria maha''</small>
ファイル:Lampides boeticus 2011-11-03.jpg|<small>ヒメシジミ亜科<br />[[ウラナミシジミ]]<br />''Lampides boeticus''</small>
ファイル:Curetis acuta paracuta in Meijo Park.jpg|<small>ウラギンシジミ亜科<br />[[ウラギンシジミ]]<br />''Curetis acuta''</small>
</gallery>
</gallery>

== 生態 ==
=== アリとの関係 ===
[[File:Arhopala centaurus pirithous – Bengal Centaur Oakblue (0) larva.jpg|thumb|220px|<small>{{Snamei||Arhopala centaurus|Arhopala centaurus pirithous}} 幼虫, インド. 多数のアリ<!--たぶんツムギアリ-->を随伴させている.</small>]]
本科に属する種のうち[[生活史 (生物)|生活史]]が部分的にでも明らかにされているのは全体のおよそ20%にとどまるが、完全な生活史が明らかになっている種のうちおよそ75%がなんらかのかたちでアリと関係しており{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|p=734-737}}、本科は[[アリ]]と関係が深い分類群として知られている{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|New|1993}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002}}{{Sfn|Pierce|1985}}{{Sfn|寺山|丸山|2007|pp=20-26}}{{Sfn|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}}{{Sfn|Mizuno|Hagiwara|Akino|2018}}。アリとの{{日本語版にない記事リンク|生物間相互作用|en|biological interaction}} は本科の多様化と[[進化]]につよい影響を与えてきたと考えられており、さまざまな観点から調査研究の対象になっている。科内での{{日本語版にない記事リンク|好蟻性|en|myrmecophily}}の程度や様式はさまざまだが、本科のアリとの関係はおおむね以下の三種類に大別できる{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}。

; {{Harvtxt|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002}} による、シジミチョウ科の幼虫とアリとの相互作用の分類
:* 義務的関係{{Sfn|寺山|丸山|2007|pp=20-26}}(obligate assosiation)
:: :生活史のすくなくとも一部において常にアリと関係し、アリがいなければ生育することができない。基本的に[[寄主]]アリに対して高い寄主特異性を示し、通常は特定の種または属のアリに依存する。アリとの関係は[[共生]]的なものと[[寄生]]的なものの両方が見られる{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}。完全な生活史が知られている種の 30%が該当し、日本では[[キマダラルリツバメ]] {{Snamei|species|Cigaritis|Spindasis takanosis}}、[[クロシジミ]] {{Snamei||Niphanda fusca}}、[[ゴマシジミ]] {{Snamei||Maculinea teleius}}、[[オオゴマシジミ]] {{Snamei||Maculinea arionides|M. arionides}}、[[ムモンアカシジミ]] {{Snamei||Shirozua jonasi}} の5種が該当する{{Sfn|寺山|丸山|2007|pp=10-11; 20-26}}。
:* 任意的関係{{Sfn|寺山|丸山|2007|pp=20-26}}(facultative assosiation)
:: :アリとの関係は空間的にも時間的にも断続的であり、アリを伴わなくても生存することができる。アリとの関係は非特異的かつ[[相利共生]]的なものがほとんどだが、一部の種でアリを[[捕食]]する行動が観察・報告されている{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}。完全な生活史が知られている種の 45%が該当し、日本では[[ムラサキシジミ]] {{Snamei||Narathura japonica}} など多くの種が該当する{{Sfn|寺山|丸山|2007|pp=10-11; 20-26}}。
:* アリと関係を持たない(non-ant-associated, mymecoxenous)
:: :アリからの世話を受けず、積極的に関係しない。捕食者であるアリの攻撃から身を守るための防御手段などを持たないわけではない。完全な生活史が知られている種の 25%が該当する{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}。日本にも分布する[[ベニシジミ]] {{Snamei||Lycaena phlaeas}} などが該当する{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|p=753}}。


本科の好蟻性はアリの行動を操作することで成立しており、アリの操作はすくなくとも三つの方法、すなわちアリの攻撃性の抑制、アリを引き付けて近くにとどめること、アリに自らを守らせること、で行われる。アリの行動を操作する基盤となるのが[[:w:Bioacoustics|音響的]]・[[:w:Chemical ecology|化学的]]、あるいは視覚的信号であり、それらの信号を生成・伝達するための特殊化した[[器官]]を好蟻性器官(myrmecophilous organs, ant-associated organs)と呼ぶ{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|寺山|丸山|2007|pp=20-26}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739}}。化学的信号の伝達にかかわる好蟻性器官のうち、もっとも基本的な三つ{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}}を以下に概説する。これら三種の好蟻性器官はいずれも[[分泌|外分泌性]]であり、アリに対する栄養源の提供や{{日本語版にない記事リンク|化学擬態|en|chemical mimicry}}のために機能すると考えられるが、分泌物の正確な性質などにかんしてはわかっていないことも多い。また、PCOs を除き、科内で好蟻性器官が普遍的に見られるわけではなく、たとえばアシナガシジミ亜科は基本的に伸縮突起および蜜腺を欠く{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739}}。

[[File:Gram Blue Larva 1.jpg|thumb|200px|<small>オジロシジミ {{Snamei||Euchrysops cnejus}} 幼虫. 後端近くに伸縮突起が見える.</small>]]
; 幼虫の基本的な好蟻性器官
:* PCOs{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}(pore cupola organs)
:::体表全体に散在する。[[アリノスシジミ]] {{Snamei||Liphyra brassolis}} を除く{{Efn|{{Harvtxt|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}} はアリノスシジミ幼虫の体表に特殊化した PCOs が存在する可能性を示している{{Sfn|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}}。}}、幼虫期が既知の本科すべてで観察されている。[[炭化水素]]や[[アミノ酸]]を分泌してアリの攻撃を抑制するために機能している可能性が考えられている{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739}}。
:* 伸縮突起{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}(tentacle organs)
:::第8[[六脚類#腹部|腹節]]背側部に対になって存在する。アリの行動を操作する揮発性物質を分泌する、または物理的ないし視覚的な刺激をアリに与えるために機能している可能性がある{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739}}。
:* 蜜腺{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}(dorsal nectary organ)
:::第7腹節背面に存在する。[[糖]]とアミノ酸を含む液滴{{Efn|[[同翅類]]の[[排泄]]する[[甘露 (昆虫学)|甘露]]([[:w:honeydew (secretion)|honeydew]])と同一視されることも多いが、こちらは[[分泌]]物であることから、{{Harvtxt|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002}} は両者を区別している{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739}}。}}を分泌し、アリに与える{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}{{Sfn|Dupont|Zemeitat|Lohman|Pierce|2016}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739}}。

これらの基本的な好蟻性器官にくわえ、樹状突起{{Sfn|JERATTHITIKUL|CHANTARASAWAT|YAGO|HIKIDA|2013}}(dendritic setae)などの付加的な好蟻性器官や音響信号を発生させる機構などが見られる場合もあり、通常は複数の器官・機構が複合的に機能することで好蟻性が維持される{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=743-744}}。

[[File:Jalmenus-evagoras-pupae.jpg|thumb|200px|<small>{{Snamei||Iridomyrmex}} 属のアリを随伴させる {{Snamei|Jalmenus evagoras}} 蛹, [[オーストラリア]].</small>]]
好蟻性は[[蛹]]期においても見られる例がすくなくない。[[蛹化]]の際に幼虫の好蟻性器官の多くは失われると考えられるが、体表炭化水素(cuticular hydrocarbons)の模倣による化学擬態によってアリからの攻撃の抑制したり{{Sfn|Mizuno|Hagiwara|Akino|2018}}、{{日本語版にない記事リンク|摩擦による発音|en|stridulation}} によってアリを誘引したりする例{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737-739; 743}}が知られている。

アリは多くの場合、本科の成虫を獲物として扱う。アリの巣中で蛹化する種では、[[羽化]]直後の成虫は脱落しやすい鱗粉に覆われており、巣を出るまでアリの攻撃から身を守ることができるようになっている。一部の種では成虫期においてもアリの行動を操作する手段を有している可能性が報告されており、たとえば {{Snamei||Ogyris genoveva}} は寄主植物の根元にアリが形成するシェルター内で幼虫期を過ごし、羽化直後の成虫はアリに攻撃されることなくシェルターの近くで翅を伸ばすことができるという。また、成虫がアリを[[交尾]]や[[産卵]]のきっかけとして利用する例も知られている。たとえば、{{Snamei||Jalmenus evagoras}} の雌成虫はアリを目印にして産卵を行い、雄成虫はアリを目印にして同種の雌成虫を探すとされる{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=741-742}}。

=== 食性 ===
他の[[鱗翅類]]と同様、本科においても、幼虫期に生きた植物組織のみを摂食して生育する[[植物食]]は一般的な[[食性]]である。一方で本科においては、幼虫期の一部または全期間において昆虫由来の栄養源を利用する種がすくなからず知られている{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|p=737}}。科内では植物しか食べない種からアリのみを摂食する種、成長段階で利用する餌資源を切り替える種までがひろく見られるが、[[#分類|次節]]でも概説するとおり、食性は下位分類群ごとにある程度異なる傾向がある{{Sfn|New|1993|pp=5-7}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=748-754}}。

植物を摂食する種において、著しい[[食草|広食性]]を示す種はすくなく、本科においては 21科46属の植物を摂食した記録のある {{Snamei||Strymon melinus}} がもっとも[[食草]]範囲の広い種とされている。また、コツバメ属{{Sfn|日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013a}}{{Snamei||Callophrys}} には 11の科の植物を摂食した記録のある種も知られる{{Sfn|New|1993|pp=5-8}}。本科は[[窒素]]を多く含む植物を食草とする種が多く、[[マメ科]]のほか、[[窒素固定]]を行うことが知られている既知の植物の多くで本科の幼虫による接触が記録されている{{Sfn|Pierce|1985}}。中には[[地衣類]]を摂食するコケシジミ亜科や、食草である[[ソテツ類]]から化学物質を得、成虫期における[[:w:chemical defense|化学防御]]に利用する {{Snamei||Eumaeus atala}} など、チョウの中でもめずらしい食性の例も知られる。多くの場合、植物組織は外側から摂食され、摂食部位は[[蕾]]や[[花]]、[[果実]]、[[葉]]や[[芽]]など多岐にわたるが、植物部位の内部に食い入る穿孔性・{{日本語版にない記事リンク|潜葉性|en|leaf mining}} を示す種も知られる{{Sfn|New|1993|pp=1; 5-8}}。

本科に属する種のうち、およそ 300種が、生活史の一部またはすべてにおいて昆虫由来の栄養源に依存することが記録、または疑われている。昆虫由来の栄養源への依存とは、具体的には次のようなもの、すなわちアリの[[卵]]、幼虫、蛹の[[捕食]]([[:w:myrmecophagy|myrmecophagy]])、アリから口移しで給餌を受ける([[:w:trophallaxis|trophallaxis]])、[[同翅類]]昆虫の捕食(homopterophagy)、同翅類昆虫の[[排泄]]する[[甘露]]([[:w:honeydew (secretion)|honeydew]])の摂取、他のシジミチョウ科幼虫の捕食(faculative cannivalism, pradation)などが該当する。このような食性を示す種の大半がアシナガシジミ亜科と {{Snamei||Lepidochrysops}} 属(ヒメシジミ亜科)に属しており、他の系統に属するのは 40種程度とされる。昆虫由来の栄養源に依存する鱗翅類のうち半数以上を本科が占めるため、アシナガシジミ亜科の多くはアリと積極的関係をもたないものの、本科における食性の進化はアリと深く関係していると考えられている{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=737; 753-754}}。

成虫は基本的に花から[[蜜食動物|吸蜜]]する種が多いが、コケシジミ亜科やアシナガシジミ亜科、ミドリシジミ亜科の一部の種は訪花せず、{{日本語版にない記事リンク|花外蜜腺|en|extrafloral nectaries}} や同翅類の甘露に依存する。アリノスシジミは[[口吻]]が退化し、成虫は餌を取ることがないと考えられる{{Sfn|New|1993|p=7}}。

<gallery>
File:San Bruno Elfin butterfly larva FWS 9879.jpg|<small>{{Snamei||Sedum}} 属の花を食べる {{Snamei||Incisalia mossii}} 幼虫, [[アメリカ]]</small>
File:Red Pierrot Talicada nyseus Caterpillar DSCN4219 (5).jpg|<small>食草の葉に食い入る {{Snamei||Talicada nyseus}} 幼虫, インド.</small>
File:Virachola isocrates – Common Guava Blue Larva (2).jpg|<small>{{Snamei||Virachola isocrates}} 幼虫, インド. [[ザクロ]]の果実を食害する.</small>
File:Spalgis epius Cat early instar.JPG|<small>{{Snamei||Spalgis epius}} 幼虫, インド. {{Snamei||Crematogaster}} 属などのアリが好む同翅類を捕食する{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=749-751}}.</small>
File:Loxura atymnus-Kadavoor-2018-06-18-001.jpg|<small>{{Snamei||Spathoglottis plicata}} の花外蜜腺から吸蜜する {{Snamei||Loxura atymnus}} 成虫, インド. </small>
</gallery>

=== その他 ===
とくに[[温帯]]に分布する種は、どの[[変態#昆虫の変態|発育段階]]で[[越冬]]するか(越冬態)が基本的にはっきり決まっている{{Sfn|New|1993|p=1}}。

== 分類 ==
{{cladogram |style = width:100px
|title = 本科の系統樹の一例
|align = right
|caption = <small>{{Harvtxt|ELIOT|1973}} によるもの{{Sfn|ELIOT|1973|pp=377; 471}}{{Efn|name=和名}}。この[[系統樹]]はおおむねひろく受け入れられたものの、提唱された後にいくつかの修正を経ており{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}{{Sfn|New|1993|pp=1-2}}、近年の分子系統学的研究もさらなる修正の必要があることを示唆している{{Sfn|Brower (2007-2008)}}{{Sfn|Espeland|Breinholt|Willmott|Warren|2018}}。</small>
|cladogram=
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本科の分類にかんしては議論が多く、流動的である{{Sfn|Shiraiwa (1996-2021)}}{{Sfn|Brower (2007-2008)}}{{Sfn|New|1993|pp=1-2}}。とくに[[シジミタテハ科]] {{Sname||Riodinidae}} との系統的関係にかんしては、本科に亜科として含めるものから、本科よりもむしろ[[タテハチョウ科]] {{Sname||Nymphalidae}}と近縁である可能性を指摘するものまでさまざまな見解がある{{Sfn|New|1993|pp=1-2}}{{Sfn|Wahlberg|Braby|Brower|de Jong|2005}}。近年の[[分子系統学]]的観点にもとづく分類では、シジミタテハ科は本科の[[姉妹群]]として、本科とは独立した科として扱われることが多い{{Sfn|Wahlberg|Braby|Brower|de Jong|2005}}{{Sfn|Espeland|Hall|DeVries|Lees|2015}}{{Sfn|Espeland|Breinholt|Willmott|Warren|2018}}。

ここでは、[[:w:John Nevill Eliot|John Nevill Eliot]] の提唱した本科の暫定的な高次分類体系 {{Harv|ELIOT|1973}} にもとづいた亜科の概説と、本科の下位分類の変遷を紹介する。{{Harvtxt|ELIOT|1973}} は、多少の変更を加えながらもシジミチョウ科の分類体系として長らくよく参照されてきたが{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|p=734-737}}{{Sfn|New|1993|pp=1-2}}{{Sfn|森下|1978}}、近年の分子系統学的研究は、Eliot の提唱した複数の下位分類群が[[多系統群]]である可能性を示しており、今後も分類の見直しが続く可能性は高い{{Sfn|Brower (2007-2008)}}{{Sfn|Espeland|Breinholt|Willmott|Warren|2018}}。

; {{Harvtxt|ELIOT|1973}} によるシジミチョウ科の高次分類体系と亜科の概説{{Efn|name=和名|亜科[[和名]]は特記のない限り、{{Harvtxt|Shiraiwa (1996-2021)}} を参照した。また、[[族 (分類学)|族]]和名は併記しないものとした。}}
: '''シジミチョウ科 {{Sname||Lycaenidae}} <small>Leach, 1815 ''[[sensu]]'' {{Harvnb|ELIOT|1973}}</small>'''
::* [[コケシジミ亜科]] {{Sname||Lipteninae}} <small>Röber, 1892</small>
::::近年は次科に含める場合がある{{Sfn|Brower (2007-2008)}}{{Sfn|Espeland|Breinholt|Willmott|Warren|2018}}。幼虫は地衣類や微細な[[真菌]]を餌とし、房状の毛を有し[[ドクガ科]]に似るという。エチオピア区にのみ分布する{{Sfn|磐瀬|1954}}{{Sfn|ELIOT|1973|pp=422-423; 457-465}}。好蟻性は知られていない{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}。
::* [[ホウセキシジミ亜科|ホウセキシジミ亜科(キララシジミ亜科)]] {{Sname||Poritiinae}} <small>Doherty, 1886</small>
::::幼虫期はほとんど知られていないが、既知の例では[[維管束植物]]の葉を摂食し{{Sfn|Kaliszewska|Lohman|Sommer|Adelson|2015}}、コケシジミ亜科と同様にドクガ科に似ており、群生するという。東洋区に分布する{{Sfn|ELIOT|1973|pp=425; 457-465}}。好蟻性は知られていない{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}。
::* [[アリノスシジミ亜科]]{{Sfn|磐瀬|1954}}{{Sname||Liphyrinae}} <small>Doherty, 1889</small>
::::近年は基本的に次科に含める{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737}}{{Sfn|Brower (2007-2008)}}{{Sfn|Espeland|Breinholt|Willmott|Warren|2018}}{{Sfn|Kaliszewska|Lohman|Sommer|Adelson|2015}}{{Sfn|MASCHWITZ|NASSIG|DUMPERT|FIEDLER|1988}}。幼虫期が既知のすべての種で、幼虫が昆虫由来の栄養源に依存する。多様性の中心はアフリカであり、[[オーストラリア区]]と東洋区にも少数が分布する{{Sfn|ELIOT|1973|pp=425; 457-465}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=748-754; 754-755}}。
::* [[アシナガシジミ亜科|アシナガシジミ亜科(カニアシシジミ亜科)]] {{Sname||Miletinae}} <small>Corbet, 1939</small>
::::幼虫期が既知のすべての種で、幼虫が昆虫由来の栄養源に依存する{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=748-754}}{{Sfn|MASCHWITZ|NASSIG|DUMPERT|FIEDLER|1988}}{{Sfn|ELIOT|1973|p=426}}。蜜腺と伸縮突起を持たないが、アリと関係する種も知られる。アフリカと東洋区で多様であり、[[全北区]]に分布する種はわずかである{{Sfn|ELIOT|1973|pp=426; 457-465}}{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=754-755}}。
::* [[ウラギンシジミ亜科]] {{Sname||Curetinae}} <small>Distant, 1884</small>
::::ウラギンシジミ属 {{Snamei||Curetis}} のみによってなる[[単型 (分類学)|単型]]亜科{{Sfn|森下|1978}}{{Sfn|ELIOT|1973|p=428}}{{Sfn|ELIOT|1990}}。特異な幼虫形態を示す{{Sfn|森下|1978}}。東洋区を分布の中心とし、旧北区とオーストラリア区にも数種が分布する{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=754-755}}。
::* [[ミドリシジミ亜科]] {{Sname||Theclinae}} <small>Swainson, 1831</small>
::::種数のうえでは本亜科とヒメシジミ亜科がシジミチョウ科のほとんどを占める{{Sfn|New|1993|p=1-4}}。分布は[[コスモポリタン|汎世界]]的で、[[南極区]]を除くすべての生物地理区で見られる{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=754-755}}{{Sfn|ELIOT|1973|pp=428-429; 457-465}}。
::* [[ベニシジミ亜科]] {{Sname||Lycaeninae}} <small>Leach, 1815</small>
::::分布は汎世界的で、旧北区でもっとも種数が多い{{Sfn|ELIOT|1973|pp=441; 457-465}}。ほとんどの種は好蟻性を示さない{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=734-737; 754-755}}。
::* [[ヒメシジミ亜科]] {{Sname||Polyommatinae}} <small>Swainson, 1827</small>
::::ミドリシジミ亜科と並ぶ大きな亜科であり{{Sfn|New|1993|p=1-4}}、同様に汎世界的な分布を示す{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=754-755}}{{Sfn|ELIOT|1973|pp=441-442; 457-465}}。

[[File:Curetis acuta paracuta male.JPG|thumb|right|180px|[[ウラギンシジミ]] {{Snamei||Curetis acuta|Curetis acuta paracuta}} [[雄|♂]], <small>日本</small>]]
[[File:Pentila tropicalis tropicalis Spotted pentila.jpg|thumb|right|160px|{{Snamei||Pentila tropicalis}}, <small>[[南アフリカ]]</small>]]
[[File:Open wing basking position of Poritia hewitsoni Moore, -1866- – Common Gem (Male) MG 349.jpg|thumb|right|180px|{{Snamei||Poritia hewitsoni}} ♂, <small>インド</small>]]
[[File:Close wing pre sap sucking posture of Miletus chinensis C. Felder, 1862 – Common Mottle WLB-NEI DSC 4333.jpg|thumb|right|180px|{{Snamei||Miletus chinensis}}, <small>インド</small>]]
[[File:キマダラルリツバメ.jpg|thumb|right|180px|[[キマダラルリツバメ]] {{Snamei||Cigaritis|Cigaritis takanonis}} <br/>([[シノニム|syn.]] {{Snamei|Spindasis takanonis}}; {{Snamei|Aphnaeus takanonis}}){{Sfn|BOYLE|KALISZEWSKA|ESPELAND|SUDERMAN|2015}}[[雌|♀]], <small>日本</small>]]
[[File:Common blues (Polyommatus icarus) mating, male (l) and female (r).jpg|thumb|right|180px|[[交尾]]中の[[イカルスヒメシジミ]] {{Snamei||Polyommatus icarus}}, <small>[[イギリス]]</small>]]
[[File:PP Terasy, ohniváček černočárný (3).jpg|thumb|right|180px|[[オオベニシジミ]] {{Snamei||Lycaena dispar}} ♂, <small>[[チェコ]]</small>]]
[[File:Brown hairstreak (Thecla betulae) female 3.jpg|thumb|right|180px|{{Snamei||Thecla betulae}} ♀, <small>イギリス</small>]]

{| class = "wikitable mw-collapsible" style = "width:82%"
|+ シジミチョウ類の分類体系{{Efn|name=和名}}{{Efn|[[族 (分類学)|族]]以下の下位分類群は一部を除いて省略した。シジミタテハ科の下位分類についての詳細は {{日本語版にない記事リンク|シジミタテハ科|en|Riodinidae}} および [[:species:Riodinidae]] を参照。}}
! style="width:2%; background-color:#b0c4de"| 文献
!! style="width:17%; background-color:#b0c4de"| {{Harvtxt|CLENCH|1955}};<br/>{{Harvtxt|Shirôzu|Yamamoto|1957}}
!! style="width:21%; background-color:#b0c4de"| {{Harvtxt|ELIOT|1973}}
!! style="width:21%; background-color:#b0c4de"| {{Harvtxt|ELIOT|1990}};<br/>{{Harvtxt|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002}}
!! style="width:21%; background-color:#b0c4de"| {{Harvtxt|Brower (2007-2008)}}
|-
! style="width:2%; background-color:#fdd"| 科
!! style="width:17%; background-color:#fdd"| 狭義のシジミチョウ科 Lycaenidae [[sensu stricto]]
!! style="width:21%; background-color:#fdd"| シジミチョウ科 Lycaenidae
!! style="width:21%; background-color:#fdd"| シジミチョウ科 Lycaenidae
!! style="width:21%; background-color:#fdd"| シジミチョウ科 {{Sname|species|Lycaenidae}}
|-
| 下位分類群
| ※ 複数の群(group)
| rowspan="7"|
; コケシジミ亜科 Lipteninae
:* 族 Pentilini
:* 族 Liptenini
; ホウセキシジミ亜科 Poritiinae
; アリノスシジミ亜科{{Sfn|磐瀬|1954}}Liphyrinae
; アシナガシジミ亜科 Miletinae
:* 族 Miletini
:* 族 Tarakini
:* 族 Spalgini
:* 族 Lachnocnemini
; ウラギンシジミ亜科 Curetinae
; ミドリシジミ亜科 Theclinae
:* 族 Luciini
:* 族 Theclini
:* 族 Arhopalini
:* 族 Ogyrini
:* 族 Zesiini
:* 族 Amblypodiini
:* 族 Catapaecilmatini
:* 族 Oxylidini
:* 族 Hypotheclini
:* 族 Loxurini
:* 族 Horagini
:* 族 Cheritrini
:* 族 Aphnaeini{{Efn|name=キマルリ}}
:* 族 Iolaini
:* 族 Remelanini
:* 族 Hypolycaenini
:* 族 Deudorigini
:* 族 Tomarini
:* 族 Eumaeini
; ベニシジミ亜科 Lycaeninae
; ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
:* 族 Lycaenesthini
:* 族 Candalidini
:* 族 Niphandini
:* 族 Polyommatini
| rowspan="12"|
; シジミタテハ亜科{{Sfn|ELIOT|1990}}Riodininae
:* 族 Stygini
:* 族 Hamearini
:* 族 Euselasiini
:* 族 Corrachiini
:* 族 Riodinini
; キララシジミ亜科{{Sfn|ELIOT|1990}}Poritiinae
:* 族 Pentilini
:* 族 Liptenini
:* 族 Poritiini
; アシナガシジミ亜科 Miletinae
:* 族 Liphyrini
:* 族 Lachnocnemini
:* 族 Spalgini
:* 族 Miletini
; ウラギンシジミ亜科 Curetinae
; ベニシジミ亜科{{Sfn|ELIOT|1990}}Lycaeninae
:* 族 Theclini
:* 族 Aphnaeini{{Efn|name=キマルリ}}
:* 族 Lycaeini
:* 族 Polyommatini
| rowspan="7"|
; [[ウラギンシジミ亜科]] {{Sname|species|Curetinae}}
; [[ホウセキシジミ亜科]] {{Sname|species|Poritiinae}}
:* 族 {{Sname|species|Pentilini}}
:* 族 {{Sname|species|Liptenini}}
:* 族 {{Sname|species|Poritiini}}
; [[アシナガシジミ亜科]] {{Sname|species|Miletinae}}
:* 族 {{Sname|species|Lachnocnemini}}
:* 族 {{Sname|species|Liphyrini}}
:* 族 {{Sname|species|Miletini}}
:* 族 {{Sname|species|Spalgini}}
; 亜科 {{Sname|species|Aphnaeinae}}<!-- 順当にいけば「キマダラルリツバメ亜科」になるはずですが、和名出典が見つからないのでそのままにしています。もし和名を併記する場合はかならず出典をつけてください -->{{Efn|name=キマルリ|キマダラルリツバメ族{{Sfn|日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013b}}{{Sname|species|Aphnaeini}} の分類学的地位にかんしては議論が多い。{{Harvtxt|ELIOT|1973}} は本族をミドリシジミ亜科に含めたものの、亜科内における本族の系統的地位の決定が困難であることを示している{{Sfn|BOYLE|KALISZEWSKA|ESPELAND|SUDERMAN|2015}}{{Sfn|ELIOT|1973|p=470|loc=footnote.11}}。本族の系統的地位が他の族とは異なる可能性は[[生物系統地理学]]的研究{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=758-759}}や[[分子系統学]]的研究からも示唆されており{{Sfn|Espeland|Hall|DeVries|Lees|2015}}{{Sfn|Espeland|Breinholt|Willmott|Warren|2018}}{{Sfn|BOYLE|KALISZEWSKA|ESPELAND|SUDERMAN|2015}}、したがって、本族を亜科に格上げし、亜科 {{Sname|Aphnaeinae}} として扱う研究者も多い{{Sfn|Brower (2007-2008)}}{{Sfn|BOYLE|KALISZEWSKA|ESPELAND|SUDERMAN|2015}}。}}
; [[ヒメシジミ亜科]] {{Sname|species|Polyommatinae}}
:* 族 {{Sname|species|Lycaenesthini}}
:* 族 {{Sname|species|Candalidini}}
:* 族 {{Sname|species|Niphandini}}
:* 族 {{Sname|species|Polyommatini}}
; [[ベニシジミ亜科]] {{Sname|species|Lycaeninae}}
:* 族 {{Sname|Lycaenini}}
:* 族 {{Sname|Heliophorini}}
; [[ミドリシジミ亜科]] {{Sname|species|Theclinae}}
:* 族 {{Sname|species|Luciini}}
:* 族 {{Sname|species|Arhopalini}}
:* 族 {{Sname|species|Theclini}}
:* 族 {{Sname|species|Ogyrini}}
:* 族 {{Sname|species|Zesiini}}
:* 族 {{Sname|species|Amblypodiini}}
:* 族 {{Sname|species|Iolaini}}
:* 族 {{Sname|species|Hypolycaenini}}
:* 族 {{Sname|species|Remelanini}}
:* 族 {{Sname|species|Loxurini}}
:* 族 {{Sname|species|Horagini}}
:* 族 {{Sname|species|Cheritrini}}
:* 族 {{Sname|species|Catapaecilmatini}}
:* 族 {{Sname|species|Hypotheclini}}
:* 族 {{Sname|species|Oxylidini}}
:* 族 {{Sname|species|Eumaeini}}
:* 族 {{Sname|species|Deudorigini}}
:* 族 {{Sname|species|Tomarini}}
|-
! style="width:2%"| 科
!! style="width:20%"| コケシジミ科 {{Sname|Liptenidae}}
|-
| 下位分類群
|
; 亜科 Pentilinae
; 亜科 Durbaniinae
; 亜科 Lipteninae
; 亜科 Thestorinae
|-
! style="width:2%"| 科
!! style="width:17%"| アリノスシジミ科 {{Sname|Liphyridae}}
|-
| 下位分類群
|
; 亜科 Liphyrinae
:* 族 Liphyrini
:* 族 Deloneurini
:* 族 Lachnocnemini
; 亜科 Gerydinae
; 亜科 Spalginae
; 亜科 Poritiinae
|-
! style="width:2%"| 科
!! style="width:17%"| ウラギンシジミ科 {{Sname|Curetidae}}
|-
|
| ※ ウラギンシジミ属 {{Snamei|species|Curetis}} 単型
|-
! style="width:2%"| 科
!! style="width:17%"| シジミタテハ科 Riodinidae
!! style="width:21%"| シジミタテハ科 Riodinidae
!! style="width:21%"| シジミタテハ科 {{Sname|species|Riodinidae}}
|-
| 下位分類群
| rowspan="3"|
; 亜科 Hamearinae
:* 族 Hamearini
:* 族 Zemerini
; 亜科 Euselasiinae
:* 族 Euselasiini
:* 族 Stibogini
; 亜科 Riodininae
:* 族 Abisarini
:* 族 Helicopini
:* 族 Riodinini
:* 族 Theopini
; 亜科族不明 ''[[Incertae sedis]]''
::* 属 {{Snamei|species|Corrachia}}
::* 属 {{Snamei|species|Styx (Riodinidae)|Styx}}
| ※ {{Harvtxt|ELIOT|1973}} はシジミタテハ科の下位分類には触れていない
| rowspan="3"|
; 亜科 {{Sname|species|Euselasiinae}}
:* 族 {{Sname|species|Euselasiini}}
:* 族 {{Sname|species|Stygini}}
:* 族 {{Sname|species|Corrachiini}}
; 亜科 {{Sname|species|Riodininae}}
:* 族 {{Sname|species|Mesosemiini}}
:* 族 {{Sname|species|Eurybiini}}
:* 族 {{Sname|species|Riodinini}}
:* 族 {{Sname|species|Symmachiini}}
:* 族 {{Sname|species|Helicopini}}
:* 族 {{Sname|species|Nymphidiini}}
:* 族 {{Sname|species|Stalachtini}}
:* 族不明 ''Incertae sedis''
; 亜科 {{Sname|species|Nemeobiinae}}
|-
! style="width:2%"| 科
!! style="width:21%"| 科 {{Sname|Stygidae}}
|-
|
| ※ 属 {{Snamei|species|Styx (Riodinidae)|Styx}} 単型
|}

== 人との関係 ==
他のチョウの科と比べて小型種が多く、生活史の複雑さから飼育が困難な種も多いため、(コレクターによるものを除き)商業目的での[[昆虫採集|採集]]や[[昆虫館|昆虫施設]]での生体展示はあまり行われない傾向がある{{Sfn|New|1993|pp=8-9}}。

アリと義務的関係を持ち、昆虫由来の栄養源に依存する種は{{日本語版にない記事リンク|生態系の攪乱|en|ecological disturbance}}や{{日本語版にない記事リンク|生息地の喪失|en|habitat loss}}に対して脆弱である傾向が特につよく{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=753-754}}、[[人間活動]]の影響による[[絶滅危惧種|絶滅が危惧されている種]]も多い{{Sfn|Pierce|Braby|Heath|Lohman|2002|pp=753-754}}{{Sfn|New|1993|pp=9-19}}。
{{see also|w:List of endangered arthropods#Lycaenids|w:List of vulnerable arthropods#Lycaenids|w:List of near threatened arthropods#Lycaenids}}

一方で、いくつかの種は[[害虫]]と見なされる場合がある。たとえば、[[アフリカ]]南部が原産の {{Snamei||Cacyreus marshalli}} は[[20世紀]]末に[[ヨーロッパ]]に侵入したのち南部で急速に分布を拡大し、[[ベゴニア]]や[[ペラルゴニウム]]の栽培の脅威になっている{{Sfn|CABI|2021}}。また、アフリカから[[中東]]にかけて分布する {{Snamei||Deudorix livia}} はザクロや[[ナツメヤシ]]などさまざまな果物を[[食害]]する害虫として重視されている{{Sfn|Abbes|Zouba|Harbi|Ghrissi|2020}}。日本でも[[ウラナミシジミ]] {{Snamei||Lampides boeticus}} によるマメ科作物への被害{{Sfn|横浜植物防疫所|2010}}や[[クロマダラソテツシジミ]] {{Snamei||Chilades pandava}} による[[ソテツ]]への被害{{Sfn|沖縄県|2017}}がときに問題となる。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{reflist}}
{{Notelist}}
=== 出典 ===
<small>{{Reflist|30em}}</small>


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
=== 和文 ===
* {{Cite book|和書 |author=猪又敏男(編・解説) |coauthors=松本克臣(写真) |year=2006 |month=6 |title=蝶 |series=新装版山溪フィールドブックス |publisher=[[山と渓谷|山と溪谷社]] |isbn=4-635-06062-4 |ref=蝶}}
* {{Cite book|和書
| last = 猪又
| first = 敏男(編・解説)
| authorlink = species:Toshio Inomata
| last2 = 松本
| first2 = 克臣(写真)
| title = 蝶
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* {{Cite web
| author = 猪又, 敏男; 植村, 好延; 矢後, 勝也; 上田, 恭一郎; 神保, 宇嗣
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| archiveurl = https://web.archive.org/web/20210123170202/http://binran.lepimages.jp/taxa/family/Lycaenidae/genus
| archivedate = 2021-1-23
| accessdate = 2021-11-21
| ref = {{SfnRef|日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013a}}
}}
** {{Cite web
| author = 猪又, 敏男; 植村, 好延; 矢後, 勝也; 上田, 恭一郎; 神保, 宇嗣
| title = Aphnaeini キマダラルリツバメ族: 属一覧
| website = 日本産蝶類和名学名便覧
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| archiveurl = https://web.archive.org/web/20210306175509/http://binran.lepimages.jp/taxa/tribe/Aphnaeini/genus
| archivedate = 2021-3-6
| accessdate = 2021-11-28
| ref = {{SfnRef|日本産蝶類和名学名便覧 2010-2013b}}
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| last = 磐瀬
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| authorlink = 磐瀬太郎
| title = 他山の石(10)
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}}<!-- 高野|1907 -->

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| first = 守
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| last2 = 丸山
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| last = 森下
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}}<!-- 森下|1978 -->

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=== 英文 ===
{{Div col|2|rules=yes}}
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| author = Brower, Andrew V.Z.
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| accessdate = 2021-11-24
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| first2 = Jason P.W.
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| first4 = David C.
| last4 = Lees
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| last9 = Talavera
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| last11 = Salzman
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| last12 = Ruehr
| first13 = David J.
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}}<!-- Espeland|Hall|DeVries|Lees|2015 -->

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| first2 = Jesse
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| first5 = Roger
| last5 = Vila
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| last6 = Toussaint
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| last11 = Jarzyna
| first12 = Robert
| last12 = Guralnick
| first13 = David J.
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| first15 = Akito Y.
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| last = JERATTHITIKUL
| authorlink = species:Ekgachai Jeratthitikul
| first2 = Naratip
| last2 = CHANTARASAWAT
| first3 = Masaya
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| authorlink = species:Zofia A. Kaliszewska
| first2 = David J.
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| first3 = Kathrin
| last3 = Sommer
| first4 = Glenn
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| first5 = Douglas B.
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* {{Cite journal
| first = Takafumi
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| first2 = Yasuo
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| title = Chemical tactic of facultative myrmecophilous lycaenid pupa to suppress ant aggression
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| doi = 10.1007/s00049-018-0270-8
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| authorlink = species:Naomi E. Pierce
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| pages = 1577–1586
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}}<!-- Wahlberg|Braby|Brower|de Jong|2005 -->

{{Div col end}}

== 外部リンク ==
=== シジミチョウ科一般 ===
* [https://www.pteron-world.com/topics/classfication/lycaenidae/lycaenidae.html シジミチョウ科のページ - ぷてろんワールド]
* [http://tolweb.org/Lycaenidae/12175 Lycaenidae <nowiki>[Leach]</nowiki> 1815 - TREE OF LIFE web project]
=== 好蟻性 ===
* [http://column.odokon.org/2010/1201_182100.php アリと共に生きるチョウ - 日本応用動物昆虫学会コラム]


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2021年12月5日 (日) 11:43時点における版

シジミチョウ科
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 鱗翅目(チョウ目) Lepidoptera
階級なし : 有吻類 Glossata
階級なし : 異脈類 Heteroneura
階級なし : 二門類 Ditrysia
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: シジミチョウ科 Lycaenidae
学名
Lycaenidae Leach, 1815[1]
タイプ属
ベニシジミ属[2]
Lycaena Fabricius, 1807[1]
和名
シジミチョウ科[2]
亜科

本文参照

シジミチョウ科学名Lycaenidae; 漢字表記:小灰蝶科[3])はチョウのひとつ。

いっぱんに成虫は小型で、幼虫ワラジムシ型の種が多い。本科の分類にかんしては議論があり、シジミタテハ科 Riodinidae亜科として含む分類体系などがあるが、本項では基本的にシジミタテハ科を含めない(狭義の)シジミチョウ科を扱う。

分布と多様性

世界からおよそ 5200が知られる[4][注釈 1]南極大陸以外のすべての大陸ニュージーランド、および小笠原諸島ハワイ諸島タヒチなどのいくつかの海洋島に分布する。種多様性がもっとも高いのは東洋区で、次いでエチオピア区で高く、南北アメリカ大陸では種多様性が低い。下位分類群によっては分布する生物地理区が局限されるものも見られる。新熱帯区を多様性の中心とするシジミタテハ科とは対照的な分布パターンを示すことから、両科の起源と分散の過程が異なる可能性が示唆されている[7]

日本に分布する種

日本にはヒメシジミ亜科 39種、ミドリシジミ亜科 36種、ベニシジミ亜科アシナガシジミ亜科ウラギンシジミ亜科がそれぞれ 1種ずつ分布するとされる[8][注釈 2]。一部の種は環境省によって絶滅危惧種に指定されており、そのうちオガサワラシジミ Celastrina ogasawaraensis は2021年時点で絶滅状態にある可能性が高いとされている[9]

形態

成虫はいっぱんに小型の種が多く、前翅開帳が最小で 6-7 mmになる Brephidium exilisMicropsyche ariana は世界最小のチョウとされる[10]。後翅には尾状突起を有する種が多く[11]、とくにミドリシジミ亜科で多く見られる。この尾状突起は捕食者の攻撃から身を守るために役立っていると考えられており、とくに、捕食者からの攻撃をそらせるための「偽の頭部(false head)」として機能しているという仮説がよく知られているが[12][13]、尾状突起の形状は多様であり、また、被食回避効果を実際に検証・評価した研究はすくない[13]。翅の斑紋には性的二型が見られる種が多い[14]

本科を形態的特徴から厳密に定義づけるのはむずかしいとされている[15][16][17]。たとえば、本科においては多数の成虫の前脚跗節退化することが知られているが、これは科内で普遍的に見られる特徴ではなく、雄の前脚が退化しない属も多い[18]。シジミタテハ科を含む(広義の)本科の成虫は、触角の基部と密接した複眼が部分的に凹むことによって定義づけることができるとされる[16]

幼虫は一部を除き、いっぱんにワラジムシのような形態(onisciform)を示し[17][19]、発達した前胸の下に頭部をひっこめて隠すことのできるものが多いが[19][20][21]、幼虫期が未知の種も多い[19]

生態

アリとの関係

Arhopala centaurus pirithous 幼虫, インド. 多数のアリを随伴させている.

本科に属する種のうち生活史が部分的にでも明らかにされているのは全体のおよそ20%にとどまるが、完全な生活史が明らかになっている種のうちおよそ75%がなんらかのかたちでアリと関係しており[22]、本科はアリと関係が深い分類群として知られている[21][23][24][25][26][27][28]。アリとの生物間相互作用英語: biological interaction は本科の多様化と進化につよい影響を与えてきたと考えられており、さまざまな観点から調査研究の対象になっている。科内での好蟻性英語: myrmecophilyの程度や様式はさまざまだが、本科のアリとの関係はおおむね以下の三種類に大別できる[29]

Pierce et al. (2002) による、シジミチョウ科の幼虫とアリとの相互作用の分類
  • 義務的関係[26](obligate assosiation)
:生活史のすくなくとも一部において常にアリと関係し、アリがいなければ生育することができない。基本的に寄主アリに対して高い寄主特異性を示し、通常は特定の種または属のアリに依存する。アリとの関係は共生的なものと寄生的なものの両方が見られる[29]。完全な生活史が知られている種の 30%が該当し、日本ではキマダラルリツバメ Spindasis takanosisクロシジミ Niphanda fuscaゴマシジミ Maculinea teleiusオオゴマシジミ M. arionidesムモンアカシジミ Shirozua jonasi の5種が該当する[30]
  • 任意的関係[26](facultative assosiation)
:アリとの関係は空間的にも時間的にも断続的であり、アリを伴わなくても生存することができる。アリとの関係は非特異的かつ相利共生的なものがほとんどだが、一部の種でアリを捕食する行動が観察・報告されている[29]。完全な生活史が知られている種の 45%が該当し、日本ではムラサキシジミ Narathura japonica など多くの種が該当する[30]
  • アリと関係を持たない(non-ant-associated, mymecoxenous)
:アリからの世話を受けず、積極的に関係しない。捕食者であるアリの攻撃から身を守るための防御手段などを持たないわけではない。完全な生活史が知られている種の 25%が該当する[29]。日本にも分布するベニシジミ Lycaena phlaeas などが該当する[31]


本科の好蟻性はアリの行動を操作することで成立しており、アリの操作はすくなくとも三つの方法、すなわちアリの攻撃性の抑制、アリを引き付けて近くにとどめること、アリに自らを守らせること、で行われる。アリの行動を操作する基盤となるのが音響的化学的、あるいは視覚的信号であり、それらの信号を生成・伝達するための特殊化した器官を好蟻性器官(myrmecophilous organs, ant-associated organs)と呼ぶ[21][26][32]。化学的信号の伝達にかかわる好蟻性器官のうち、もっとも基本的な三つ[21][27]を以下に概説する。これら三種の好蟻性器官はいずれも外分泌性であり、アリに対する栄養源の提供や化学擬態英語: chemical mimicryのために機能すると考えられるが、分泌物の正確な性質などにかんしてはわかっていないことも多い。また、PCOs を除き、科内で好蟻性器官が普遍的に見られるわけではなく、たとえばアシナガシジミ亜科は基本的に伸縮突起および蜜腺を欠く[21][27][32]

オジロシジミ Euchrysops cnejus 幼虫. 後端近くに伸縮突起が見える.
幼虫の基本的な好蟻性器官
  • PCOs[21](pore cupola organs)
:体表全体に散在する。アリノスシジミ Liphyra brassolis を除く[注釈 3]、幼虫期が既知の本科すべてで観察されている。炭化水素アミノ酸を分泌してアリの攻撃を抑制するために機能している可能性が考えられている[21][27][32]
  • 伸縮突起[21](tentacle organs)
:第8腹節背側部に対になって存在する。アリの行動を操作する揮発性物質を分泌する、または物理的ないし視覚的な刺激をアリに与えるために機能している可能性がある[21][32]
  • 蜜腺[21](dorsal nectary organ)
:第7腹節背面に存在する。とアミノ酸を含む液滴[注釈 4]を分泌し、アリに与える[21][27][32]

これらの基本的な好蟻性器官にくわえ、樹状突起[21](dendritic setae)などの付加的な好蟻性器官や音響信号を発生させる機構などが見られる場合もあり、通常は複数の器官・機構が複合的に機能することで好蟻性が維持される[33]

Iridomyrmex 属のアリを随伴させる Jalmenus evagoras 蛹, オーストラリア.

好蟻性は期においても見られる例がすくなくない。蛹化の際に幼虫の好蟻性器官の多くは失われると考えられるが、体表炭化水素(cuticular hydrocarbons)の模倣による化学擬態によってアリからの攻撃の抑制したり[28]摩擦による発音英語: stridulation によってアリを誘引したりする例[34]が知られている。

アリは多くの場合、本科の成虫を獲物として扱う。アリの巣中で蛹化する種では、羽化直後の成虫は脱落しやすい鱗粉に覆われており、巣を出るまでアリの攻撃から身を守ることができるようになっている。一部の種では成虫期においてもアリの行動を操作する手段を有している可能性が報告されており、たとえば Ogyris genoveva は寄主植物の根元にアリが形成するシェルター内で幼虫期を過ごし、羽化直後の成虫はアリに攻撃されることなくシェルターの近くで翅を伸ばすことができるという。また、成虫がアリを交尾産卵のきっかけとして利用する例も知られている。たとえば、Jalmenus evagoras の雌成虫はアリを目印にして産卵を行い、雄成虫はアリを目印にして同種の雌成虫を探すとされる[35]

食性

他の鱗翅類と同様、本科においても、幼虫期に生きた植物組織のみを摂食して生育する植物食は一般的な食性である。一方で本科においては、幼虫期の一部または全期間において昆虫由来の栄養源を利用する種がすくなからず知られている[36]。科内では植物しか食べない種からアリのみを摂食する種、成長段階で利用する餌資源を切り替える種までがひろく見られるが、次節でも概説するとおり、食性は下位分類群ごとにある程度異なる傾向がある[37][38]

植物を摂食する種において、著しい広食性を示す種はすくなく、本科においては 21科46属の植物を摂食した記録のある Strymon melinus がもっとも食草範囲の広い種とされている。また、コツバメ属[2]Callophrys には 11の科の植物を摂食した記録のある種も知られる[39]。本科は窒素を多く含む植物を食草とする種が多く、マメ科のほか、窒素固定を行うことが知られている既知の植物の多くで本科の幼虫による接触が記録されている[25]。中には地衣類を摂食するコケシジミ亜科や、食草であるソテツ類から化学物質を得、成虫期における化学防御に利用する Eumaeus atala など、チョウの中でもめずらしい食性の例も知られる。多くの場合、植物組織は外側から摂食され、摂食部位は果実など多岐にわたるが、植物部位の内部に食い入る穿孔性・潜葉性英語: leaf mining を示す種も知られる[40]

本科に属する種のうち、およそ 300種が、生活史の一部またはすべてにおいて昆虫由来の栄養源に依存することが記録、または疑われている。昆虫由来の栄養源への依存とは、具体的には次のようなもの、すなわちアリの、幼虫、蛹の捕食myrmecophagy)、アリから口移しで給餌を受ける(trophallaxis)、同翅類昆虫の捕食(homopterophagy)、同翅類昆虫の排泄する甘露honeydew)の摂取、他のシジミチョウ科幼虫の捕食(faculative cannivalism, pradation)などが該当する。このような食性を示す種の大半がアシナガシジミ亜科と Lepidochrysops 属(ヒメシジミ亜科)に属しており、他の系統に属するのは 40種程度とされる。昆虫由来の栄養源に依存する鱗翅類のうち半数以上を本科が占めるため、アシナガシジミ亜科の多くはアリと積極的関係をもたないものの、本科における食性の進化はアリと深く関係していると考えられている[41]

成虫は基本的に花から吸蜜する種が多いが、コケシジミ亜科やアシナガシジミ亜科、ミドリシジミ亜科の一部の種は訪花せず、花外蜜腺英語: extrafloral nectaries や同翅類の甘露に依存する。アリノスシジミは口吻が退化し、成虫は餌を取ることがないと考えられる[14]

その他

とくに温帯に分布する種は、どの発育段階越冬するか(越冬態)が基本的にはっきり決まっている[10]

分類

本科の系統樹の一例

Pentilini

Liptenini

コケシジミ亜科 Lipteninae

ホウセキシジミ亜科 Poritinae

アリノスシジミ亜科[43]Liphyrinae

Lachnocnemini

Spalgini

Tarakini

Miletini

アシナガシジミ亜科 Miletinae

ウラギンシジミ亜科 Curetinae

Ogyrini

Arhopalini

Theclini

Zesiini

Amblypodiini

Aphnaeini[注釈 5]

Iolaini

Remelanini

Hypolycaenini

Oxylidini

Hypotheclini

Catapaecilmatini

Loxurini

Horagini

Cheritrini

Luciini

Deudorigini

Tomarini

Eumaeini

ミドリシジミ亜科 Theclinae

ベニシジミ亜科 Lycaeninae

Lycaenesthini

Candalidini

Polyommatini

Niphandini

ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
ELIOT (1973) によるもの[44][注釈 6]。この系統樹はおおむねひろく受け入れられたものの、提唱された後にいくつかの修正を経ており[29][45]、近年の分子系統学的研究もさらなる修正の必要があることを示唆している[46][47]

本科の分類にかんしては議論が多く、流動的である[17][46][45]。とくにシジミタテハ科 Riodinidae との系統的関係にかんしては、本科に亜科として含めるものから、本科よりもむしろタテハチョウ科 Nymphalidaeと近縁である可能性を指摘するものまでさまざまな見解がある[45][48]。近年の分子系統学的観点にもとづく分類では、シジミタテハ科は本科の姉妹群として、本科とは独立した科として扱われることが多い[48][49][47]

ここでは、John Nevill Eliot の提唱した本科の暫定的な高次分類体系 (ELIOT 1973) にもとづいた亜科の概説と、本科の下位分類の変遷を紹介する。ELIOT (1973) は、多少の変更を加えながらもシジミチョウ科の分類体系として長らくよく参照されてきたが[22][45][50]、近年の分子系統学的研究は、Eliot の提唱した複数の下位分類群が多系統群である可能性を示しており、今後も分類の見直しが続く可能性は高い[46][47]

ELIOT (1973) によるシジミチョウ科の高次分類体系と亜科の概説[注釈 6]
シジミチョウ科 Lycaenidae Leach, 1815 sensu ELIOT 1973
:近年は次科に含める場合がある[46][47]。幼虫は地衣類や微細な真菌を餌とし、房状の毛を有しドクガ科に似るという。エチオピア区にのみ分布する[43][51]。好蟻性は知られていない[29]
:幼虫期はほとんど知られていないが、既知の例では維管束植物の葉を摂食し[52]、コケシジミ亜科と同様にドクガ科に似ており、群生するという。東洋区に分布する[53]。好蟻性は知られていない[29]
:近年は基本的に次科に含める[29][46][47][52][54]。幼虫期が既知のすべての種で、幼虫が昆虫由来の栄養源に依存する。多様性の中心はアフリカであり、オーストラリア区と東洋区にも少数が分布する[53][55]
:幼虫期が既知のすべての種で、幼虫が昆虫由来の栄養源に依存する[38][54][56]。蜜腺と伸縮突起を持たないが、アリと関係する種も知られる。アフリカと東洋区で多様であり、全北区に分布する種はわずかである[57][58]
:ウラギンシジミ属 Curetis のみによってなる単型亜科[50][59][60]。特異な幼虫形態を示す[50]。東洋区を分布の中心とし、旧北区とオーストラリア区にも数種が分布する[58]
:種数のうえでは本亜科とヒメシジミ亜科がシジミチョウ科のほとんどを占める[61]。分布は汎世界的で、南極区を除くすべての生物地理区で見られる[58][62]
:分布は汎世界的で、旧北区でもっとも種数が多い[63]。ほとんどの種は好蟻性を示さない[64]
:ミドリシジミ亜科と並ぶ大きな亜科であり[61]、同様に汎世界的な分布を示す[58][65]
ウラギンシジミ Curetis acuta paracuta , 日本
Pentila tropicalis, 南アフリカ
Poritia hewitsoni ♂, インド
Miletus chinensis, インド
キマダラルリツバメ Cigaritis takanonis
(syn. Spindasis takanonis; Aphnaeus takanonis)[66], 日本
交尾中のイカルスヒメシジミ Polyommatus icarus, イギリス
オオベニシジミ Lycaena dispar ♂, チェコ
Thecla betulae ♀, イギリス
シジミチョウ類の分類体系[注釈 6][注釈 7]
文献 CLENCH (1955);
Shirôzu & Yamamoto (1957)
ELIOT (1973) ELIOT (1990);
Pierce et al. (2002)
Brower (2007-2008)
狭義のシジミチョウ科 Lycaenidae sensu stricto シジミチョウ科 Lycaenidae シジミチョウ科 Lycaenidae シジミチョウ科 Lycaenidae
下位分類群 ※ 複数の群(group)
コケシジミ亜科 Lipteninae
  • 族 Pentilini
  • 族 Liptenini
ホウセキシジミ亜科 Poritiinae
アリノスシジミ亜科[43]Liphyrinae
アシナガシジミ亜科 Miletinae
  • 族 Miletini
  • 族 Tarakini
  • 族 Spalgini
  • 族 Lachnocnemini
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ミドリシジミ亜科 Theclinae
  • 族 Luciini
  • 族 Theclini
  • 族 Arhopalini
  • 族 Ogyrini
  • 族 Zesiini
  • 族 Amblypodiini
  • 族 Catapaecilmatini
  • 族 Oxylidini
  • 族 Hypotheclini
  • 族 Loxurini
  • 族 Horagini
  • 族 Cheritrini
  • 族 Aphnaeini[注釈 5]
  • 族 Iolaini
  • 族 Remelanini
  • 族 Hypolycaenini
  • 族 Deudorigini
  • 族 Tomarini
  • 族 Eumaeini
ベニシジミ亜科 Lycaeninae
ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
  • 族 Lycaenesthini
  • 族 Candalidini
  • 族 Niphandini
  • 族 Polyommatini
シジミタテハ亜科[60]Riodininae
  • 族 Stygini
  • 族 Hamearini
  • 族 Euselasiini
  • 族 Corrachiini
  • 族 Riodinini
キララシジミ亜科[60]Poritiinae
  • 族 Pentilini
  • 族 Liptenini
  • 族 Poritiini
アシナガシジミ亜科 Miletinae
  • 族 Liphyrini
  • 族 Lachnocnemini
  • 族 Spalgini
  • 族 Miletini
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ベニシジミ亜科[60]Lycaeninae
  • 族 Theclini
  • 族 Aphnaeini[注釈 5]
  • 族 Lycaeini
  • 族 Polyommatini
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ホウセキシジミ亜科 Poritiinae
アシナガシジミ亜科 Miletinae
亜科 Aphnaeinae[注釈 5]
ヒメシジミ亜科 Polyommatinae
ベニシジミ亜科 Lycaeninae
  • Lycaenini
  • Heliophorini
ミドリシジミ亜科 Theclinae
コケシジミ科 Liptenidae
下位分類群
亜科 Pentilinae
亜科 Durbaniinae
亜科 Lipteninae
亜科 Thestorinae
アリノスシジミ科 Liphyridae
下位分類群
亜科 Liphyrinae
  • 族 Liphyrini
  • 族 Deloneurini
  • 族 Lachnocnemini
亜科 Gerydinae
亜科 Spalginae
亜科 Poritiinae
ウラギンシジミ科 Curetidae
※ ウラギンシジミ属 Curetis 単型
シジミタテハ科 Riodinidae シジミタテハ科 Riodinidae シジミタテハ科 Riodinidae
下位分類群
亜科 Hamearinae
  • 族 Hamearini
  • 族 Zemerini
亜科 Euselasiinae
  • 族 Euselasiini
  • 族 Stibogini
亜科 Riodininae
  • 族 Abisarini
  • 族 Helicopini
  • 族 Riodinini
  • 族 Theopini
亜科族不明 Incertae sedis
ELIOT (1973) はシジミタテハ科の下位分類には触れていない
亜科 Euselasiinae
亜科 Riodininae
亜科 Nemeobiinae
Stygidae
※ 属 Styx 単型

人との関係

他のチョウの科と比べて小型種が多く、生活史の複雑さから飼育が困難な種も多いため、(コレクターによるものを除き)商業目的での採集昆虫施設での生体展示はあまり行われない傾向がある[70]

アリと義務的関係を持ち、昆虫由来の栄養源に依存する種は生態系の攪乱英語: ecological disturbance生息地の喪失英語: habitat lossに対して脆弱である傾向が特につよく[71]人間活動の影響による絶滅が危惧されている種も多い[71][72]

一方で、いくつかの種は害虫と見なされる場合がある。たとえば、アフリカ南部が原産の Cacyreus marshalli20世紀末にヨーロッパに侵入したのち南部で急速に分布を拡大し、ベゴニアペラルゴニウムの栽培の脅威になっている[73]。また、アフリカから中東にかけて分布する Deudorix livia はザクロやナツメヤシなどさまざまな果物を食害する害虫として重視されている[74]。日本でもウラナミシジミ Lampides boeticus によるマメ科作物への被害[75]クロマダラソテツシジミ Chilades pandava によるソテツへの被害[76]がときに問題となる。

脚注

注釈

  1. ^ シジミタテハ科を亜科として含む場合、本科の種数は6000種を超え、チョウ全体の三分の一を占める[5][6]
  2. ^ 亜科については#分類節を参照。
  3. ^ Dupont et al. (2016) はアリノスシジミ幼虫の体表に特殊化した PCOs が存在する可能性を示している[27]
  4. ^ 同翅類排泄する甘露honeydew)と同一視されることも多いが、こちらは分泌物であることから、Pierce et al. (2002) は両者を区別している[32]
  5. ^ a b c d キマダラルリツバメ族[67]Aphnaeini の分類学的地位にかんしては議論が多い。ELIOT (1973) は本族をミドリシジミ亜科に含めたものの、亜科内における本族の系統的地位の決定が困難であることを示している[66][68]。本族の系統的地位が他の族とは異なる可能性は生物系統地理学的研究[69]分子系統学的研究からも示唆されており[49][47][66]、したがって、本族を亜科に格上げし、亜科 Aphnaeinae として扱う研究者も多い[46][66]
  6. ^ a b c 亜科和名は特記のない限り、Shiraiwa (1996-2021) を参照した。また、和名は併記しないものとした。
  7. ^ 以下の下位分類群は一部を除いて省略した。シジミタテハ科の下位分類についての詳細は シジミタテハ科 および species:Riodinidae を参照。

出典

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参考文献

和文

  • 沖縄県農林水産部森林管理課 (2017). "4.クロマダラソテツシジミ". 沖縄のみどりに発生する主要な病害虫 診断・防除の現状 (Report). pp. 44–46.

英文

  • Shirôzu, Takashi; Yamamoto, Hideho (1957). “Systematic position of the genus Curetis (Lepidoptera; Rhopalocera)”. Sieboldia 2 (1): 43-51. NAID 10003965477. 

外部リンク

シジミチョウ科一般

好蟻性

関連項目