「合成樹脂」の版間の差分
Aoshimayouichi (会話 | 投稿記録) 編集の要約なし |
m →歴史: どちらでも良いみたいですが、わかりやすいというか、馴染のある表現に変えました。形成外科→整形外科 |
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{{Redirect|プラスチック}} |
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[[File:Plastic household items.jpg|thumb|合成樹脂で作られた家庭用品]] |
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'''合成樹脂'''(ごうせいじゅし、{{lang-en-short|[[w:synthetic resin|synthetic resin]]}})とは、人為的に製造された[[高分子]]化合物からなる物質の一種。合成樹脂から紡糸された繊維は[[合成繊維]]と呼ばれ、合成樹脂は[[可塑性]]を持つものが多い。 |
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'''合成樹脂'''(ごうせいじゅし、{{lang-en-short|[[w:synthetic resin|synthetic resin]]}})とは、人為的に製造された[[高分子]]化合物からなる物質の一種。合成樹脂から[[紡糸]]された[[繊維]]は[[合成繊維]]と呼ばれ、合成樹脂は[[可塑性]]を持つものが多い。安くて丈夫であることなどから、世界中でさまざまな[[製品]]に使用されてきたが、[[海洋]]など[[自然環境]]に出たプラスチックを[[野生動物]]が飲み込む被害が各地で報告されるほか、[[水道水]]などからも微小なプラスチックが見つかり、人体からプラスチックを検出したとする調査研究が2024年、世界的に相次いで報告され、合成樹脂による[[環境汚染]]による人間への影響が懸念されている<ref name="mainichi">{{Cite web|date=|url=https://mainichi.jp/articles/20241122/k00/00m/040/225000c|title=人体からプラスチック粒子の検出相次ぐ 健康への影響は?|publisher=毎日新聞|accessdate=2024-11-25}}</ref><ref name="mainichi2">{{Cite web|date=|url=https://mainichi.jp/articles/20241108/k00/00m/040/206000c|title=深海、極地、人体からも…深刻化するプラ汚染を止められるか|publisher=毎日新聞|accessdate=2024-11-25}}</ref>。 |
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== 概説 == |
== 概説 == |
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合成樹脂は一般的には石油を原料とするモノマーを[[重合]]してできたポリマーに添加剤を加えた物質の総称である<ref>{{Cite web |
合成樹脂は一般的には[[石油]]を原料とする[[モノマー]]を[[重合]]してできた[[ポリマー]]に[[食品添加物|添加剤]]を加えた物質の総称である<ref>{{Cite web|和書|url= https://www.jfrl.or.jp/storage/file/kigu_kikaku_point.pdf |title=合成樹脂製の器具容器包装の規格に関する留意点 |publisher=一般財団法人日本食品分析センター |accessdate=2020-12-01}}</ref>。合成樹脂は、主に[[原油]]を[[蒸留]]して得られる[[ナフサ]]を原料として製造され、この製造は[[石油化学]]産業の重要な一部門となっている{{Sfn|松藤|廃棄物資源循環学会リサイクルシステム・技術研究部会|2009|pp=2-3}}。 |
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他方、他の原料からも製造は可能であり、特に、再生産が可能である[[サトウキビ]]や[[トウモロコシ]]などのバイオマスを原料とした |
他方、他の原料からも製造は可能であり、特に、再生産が可能である[[サトウキビ]]や[[トウモロコシ]]などの[[バイオマス]]を原料としたバイオマスプラスチック([[バイオプラスチック]])は石油資源の枯渇対策の一つとして注目されている{{Sfn|桑嶋|久保|2011|p=152}}。ただし、バイオマスプラスチックと[[生分解性プラスチック]]は全く別の概念であり、バイオマスプラスチックであるからと言って自然に分解するわけではないことは注意が必要である<ref name = "ナショジオ GIBBENS 2018">{{Cite web|和書|first = SARAH |last = GIBBENS |tranlator = 牧野, 建志|title = バイオプラスチックは環境に優しいって本当? プラスチック代替品としての潜在能力を専門家に聞いた| website = ナショナルジオグラフィック日本版|url = https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/111900500/|date = 2018-11-20| accessdate = 2019-12-06}}</ref>。 |
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[[金型]]などによる成形が簡単なため、大量生産される各種[[日用品]]や工業分野、医療分野の製品などの原材料となる。製品の使用目的や用途に合わせた特性・性能を有する樹脂の合成が可能であり、現代社会で幅広く用いられている。 |
[[金型]]などによる成形が簡単なため、大量生産される各種[[日用品]]や工業分野、医療分野の製品などの原材料となる。製品の使用目的や用途に合わせた特性・性能を有する樹脂の合成が可能であり、現代社会で幅広く用いられている。 |
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一般的なプラスチックの特徴としては、電気を通さない[[絶縁体]]である、水に強く腐食しにくい、比較的熱に弱い等が挙げられる。ただし硬度や耐熱性、強度に関しては改善が可能であり、こうした点を強化したエンジニアリング・プラスチック(エンプラ)やスーパーエンプラと言った高性能なプラスチックも使用されている。 |
一般的なプラスチックの特徴としては、電気を通さない[[絶縁体]]である、水に強く[[腐食]]しにくい、比較的熱に弱い等が挙げられる。ただし[[硬さ|硬度]]や[[耐熱性]]、[[強度]]に関しては改善が可能であり、こうした点を強化した[[エンジニアリング・プラスチック]](エンプラ)やスーパーエンプラと言った高性能なプラスチックも使用されている。 |
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また、絶縁性や腐食耐性はプラスチック本来の性質である。しかし、使用目的に応じてこれらの性質に当てはまらないプラスチックも開発されている。 |
また、絶縁性や腐食耐性はプラスチック本来の性質である。しかし、使用目的に応じてこれらの性質に当てはまらないプラスチックも開発されている。 |
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導電性に関しては、1970年代に[[白川英樹]]らによって導電性ポリアセチレンが開発されて以降、様々な[[導電性高分子|導電性ポリマー]]が開発され、[[タッチパネル]]などに利用されるようになった |
導電性に関しては、1970年代に[[白川英樹]]らによって導電性[[ポリアセチレン]]が開発されて以降、様々な[[導電性高分子|導電性ポリマー]]が開発され、[[タッチパネル]]などに利用されるようになった{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=164-165}}。 |
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腐食耐性に関しても、[[微生物]]による分解が可能な[[生分解性プラスチック]]が開発されているが、分解には特殊な条件や長い期間が必要なものも多い<ref |
腐食耐性に関しても、[[微生物]]による分解が可能な[[生分解性プラスチック]]が開発されているが、分解には特殊な条件や長い期間が必要なものも多い<ref name = "ナショジオ GIBBENS 2018"/>。 |
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親水性に関しても、非常に大量の水を吸収し保存することが可能な[[高吸水性高分子]]が開発されており、保水剤や[[紙おむつ]]など幅広く利用され、その保水性から[[砂漠 |
[[親水性]]に関しても、非常に大量の水を吸収し保存することが可能な[[高吸水性高分子]]が開発されており、保水剤や[[紙おむつ]]など幅広く利用され、その保水性から[[砂漠緑化|砂漠の緑化]]への利用も計画されている{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=158-159}}。 |
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== 名称 == |
== 名称 == |
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物質の名称で用いる場合の「プラスチック」 ({{lang-en-short|[[w:plastic|plastic]]}}) という表現<ref group="注">物質名称以外の表現で用いる場合、(柔軟で)感受性の強い性格、作り笑いなどの人工的な・不自然な、あるいは形成・造形を指す場合に用いる。</ref>は、元来「[[可塑剤|可塑性物質]]」 ({{lang-en-short|[[w:plasticisers|plasticisers]]}}) という意味を持ち、主に金属結晶の分野で用いられた概念を基盤としており、「合成樹脂」同様、日本語ではいささか曖昧となっている。 |
{{要出典範囲|物質の名称で用いる場合の「プラスチック」 ({{lang-en-short|[[w:plastic|plastic]]}}) という表現<ref group="注釈">物質名称以外の表現で用いる場合、(柔軟で)感受性の強い性格、作り笑いなどの人工的な・不自然な、あるいは形成・造形を指す場合に用いる。</ref>は、元来「[[可塑剤|可塑性物質]]」 ({{lang-en-short|[[w:plasticisers|plasticisers]]}}) という意味を持ち、主に金属結晶の分野で用いられた概念を基盤としており、「合成樹脂」同様、日本語ではいささか曖昧となっている|date=2021年12月}}。 |
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合成樹脂と同義である場合や、合成樹脂が「プラスチック」と「[[エラストマー]]」という2つに分類される場合、また、原料である合成樹脂が成形され硬化した完成品を「プラスチック」と呼ぶ場合、多様な意味に用いられている |
合成樹脂と同義である場合や、合成樹脂が「プラスチック」と「[[エラストマー]]」という2つに分類される場合、また、原料である合成樹脂が成形され硬化した完成品を「プラスチック」と呼ぶ場合、多様な意味に用いられている{{Sfn|桑嶋|木原|工藤|2005}}{{Sfn|齋藤|2011}}。 |
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よって、英語の学術文献を書く場合、「plastic」は厳密性を欠いた全く通用しない用語であることを認識すべきで、「resin」(樹脂、合成樹脂)などと明確に表現するのが一般的である。 |
{{要検証|よって、英語の学術文献を書く場合、「plastic」は厳密性を欠いた全く通用しない用語であることを認識すべきで、「resin」(樹脂、合成樹脂)などと明確に表現するのが一般的である|date=2021年12月}}。 |
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== 合成樹脂の化学 == |
== 合成樹脂の化学 == |
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{{出典の明記|date=2021年12月|section=1}} |
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=== 高分子 === |
=== 高分子 === |
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合成樹脂は高分子化合物の一種である。例えば、ポリエチレンは炭素2個の[[エチレン]]を多数繋いだ[[重合体]]であり、この場合のエチレンは「[[モノマー]]」と呼ばれ、ポリエチレンは「ポリマー」と呼ばれる。「モノ」は1つ、「ポリ」はたくさんを意味する[[接頭辞]]である。モノマーを繋げていく反応を[[重合反応]]と呼び、モノマーが繋がっている個数を重合度と呼ぶ。エチレン500個が繋がったポリエチレン(炭素数1000)の重合度は500である。重合度が大きくなるにつれ、より硬くより強い樹脂になる。ポリエチレンは熱をかけると融けて流動するので、その状態で成型する。流動し始める温度( |
合成樹脂は高分子化合物の一種である。例えば、ポリエチレンは炭素2個の[[エチレン]]を多数繋いだ[[重合体]]であり、この場合のエチレンは「[[モノマー]]」と呼ばれ、ポリエチレンは「ポリマー」と呼ばれる。「モノ」は1つ、「ポリ」はたくさんを意味する[[接頭辞]]である。モノマーを繋げていく反応を[[重合反応]]と呼び、モノマーが繋がっている個数を重合度と呼ぶ。エチレン500個が繋がったポリエチレン(炭素数1000)の重合度は500である。重合度が大きくなるにつれ、より硬くより強い樹脂になる。ポリエチレンは熱をかけると融けて流動するので、その状態で成型する。流動し始める温度(ガラス転移温度)は分子量が大きくなるほど高くなる。分子量が一定以上に大きくなると、熱をかけても流動せず、さらに温度を上げると分解する。 |
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=== 共重合とポリマーアロイ === |
=== 共重合とポリマーアロイ === |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
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{{出典の明記|date=2021年12月|section=1}} |
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[[1835年]]に[[クロロエチレン|塩化ビニル]]と[[ポリ塩化ビニル]]粉末を発見したのが最初といわれる。初めて商業ベースに乗ったのは、1869年にアメリカで開発された[[セルロイド]]である。これは[[ニトロセルロース]]と[[樟脳]]を混ぜて作る熱可塑性樹脂だが、植物の[[セルロース]]を原料としているので半合成プラスチックと呼ばれることがある。セルロイドはもともと、[[アフリカゾウ]]の乱獲による[[象牙]]の不足を受けた[[ビリヤード]]・ボール会社の公募によって商品化されたものであり、ビリヤードボールをはじめ[[フィルム]]や[[おもちゃ]]などに大量に使用されたが、非常に燃えやすく、また劣化しやすい性質があるため次第に使用されなくなった<ref>「「機能性プラスチック」のキホン 欲しい性能を付与できる進化した有機材料の世界」p18 桑嶋幹・久保敬次 ソフトバンククリエイティブ 2011年11月25日初版第1刷</ref>。 |
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[[樹脂]]に類似した[[合成|合成物]]。主に[[石油]]から製造されるが、さまざまな種類があり、用途も幅広い。合成樹脂から紡糸された繊維は合成繊維([[化学繊維]])と呼ばれ、廃プラスチックは繊維として[[リサイクル]]される場合もある([[ペットボトル]]など)。 |
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[[1835年]]に[[クロロエチレン|塩化ビニル]]と[[ポリ塩化ビニル]]粉末を発見したのが最初といわれる。初めて商業ベースに乗ったのは、1869年にアメリカで開発された[[セルロイド]]である。これは[[ニトロセルロース]]と[[樟脳]]を混ぜて作る熱可塑性樹脂だが、植物の[[セルロース]]を原料としているので半合成プラスチックと呼ばれることがある。セルロイドはもともと、[[アフリカゾウ]]の乱獲による[[象牙]]の不足を受けた[[ビリヤードボール]]会社の公募によって商品化されたものであり、ビリヤードボールをはじめ[[フィルム]]や[[おもちゃ]]などに大量に使用されたが、非常に燃えやすく、また劣化しやすい性質があるため次第に使用されなくなった{{Sfn|桑嶋|久保|2011|p=18}}。 |
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本格的な合成樹脂第一号は、1909年にアメリカの[[レオ・ベークランド]]が工業化に成功した[[ベークライト]](商品名)といわれている。[[フェノール]]と[[ホルムアルデヒド]]を原料とした熱硬化性樹脂で、一般にはフェノール樹脂と呼ばれている<ref>「「機能性プラスチック」のキホン 欲しい性能を付与できる進化した有機材料の世界」p20 桑嶋幹・久保敬次 ソフトバンククリエイティブ 2011年11月25日初版第1刷</ref>。その後、[[パルプ]]等の[[セルロース]]を原料として[[レーヨン]]が、[[石炭]]と[[石灰石]]からできる[[カーバイド]]を原料にポリ塩化ビニルなどが工業化された。戦後、[[石油化学]]の発達により、主に[[石油]]を原料として多様な合成樹脂が作られるようになる。日本では、1960年代以降、日用品に多く採用されるようになる。 |
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本格的な合成樹脂第一号は、1909年にアメリカの[[レオ・ベークランド]]が工業化に成功した{{仮リンク|ベークライト|en|Bakelite|redirect=1}}(商品名)といわれている。[[フェノール]]と[[ホルムアルデヒド]]を原料とした熱硬化性樹脂で、一般にはフェノール樹脂と呼ばれている{{Sfn|桑嶋|久保|2011|p=20}}。その後、[[パルプ]]等の[[セルロース]]を原料として[[レーヨン]]が、[[石炭]]と[[石灰石]]からできるカーバイド([[:en:Carbide]])を原料にポリ塩化ビニルなどが工業化された。戦後、[[石油化学]]の発達により、主に[[石油]]を原料として多様な合成樹脂が作られるようになる。日本では、1960年代以降、日用品に多く採用されるようになる。 |
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1970年代には工業用部品として使用可能な[[エンジニアリングプラスチック]]が開発され、1980年代には更に高度なスーパーエンジニアリングプラスチックが使用されるようになった。これらの合成樹脂は[[金属]]に代わる新たな素材として注目されている。 |
1970年代には工業用部品として使用可能な[[エンジニアリングプラスチック]]が開発され、1980年代には更に高度なスーパーエンジニアリングプラスチックが使用されるようになった。これらの合成樹脂は[[金属]]に代わる新たな素材として注目されている。 |
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1970年頃までは「プラスチックス」という表記が見られた。これはアメリカでも同様で、"plastics" という「形容詞+s」で集合名詞としていたが、名詞であるという意識が高まり、"s" が抜け落ちた。その時期は日本より約10年早い。(なお、形 |
1970年頃までは「プラスチックス」という表記が見られた。これはアメリカでも同様で、"plastics" という「形容詞+s」で集合名詞としていたが、名詞であるという意識が高まり、"s" が抜け落ちた。その時期は日本より約10年早い。(なお、整形外科を plastic surgery というように、形容詞 plastic の原義は「形をつくる」「成型による」「成型可能な」といった意味である) |
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== 性質上の分類 == |
== 性質上の分類 == |
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高分子材料である合成樹脂は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に分けられる |
高分子材料である合成樹脂は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に分けられる{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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=== 熱硬化性樹脂 === |
=== 熱硬化性樹脂 === |
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[[熱硬化性樹脂]] ({{lang-en-short|[[w:Thermosetting plastic|Thermosetting resin]]}}) は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂のこと |
[[熱硬化性樹脂]] ({{lang-en-short|[[w:Thermosetting plastic|Thermosetting resin]]}}) は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂のこと{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=88-89}}。網化状樹脂、橋かけ形樹脂、三次元化樹脂ともいう{{Sfn|島崎|1966}}。熱硬化性樹脂には縮合重合形と付加重合形がある{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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==== 縮合重合形 ==== |
==== 縮合重合形 ==== |
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縮合重合形フェノール樹脂やメラミン樹脂などがある |
縮合重合形フェノール樹脂やメラミン樹脂などがある{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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* [[フェノール樹脂]] (PF) |
* [[フェノール樹脂]] (PF) |
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* [[メラミン樹脂]](MF) |
* [[メラミン樹脂]](MF) |
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* [[尿素樹脂]](ユリア樹脂、UF) |
* [[尿素樹脂]](ユリア樹脂、UF) |
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* [[アルキド |
* [[アルキド]]樹脂 |
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など |
など |
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==== 付加重合形 ==== |
==== 付加重合形 ==== |
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付加重合形にはエポキシ樹脂などがある |
付加重合形にはエポキシ樹脂などがある{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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* [[エポキシ樹脂]](EP) |
* [[エポキシ樹脂]](EP) |
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* [[不飽和ポリエステル樹脂]] (UP) |
* [[不飽和ポリエステル樹脂]] (UP) |
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===熱可塑性樹脂=== |
===熱可塑性樹脂=== |
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[[熱可塑性樹脂]] ({{lang-en-short|[[w:Thermoplastic|Thermoplastic resin]]}}) は、[[ガラス転移温度]]または[[融点]]まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のこと。線状樹脂ともいう |
[[熱可塑性樹脂]] ({{lang-en-short|[[w:Thermoplastic|Thermoplastic resin]]}}) は、[[ガラス転移温度]]または[[融点]]まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のこと。線状樹脂ともいう{{Sfn|島崎|1966}}。一般的に、熱可塑性樹脂は切削・研削等の機械加工がしにくいことが多く、加温し軟化したところで金型に押し込み、冷し固化させて最終製品とする[[射出成形]]加工等が広く用いられている。成形法にはほかにも、金型から押し出して成形する[[押出成形]]など様々な成形法が存在する{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=84-87}}。[[熱硬化性樹脂]]よりも[[靭性]]が優れ、成形温度は高いが短時間で成形できるので[[生産性]]が優れる。 |
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熱可塑性樹脂には結晶性樹脂と非結晶性樹脂(無定形樹脂)がある |
熱可塑性樹脂には結晶性樹脂と非結晶性樹脂(無定形樹脂)がある{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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==== 結晶性樹脂 ==== |
==== 結晶性樹脂 ==== |
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結晶性樹脂には[[ポリエチレン]]や[[ポリプロピレン]]などがある |
結晶性樹脂には[[ポリエチレン]]や[[ポリプロピレン]]などがある{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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==== 非結晶性樹脂 ==== |
==== 非結晶性樹脂 ==== |
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非結晶性樹脂には[[アクリル樹脂]]や[[ポリカーボネート]]などがある |
非結晶性樹脂には[[アクリル樹脂]]や[[ポリカーボネート]]などがある{{Sfn|島崎|1966}}。 |
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== 応用上の分類(熱可塑性樹脂) == |
== 応用上の分類(熱可塑性樹脂) == |
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{{出典の明記|date=2021年12月|section=1}} |
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熱可塑性樹脂を用途により分類すると、以下のとおりになる。 |
熱可塑性樹脂を用途により分類すると、以下のとおりになる。 |
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* [[ポリエチレン]] (PE) |
* [[ポリエチレン]] (PE) |
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** [[ |
** [[高密度ポリエチレン]](HDPE) |
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** |
** {{仮リンク|中密度ポリエチレン|en|Medium-density polyethylene}}(MDPE) |
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** [[低密度ポリエチレン]](LDPE) |
** [[低密度ポリエチレン]](LDPE) |
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* [[ポリプロピレン]] (PP) |
* [[ポリプロピレン]] (PP) |
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* [[ポリ酢酸ビニル]] (PVAc) |
* [[ポリ酢酸ビニル]] (PVAc) |
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* [[ポリウレタン]](PUR) |
* [[ポリウレタン]](PUR) |
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*[[ポリ乳酸]] |
* [[ポリ乳酸]] |
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* [[テフロン]] - (ポリテトラフルオロエチレン、PTFE) |
* [[テフロン]] - (ポリテトラフルオロエチレン、PTFE) |
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* [[ABS樹脂]](アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂) |
* [[ABS樹脂]](アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂) |
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* [[AS樹脂]] |
* [[AS樹脂]] |
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* [[アクリル樹脂]] (PMMA) |
* [[アクリル樹脂]] (PMMA) |
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*[[ポリ塩化ビニル]] (PVC) |
* [[ポリ塩化ビニル]] (PVC) |
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** [[ポリ塩化ビニリデン]] |
** [[ポリ塩化ビニリデン]] |
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特殊な目的に使用され、エンプラよりもさらに高い熱変形温度と長期使用出来る特性を持つ。略してスーパーエンプラとも呼ばれる。 |
特殊な目的に使用され、エンプラよりもさらに高い熱変形温度と長期使用出来る特性を持つ。略してスーパーエンプラとも呼ばれる。 |
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* [[ポリフェニレンスルフ |
* [[ポリフェニレンスルフィド]] (PPS) |
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* [[ポリテトラフロロエチレン]](PTFE)一般的にテフロンと呼ばれる。 |
* [[ポリテトラフルオロエチレン|ポリテトラフロロエチレン]](PTFE)一般的にテフロンと呼ばれる。 |
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* [[ポリスルホン|ポリサルフォン]] (PSF) |
* [[ポリスルホン|ポリサルフォン]] (PSF) |
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* [[ポリエーテルサルフォン]] (PES)([[w:Polyethersulfone|Polyethersulfone]]) |
* [[ポリエーテルサルフォン]] (PES)([[w:Polyethersulfone|Polyethersulfone]]) |
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== 合成樹脂の用途 == |
== 合成樹脂の用途 == |
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プラスチックが本格的に開発されたのは20世紀に入ってからであるが、その軽さや衝撃への強さ、腐りにくさ、[[絶縁性]]の高さ、そして何よりも用途に合わせて安価に[[大量生産]]が可能であることから、それまで[[木材]]や[[繊維]]、[[ガラス]]や[[陶器]]などを素材に用いていたものがプラスチックに置き換えられることも多く、用途は非常に多岐にわたる |
プラスチックが本格的に開発されたのは20世紀に入ってからであるが、その軽さや衝撃への強さ、腐りにくさ、[[絶縁性]]の高さ、そして何よりも用途に合わせて安価に[[大量生産]]が可能であることから、それまで[[木材]]や[[繊維]]、[[ガラス]]や[[陶器]]などを素材に用いていたものがプラスチックに置き換えられることも多く、用途は非常に多岐にわたる{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=10-11}}。 |
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日本における2018年度の生産のうちもっとも利用が多いのはフィルムやシート向けであり、全生産量の43%を占める。この中には[[ポリ袋]]などの[[包装]]用品や各種 |
日本における2018年度の生産のうちもっとも利用が多いのはフィルムやシート向けであり、全生産量の43%を占める。この中には[[ポリ袋]]などの[[包装]]用品や各種農業用[[フィルム]]が含まれている。次いで利用が多いのは[[ペットボトル]]や[[ポリタンク]]、[[洗剤]]や[[シャンプー]]容器などの[[容器]]類であり、生産量の14.8%を占める。第3位は[[機械]]の筐体・機構部品、[[電子機器]]や小型[[機械]]、[[家庭用電気機械器具|家電製品]]といった機械器具や部品類であり、全体の11.6%を占める。第4位は各種[[パイプ]]や[[継手]]であり、7.5%を占めている。[[食器]]などの[[台所]]・食卓用品や、[[風呂]]、[[トイレ]]、[[洗濯]]、[[掃除]]用品、[[文房具]]、[[楽器]]など各種日用品は5%を占め第5位となっている。以下、[[雨樋]]や床材などの各種[[建材]]が4.7%、[[発泡スチロール]]などの[[発泡プラスチック]]が4.3%、[[ドア]]や[[看板]]、波板などの板が2%、[[浴槽]]や[[ボート]]の船体、[[釣り竿]]などに用いられる[[強化プラスチック]]が1.2%、[[靴]]や[[鞄]]、[[衣服]]などに用いられる[[合成皮革]]が1%、そのほかの用途が4.9%となっている{{Sfn|プラスチック循環利用協会|2019|p=11}}。 |
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== 合成樹脂の性能 == |
== 合成樹脂の性能 == |
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=== 機械的性質 === |
=== 機械的性質 === |
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機械的性質は引張りや圧力等の外力に対する特性であり、機械部品など広範囲に使用される素材であることから各種の試験がある |
機械的性質は引張りや圧力等の外力に対する特性であり、機械部品など広範囲に使用される素材であることから各種の試験がある{{Sfn|日立ハイテク|2018}}。 |
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* [[粘弾性]] |
* [[粘弾性]] |
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* [[弾性率]] |
* [[弾性率]] |
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=== 物理化学的性質 === |
=== 物理化学的性質 === |
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吸水率、水分含有率、耐薬品性、比重、密度などの物性である |
吸水率、水分含有率、耐薬品性、比重、密度などの物性である{{Sfn|日立ハイテク|2018}}。 |
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* 吸水率 |
* 吸水率 |
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* 水分含有率 |
* 水分含有率 |
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=== 電気的性質 === |
=== 電気的性質 === |
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一般的には絶縁体であり電線の被覆や電気機器の筐体に用いられている |
一般的には絶縁体であり電線の被覆や電気機器の筐体に用いられている。一方で絶縁体であることから静電気が発生しやすく、電圧が限界に達すると絶縁性が失われる(絶縁破壊){{Sfn|日立ハイテク|2018}}。 |
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* 電気絶縁性([[体積固有抵抗]]、表面固有抵抗) |
* 電気絶縁性([[体積固有抵抗]]、表面固有抵抗) |
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* 誘電性([[誘電率]]、[[誘電正接]]) |
* 誘電性([[誘電率]]、[[誘電正接]]) |
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=== 光学的性質 === |
=== 光学的性質 === |
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透明性が必要な合成樹脂の場合には光学的性質が重要となる |
透明性が必要な合成樹脂の場合には光学的性質が重要となる{{Sfn|日立ハイテク|2018}}。 |
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* [[透過性]] |
* [[透過率 (光学)|透過性]] |
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=== 耐熱性 === |
=== 耐熱性 === |
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製品としては使用限界温度である熱変形温度、寒地での脆化温度、構造材料としての熱伝導度、温度変化が大きい用途での熱膨張や熱収縮などが重要となる |
製品としては使用限界温度である熱変形温度、寒地での脆化温度、構造材料としての熱伝導度、温度変化が大きい用途での熱膨張や熱収縮などが重要となる{{Sfn|日立ハイテク|2018}}。 |
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* [[荷重たわみ温度]] |
* [[荷重たわみ温度]] |
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* [[熱伝導]] |
* [[熱伝導]] |
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==合成樹脂の劣化== |
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プラスチック成形品は、原料となる合成樹脂の種類によって劣化要因が異なる。劣化要因としては、材料自身の経時変化、単一の外的要因による変化、複合的な外的要因による変化などがある。 |
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===外的要因=== |
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'''熱による劣化''' |
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合成樹脂は、主に炭素、酸素、水素で構成される高分子化合物であり、分子構造は紐状の構造となっている。合成樹脂は加熱されることで、分子運動が活発化し空気中の酸素と反応しやすくなり、酸素と反応することで紐状の構造がバラバラになり劣化する{{Sfn|日立ハイテク|2017}}。 |
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'''光による劣化''' |
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合成樹脂は、光エネルギーを吸収し、分子同士の化学結合が切断、または分子を励起させることで酸化が起こり劣化する。 |
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合成樹脂の劣化を引き起こす太陽光の波長は、紫色の可視光から近紫外光の領域に該当する300~400ナノメートルである。プラスチックの種類別に劣化しやすさは異なり、それぞれの波長は以下のようになる{{Sfn|日立ハイテク|2017}}。 |
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{| class="wikitable" |
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|+プラスチックを光劣化させる波長{{Sfn|日立ハイテク|2017}} |
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!材料名 !! 劣化しやすい波長長さ(nm) |
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|ポリエステル || 325 |
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|- |
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|ポリスチレン || 318 |
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|- |
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|ポリプロピレン || 300 |
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|- |
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|ポリ塩化ビニル || 310 |
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|- |
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|塩ビ―酢ビ共重合体 || 310 |
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|ホルムアルデヒド樹脂 || 322~364 |
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|硝酸セルロース || 300~320 |
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|ポリカーボネート || 310 |
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|ポリメチルメタクリレート || 295 |
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|} |
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'''水による劣化''' |
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合成樹脂の種類や環境によっては、加水分解により劣化する。 |
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ポリウレタン(PU)やポリエチレンテレフタラート(PET)のように分子構造にエステル結合を有する合成樹脂は加水分解しやすい性質がある。また、湿気がある状態で合成樹脂を溶融し成形すると加水分解しやすくなる{{Sfn|日立ハイテク|2017}}。 |
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'''有機溶剤による劣化''' |
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一般的にどんな素材でも、その構造と類似する構造をもつ材料は取り込みやすい性質をもつ。例えば耐候性、衝撃強さ、耐熱性に優れているポリカーボネイト(PC)も、ある特定の溶剤に対しては、材料内に有機溶剤を取り込みやすく強度が低下する{{Sfn|日立ハイテク|2017}}{{Sfn|テクノUMG|2019}}。 |
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'''金属や金属化合物による劣化''' |
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金属イオンが合成樹脂の酸化反応の触媒として働き劣化をまねく。とくにコバルトとマンガンが合成樹脂に対して影響を及ぼしやすい。また、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂は高温になると、銅に反応しやすくなる{{Sfn|日立ハイテク|2017}}。 |
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'''欠陥・応力・ひずみによる劣化''' |
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気泡やクラック、ウェルドライン、異物の混入などの欠陥。成形時のひずみ、残留応力等によるストレスクラックやソルベントクラック現象とよばれる割れが生じることがある{{Sfn|日立ハイテク|2017}}{{Sfn|テクノUMG|2019}}。 |
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===生分解=== |
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{{see also|生分解性プラスチック}} |
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いっぱんに合成樹脂は「腐らない」こと、すなわち[[微生物]]による生分解を受けないことを長所のひとつとするが、いくつかの合成[[高分子]]は生分解を受けることが知られている。[[細菌]]や[[真菌]]による合成樹脂の分解は種々の酵素によって行われる{{Sfn|冨田|1991}}{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。 |
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合成樹脂の生分解は1950年代 - 1960年代ごろから注目されており{{Sfn|冨田|1991}}{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}、[[パラフィン|n-パラフィン]]、[[分子量]]の比較的ちいさな[[ポリオレフィン]]、[[ポリビニルアルコール]]、[[脂肪族化合物|脂肪族]]ポリエステル、[[ポリエチレングリコール]]、[[ε-カプロラクタム]]などの合成高分子類の微生物分解性が研究されてきた。一方、[[芳香族化合物|芳香族]]ポリエステルのひとつであるポリエチレンテレフタレート(PET)など、プラスチックとして有用で大量生産の対象となる合成高分子の生分解にかんしては、否定的な結果が得られる場合が多かった{{Sfn|冨田|1991}}。近年は、従来生分解が困難であるとされてきた合成樹脂を分解する微生物の報告や、[[動物]]が合成樹脂を摂食し、代謝を行う事例{{Efn|{{Harvtxt|Cassone|Grove|Elebute|Villanueva|2020}} は、合成樹脂を摂食する動物を指すことばとして |
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"plastivore" という単語を使用している{{Sfn|Cassone|Grove|Elebute|Villanueva|2020}}。これは "plastic"と、「-を食べる動物」を意味する接尾辞"[[:wikt:en:-vore|-vore]]"とを組み合わせた造語である<ref name = "plastivore">{{Cite web|和書|title = プラスチックを生分解する幼虫と腸内細菌との謎多き関係――環境汚染対策の鍵となるか|website = fabcross for エンジニア|publisher = MEITEC|url = https://engineer.fabcross.jp/archeive/200316_plastivore.html|date = 2020-03-24|accessdate = 2021-12-19}}</ref>。}}の報告など、合成樹脂の生分解にかんするさまざまな新知見が蓄積されつつあり、[[#環境への影響|プラスチック廃棄物問題]]の解決法を探るうえでもいっそうの注目が集まっている{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。ここでは主に {{Harvtxt|Ru|Huo|Yang|2020}} による[[総説論文|レビュー]]にもとづき、近年の合成樹脂の生分解にかんする知見を概説するが、合成樹脂の[[化学構造]]や実験・分析手法の差異によって生分解性の正確な評価が困難であるものもいまだ多い{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。 |
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; ポリエチレン |
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: ポリエチレン(PE)の生分解は1970年代ごろから研究対象として注目されていたが、微生物による生分解を受けるのは主として低[[分子量]]成分であり、分子量が 2000 を超える{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}高分子量PEが環境中で生分解を受けることは困難であるとされてきた{{Sfn|冨田|1991}}{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|大武|2001}}。高い分子量が生分解を阻害する主要因となるため、PEの生分解を行うには熱や[[紫外線]]、酸化剤などを用いた機械的・化学的な前処理が必要であると考えられていたが、近年は、前処理が行われていない長鎖PEを分解することができる可能性のある細菌や真菌が環境中から多数見出されており{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}、たとえば、日本からは[[低密度ポリエチレン]](LDPE)を分解する {{Snamei||Bacillus}} 属の細菌が報告されている{{Sfn|大武|2001}}。<!--生分解節は全体的にそうですが、Taipale et al. 2019にかんする記述は「環境への影響」節への移動を検討した方がいいかもしれません -->{{日本語版にない記事リンク|腐植栄養湖|en|humic lake}}において、生分解されたPE由来の炭素が[[植物プランクトン]]の必須[[脂肪酸]]の合成に用いられていることを示した {{Harvtxt|Taipale|Peltomaa|Kukkonen|Kainz|2019}} のように、環境中でのふるまいの観点からPEの生分解プロセスを調査した研究もある{{Sfn|Taipale|Peltomaa|Kukkonen|Kainz|2019}}。 |
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: また、複数種の[[昆虫]]の[[幼虫]]がLDPEを摂食し、[[腸内細菌]]を介して代謝を行うことができることが報告されており、注目すべき生分解の事例と見なされている{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。LDPEを摂食することが報告されているのは[[鱗翅目]]に属する[[コハチノスツヅリガ]] {{Snamei||Achroia grisella}}、[[ハチノスツヅリガ]] {{Snamei||Galleria mellonella}}、[[ノシメマダラメイガ]] {{Snamei||Plodia interpunctella}} や{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|Cassone|Grove|Elebute|Villanueva|2020}}、[[鞘翅目]][[ゴミムシダマシ科]]の {{Snamei||Zophobas|Zophobas atratus}}(スーパーワーム)で{{Sfn|Peng|Li|Fan|Chen|2020}}、このうちハチノスツヅリガの幼虫を用いた実験では、幼虫がLDPEを摂食して[[グリコール]]を主成分とする液状の糞を排泄すること、幼虫の腸内細菌叢から分離培養された {{Snamei||Acinetobacter}} 属の細菌が、PEを唯一の栄養源として一年以上の生存が可能であることが確認されている。また、幼虫を介した ''[[in vivo]]'' での生分解と分離培養された細菌による ''[[in vitro]]'' での生分解プロセスとを比較すると、前者と比べて後者のPE分解速度が低いことから、幼虫と細菌とが相互に関係することでLDPEの生分解が促進される可能性が示されている{{Sfn|Cassone|Grove|Elebute|Villanueva|2020}}。2022年10月4日のネイチャー・コミュニケーションズでは、ハチノスツヅリガの幼虫の唾液に含まれる酵素はポリエチレンを分解することができるとの発表がされている{{Sfn |NatureWaxwormSaliva |2022}}{{Sfn |ニューズウィーク2022年10月25日 |p=54}}。 |
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: PE分解酵素としては、{{Snamei||Phanerochaete chrysosporium}} 由来の[[マンガンペルオキシダーゼ]]、[[大豆]]由来の[[ペルオキシダーゼ]]、{{Snamei||Rhodococcus|Rhodococcus ruber}} C208株が細胞外に分泌する[[ラッカーゼ]]などが知られている{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。 |
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[[File:Wax worm, U, Maryland, side 2015-07-13-13.01.17 ZS PMax.jpg|thumb|240px|right|ハチノスツヅリガ {{Snamei|G. mellonella}} 幼虫, <small>アメリカ</small>]] |
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; ポリスチレン |
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: {{Snamei||Xanthomonas}} 属や {{Snamei||Pseudomonas}} 属などに属する細菌がポリスチレン(PS)の生分解を行うことが知られているが{{Sfn|及川|キン|遠藤|及川|2003}}、いっぱんに、細菌や真菌によるPSの分解速度は非常に低いとされる{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。一方、幼虫期にPSを摂食することのできる昆虫が複数種知られており、PSの生分解研究において注目されている。PSを摂食することが報告されているのは[[チャイロコメノゴミムシダマシ]] {{Snamei||Tenebrio molitor}}([[ミールワーム]])、[[コメノゴミムシダマシ]] {{Snamei||Tenebrio obscurus|Te. obscurus}}(ダークミールワーム)、{{Snamei||Zophobas|Z. atratus}}(スーパーワーム){{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|Peng|Li|Fan|Chen|2020}}、[[コクヌストモドキ]] {{Snamei||Tribolium castaneum}}(以上、鞘翅目ゴミムシダマシ科){{Sfn|Wang|Xin|Shi|Zhang|2020}}および、鱗翅目のハチノスツヅリガで{{Sfn|Jiang|Su|Zhao|Wang|2021}}、このうちミールワーム、スーパーワーム、ハチノスツヅリガ幼虫を用いた実験では、三種とも[[ポリスチレンフォーム|PSフォーム]]を唯一の餌として30日間の飼育が可能であり、腸内細菌を介した生分解の証拠も得られたものの、通常の餌で飼育した[[対照実験|対照群]]と比較して生存率や体重が[[有意]]に低下しており、PSでは幼虫の発育に必要なエネルギーを満たせない可能性が指摘されている{{Sfn|Jiang|Su|Zhao|Wang|2021}}。また、幼虫の腸内細菌叢からPSの生分解に関与する可能性のある微生物が多数分離されている{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|Jiang|Su|Zhao|Wang|2021}}。 |
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: PSの生分解にかかわる酵素としては、{{Snamei||Azotobacter|Azotobacter beijerinckii}} HM121株が分泌する[[ヒドロキノン]]ペルオキシダーゼが知られている{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。 |
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; ポリプロピレン |
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: ポリプロピレン(PP)の生分解を行う可能性のある細菌や真菌が複数環境中から見いだされているが、それらは[[可塑剤]]や低分子量成分の分解にのみ寄与し、高分子量の長鎖PPの解重合は行われていない可能性もあり、評価が難しいとされている。分解酵素も知られていないが、PEと同様に機械的化学的前処理によって生分解が促進される可能性が指摘される{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。 |
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; ポリ塩化ビニル |
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: ポリ塩化ビニル(PVC)は利用の際に可塑剤が添加されることが多い合成樹脂である。可塑剤は炭素源として多くの細菌や真菌によって利用される(生分解される)ことが知られており、可塑化されたPVCを用いる製品、たとえば浴槽の蓋や農業用シートはさまざまな微生物によって損傷を受け得る。しかしながら、可塑剤とPVCの両方を分解できる微生物や酵素は知られておらず、生分解後の残留物の問題は大きい{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}。 |
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; ポリウレタン |
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: ポリウレタン(PUR)は、合成に用いる[[ポリオール]]の種類によって[[ポリエステル]]PURと[[ポリエーテル]]PURの二種に分けられる。ポリエステルPURの生分解にかんする研究はひろく行われており、{{Snamei||Pseudomonas putida}}([[シュードモナス・プチダ]])など多数の細菌・真菌によって生分解を受けることが報告されている。一方で後者のポリエーテルPURにかんしては、生分解を行う可能性のある細菌や真菌がいくつか報告されているものの、前者と比較して微生物による生分解を受けにくいと考えられている。分解酵素についても同様で、ポリエステルPURにかんしては、[[エステル結合]]を[[加水分解]]するさまざまな[[リパーゼ]]や[[エステラーゼ]]が種々の微生物から見い出されているが{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}、ポリエーテルPURを分解する酵素は知られていない{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|中島(神戸)|2007}}。 |
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; ポリエチレンテレフタレート |
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: ポリエチレンテレフタレート(PET)の生分解性は{{日本語版にない記事リンク|結晶化度|en|crystallinity}}の程度によって異なり、大まかに結晶化度の低いもの(low-crystallinity PET: lcPET)と結晶化度の高いもの(high-crystallinity PET: hcPET)に分けたとき、生分解を受けることが知られているのはもっぱら前者のlcPETであり、後者のhcPETはほとんど生分解を受けない{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|Kawai|Kawabata|Oda|2019}}。熱成型されるPETボトルなどのPET製品は結晶化度が高く、したがって、PET製品の多くはそのままでは生分解に適さないとされる{{Sfn|Kawai|Kawabata|Oda|2019}}。lcPETの生分解にかんしては、{{Harvtxt|Yoshida|Hiraga|Takehana|Taniguchi|2016}} によって[[記載]]された {{Snamei||Ideonella sakaiensis}}([[イデオネラ・サカイエンシス]])と、本種から分離同定されたPET分解酵素 [[PETace]] がよく知られているが、PETaceは熱不安定性であり分解速度も非常に遅いことから、PET加水分解酵素としての要件を満たさないという指摘がなされている。一方、{{Snamei|species|Thermobifida fusca}} などから得られた[[クチナーゼ]]類からは、熱安定性かつ高いPET分解性を示すものが知られており、PET加水分解酵素として有望視されている{{Sfn|Ru|Huo|Yang|2020}}{{Sfn|Kawai|Kawabata|Oda|2019}}。 |
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== 複合材料 == |
== 複合材料 == |
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合成樹脂を用いた[[複合材料]]の一種として[[繊維強化プラスチック]](FRP)がある。繊維強化プラスチックの代表的なものにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) と[[炭素繊維強化プラスチック]] (CFRP) がある。[[ガラス繊維]]は引っ張り強度がプラスチックよりはるかに強いので、成型部品の強度向上によく使用される。[[炭素繊維]]の強度はガラス繊維より更に強いが高価なので、CFRPは軽くて強い(高価な)素材として[[航空機]]等に使用されている |
合成樹脂を用いた[[複合材料]]の一種として[[繊維強化プラスチック]](FRP)がある。繊維強化プラスチックの代表的なものにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) と[[炭素繊維強化プラスチック]] (CFRP) がある。[[ガラス繊維]]は引っ張り強度がプラスチックよりはるかに強いので、成型部品の強度向上によく使用される。[[炭素繊維]]の強度はガラス繊維より更に強いが高価なので、CFRPは軽くて強い(高価な)素材として[[航空機]]等に使用されている{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=124-125}}。また建材として、合成樹脂と木質系材料(木材や竹など)を微細化した木粉または木繊維を主原料とする木材・プラスチック複合材([[WPC]])および木材・プラスチック再生複合材([[木材・プラスチック再生複合材|WPRC]])があり{{Sfn|神代|古田|2014}}、主に[[デッキ]]や[[柵|フェンス]]、[[ルーバー]]等の外構材として用いられている。 |
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== 機能性樹脂 == |
== 機能性樹脂 == |
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=== 形状記憶樹脂 === |
=== 形状記憶樹脂 === |
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形状記憶樹脂は[[形状記憶合金]]と同様に塑性変形された樹脂が所定温度以上に加熱されるともとの形状にもどるという特異な性質を備える樹脂で形状記憶合金に比べて軽量で廉価であり、変形時の形状の自由度が形状記憶合金よりも高いなどの特徴を備える |
形状記憶樹脂は[[形状記憶合金]]と同様に塑性変形された樹脂が所定温度以上に加熱されるともとの形状にもどるという特異な性質を備える樹脂で形状記憶合金に比べて軽量で廉価であり、変形時の形状の自由度が形状記憶合金よりも高いなどの特徴を備える{{Sfn|入江|1989}}{{Sfn|入江|1990}}。 |
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=== 光硬化性樹脂 === |
=== 光硬化性樹脂 === |
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== 生産 == |
== 生産 == |
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2012年のプラスチックの世界生産は2億8800トンであり、最大の生産国は[[中国]]で5213万トン、以下[[EU]]が4900万トン、[[アメリカ]]4805万トン、[[韓国]]1335万トン、日本1052万トンの順となっていた<ref>http://www.jpif.gr.jp/5topics/topics.htm |
2012年のプラスチックの世界生産は2億8800トンであり、最大の生産国は[[中国]]で5213万トン、以下[[欧州連合|EU]]が4900万トン、[[アメリカ]]4805万トン、[[韓国]]1335万トン、日本1052万トンの順となっていた<ref name = "日本プラスチック工業連盟">{{Cite web|和書|title = トピックス|website = 日本プラスチック工業連盟|publisher = 日本プラスチック工業連盟|url = http://www.jpif.gr.jp/5topics/topics.htm| accessdate = 2019-12-05|url-status=dead|url-status-date=2024-09-09}}</ref>。プラスチックの生産量は急増しており、2015年には3億2200万トンに達している<ref>https://dot.asahi.com/articles/-/126461?page=2 「スタバ、マックの「脱プラ」 契機はG7と中国のプラごみ輸入規制」中原一歩 アエラドット 2018.9.9 2019年12月5日閲覧</ref>。日本での生産量は1990年代前半までは増加傾向にあったものの、1997年に1521万トンを記録した後は減少に転じた。その後、2008年までは1400万トン前後の横ばいで推移していたものの、2009年の[[リーマンショック]]の影響で生産量が1100万トン台にまで激減し{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=46-47}}、それ以降は1000万トン前後の生産量で推移している<ref name = "日本プラスチック工業連盟"/>{{Sfn|プラスチック循環利用協会|2019|p=11}}。 |
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2018年の日本国内生産においては総生産量1067万トンのうちポリエチレンが23.1%、ポリプロピレンが22.1%、塩化ビニールが15.8%を占め、これらを含む熱可塑性樹脂が全体の88.8%、熱硬化性樹脂が9.1%となっていた |
2018年の日本国内生産においては総生産量1067万トンのうちポリエチレンが23.1%、ポリプロピレンが22.1%、塩化ビニールが15.8%を占め、これらを含む熱可塑性樹脂が全体の88.8%、熱硬化性樹脂が9.1%となっていた{{Sfn|プラスチック循環利用協会|2019|p=11}}。 |
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== 処理 == |
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プラスチックは回収して[[リサイクル]]することが可能である。リサイクルには、廃プラスチックを溶融してそのままプラスチックに再生するマテリアルリサイクルと、分解していったん原料に戻し、そこから加工するケミカルリサイクル、そしてプラスチックを燃料化して熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルの3つの方法が存在する<ref>「「機能性プラスチック」のキホン 欲しい性能を付与できる進化した有機材料の世界」p200-201 桑嶋幹・久保敬次 ソフトバンククリエイティブ 2011年11月25日初版第1刷</ref>。プラスチックを再び石油へと戻す、いわゆる[[油化]]もリサイクルの一方法であるが、これを原料化とみなすか燃料化と見なすかについては国ごとに差異がある<ref>「プラスチックリサイクル入門 システム・技術・評価」p15-16 松藤敏彦編著 一般社団法人廃棄物資源循環学会リサイクルシステム・技術研究部会著 技報堂出版 2009年5月1日1版1刷</ref>。ただしプラスチックリサイクルのシステムが確立されている国家においても、回収されたプラスチックのすべてがリサイクルや燃料化に回されるわけではなく、他国への廃プラスチック輸出が盛んに行われてきた<ref name=":1">{{Cite web|title=すべて“量り売り” イギリス最新買い物スタイル|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210916/k10013261871000.html|website=NHKニュース|accessdate=2021-09-17|last=日本放送協会}}</ref>。日本も例外ではなく、2006年にはすでに廃プラスチックの13%が海外輸出へと回されていた<ref>「プラスチックリサイクル入門 システム・技術・評価」p14 松藤敏彦編著 一般社団法人廃棄物資源循環学会リサイクルシステム・技術研究部会著 技報堂出版 2009年5月1日1版1刷</ref>。しかし主な輸出先であった中国が2017年末に廃プラスチックの輸入禁止を打ち出し、さらにそれに変わる輸出先となっていた[[タイ王国|タイ]]・[[マレーシア]]・[[ベトナム]]・[[台湾]]が2018年に相次いで輸入規制を導入したため、廃プラスチックの国内滞留および国内処理が増加した<ref>{{Cite web|title=行き場を失う日本の廃プラスチック {{!}} どうする?世界のプラスチック - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報|url=https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0101/fceb0360455b6cdf.html|website=ジェトロ|accessdate=2021-09-17|language=ja}}</ref>。 |
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[[File:Cumulative plastic exports by top ten exporters (1988-2016), OWID.svg|thumb|廃プラスチックの累積輸出量が多い国・地域(1988年から2016年)]] |
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プラスチックは回収して[[リサイクル]]することが可能である。リサイクルには、廃プラスチックを溶融してそのままプラスチックに再生する'''マテリアルリサイクル'''と、分解していったん原料に戻し、そこから加工する'''ケミカルリサイクル'''、そしてプラスチックを燃料化して熱エネルギーを回収する'''サーマルリサイクル'''の3つの方法が存在する{{Sfn|桑嶋|久保|2011|pp=200-201}}。プラスチックを再び石油へと戻す、いわゆる[[油化]]もリサイクルの一方法であるが、これを原料化とみなすか燃料化と見なすかについては国ごとに差異がある{{Sfn|松藤|廃棄物資源循環学会リサイクルシステム・技術研究部会|2009|pp=15-16}}。ただしプラスチックリサイクルのシステムが確立されている国家においても、回収されたプラスチックのすべてがリサイクルや燃料化に回されるわけではなく、他国への廃プラスチック輸出が盛んに行われてきた<ref name=":1">{{Cite web|和書|title=すべて“量り売り” イギリス最新買い物スタイル|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210916/k10013261871000.html|website=NHKニュース|accessdate=2021-09-17|last=日本放送協会}}</ref>。 |
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2019年に[[バーゼル条約]]の改正案が発効したことにより、2021年以降は汚れたプラスチックごみを輸出する際に相手国の同意が必要となった<ref>{{Cite web|和書|title=汚れた廃プラスチック、バーゼル条約で規制対象に(世界) | ビジネス短信|url=https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/05/8b624be5eec14dad.html|website=ジェトロ|accessdate=2022-03-23|language=ja}}</ref>。 |
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=== 日本 === |
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日本も例外ではなく、2006年にはすでに廃プラスチックの13%が海外輸出へと回されていた{{Sfn|松藤|廃棄物資源循環学会リサイクルシステム・技術研究部会|2009|p=14}}。2017年には、排出されたプラスチック903万トンのうちリサイクルされたものが251万トンで、うち149万トンが海外に輸出され処理されていた<ref name=":2">{{Cite web|和書|title=環境省_令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第3章第1節 プラスチックを取り巻く国内外の状況と国際動向|url=https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r01/html/hj19010301.html|website=環境省|accessdate=2022-03-23|language=ja}}</ref>。しかし主な輸出先であった[[中国]]が2017年末に廃プラスチックの輸入禁止を打ち出し、さらにそれに代わる輸出先となっていた[[タイ王国|タイ]]・[[マレーシア]]・[[ベトナム]]・[[台湾]]が2018年に相次いで輸入規制を導入したため、廃プラスチックの国内滞留および国内処理が増加した<ref>{{Cite web|和書|title=行き場を失う日本の廃プラスチック {{!}} どうする?世界のプラスチック - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報|url=https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0101/fceb0360455b6cdf.html|website=ジェトロ|accessdate=2021-09-17|language=ja}}</ref>。 |
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2016年時点で海外へのプラスチックごみ輸出量は153万トンだったが、2018年には101万トンまで減少した。減少分は国内で処理されていることになるが、環境省のアンケート調査によると、一部地域において保管上限の超過や受入制限が発生しており、国内においてリサイクル処理施設の整備を進めることが急務となっている<ref name=":2"/>。 |
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2021年時点で、日本のプラスチックリサイクル率は87%で、うち焼却してエネルギーとして利用するサーマルリサイクルが62%、マテリアルとケミカルリサイクルは25%だった。比較して、2020年度の欧州ではマテリアルとケミカルリサイクルは35%だった。<ref>{{Cite web |title=日本のプラリサイクル率の闇 真の再生へ不可欠な技術革新 |url=https://www.sankei.com/article/20230909-AGKSTFHV7VLGZPUSOS5F4GW5SY/ |website=産経新聞:産経ニュース |date=2023-09-09 |access-date=2024-10-31 |language=ja |first=桑島 |last=浩任}}</ref> |
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==環境への影響== |
==環境への影響== |
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{{main|プラスチック汚染|太平洋ゴミベルト|マイクロプラスチック}} |
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[[File:Global production and fate of plastics.png|thumb|世界のプラスチック生産(青)、廃棄(黄)、埋立て(茶)、焼却(赤)、リサイクル(緑)]] |
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[[ファイル:Albatross chick plastic.jpg|thumb|275px|この[[コアホウドリ]]のひなは、親鳥によりプラスチックを与えられ、それを吐き出すことができなかった。そして飢えか窒息により死亡した。]] |
[[ファイル:Albatross chick plastic.jpg|thumb|275px|この[[コアホウドリ]]のひなは、親鳥によりプラスチックを与えられ、それを吐き出すことができなかった。そして飢えか窒息により死亡した。]] |
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{{main|太平洋ゴミベルト|マイクロプラスチック}} |
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世界のプラスチック年間生産量は、1950年の200万トンから2015年には約200倍の4億700万トンに達した<ref>[https://www.businessinsider.jp/post-197749 1カ月「脱プラスチック生活」やってみた。日本は1人のプラゴミの排出量、世界ワースト2位] Business Insider 2019年9月2日</ref>。2050年には11億トンに達するといわれている。<ref>{{Cite web|title=The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics - download the infographics|url=https://www.ellenmacarthurfoundation.org/news/the-new-plastics-economy-rethinking-the-future-of-plastics-infographics|website=www.ellenmacarthurfoundation.org|accessdate=2019-12-25}}</ref>プラスチックの多くは使い捨てされており、リサイクルされたのは生産量のわずか9%となっている。2016年時点で、1人あたりのプラスチックごみの排出量は1位がアメリカ、2位がイギリスである<ref name=":1" />。イギリスでは国内で処理しきれないため、トルコなど国外に送っている<ref name=":1" />。 |
世界のプラスチック年間生産量は、1950年の200万トンから2015年には約200倍の4億700万トンに達した<ref>[https://www.businessinsider.jp/post-197749 1カ月「脱プラスチック生活」やってみた。日本は1人のプラゴミの排出量、世界ワースト2位] Business Insider 2019年9月2日</ref>。2050年には11億トンに達するといわれている。<ref>{{Cite web|title=The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics - download the infographics|url=https://www.ellenmacarthurfoundation.org/news/the-new-plastics-economy-rethinking-the-future-of-plastics-infographics|website=www.ellenmacarthurfoundation.org|accessdate=2019-12-25}}</ref>プラスチックの多くは使い捨てされており、リサイクルされたのは生産量のわずか9%となっている。2016年時点で、1人あたりのプラスチックごみの排出量は1位がアメリカ、2位がイギリスである<ref name=":1" />。イギリスでは国内で処理しきれないため、トルコなど国外に送っている<ref name=":1" />。 |
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利用後に処理されず環境中に流出してしまうことも少なくない。2018年現在、既に世界の海に存在しているプラスチックごみは1億5,000万トン、そこへ少なくとも年間800万トンが新たに流入していると推定され、2050年に[[魚類]]の総量を上回ると警告されている<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29256100R10C18A4TCP000/ 【ポスト平成の未来学】第6部 共創エコ・エコノミー/ゴミはなくせる/海のゴミ1.5億トン 増加止まらず]『日本経済新聞』朝刊2018年4月12日</ref>。 |
利用後に処理されず環境中に流出してしまうことも少なくない。2018年現在、既に世界の海に存在しているプラスチックごみは1億5,000万トン、そこへ少なくとも年間800万トンが新たに流入していると推定され、2050年に[[魚類]]の総量を上回ると警告されている<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29256100R10C18A4TCP000/ 【ポスト平成の未来学】第6部 共創エコ・エコノミー/ゴミはなくせる/海のゴミ1.5億トン 増加止まらず]『日本経済新聞』朝刊2018年4月12日</ref>。 |
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[[ファイル:積丹半島の沈船P7030029.JPG|thumb|275px|right|難破船とともに海岸に打ち上げられて残るプラスチック製品([[積丹半島]][[西の河原]])]] |
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[[漂流・漂着ごみ]]の影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしているが、このうち92%がプラスチックの影響と考えられており<ref name = “wwf2018”>[https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html 海洋プラスチック問題について] WWFジャパン 2018年10月26日</ref>、プラスチックごみを体内に摂取している個体の比率は、ウミガメで52%、海鳥で90%にのぼると推定されている<ref name = wwf2019>[https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3992.html G20大阪サミット前に海洋プラスチック汚染問題解決への政策提言を実施] WWFジャパン 2019年6月14日</ref>。 |
[[漂流・漂着ごみ]]の影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしているが、このうち92%がプラスチックの影響と考えられており<ref name = “wwf2018”>[https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html 海洋プラスチック問題について] WWFジャパン 2018年10月26日</ref>、プラスチックごみを体内に摂取している個体の比率は、ウミガメで52%、海鳥で90%にのぼると推定されている<ref name = wwf2019>[https://www.wwf.or.jp/activities/activity/3992.html G20大阪サミット前に海洋プラスチック汚染問題解決への政策提言を実施] WWFジャパン 2019年6月14日</ref>。 |
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また、2014年頃から国際的な会議の場で、海洋中のマイクロプラスチックの環境への影響が取り上げられるようになった<ref>{{ |
また、2014年頃から国際的な会議の場で、海洋中のマイクロプラスチックの環境への影響が取り上げられるようになった<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.dowa-ecoj.jp/naruhodo/2018/20180701.html |title=そうだったのか!マイクロプラスチック問題とは?(1)|author=DOWAエコシステム 環境ソリューション室 森田 |date=2018-07-02 |accessdate=2019-02-24}}</ref>。石油で作られたプラスチックは、半永久的に分解されず直径5ミリ以下の粒子となり、自然界に存在する有害物質を吸着し海面や海底等に留まり、生物の体内にも取り込まれている<ref name = wwf2019 />。マイクロプラスチックは大気中にも広く含まれ<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3221028?cx_amp=all&act=all 辺境の山地にもマイクロプラスチック、大気中を浮遊] AFP BB NEWS 2019年4月16日</ref><ref>[https://www.asahi.com/sp/articles/ASMC74DGWMC7TIPE012.html 大気中からもマイクロプラスチック 福岡市内で確認] 朝日新聞 2019年11月19日</ref>、人が飲食や呼吸を通じて体内に取り込むマイクロプラスチックの量は最大で年間12万1000個に上り、ヒト組織の内部に入り込み局地的な免疫反応を引き起こす恐れがあるとする研究結果も発表されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/102400459/ |title=人体にマイクロプラスチック、初の報告 |author=ナショナル ジオグラフィック |date=2018-10-24 |accessdate=2019-02-24}}</ref><ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3228745?cx_amp=all&act=all 人体に取り込まれるマイクロプラスチック、年間12万個超 研究] AFP BB NEWS 2019年6月6日</ref>。 |
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太平洋ゴミベルト<ref |
太平洋ゴミベルト<ref name = "ナショジオ Handwerk 2009"/>は、北太平洋の中央(およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の範囲{{Sfn|Dautel|2009}})に漂う海洋ごみの海域である。浮遊したプラスチックなどの破片が北太平洋循環の海流に閉ざされ、異常に集中しているのが特徴の海域である。太平洋ゴミベルトの面積はテキサス州の2倍に相当する<ref name = "ナショジオ Handwerk 2009">{{Cite web|和書| first = Brian|last = Handwerk|title = “太平洋ゴミベルト”の実態調査|website = ナショナルジオグラフィック日本語版|url = https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1528/| accessdate = 2021-12-18}}</ref>。プラスチックは海洋生物にとって最大の脅威となっている。海洋生物がゴミを食べ物と間違えて食べることにより、結果として海洋生物が大量のポリスチレンを摂取してしまう。<ref>{{Cite web|和書|url=http://wired.jp/2009/08/24/太平洋ゴミベルト:プラスチックの濃縮スープと/|title=太平洋ゴミベルト:プラスチックの濃縮スープとなった海(動画)|accessdate=2014-11-10}}</ref> |
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2019年5月、{{仮リンク|国際環境法センター|en| Center for International Environmental Law}}は新しく発表した報告書で、生産から廃棄にいたるまでの過程でプラスチックが大気中に放出する[[温室効果ガス]]の量について、2019年は8億5000万トンに上ると予測している<ref>[https://forbesjapan.com/articles/detail/27549/1/1/1 進まないプラスチックリサイクル、温暖化に影響も] Forbes Japan 2019年6月1日</ref>。 |
2019年5月、{{仮リンク|国際環境法センター|en| Center for International Environmental Law}}は新しく発表した報告書で、生産から廃棄にいたるまでの過程でプラスチックが大気中に放出する[[温室効果ガス]]の量について、2019年は8億5000万トンに上ると予測している<ref>[https://forbesjapan.com/articles/detail/27549/1/1/1 進まないプラスチックリサイクル、温暖化に影響も] Forbes Japan 2019年6月1日</ref>。 |
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2019年時点で流入量は1000万トン超とされているが、海面上にあるのは44万トンであり、残りは海底に沈むなどして観測できず行方不明となっている<ref name=" |
2019年時点で流入量は1000万トン超とされているが、海面上にあるのは44万トンであり、残りは海底に沈むなどして観測できず行方不明となっている。また低温では分解が進まないため、2019年に[[房総半島]]の約500km沖合で水深6000mの海底を調査した際には、昭和59年(1984年)に製造された食品の梱包材が発見されるなど、長期間にわたって残留することが判明している<ref name="JAMSTEC プレス 2018">{{Cite press release|和書|title=房総半島沖の水深6,000m付近の海底から大量のプラスチックごみを発見 ―行方不明プラスチックを探しに深海へ―|publisher = JAMSTEC 国立研究開発法人海洋研究開発機構|url=https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20210330/|date = 2021-3-30|website=JAMSTEC 国立研究開発法人海洋研究開発機構|accessdate=2021-04-03}}</ref>。 |
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主に海洋プラスチックや[[二酸化炭素]](CO<sub>2</sub>)の削減から、欧米諸国ではプラ製品の製造を削減する議論が活発であり、欧州議会では2021年までに使い捨てプラ食器などの使用を禁止している<ref>{{Cite web|url=https://eeas.europa.eu/delegations/japan_ja/60364/|title=欧州議会、2021年までに使い捨てプラスチック製品を禁止することを支持|accessdate=2019 |
主に海洋プラスチックや[[二酸化炭素]](CO<sub>2</sub>)の削減から、欧米諸国ではプラ製品の製造を削減する議論が活発であり、欧州議会では2021年までに使い捨てプラ食器などの使用を禁止している<ref>{{Cite web|和書|url=https://eeas.europa.eu/delegations/japan_ja/60364/|title=欧州議会、2021年までに使い捨てプラスチック製品を禁止することを支持|accessdate=2019-07-23|publisher=駐日欧州連合代表部}}</ref>。 |
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=== 日本 === |
=== 日本 === |
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日本は、プラスチックの1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量で世界第2位<ref>[ |
日本は、プラスチックの1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量で世界第2位<ref>[https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-05/s1.pdf#page=10 環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況 <第3回資料集> 2019年02月20]</ref>。生産量は世界第3位となっており、日本近海でのマイクロプラスチックの濃度は、世界平均の27倍に相当するという調査結果もある。また四国の沖合ではプラスチックごみが滞留し、直下の海底へ沈降しているとの想定もある<ref name="JAMSTEC プレス 2018"/>。 |
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日本では回収したプラスチックの材料自体のリサイクルは約20%にとどまり、57%を多くの先進国ではリサイクルと認められない[[サーマルリサイクル]]で熱回収に利用しており、原油由来のプラスチックの燃焼処理は[[地球温暖化]]対策とも逆行する<ref name="businessinsider2019">[https://forbesjapan.com/articles/detail/24796/1/1/1 世界基準からズレた日本の「プラごみリサイクル率84%」の実態 Forbes Japan 2019年1月10日]</ref>。 |
日本では回収したプラスチックの材料自体のリサイクルは約20%にとどまり、57%を多くの先進国ではリサイクルと認められない[[サーマルリサイクル]]で熱回収に利用しており、原油由来のプラスチックの燃焼処理は[[地球温暖化]]対策とも逆行する<ref name="businessinsider2019">[https://forbesjapan.com/articles/detail/24796/1/1/1 世界基準からズレた日本の「プラごみリサイクル率84%」の実態 Forbes Japan 2019年1月10日]</ref>。 |
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2018年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットにて、プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄に関して、より踏み込んで取り組むとする「G7海洋プラスチック憲章」では、日本とアメリカだけが署名しなかった<ref name = “wwf2018” />。 |
2018年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットにて、プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄に関して、より踏み込んで取り組むとする「G7海洋プラスチック憲章」では、日本とアメリカだけが署名しなかった<ref name = “wwf2018” />。 |
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2019年5月には日本政府が海洋汚染に対して海洋で分解可能なプラスチックに対して、国際規格を定めて日本企業を支援する報道がなされている<ref>{{Cite news|date=2019年5月6日|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190506/k10011906671000.html|title=「海で分解するプラスチック」国が開発企業を支援へ|publisher=[[日本放送協会]]|newspaper=NHK NEWSWEB|accessdate=2019年5月14日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190506023151/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190506/k10011906671000.html|archivedate=2019年5月6日}}</ref><ref>{{Cite news|date=2019-05-12|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44697880S9A510C1NN1000/|title=海で分解するプラスチック、官民で規格策定へ 国際標準への提案めざす|publisher=[[日本経済新聞社]]|newspaper=[[日本経済新聞]]|accessdate=2019-05-14|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190513111213/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44697880S9A510C1NN1000/|archivedate=2019-05-13}}</ref>が、[[安倍晋三]]首相は2019年10月6日の[[国立京都国際会館]]で開かれた[[科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム]]において、海洋プラスチックごみ問題に対してプラスチックの社会への重要性を説きつつ「プラスチックを敵視したり、その利用者を排斥したりすべきことではありません」「必要なのはゴミの適切な管理ですし、イノベーションに解決を求めることです」と発言し<ref>[https://www.sankei.com/ |
2019年5月には日本政府が海洋汚染に対して海洋で分解可能なプラスチックに対して、国際規格を定めて日本企業を支援する報道がなされている<ref>{{Cite news|date=2019年5月6日|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190506/k10011906671000.html|title=「海で分解するプラスチック」国が開発企業を支援へ|publisher=[[日本放送協会]]|newspaper=NHK NEWSWEB|accessdate=2019年5月14日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190506023151/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190506/k10011906671000.html|archivedate=2019年5月6日}}</ref><ref>{{Cite news|date=2019-05-12|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44697880S9A510C1NN1000/|title=海で分解するプラスチック、官民で規格策定へ 国際標準への提案めざす|publisher=[[日本経済新聞社]]|newspaper=[[日本経済新聞]]|accessdate=2019-05-14|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190513111213/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44697880S9A510C1NN1000/|archivedate=2019-05-13}}</ref>が、[[安倍晋三]]首相は2019年10月6日の[[国立京都国際会館]]で開かれた[[科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム]]において、海洋プラスチックごみ問題に対してプラスチックの社会への重要性を説きつつ「プラスチックを敵視したり、その利用者を排斥したりすべきことではありません」「必要なのはゴミの適切な管理ですし、イノベーションに解決を求めることです」と発言し<ref>[https://www.sankei.com/article/20191006-QQKUPA2MDJMBZMAI7BATN4EILU/ 安倍首相の「STSフォーラム」あいさつ全文] 産経新聞 2019年10月6日閲覧</ref>、日本企業の[[生分解性プラスチック]]開発への取り組みを評価しつつ、ゴミの適切な処理と、技術革新によって海洋プラスチックごみが解決されることが重要である旨の発言をした<ref>[https://news.ntv.co.jp/category/politics/511194 安倍首相"海洋プラ問題解決に技術革新"] 日テレNEWS24 2019年10月6日閲覧</ref>。 |
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2022年4月1日に[[プラスチック資源循環促進法]]が施行される予定になっている。 |
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=== 脱プラスチックへの議論・懐疑 === |
=== 脱プラスチックへの議論・懐疑 === |
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[[BBCニュース]]としてミシガン州立大学の包装学部長Susan Selkeは「ペットボトル飲料を仮にガラス瓶に置き換えた場合、輸送エネルギーは40%増加する」と話す。American Chemistry Councilと環境評価企業Trucostは清涼飲料水のプラスチックをスズ、アルミ、ガラスなどに置き換えた場合に、環境汚染への対策費は5倍に増えると推定している。また真空パックによって[[食品ロス]]も削減されており、単純にプラスチックを使わなければよいという意見には、議論が存在する<ref>{{Cite web|url=https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61161&pno=3&more=1?site=nli|title=日本が直面する、脱プラスチック問題|accessdate=2019 |
[[BBCニュース]]としてミシガン州立大学の包装学部長Susan Selkeは「ペットボトル飲料を仮にガラス瓶に置き換えた場合、輸送エネルギーは40%増加する」と話す。{{仮リンク|米国化学工業協会|en|American Chemistry Council}}と環境評価企業{{仮リンク|Trucost|en|Trucost}}は清涼飲料水のプラスチックをスズ、アルミ、ガラスなどに置き換えた場合に、環境汚染への対策費は5倍に増えると推定している。また真空パックによって[[食品ロス]]も削減されており、単純にプラスチックを使わなければよいという意見には、議論が存在する<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61161&pno=3&more=1?site=nli|title=日本が直面する、脱プラスチック問題|accessdate=2019-07-23|publisher=ニッセイ基礎研究所|url-status=dead|url-status-date=2024-09-09}}</ref><ref>{{Cite web|title=What's the real price of getting rid of plastic packaging?|url=http://www.bbc.com/worklife/article/20180705-whats-the-real-price-of-getting-rid-of-plastic-packaging|website=www.bbc.com|accessdate=2019-07-23|language=en|first=Richard|last=Gray}}</ref>。なおペットボトルからアルミ缶への移行はアルミのリサイクルシステムが構築されていることや、賞味期限の延長のという恩恵があるため有用という意見もある<ref>{{Cite web|和書|title=無印良品が、ペットボトル容器を廃止。あえて「売れづらいアルミ缶」に素材を変えた理由とは?|url=https://www.gizmodo.jp/2021/04/muji-pet.html|website=www.gizmodo.jp|date=2021-04-23|accessdate=2021-09-17|language=ja|first=mediagene|last=Inc}}</ref>。食品ロスと脱プラスチックの両立案として、小売店での量り売りや店側による容器の回収と再利用などがある<ref name=":1" />。 |
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プラスチックの石油消費量は、日本の石油消費全体の3%<ref>{{Cite web|title=環境負荷が少ないプラスチック食品容器 {{!}} プラトレネット|url=http://www.japfca.jp/earth/index.html|website=www.japfca.jp|accessdate=2019-09-14}}</ |
プラスチックの石油消費量は、日本の石油消費全体の3%<ref>{{Cite web|和書|title=環境負荷が少ないプラスチック食品容器 {{!}} プラトレネット|url=http://www.japfca.jp/earth/index.html|website=www.japfca.jp|accessdate=2019-09-14}}</ref>{{Sfn|プラスチック循環利用協会|2019}}~7%<ref>{{Cite web|和書|title=プラスチックとは|日精樹脂工業株式会社|url=https://www.nisseijushi.co.jp/plastics/plastics1.php|website=www.nisseijushi.co.jp|accessdate=2019-09-14}}</ref>程度であり、[[燃料]](77%)など[[石油製品]]全体の割合からすると少ない。食品容器はさらに、この一部(全体の0.2%)であるため、石油原料の消費量の点において、プラ容器は環境負荷が元々少ないという主張もある{{要出典|date=2021年5月}}。 |
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国内で生産される業務用ストローの約50%を生産する[[岡山県]]の[[シバセ工業]]では、プラスチック製品の存在が悪いのではなく、廃棄の仕方に問題があると考えており、「脱プラ製ストロー」の動きに関しては、特に[[分別回収]]が徹底され、ほぼ焼却されている日本にはそぐわない。海洋汚染を語るなら、本当の問題は"垂れ流し"を行っている[[途上国]]や先進国でも[[洪水]]の可能性があるも関わらず[[埋め立て]]という手法を取っている欧米諸国にあると指摘している<ref name="ASAHI">{{Cite web|和書|date=2018-10-25|url=https://www.shibase.co.jp/environment/news_file/ST1-18010_ASAHINEWS_20181025.pdf|title=プラ製ストロー逆風こそ商機|publisher=朝日新聞|accessdate=2021-11-01}}</ref><ref name="72 シバセ">{{Cite web|和書|date=2018-11-19|url=https://www.shibase.co.jp/environment/news_file/ST1-18011_VISIONOKAYAMA_20181119.pdf|title=「脱プラ製ストロー」で波紋「生分解」引き合い急増の備中化工 国産トップシバセ工業は「分別回収する日本でなぜ」|publisher=VISION OKAYAMA 2018-11-19|accessdate=2021-11-01}}</ref>。 |
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=== バイオプラスチックが及ぼす食料需給への懸念 === |
=== バイオプラスチックが及ぼす食料需給への懸念 === |
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[[バイオプラスチック]]の普及、生産のためには多くの農地が必要である。食糧生産のための農地がバイオプラスチックやバイオ燃料の材料用農地に変わる可能性がある。そうなれば世界総人口の増え続ける世界の食料需給に影響を与える可能性がある。特に影響を受けるのは発展途上国や低所得の貧困層になるだろう。これからバイオ素材が普及し大量に使われ長期的に利用料されるようになれば食料需給に影響をあたえる可能性が高い<ref>棟居洋介, 増井利彦, 「[https://doi.org/10.11353/sesj.25.167 バイオマスプラスチックの普及が世界の食料不安に及ぼす影響の長期評価]」『環境科学会誌』 2012年 25巻 3号 p.167-183, , {{doi|10.11353/sesj.25.167}}</ref>。 |
[[バイオプラスチック]]の普及、生産のためには多くの農地が必要である。食糧生産のための農地がバイオプラスチックやバイオ燃料の材料用農地に変わる可能性がある。そうなれば世界総人口の増え続ける世界の食料需給に影響を与える可能性がある。特に影響を受けるのは発展途上国や低所得の貧困層になるだろう。これからバイオ素材が普及し大量に使われ長期的に利用料されるようになれば食料需給に影響をあたえる可能性が高い<ref>棟居洋介, 増井利彦, 「[https://doi.org/10.11353/sesj.25.167 バイオマスプラスチックの普及が世界の食料不安に及ぼす影響の長期評価]」『環境科学会誌』 2012年 25巻 3号 p.167-183, , {{doi|10.11353/sesj.25.167}}</ref>。 |
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==人体への影響== |
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マイクロプラスチックは飲料や食品に混入していることがあり、それらを摂取することで体内に入る。マイクロプラスチックは生体バリアを突破し血液や胎盤から |
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<ref>{{Cite journal|和書| author = 芳賀 優弥 | author2 = 真鍋 颯太| author3 = 辻野 博文| author4 = 淺原 時泰| author5 = 東阪 和馬| author6 = 堤 康央| year = 2024| title = 劣化したマイクロプラスチックが示す細胞毒性機序の解明| journal = YAKUGAKU ZASSHI| volume =144| issue = 2 | pages = 177-181| publisher = 日本薬学会| doi = 10.1248/yakushi.23-00152-3| ref = harv |
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}}</ref>ポリスチレンナノプラスチック(PS-NP)は血液脳関門(BBB)を通過し人体に影響を与えることが懸念されていいる<ref>{{Cite journal|| author =Shan Shan| author2 =Yifan Zhang| author3 =Huiwen Zhao| author4 =Tao Zeng| author5 =Xiulan Zhao| year = 2023| title =Polystyrene nanoplastics penetrate across the blood-brain barrier and induce activation of microglia in the brain of mice| journal =sience| volume =298| publisher = Elsevier| doi =10.1016/j.chemosphere.2022.134261 |
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| ref = harv}}</ref>。ただし、ナノサイズ粒子のナノマテリアルになると生体バリアや血液脳関門を通過する異物はプラスチック以外にも多く存在することに留意が必要である<ref>{{Cite journal|和書 |
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| author =東阪 和馬| year = 2023| title =ヒトの健康へのリスク解析に資するナノマテリアルの神経細胞分化におよぼす影響とその機序解明| journal =YAKUGAKU ZASSHI| volume = 143| issue = 2 | pages = 133-138| publisher = 日本薬学会| doi =10.1248/yakushi.22-00156-3| ref = harv}}</ref><ref>{{Cite journal|和書| author = 梅澤 雅和| author2 =小野田 淳人| author3 =武田 健| year = 2017| title =ナノ粒子の妊娠期曝露が次世代中枢神経系に及ぼす影響| journal = YAKUGAKU ZASSHI| volume =137| issue = 1| pages = 73-78| publisher = 日本薬学会| doi = 10.1248/yakushi.16-00214| ref = harv}}</ref>。 |
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== 関連団体 == |
== 関連団体 == |
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* [[日本プラスチック工業連盟]] |
* [[日本プラスチック工業連盟]] |
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* [[米国プラスチック工業協会]]([[:en:Society of the Plastics Industry|Society of the Plastics Industry]]、略称SPI) |
* [[米国プラスチック工業協会]]([[:en:Society of the Plastics Industry|Society of the Plastics Industry]]、略称SPI) |
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== 参考文献 == |
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* 井上俊英他著 『エンジニアリングプラスチック』 高分子学会編集、共立出版、2004年。ISBN 4-320-04370-7 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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<references group="注"/> |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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== 参考文献・サイト == |
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=== 和文 === |
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<!-- * 井上俊英他著 『エンジニアリングプラスチック』 高分子学会編集、共立出版、2004年。ISBN 4-320-04370-7 脚注での参照がないためコメントアウト --> |
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| last = 入江 |
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| first = 正浩 |
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* {{Cite journal ja |
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| title = 発泡スチロールゼロエミッション処理構築のためのポリスチレン分解微生物の単離と分解特性 |
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* {{Cite book ja |
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| last = 齋藤 |
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| doi = 10.4139/sfj1954.13.4_2 }}<!-- 島崎|1966 --> |
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* {{Cite web|和書 |
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| first = Susan L. |
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* [http://www.jpif.gr.jp/ 日本プラスチック工業連盟] |
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* [http://weblearningplaza.jst.go.jp/cgi-bin/user/top.pl?next=lesson_list&type=simple&field_code=36&course_code=688 プラスチックの基礎知識] (技術者Web学習システム) |
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2024年11月26日 (火) 13:15時点における最新版
合成樹脂(ごうせいじゅし、英: synthetic resin)とは、人為的に製造された高分子化合物からなる物質の一種。合成樹脂から紡糸された繊維は合成繊維と呼ばれ、合成樹脂は可塑性を持つものが多い。安くて丈夫であることなどから、世界中でさまざまな製品に使用されてきたが、海洋など自然環境に出たプラスチックを野生動物が飲み込む被害が各地で報告されるほか、水道水などからも微小なプラスチックが見つかり、人体からプラスチックを検出したとする調査研究が2024年、世界的に相次いで報告され、合成樹脂による環境汚染による人間への影響が懸念されている[1][2]。
概説
[編集]合成樹脂は一般的には石油を原料とするモノマーを重合してできたポリマーに添加剤を加えた物質の総称である[3]。合成樹脂は、主に原油を蒸留して得られるナフサを原料として製造され、この製造は石油化学産業の重要な一部門となっている[4]。
他方、他の原料からも製造は可能であり、特に、再生産が可能であるサトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを原料としたバイオマスプラスチック(バイオプラスチック)は石油資源の枯渇対策の一つとして注目されている[5]。ただし、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックは全く別の概念であり、バイオマスプラスチックであるからと言って自然に分解するわけではないことは注意が必要である[6]。
金型などによる成形が簡単なため、大量生産される各種日用品や工業分野、医療分野の製品などの原材料となる。製品の使用目的や用途に合わせた特性・性能を有する樹脂の合成が可能であり、現代社会で幅広く用いられている。
一般的なプラスチックの特徴としては、電気を通さない絶縁体である、水に強く腐食しにくい、比較的熱に弱い等が挙げられる。ただし硬度や耐熱性、強度に関しては改善が可能であり、こうした点を強化したエンジニアリング・プラスチック(エンプラ)やスーパーエンプラと言った高性能なプラスチックも使用されている。
また、絶縁性や腐食耐性はプラスチック本来の性質である。しかし、使用目的に応じてこれらの性質に当てはまらないプラスチックも開発されている。
導電性に関しては、1970年代に白川英樹らによって導電性ポリアセチレンが開発されて以降、様々な導電性ポリマーが開発され、タッチパネルなどに利用されるようになった[7]。
腐食耐性に関しても、微生物による分解が可能な生分解性プラスチックが開発されているが、分解には特殊な条件や長い期間が必要なものも多い[6]。
親水性に関しても、非常に大量の水を吸収し保存することが可能な高吸水性高分子が開発されており、保水剤や紙おむつなど幅広く利用され、その保水性から砂漠の緑化への利用も計画されている[8]。
名称
[編集]物質の名称で用いる場合の「プラスチック」 (英: plastic) という表現[注釈 1]は、元来「可塑性物質」 (英: plasticisers) という意味を持ち、主に金属結晶の分野で用いられた概念を基盤としており、「合成樹脂」同様、日本語ではいささか曖昧となっている[要出典]。
合成樹脂と同義である場合や、合成樹脂が「プラスチック」と「エラストマー」という2つに分類される場合、また、原料である合成樹脂が成形され硬化した完成品を「プラスチック」と呼ぶ場合、多様な意味に用いられている[9][10]。
よって、英語の学術文献を書く場合、「plastic」は厳密性を欠いた全く通用しない用語であることを認識すべきで、「resin」(樹脂、合成樹脂)などと明確に表現するのが一般的である[要検証 ]。
合成樹脂の化学
[編集]高分子
[編集]合成樹脂は高分子化合物の一種である。例えば、ポリエチレンは炭素2個のエチレンを多数繋いだ重合体であり、この場合のエチレンは「モノマー」と呼ばれ、ポリエチレンは「ポリマー」と呼ばれる。「モノ」は1つ、「ポリ」はたくさんを意味する接頭辞である。モノマーを繋げていく反応を重合反応と呼び、モノマーが繋がっている個数を重合度と呼ぶ。エチレン500個が繋がったポリエチレン(炭素数1000)の重合度は500である。重合度が大きくなるにつれ、より硬くより強い樹脂になる。ポリエチレンは熱をかけると融けて流動するので、その状態で成型する。流動し始める温度(ガラス転移温度)は分子量が大きくなるほど高くなる。分子量が一定以上に大きくなると、熱をかけても流動せず、さらに温度を上げると分解する。
共重合とポリマーアロイ
[編集]用途によって、2種類以上のモノマーを使用して合成樹脂を作ることがある。これを共重合と呼ぶ。例えば自動車の内装に多用されているABS樹脂は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂の略称で高い強度と耐衝撃性を有する。硬いが衝撃に弱く割れやすいアクリロニトリル樹脂とスチレン樹脂の性能と、柔らかいが衝撃に強いブタジエン樹脂の性能を組み合わせ、強度と耐衝撃性を両立させている。アロイとは日本語で合金と呼ばれるもので、金属の華々しい開発に樹脂開発者が憧れて命名されたといわれている。
共重合はモノマーの配列の仕方によって、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合に分類される。ランダム共重合はモノマーがランダムに結合した物。ブロック共重合は単一モノマーでできたある程度の長さのポリマー同士が縦に繋がっているもの。グラフト共重合は注連縄に似ている。単一モノマーで出来た長いポリマーの所々に違う種類のポリマーがぶら下がっている。
共重合は、2種類以上のモノマーが化学的に結合して出来ているが、ポリマーアロイは異種の単独ポリマー同士を混合して製造する(アロイは合金のこと)。ポリマーアロイの例として耐衝撃性ポリスチレンがある。ポリスチレンは上記のように硬くて割れやすいが、少量のゴムを混合することにより割れにくい性質を持たすことができた。
歴史
[編集]樹脂に類似した合成物。主に石油から製造されるが、さまざまな種類があり、用途も幅広い。合成樹脂から紡糸された繊維は合成繊維(化学繊維)と呼ばれ、廃プラスチックは繊維としてリサイクルされる場合もある(ペットボトルなど)。
1835年に塩化ビニルとポリ塩化ビニル粉末を発見したのが最初といわれる。初めて商業ベースに乗ったのは、1869年にアメリカで開発されたセルロイドである。これはニトロセルロースと樟脳を混ぜて作る熱可塑性樹脂だが、植物のセルロースを原料としているので半合成プラスチックと呼ばれることがある。セルロイドはもともと、アフリカゾウの乱獲による象牙の不足を受けたビリヤードボール会社の公募によって商品化されたものであり、ビリヤードボールをはじめフィルムやおもちゃなどに大量に使用されたが、非常に燃えやすく、また劣化しやすい性質があるため次第に使用されなくなった[11]。
本格的な合成樹脂第一号は、1909年にアメリカのレオ・ベークランドが工業化に成功したベークライト(商品名)といわれている。フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂で、一般にはフェノール樹脂と呼ばれている[12]。その後、パルプ等のセルロースを原料としてレーヨンが、石炭と石灰石からできるカーバイド(en:Carbide)を原料にポリ塩化ビニルなどが工業化された。戦後、石油化学の発達により、主に石油を原料として多様な合成樹脂が作られるようになる。日本では、1960年代以降、日用品に多く採用されるようになる。
1970年代には工業用部品として使用可能なエンジニアリングプラスチックが開発され、1980年代には更に高度なスーパーエンジニアリングプラスチックが使用されるようになった。これらの合成樹脂は金属に代わる新たな素材として注目されている。
1970年頃までは「プラスチックス」という表記が見られた。これはアメリカでも同様で、"plastics" という「形容詞+s」で集合名詞としていたが、名詞であるという意識が高まり、"s" が抜け落ちた。その時期は日本より約10年早い。(なお、整形外科を plastic surgery というように、形容詞 plastic の原義は「形をつくる」「成型による」「成型可能な」といった意味である)
性質上の分類
[編集]高分子材料である合成樹脂は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に分けられる[13]。
熱硬化性樹脂
[編集]熱硬化性樹脂 (英: Thermosetting resin) は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂のこと[14]。網化状樹脂、橋かけ形樹脂、三次元化樹脂ともいう[13]。熱硬化性樹脂には縮合重合形と付加重合形がある[13]。
縮合重合形
[編集]縮合重合形フェノール樹脂やメラミン樹脂などがある[13]。
など
付加重合形
[編集]付加重合形にはエポキシ樹脂などがある[13]。
- エポキシ樹脂(EP)
- 不飽和ポリエステル樹脂 (UP)
- ポリウレタン(PUR)
など
熱可塑性樹脂
[編集]熱可塑性樹脂 (英: Thermoplastic resin) は、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のこと。線状樹脂ともいう[13]。一般的に、熱可塑性樹脂は切削・研削等の機械加工がしにくいことが多く、加温し軟化したところで金型に押し込み、冷し固化させて最終製品とする射出成形加工等が広く用いられている。成形法にはほかにも、金型から押し出して成形する押出成形など様々な成形法が存在する[15]。熱硬化性樹脂よりも靭性が優れ、成形温度は高いが短時間で成形できるので生産性が優れる。
熱可塑性樹脂には結晶性樹脂と非結晶性樹脂(無定形樹脂)がある[13]。
結晶性樹脂
[編集]結晶性樹脂にはポリエチレンやポリプロピレンなどがある[13]。
非結晶性樹脂
[編集]非結晶性樹脂にはアクリル樹脂やポリカーボネートなどがある[13]。
応用上の分類(熱可塑性樹脂)
[編集]熱可塑性樹脂を用途により分類すると、以下のとおりになる。
汎用プラスチック
[編集]家庭用品や電気製品の外箱(ハウジング)、雨樋や窓のサッシなどの建築資材、フィルムやクッションなどの梱包資材等、比較的大量に使われる。
- ポリエチレン (PE)
- ポリプロピレン (PP)
- ポリスチレン (PS)
- ポリ酢酸ビニル (PVAc)
- ポリウレタン(PUR)
- ポリ乳酸
- テフロン - (ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)
- ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)
- AS樹脂
- アクリル樹脂 (PMMA)
- ポリ塩化ビニル (PVC)
など
エンジニアリング・プラスチック
[編集]家電製品に使われている歯車や軸受け、CDなどの記録媒体等、強度や壊れにくさを特に要求される部分に使用される。略してエンプラとも呼ばれる。
- ポリアミド (PA)
- ポリアセタール (POM)
- ポリカーボネート (PC)
- 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)
- ポリエステル (PEs)の内
- ポリエチレンテレフタレート (PET)
- グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート (GF-PET)
- ポリブチレンテレフタレート (PBT)
- 環状ポリオレフィン (COP)
など
スーパーエンジニアリングプラスチック
[編集]特殊な目的に使用され、エンプラよりもさらに高い熱変形温度と長期使用出来る特性を持つ。略してスーパーエンプラとも呼ばれる。
- ポリフェニレンスルフィド (PPS)
- ポリテトラフロロエチレン(PTFE)一般的にテフロンと呼ばれる。
- ポリサルフォン (PSF)
- ポリエーテルサルフォン (PES)(Polyethersulfone)
- 非晶ポリアリレート (PAR)
- 液晶ポリマー (LCP)
- ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)
- 熱可塑性ポリイミド (PI)
- ポリアミドイミド (PAI)(Polyamide-imide)
など
別途、熱可塑性樹脂を硬度で分類すると、上記の硬度高めの「プラスチック」と硬度低めの(柔らかく、弾力がある)「熱可塑性エラストマー」がある。
合成樹脂の用途
[編集]プラスチックが本格的に開発されたのは20世紀に入ってからであるが、その軽さや衝撃への強さ、腐りにくさ、絶縁性の高さ、そして何よりも用途に合わせて安価に大量生産が可能であることから、それまで木材や繊維、ガラスや陶器などを素材に用いていたものがプラスチックに置き換えられることも多く、用途は非常に多岐にわたる[16]。
日本における2018年度の生産のうちもっとも利用が多いのはフィルムやシート向けであり、全生産量の43%を占める。この中にはポリ袋などの包装用品や各種農業用フィルムが含まれている。次いで利用が多いのはペットボトルやポリタンク、洗剤やシャンプー容器などの容器類であり、生産量の14.8%を占める。第3位は機械の筐体・機構部品、電子機器や小型機械、家電製品といった機械器具や部品類であり、全体の11.6%を占める。第4位は各種パイプや継手であり、7.5%を占めている。食器などの台所・食卓用品や、風呂、トイレ、洗濯、掃除用品、文房具、楽器など各種日用品は5%を占め第5位となっている。以下、雨樋や床材などの各種建材が4.7%、発泡スチロールなどの発泡プラスチックが4.3%、ドアや看板、波板などの板が2%、浴槽やボートの船体、釣り竿などに用いられる強化プラスチックが1.2%、靴や鞄、衣服などに用いられる合成皮革が1%、そのほかの用途が4.9%となっている[17]。
合成樹脂の性能
[編集]機械的性質
[編集]機械的性質は引張りや圧力等の外力に対する特性であり、機械部品など広範囲に使用される素材であることから各種の試験がある[18]。
物理化学的性質
[編集]吸水率、水分含有率、耐薬品性、比重、密度などの物性である[18]。
- 吸水率
- 水分含有率
- 耐薬品性
電気的性質
[編集]一般的には絶縁体であり電線の被覆や電気機器の筐体に用いられている。一方で絶縁体であることから静電気が発生しやすく、電圧が限界に達すると絶縁性が失われる(絶縁破壊)[18]。
光学的性質
[編集]透明性が必要な合成樹脂の場合には光学的性質が重要となる[18]。
耐熱性
[編集]製品としては使用限界温度である熱変形温度、寒地での脆化温度、構造材料としての熱伝導度、温度変化が大きい用途での熱膨張や熱収縮などが重要となる[18]。
合成樹脂の劣化
[編集]プラスチック成形品は、原料となる合成樹脂の種類によって劣化要因が異なる。劣化要因としては、材料自身の経時変化、単一の外的要因による変化、複合的な外的要因による変化などがある。
外的要因
[編集]熱による劣化 合成樹脂は、主に炭素、酸素、水素で構成される高分子化合物であり、分子構造は紐状の構造となっている。合成樹脂は加熱されることで、分子運動が活発化し空気中の酸素と反応しやすくなり、酸素と反応することで紐状の構造がバラバラになり劣化する[19]。
光による劣化 合成樹脂は、光エネルギーを吸収し、分子同士の化学結合が切断、または分子を励起させることで酸化が起こり劣化する。 合成樹脂の劣化を引き起こす太陽光の波長は、紫色の可視光から近紫外光の領域に該当する300~400ナノメートルである。プラスチックの種類別に劣化しやすさは異なり、それぞれの波長は以下のようになる[19]。
材料名 | 劣化しやすい波長長さ(nm) |
---|---|
ポリエステル | 325 |
ポリスチレン | 318 |
ポリプロピレン | 300 |
ポリ塩化ビニル | 310 |
塩ビ―酢ビ共重合体 | 310 |
ホルムアルデヒド樹脂 | 322~364 |
硝酸セルロース | 300~320 |
ポリカーボネート | 310 |
ポリメチルメタクリレート | 295 |
水による劣化 合成樹脂の種類や環境によっては、加水分解により劣化する。 ポリウレタン(PU)やポリエチレンテレフタラート(PET)のように分子構造にエステル結合を有する合成樹脂は加水分解しやすい性質がある。また、湿気がある状態で合成樹脂を溶融し成形すると加水分解しやすくなる[19]。
有機溶剤による劣化 一般的にどんな素材でも、その構造と類似する構造をもつ材料は取り込みやすい性質をもつ。例えば耐候性、衝撃強さ、耐熱性に優れているポリカーボネイト(PC)も、ある特定の溶剤に対しては、材料内に有機溶剤を取り込みやすく強度が低下する[19][20]。
金属や金属化合物による劣化 金属イオンが合成樹脂の酸化反応の触媒として働き劣化をまねく。とくにコバルトとマンガンが合成樹脂に対して影響を及ぼしやすい。また、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂は高温になると、銅に反応しやすくなる[19]。
欠陥・応力・ひずみによる劣化 気泡やクラック、ウェルドライン、異物の混入などの欠陥。成形時のひずみ、残留応力等によるストレスクラックやソルベントクラック現象とよばれる割れが生じることがある[19][20]。
生分解
[編集]いっぱんに合成樹脂は「腐らない」こと、すなわち微生物による生分解を受けないことを長所のひとつとするが、いくつかの合成高分子は生分解を受けることが知られている。細菌や真菌による合成樹脂の分解は種々の酵素によって行われる[21][22]。
合成樹脂の生分解は1950年代 - 1960年代ごろから注目されており[21][22]、n-パラフィン、分子量の比較的ちいさなポリオレフィン、ポリビニルアルコール、脂肪族ポリエステル、ポリエチレングリコール、ε-カプロラクタムなどの合成高分子類の微生物分解性が研究されてきた。一方、芳香族ポリエステルのひとつであるポリエチレンテレフタレート(PET)など、プラスチックとして有用で大量生産の対象となる合成高分子の生分解にかんしては、否定的な結果が得られる場合が多かった[21]。近年は、従来生分解が困難であるとされてきた合成樹脂を分解する微生物の報告や、動物が合成樹脂を摂食し、代謝を行う事例[注釈 2]の報告など、合成樹脂の生分解にかんするさまざまな新知見が蓄積されつつあり、プラスチック廃棄物問題の解決法を探るうえでもいっそうの注目が集まっている[22]。ここでは主に Ru, Huo & Yang (2020) によるレビューにもとづき、近年の合成樹脂の生分解にかんする知見を概説するが、合成樹脂の化学構造や実験・分析手法の差異によって生分解性の正確な評価が困難であるものもいまだ多い[22]。
- ポリエチレン
- ポリエチレン(PE)の生分解は1970年代ごろから研究対象として注目されていたが、微生物による生分解を受けるのは主として低分子量成分であり、分子量が 2000 を超える[22]高分子量PEが環境中で生分解を受けることは困難であるとされてきた[21][22][25]。高い分子量が生分解を阻害する主要因となるため、PEの生分解を行うには熱や紫外線、酸化剤などを用いた機械的・化学的な前処理が必要であると考えられていたが、近年は、前処理が行われていない長鎖PEを分解することができる可能性のある細菌や真菌が環境中から多数見出されており[22]、たとえば、日本からは低密度ポリエチレン(LDPE)を分解する Bacillus 属の細菌が報告されている[25]。腐植栄養湖(英語: humic lake)において、生分解されたPE由来の炭素が植物プランクトンの必須脂肪酸の合成に用いられていることを示した Taipale et al. (2019) のように、環境中でのふるまいの観点からPEの生分解プロセスを調査した研究もある[26]。
- また、複数種の昆虫の幼虫がLDPEを摂食し、腸内細菌を介して代謝を行うことができることが報告されており、注目すべき生分解の事例と見なされている[22]。LDPEを摂食することが報告されているのは鱗翅目に属するコハチノスツヅリガ Achroia grisella、ハチノスツヅリガ Galleria mellonella、ノシメマダラメイガ Plodia interpunctella や[22][23]、鞘翅目ゴミムシダマシ科の Zophobas atratus(スーパーワーム)で[27]、このうちハチノスツヅリガの幼虫を用いた実験では、幼虫がLDPEを摂食してグリコールを主成分とする液状の糞を排泄すること、幼虫の腸内細菌叢から分離培養された Acinetobacter 属の細菌が、PEを唯一の栄養源として一年以上の生存が可能であることが確認されている。また、幼虫を介した in vivo での生分解と分離培養された細菌による in vitro での生分解プロセスとを比較すると、前者と比べて後者のPE分解速度が低いことから、幼虫と細菌とが相互に関係することでLDPEの生分解が促進される可能性が示されている[23]。2022年10月4日のネイチャー・コミュニケーションズでは、ハチノスツヅリガの幼虫の唾液に含まれる酵素はポリエチレンを分解することができるとの発表がされている[28][29]。
- PE分解酵素としては、Phanerochaete chrysosporium 由来のマンガンペルオキシダーゼ、大豆由来のペルオキシダーゼ、Rhodococcus ruber C208株が細胞外に分泌するラッカーゼなどが知られている[22]。
- ポリスチレン
- Xanthomonas 属や Pseudomonas 属などに属する細菌がポリスチレン(PS)の生分解を行うことが知られているが[30]、いっぱんに、細菌や真菌によるPSの分解速度は非常に低いとされる[22]。一方、幼虫期にPSを摂食することのできる昆虫が複数種知られており、PSの生分解研究において注目されている。PSを摂食することが報告されているのはチャイロコメノゴミムシダマシ Tenebrio molitor(ミールワーム)、コメノゴミムシダマシ Te. obscurus(ダークミールワーム)、Z. atratus(スーパーワーム)[22][27]、コクヌストモドキ Tribolium castaneum(以上、鞘翅目ゴミムシダマシ科)[31]および、鱗翅目のハチノスツヅリガで[32]、このうちミールワーム、スーパーワーム、ハチノスツヅリガ幼虫を用いた実験では、三種ともPSフォームを唯一の餌として30日間の飼育が可能であり、腸内細菌を介した生分解の証拠も得られたものの、通常の餌で飼育した対照群と比較して生存率や体重が有意に低下しており、PSでは幼虫の発育に必要なエネルギーを満たせない可能性が指摘されている[32]。また、幼虫の腸内細菌叢からPSの生分解に関与する可能性のある微生物が多数分離されている[22][32]。
- PSの生分解にかかわる酵素としては、Azotobacter beijerinckii HM121株が分泌するヒドロキノンペルオキシダーゼが知られている[22]。
- ポリプロピレン
- ポリプロピレン(PP)の生分解を行う可能性のある細菌や真菌が複数環境中から見いだされているが、それらは可塑剤や低分子量成分の分解にのみ寄与し、高分子量の長鎖PPの解重合は行われていない可能性もあり、評価が難しいとされている。分解酵素も知られていないが、PEと同様に機械的化学的前処理によって生分解が促進される可能性が指摘される[22]。
- ポリ塩化ビニル
- ポリ塩化ビニル(PVC)は利用の際に可塑剤が添加されることが多い合成樹脂である。可塑剤は炭素源として多くの細菌や真菌によって利用される(生分解される)ことが知られており、可塑化されたPVCを用いる製品、たとえば浴槽の蓋や農業用シートはさまざまな微生物によって損傷を受け得る。しかしながら、可塑剤とPVCの両方を分解できる微生物や酵素は知られておらず、生分解後の残留物の問題は大きい[22]。
- ポリウレタン
- ポリウレタン(PUR)は、合成に用いるポリオールの種類によってポリエステルPURとポリエーテルPURの二種に分けられる。ポリエステルPURの生分解にかんする研究はひろく行われており、Pseudomonas putida(シュードモナス・プチダ)など多数の細菌・真菌によって生分解を受けることが報告されている。一方で後者のポリエーテルPURにかんしては、生分解を行う可能性のある細菌や真菌がいくつか報告されているものの、前者と比較して微生物による生分解を受けにくいと考えられている。分解酵素についても同様で、ポリエステルPURにかんしては、エステル結合を加水分解するさまざまなリパーゼやエステラーゼが種々の微生物から見い出されているが[22]、ポリエーテルPURを分解する酵素は知られていない[22][33]。
- ポリエチレンテレフタレート
- ポリエチレンテレフタレート(PET)の生分解性は結晶化度(英語: crystallinity)の程度によって異なり、大まかに結晶化度の低いもの(low-crystallinity PET: lcPET)と結晶化度の高いもの(high-crystallinity PET: hcPET)に分けたとき、生分解を受けることが知られているのはもっぱら前者のlcPETであり、後者のhcPETはほとんど生分解を受けない[22][34]。熱成型されるPETボトルなどのPET製品は結晶化度が高く、したがって、PET製品の多くはそのままでは生分解に適さないとされる[34]。lcPETの生分解にかんしては、Yoshida et al. (2016) によって記載された Ideonella sakaiensis(イデオネラ・サカイエンシス)と、本種から分離同定されたPET分解酵素 PETace がよく知られているが、PETaceは熱不安定性であり分解速度も非常に遅いことから、PET加水分解酵素としての要件を満たさないという指摘がなされている。一方、Thermobifida fusca などから得られたクチナーゼ類からは、熱安定性かつ高いPET分解性を示すものが知られており、PET加水分解酵素として有望視されている[22][34]。
複合材料
[編集]合成樹脂を用いた複合材料の一種として繊維強化プラスチック(FRP)がある。繊維強化プラスチックの代表的なものにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) と炭素繊維強化プラスチック (CFRP) がある。ガラス繊維は引っ張り強度がプラスチックよりはるかに強いので、成型部品の強度向上によく使用される。炭素繊維の強度はガラス繊維より更に強いが高価なので、CFRPは軽くて強い(高価な)素材として航空機等に使用されている[35]。また建材として、合成樹脂と木質系材料(木材や竹など)を微細化した木粉または木繊維を主原料とする木材・プラスチック複合材(WPC)および木材・プラスチック再生複合材(WPRC)があり[36]、主にデッキやフェンス、ルーバー等の外構材として用いられている。
機能性樹脂
[編集]形状記憶樹脂
[編集]形状記憶樹脂は形状記憶合金と同様に塑性変形された樹脂が所定温度以上に加熱されるともとの形状にもどるという特異な性質を備える樹脂で形状記憶合金に比べて軽量で廉価であり、変形時の形状の自由度が形状記憶合金よりも高いなどの特徴を備える[37][38]。
光硬化性樹脂
[編集]生産
[編集]2012年のプラスチックの世界生産は2億8800トンであり、最大の生産国は中国で5213万トン、以下EUが4900万トン、アメリカ4805万トン、韓国1335万トン、日本1052万トンの順となっていた[39]。プラスチックの生産量は急増しており、2015年には3億2200万トンに達している[40]。日本での生産量は1990年代前半までは増加傾向にあったものの、1997年に1521万トンを記録した後は減少に転じた。その後、2008年までは1400万トン前後の横ばいで推移していたものの、2009年のリーマンショックの影響で生産量が1100万トン台にまで激減し[41]、それ以降は1000万トン前後の生産量で推移している[39][17]。
2018年の日本国内生産においては総生産量1067万トンのうちポリエチレンが23.1%、ポリプロピレンが22.1%、塩化ビニールが15.8%を占め、これらを含む熱可塑性樹脂が全体の88.8%、熱硬化性樹脂が9.1%となっていた[17]。
処理
[編集]プラスチックは回収してリサイクルすることが可能である。リサイクルには、廃プラスチックを溶融してそのままプラスチックに再生するマテリアルリサイクルと、分解していったん原料に戻し、そこから加工するケミカルリサイクル、そしてプラスチックを燃料化して熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルの3つの方法が存在する[42]。プラスチックを再び石油へと戻す、いわゆる油化もリサイクルの一方法であるが、これを原料化とみなすか燃料化と見なすかについては国ごとに差異がある[43]。ただしプラスチックリサイクルのシステムが確立されている国家においても、回収されたプラスチックのすべてがリサイクルや燃料化に回されるわけではなく、他国への廃プラスチック輸出が盛んに行われてきた[44]。
2019年にバーゼル条約の改正案が発効したことにより、2021年以降は汚れたプラスチックごみを輸出する際に相手国の同意が必要となった[45]。
日本
[編集]日本も例外ではなく、2006年にはすでに廃プラスチックの13%が海外輸出へと回されていた[46]。2017年には、排出されたプラスチック903万トンのうちリサイクルされたものが251万トンで、うち149万トンが海外に輸出され処理されていた[47]。しかし主な輸出先であった中国が2017年末に廃プラスチックの輸入禁止を打ち出し、さらにそれに代わる輸出先となっていたタイ・マレーシア・ベトナム・台湾が2018年に相次いで輸入規制を導入したため、廃プラスチックの国内滞留および国内処理が増加した[48]。
2016年時点で海外へのプラスチックごみ輸出量は153万トンだったが、2018年には101万トンまで減少した。減少分は国内で処理されていることになるが、環境省のアンケート調査によると、一部地域において保管上限の超過や受入制限が発生しており、国内においてリサイクル処理施設の整備を進めることが急務となっている[47]。
2021年時点で、日本のプラスチックリサイクル率は87%で、うち焼却してエネルギーとして利用するサーマルリサイクルが62%、マテリアルとケミカルリサイクルは25%だった。比較して、2020年度の欧州ではマテリアルとケミカルリサイクルは35%だった。[49]
環境への影響
[編集]世界のプラスチック年間生産量は、1950年の200万トンから2015年には約200倍の4億700万トンに達した[50]。2050年には11億トンに達するといわれている。[51]プラスチックの多くは使い捨てされており、リサイクルされたのは生産量のわずか9%となっている。2016年時点で、1人あたりのプラスチックごみの排出量は1位がアメリカ、2位がイギリスである[44]。イギリスでは国内で処理しきれないため、トルコなど国外に送っている[44]。
利用後に処理されず環境中に流出してしまうことも少なくない。2018年現在、既に世界の海に存在しているプラスチックごみは1億5,000万トン、そこへ少なくとも年間800万トンが新たに流入していると推定され、2050年に魚類の総量を上回ると警告されている[52]。
漂流・漂着ごみの影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしているが、このうち92%がプラスチックの影響と考えられており[53]、プラスチックごみを体内に摂取している個体の比率は、ウミガメで52%、海鳥で90%にのぼると推定されている[54]。
また、2014年頃から国際的な会議の場で、海洋中のマイクロプラスチックの環境への影響が取り上げられるようになった[55]。石油で作られたプラスチックは、半永久的に分解されず直径5ミリ以下の粒子となり、自然界に存在する有害物質を吸着し海面や海底等に留まり、生物の体内にも取り込まれている[54]。マイクロプラスチックは大気中にも広く含まれ[56][57]、人が飲食や呼吸を通じて体内に取り込むマイクロプラスチックの量は最大で年間12万1000個に上り、ヒト組織の内部に入り込み局地的な免疫反応を引き起こす恐れがあるとする研究結果も発表されている[58][59]。
太平洋ゴミベルト[60]は、北太平洋の中央(およそ西経135度から155度、北緯35度から42度の範囲[61])に漂う海洋ごみの海域である。浮遊したプラスチックなどの破片が北太平洋循環の海流に閉ざされ、異常に集中しているのが特徴の海域である。太平洋ゴミベルトの面積はテキサス州の2倍に相当する[60]。プラスチックは海洋生物にとって最大の脅威となっている。海洋生物がゴミを食べ物と間違えて食べることにより、結果として海洋生物が大量のポリスチレンを摂取してしまう。[62]
2019年5月、国際環境法センターは新しく発表した報告書で、生産から廃棄にいたるまでの過程でプラスチックが大気中に放出する温室効果ガスの量について、2019年は8億5000万トンに上ると予測している[63]。
2019年時点で流入量は1000万トン超とされているが、海面上にあるのは44万トンであり、残りは海底に沈むなどして観測できず行方不明となっている。また低温では分解が進まないため、2019年に房総半島の約500km沖合で水深6000mの海底を調査した際には、昭和59年(1984年)に製造された食品の梱包材が発見されるなど、長期間にわたって残留することが判明している[64]。
主に海洋プラスチックや二酸化炭素(CO2)の削減から、欧米諸国ではプラ製品の製造を削減する議論が活発であり、欧州議会では2021年までに使い捨てプラ食器などの使用を禁止している[65]。
日本
[編集]日本は、プラスチックの1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量で世界第2位[66]。生産量は世界第3位となっており、日本近海でのマイクロプラスチックの濃度は、世界平均の27倍に相当するという調査結果もある。また四国の沖合ではプラスチックごみが滞留し、直下の海底へ沈降しているとの想定もある[64]。
日本では回収したプラスチックの材料自体のリサイクルは約20%にとどまり、57%を多くの先進国ではリサイクルと認められないサーマルリサイクルで熱回収に利用しており、原油由来のプラスチックの燃焼処理は地球温暖化対策とも逆行する[67]。
2018年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットにて、プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄に関して、より踏み込んで取り組むとする「G7海洋プラスチック憲章」では、日本とアメリカだけが署名しなかった[53]。
2019年5月には日本政府が海洋汚染に対して海洋で分解可能なプラスチックに対して、国際規格を定めて日本企業を支援する報道がなされている[68][69]が、安倍晋三首相は2019年10月6日の国立京都国際会館で開かれた科学技術と人類の未来に関する国際フォーラムにおいて、海洋プラスチックごみ問題に対してプラスチックの社会への重要性を説きつつ「プラスチックを敵視したり、その利用者を排斥したりすべきことではありません」「必要なのはゴミの適切な管理ですし、イノベーションに解決を求めることです」と発言し[70]、日本企業の生分解性プラスチック開発への取り組みを評価しつつ、ゴミの適切な処理と、技術革新によって海洋プラスチックごみが解決されることが重要である旨の発言をした[71]。
2022年4月1日にプラスチック資源循環促進法が施行される予定になっている。
脱プラスチックへの議論・懐疑
[編集]BBCニュースとしてミシガン州立大学の包装学部長Susan Selkeは「ペットボトル飲料を仮にガラス瓶に置き換えた場合、輸送エネルギーは40%増加する」と話す。米国化学工業協会と環境評価企業Trucostは清涼飲料水のプラスチックをスズ、アルミ、ガラスなどに置き換えた場合に、環境汚染への対策費は5倍に増えると推定している。また真空パックによって食品ロスも削減されており、単純にプラスチックを使わなければよいという意見には、議論が存在する[72][73]。なおペットボトルからアルミ缶への移行はアルミのリサイクルシステムが構築されていることや、賞味期限の延長のという恩恵があるため有用という意見もある[74]。食品ロスと脱プラスチックの両立案として、小売店での量り売りや店側による容器の回収と再利用などがある[44]。
プラスチックの石油消費量は、日本の石油消費全体の3%[75][76]~7%[77]程度であり、燃料(77%)など石油製品全体の割合からすると少ない。食品容器はさらに、この一部(全体の0.2%)であるため、石油原料の消費量の点において、プラ容器は環境負荷が元々少ないという主張もある[要出典]。
国内で生産される業務用ストローの約50%を生産する岡山県のシバセ工業では、プラスチック製品の存在が悪いのではなく、廃棄の仕方に問題があると考えており、「脱プラ製ストロー」の動きに関しては、特に分別回収が徹底され、ほぼ焼却されている日本にはそぐわない。海洋汚染を語るなら、本当の問題は"垂れ流し"を行っている途上国や先進国でも洪水の可能性があるも関わらず埋め立てという手法を取っている欧米諸国にあると指摘している[78][79]。
バイオプラスチックが及ぼす食料需給への懸念
[編集]バイオプラスチックの普及、生産のためには多くの農地が必要である。食糧生産のための農地がバイオプラスチックやバイオ燃料の材料用農地に変わる可能性がある。そうなれば世界総人口の増え続ける世界の食料需給に影響を与える可能性がある。特に影響を受けるのは発展途上国や低所得の貧困層になるだろう。これからバイオ素材が普及し大量に使われ長期的に利用料されるようになれば食料需給に影響をあたえる可能性が高い[80]。
人体への影響
[編集]マイクロプラスチックは飲料や食品に混入していることがあり、それらを摂取することで体内に入る。マイクロプラスチックは生体バリアを突破し血液や胎盤から [81]ポリスチレンナノプラスチック(PS-NP)は血液脳関門(BBB)を通過し人体に影響を与えることが懸念されていいる[82]。ただし、ナノサイズ粒子のナノマテリアルになると生体バリアや血液脳関門を通過する異物はプラスチック以外にも多く存在することに留意が必要である[83][84]。
関連団体
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
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関連項目
[編集]- リサイクル
- 樹脂識別コード
- プラズマ(プラスチックと語源が同じ)
- スマートポリマー
- プラスチック製品の保存と修復 ‐ 文化財保護のために行われる保存と修復技術について。