「プラネタリー・バウンダリー」の版間の差分
関連文献を追加 |
m 曖昧さ回避ページサバンナへのリンクを解消、リンク先をサバナ (植生)に変更; リンク先をサバナ (植生)に変更(DisamAssist使用) |
||
(13人の利用者による、間の20版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
[[ファイル:Planetary_Boundaries_2015.svg|thumb|400x400px|緑色の領域は安全な範囲内にある人間活動を表し、黄色の領域は安全な領域を超えてもよいし、超えないかもしれない人間活動を表し、赤い領域は安全な領域を超えた人間活動を表し、赤い疑問符のついた灰色の領域は安全領域がまだ決定されていない人間活動を表す。]] |
|||
{{翻訳中途|1=[https://en-two.iwiki.icu/w/index.php?oldid=687744768 en:Planetary boundaries 2015-10-27T13:46:47 (UTC)]|date=2016年1月}} |
|||
'''プラネタリー・バウンダリー'''({{lang-en-short|'''Planetary boundaries'''}})は、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念である。'''地球の限界'''<ref>{{Cite book|author=環境省|title=環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書|date=2018年6月5日|year=2018|accessdate=2018年7月20日|publisher=環境省|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=}}</ref>、あるいは'''惑星限界'''<ref>{{Cite book|author=国連環境計画編|title=『GEO5 地球環境概観 第5次報告書 上巻』|url=https://www.hokokuken.com/geo5.html|date=|year=2015|accessdate=|publisher=一般社団法人 環境報告研|pages=207-208,5,23,103,111,119,128,206|translator=青山益夫|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=}}</ref>とも呼ばれる。 |
|||
{{加筆依頼|英語版から翻訳するなど、全体的に内容を充実させてほしい|date=2015年11月}} |
|||
[[ファイル:Planetary_Boundaries_2015.svg|thumb|400x400px|緑色の領域は安全なマージン内にある人間活動を表し、黄色の領域は安全な領域を超えてもよいし、超えないかもしれない人間活動を表し、赤い領域は安全な領域を超えた人間活動を表し、赤い疑問符のついた灰色の領域は安全領域がまだ決定されていない人間活動を表す。]] |
|||
'''プラネタリー・バウンダリー'''は、人類の活動がある閾値または転換点を通過してしまった後には取り返しがつかない「不可逆的かつ急激な環境変化」の危険性があるものを定義する地球システムにおけるフレームワークの中心的概念である。「地球の限界」<ref>{{Cite book|author=環境省|title=環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書|date=2018年6月5日|year=2018|accessdate=2018年7月20日|publisher=環境省|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=}}</ref>、あるいは「惑星限界」<ref>{{Cite book|author=国連環境計画編|title=『GEO5 地球環境概観 第5次報告書 上巻』|url=https://www.hokokuken.com/geo5.html|date=|year=2015|accessdate=|publisher=一般社団法人 環境報告研|pages=207-208,5,23,103,111,119,128,206|translator=青山益夫|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=}}</ref>とも呼ばれる。 |
|||
プラネタリー・バウンダリーは、安全域や程度を示す限界値を有する9つのプロセスを定めている。人間活動が限界値を超えた場合、地球環境に不可逆的な変化が急激に起きる可能性がある。定量化できていないプロセスもあり、研究が進められている。科学者によってプラネタリー・バウンダリーにもとづく政策提案が行われており、[[持続可能な開発目標]](SDGs)の内容にも採用された{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=165-167}}。 |
|||
ストックホルム・レジリエンス・センターの[[ヨハン・ロックストローム]]と[[オーストラリア国立大学]]の[[ウィルステファン]]が主導する地球システムと環境科学者のグループは、[[持続可能な開発]]のための前提条件として、あらゆるレベルでの[[政府]]や、[[国際機関]]、[[市民社会]]、科学界および民間部門を含む国際社会のための「人類のために安全動作領域」を定義するように設計されたフレームワークとして「'''プラネタリー・バウンダリー'''」を提案した。研究成果は2009年9月24日に[[ネイチャー|ネイチャー誌]]に掲載された<ref>{{Cite journal|author=Rockström, Johan m. fl.|year=2009|title==Planetary Boundaries: Specials,|journal=[[Nature]]|volume=|page=}}</ref>。このフレームワークは、[[産業革命]]以来、人間の活動が徐々に地球環境の変動の主な要因となってきたことを示す科学的研究に基づく。地球のとっての安全域や程度を示す「限界値」を有する9つの地球システムを定義した。しかし、これら地球システムのいくつは既に人類の活動により危険な限界値を超えており、それ以外も差し迫った危険にある<ref>Editorial, {{Harvnb|Nature|2009}}</ref>。 |
|||
提唱者の1人である[[ヨハン・ロックストローム]]は、プラネタリー・バウンダリーが人類による大惨事を防ぐためのものだとしており、崖道に付けられたガードレールにたとえている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=59}}。 |
|||
== 背景 == |
== 背景 == |
||
18世紀の[[産業革命]]以降、[[石炭]]の燃焼による大気汚染をきっかけとして、人類が環境に与える影響についての研究や立法が進んだ{{Sfn|工藤|1975|p=}}。国際社会で環境問題が論じられるようになったのは、20世紀後半からだった。1992年の[[リオデジャネイロ]]の[[国連気候変動枠組条約]]、1997年の[[京都議定書]]をへて、2009年12月に[[コペンハーゲン]]で開催された[[第15回気候変動枠組条約締約国会議|気候変動枠組条約締約国会議]](COP15)では各国の首脳が集まった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=2}}。 |
|||
COP15の前に、プラネタリー・バウンダリーについての最初の論文が発表された。論文は、{{仮リンク|ストックホルム・レジリエンス・センター|en|Stockholm Resilience Centre}}の環境学者[[ヨハン・ロックストローム]]と、[[オーストラリア国立大学]]の化学者{{仮リンク|ウィル・ステフェン|en|Will Steffen}}が主導する約20名の地球システムと環境科学者のグループがまとめた。論文のタイトルは「人類にとっての(地球の)安全な機能空間」で、2009年9月24日に学術誌『[[ネイチャー]]』に掲載された{{efn|論文の原題は「A Safe Operating Space for Humanity」{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=2}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=2-3}}。この論文は、全地球的な気候、成層圏オゾン、生物多様性、海洋酸性化などの自然システムを継続的に計測・監視することを提案した。計測や監視を通して、人類は貧困の緩和や経済成長の追求が安定的に可能になると論じた。論文の発表によって、プラネタリー・バウンダリーの必要性が科学界で認められていった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=2-3}}。 |
|||
プラネタリー・バウンダリーは、[[持続可能な開発]]のための条件であり、「人類のための安全動作領域」を定義するフレームワークとして考えられた。[[政府]]、[[国際機関]]、[[市民社会]]、科学界および民間部門を含む国際社会に向けた提案でもあった<ref>{{Cite journal|author=Rockström, Johan m. fl.|year=2009|title==Planetary Boundaries: Specials,|journal=[[ネイチャー|Nature]]|volume=|page=}}</ref>。このフレームワークは、産業革命以降の人間の活動が、地球環境の変動の主な要因となってきたことを示す。地球にとっての安全域や程度を示す限界値を有する9つの地球システムを定義しており、いくつかはすでに人類の活動によって限界値を超えており、それ以外も差し迫った危機にある<ref>Editorial, {{Harvnb|Nature|2009}}</ref>。しかし当初はビジネスや政策担当者への影響は少なく、COP15の参加国は[[温室効果ガス]]を防ぐための合意を達成できなかった{{efn|ロックストロームは、当初の失敗を次のように回想している。「『事実を目の前にすれば人は正しい決断を下す』と考えることがいかに素朴すぎるか、私にとって痛いほどはっきりした。大多数の人が自分に関わりがあると感じ、何かを信じる場合にのみ、社会の大きな変化が起こる。(中略)それは感情と思考の両面から起こることが必要だった」{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=4}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=3}}。 |
|||
2012年、ロックストロームは写真家・映画監督の{{仮リンク|マティアス・クルム|en|Mattias Klum}}との共著『人類の挑戦:プラネタリー・バウンダリーの範囲内での繁栄』を出版し、プラネタリー・バウンダリーの概念を再び提案した{{efn|書籍の原題は『The Human Quest: Prospering within Planetary Boundaries』{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=5}}。}}。この本は同年にリオデジャネイロで開催された{{仮リンク|国連持続可能な開発会議|en|United Nations Conference on Sustainable Development}}で各国代表に渡された。政策立案者の間でプラネタリー・バウンダリーの理解が進み、[[オックスファム]]や[[世界自然保護基金]](WWF)、[[NGO]]のフォーラムでも注目されるようになっていった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=5-6}}。 |
|||
== 分類 == |
|||
プラネタリー・バウンダリーの特定にあたり、科学者グループが検討を行い、50以上の候補から最重要なプロセスを9つ選んだ。この9つは、機能によって3種類のグループに分けられる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=68-72}}。 |
|||
=== 地球的な閾値が明確に定義されたグループ === |
|||
気候変動、成層圏オゾン層の破壊、海洋酸性化が含まれる。これらには明確な閾値があり、ある状態から別の状態に急激に移行すると地球全体に影響を与える{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=70-72}}。 |
|||
=== 緩やかに変化する地球環境にかかる変数にもとづくグループ === |
|||
土地利用の変化、淡水利用、生物多様性の損失、生物地球化学的循環(窒素とリンの循環)が含まれる。これらは緩やかな限界値とも呼ばれ、地球システムのフィードバックを支えている。第1グループが地球全体の変動であるのに対して、限定された地域の限界値に関係している。地球規模での独自の閾値はないが、複数の組み合わせによって急激な変化がありうる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=70-72}}。 |
|||
=== 人類が作り出した脅威 === |
|||
大気エアロゾルの負荷化学物質、重金属や有機化学物質による生物圏の汚染が含まれる。これらは多数のプロセスに関連するため、閾値の設定を定めるための研究が進められている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=70-72}}。 |
|||
ロックストロームらは2009年の発表で、見逃しているものやプラネタリー・バウンダリーではないものが含まれているかを科学界に問題提起し、制作立案者、ビジネスリーダー、市民にも精査を求めた。その結果をもとに、2014年に9つのプロセスが適切であると結論づけた{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=69}}。 |
|||
9つのプロセスの中で、気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環は2009年時点で限界を超えたともいわれている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=88}}。 |
|||
== 9つの限界点 == |
|||
'''閾値と限界点''' |
|||
{| class="wikitable" |
{| class="wikitable" |
||
! colspan="7" |プラネタリー・バウンダリー<ref>{{Harvnb|Steffen|Rockström|Costanza|2011}}.</ref> |
! colspan="7" |プラネタリー・バウンダリー<ref>{{Harvnb|Steffen|Rockström|Costanza|2011}}.</ref> |
||
|- |
|- |
||
! width="140px" | 地球システムでのプロセス |
! width="140px" | 地球システムでのプロセス |
||
! 制御値<ref>{{Harvnb|Rockström|Steffen|26 others|2009}}; {{Harvnb|Stockholm Resilience Centre|2009}}.</ref> |
! 制御値<ref>{{Harvnb|Rockström|Steffen|26 others|2009}}; {{Harvnb|Stockholm Resilience Centre|2009}}.</ref> |
||
! 限界値 |
! 限界値 |
||
! 現在値 |
! 現在値 |
||
! 限界値超えた |
! 限界値を超えた? |
||
! 産業革命以前の値 |
! 産業革命以前の値 |
||
value |
|||
! コメント |
! コメント |
||
|- |
|- |
||
| rowspan="2" | 1. 気候変動 |
| rowspan="2" | 1. [[気候変動]] |
||
| 大気中の二酸化炭素濃度(ppm)<ref>[http://www.esrl.noaa.gov/gmd/ccgg/trends/ Recent Mauna Loa CO2] Earth System Research Laboratory, ''[[アメリカ海洋大気庁|NOAA]] Research''. |
| 大気中の二酸化炭素濃度(ppm)<ref>[http://www.esrl.noaa.gov/gmd/ccgg/trends/ Recent Mauna Loa CO2] Earth System Research Laboratory, ''[[アメリカ海洋大気庁|NOAA]] Research''. |
||
</ref> |
</ref> |
||
| |
| align="center" |350 |
||
| |
| align="center" |400 |
||
| style="background:#ffaaaa;" | |
| align="center" style="background:#ffaaaa;" |はい |
||
| |
| align="center" |280 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Allen|2009}}; {{Harvnb|Heffernan|2009}}; {{Harvnb|Morris|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, pp.34-45, "[http://www.newscientist.com/article/dn18577-earths-nine-lifesupport-systems-climate-change.html Climate change]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| [[産業革命]]以来 |
| [[産業革命]]以来(1750年以降)の[[放射強制力]]の増加量(W / m2) |
||
| |
| align="center" |1.0 |
||
| |
| align="center" |1.5 |
||
| style="background:#ffaaaa;" | |
| align="center" style="background:#ffaaaa;" |はい |
||
| |
| align="center" |0 |
||
| |
| align="center" |<ref name="Allen 2009">{{Harvnb|Allen|2009}}.</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 2. 生物多様性の |
| 2. [[生物多様性の喪失|生物多様性の損失]] |
||
| [[絶滅]]率(年当たりの[[種 (分類学)|種]]数) |
| [[絶滅]]率(年当たりの[[種 (分類学)|種]]数) |
||
| |
| align="center" |10 |
||
| |
| align="center" |100 |
||
| style="background:#ffaaaa;" | |
| align="center" style="background:#ffaaaa;" |はい |
||
| |
| align="center" |0.1-1 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Samper|2009}}; {{Harvnb|Daily|2010}}; {{Harvnb|Faith|others|2010}}; {{Harvnb|Friends of Europe|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, p.33, "[http://www.newscientist.com/article/dn18574-earths-nine-lifesupport-systems-biodiversity.html Biodiversity]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| rowspan="2" | 3. [[生物地球化学 |
| rowspan="2" | 3. [[生物地球化学的循環]] |
||
| (a) 人為的に大気中から除去された窒素の量(年間あたり百万トン単位) |
| (a) 人為的に大気中から除去された窒素の量(年間あたり百万トン単位) |
||
| |
| align="center" |35 |
||
| |
| align="center" |121 |
||
| style="background:#ffaaaa;" | |
| align="center" style="background:#ffaaaa;" |はい |
||
| |
| align="center" |0 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Schlesinger|2009}}; {{Harvnb|Pearce|2009}}; {{Harvnb|UNEP|2010}}, pp.28-29; {{Harvnb|Howarth|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, pp.33-34, "[http://www.newscientist.com/article/dn18575-earths-nine-lifesupport-systems-nitrogen-and-phosphorus-cycles.html Nitrogen and phosphorus cycles]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| (b) 人為的に海洋に入るリンの量(年間あたり百万トン単位) |
| (b) 人為的に海洋に入るリンの量(年間あたり百万トン単位) |
||
| |
| align="center" |11 |
||
| |
| align="center" |8.5-9.5 |
||
| style="background:#aaddaa;" | |
| align="center" style="background:#aaddaa;" |いいえ |
||
| |
| align="center" |-1 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Schlesinger|2009}}; {{Harvnb|Carpenter|Bennett|2011}}; {{Harvnb|Townsend|Porder|2011}}; {{Harvnb|Ragnarsdottir|Sverdrup|Koca|2011}}; {{Harvnb|UNEP|2011}}; {{Harvnb|Ulrich|Malley|Voora|2009}}; {{Harvnb|Vaccari|2010}}.</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 4. [[海洋酸性化]] |
| 4. [[海洋酸性化]] |
||
| 表層海水中の[[アラレ石]]の全球平均飽和状態(オメガ単位) |
| 表層海水中の[[アラレ石]]の全球平均飽和状態(オメガ単位) |
||
| |
| align="center" |2.75 |
||
| |
| align="center" |2.90 |
||
| style="background:#aaddaa;" | |
| align="center" style="background:#aaddaa;" |いいえ |
||
| |
| align="center" |3.44 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Brewer|2009}}; {{Harvnb|UNEP|2010}}, pp.36-37; {{Harvnb|Doney|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, p.32, "[http://www.newscientist.com/article/dn18571-earths-nine-lifesupport-systems-acid-oceans.html Acid oceans]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 5. [[土地利用]]の変化 |
| 5. [[土地利用]]の変化 |
||
| 農地に変換された地表面(パーセント) |
| 農地に変換された地表面(パーセント) |
||
| |
| align="center" |15 |
||
| |
| align="center" |11.7 |
||
| style="background:#aaddaa;" | |
| align="center" style="background:#aaddaa;" |いいえ |
||
| |
| align="center" |low |
||
| |
| align="center" |<ref name="Bass2009">{{Harvnb|Bass|2009}}; {{Harvnb|Euliss|others|2010}}; {{Harvnb|Foley|2009}}; {{Harvnb|Lambin|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, p.34, "[http://www.newscientist.com/article/dn18576-earths-nine-lifesupport-systems-land-use.html Land use]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 6.淡水 |
| 6. 淡水 |
||
|グローバルな淡水利用(km<sup>3</sup>/yr) |
|グローバルな淡水利用(km<sup>3</sup>/yr) |
||
| |
| align="center" |4000 |
||
| |
| align="center" |2600 |
||
| style="background:#aaddaa;" | |
| align="center" style="background:#aaddaa;" |いいえ |
||
| |
| align="center" |415 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Molden|2009}}; {{Harvnb|Falkenmark|Rockström|2010}}; {{Harvnb|Timmermans|others|2011}}; {{Harvnb|Gleick|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, pp.32-33, "[http://www.newscientist.com/article/dn18572-earths-nine-lifesupport-systems-ozone-depletion.html Fresh water]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 7. [[オゾンホール]] |
| 7. [[オゾンホール]] |
||
| [[成層圏オゾン]]濃度([[ドブソン単位 |
| [[オゾン層|成層圏オゾン]]濃度([[ドブソン単位]]) |
||
| |
| align="center" |276 |
||
| |
| align="center" |283 |
||
| style="background:#aaddaa;" | |
| align="center" style="background:#aaddaa;" |いいえ |
||
| |
| align="center" |290 |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Molina|2009}}; {{Harvnb|Fahey|2010}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, p.32, "[http://www.newscientist.com/article/dn18572-earths-nine-lifesupport-systems-ozone-depletion.html Ozone depletion]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 8. [[大気エアロゾル粒子]] |
| 8. [[大気エアロゾル粒子]] |
||
| 大気中の全体的な [[粒子状物質]] の濃度 |
| 大気中の全体的な [[粒子状物質]] の濃度 |
||
| colspan="4" | |
| align="center" colspan="4" |定量化できていない |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Pearce|2010}}, p.35, "[http://www.newscientist.com/article/dn18578-earths-nine-lifesupport-systems-aerosol-loading.html Aerosol loading]".</ref> |
||
|- |
|- |
||
| 9. 化学物質による汚染 |
| 9. 化学物質による汚染 |
||
| 有害物質、[[合成樹脂]]、[[内分泌攪乱物質]]、重金属、[[放射能汚染]]の環境中の濃度 |
| 有害物質、[[合成樹脂]]、[[内分泌攪乱物質]]、重金属、[[放射能汚染]]の環境中の濃度 |
||
| colspan="4" | |
| align="center" colspan="4" |定量化できていない |
||
| |
| align="center" |<ref>{{Harvnb|Handoh|Kawai|2011}}; {{Harvnb|Handoh|Kawai|2014}}; {{Harvnb|Pearce|2010}}, p.35, "[http://www.newscientist.com/article/dn18579-earths-nine-lifesupport-systems-chemical-pollution.html Chemical pollution]".</ref> |
||
|} |
|} |
||
{{clear}} |
{{clear}} |
||
=== 海洋酸性化 === |
|||
[[ファイル:AYool_GLODAP_del_pH.png|thumb|300x300px|産業革命(1700年代)から現在(1990年代)までの海面pHの変化の推定。 ΔpHは標準pH単位である<ref>{{Harvnb|Gruber|Sarmiento|Stocker|1996}}.</ref> |
|||
|左]] |
|||
海洋酸性度は[[産業革命]]以来30%も増加している。 人間の活動で輩出された二酸化炭素の約4分の1が海洋に溶解し、炭酸が生成される。この酸はサンゴ、甲殻類およびプランクトンが殻、骨格を構築する能力を阻害する。こうした生態系の主要な種が一次的に絶滅することによって引き起こされる一連の二次的な絶滅により([[カスケード効果]])により、魚資源に深刻な影響を与えるおそれがある。この限界点は大気中の二酸化炭素濃度増加が基礎となる制御変数でもあるため、気候変動の限界点と相互に強く関連してる<ref name="Stockholm Resilience Centre 2009">{{Harvnb|Stockholm Resilience Centre|2009}}.</ref>。海洋化学者Peter Brewerは、「海洋の酸性化はpHの単純な変化以外の影響を有しており、これらには境界も必要である」と考えている<ref name="Brewer 2009">{{Harvnb|Brewer|2009}}</ref>。 |
|||
== 各プロセスの詳細 == |
|||
{{節スタブ}} |
|||
=== 気候変動 === |
|||
{{clear}} |
|||
[[ファイル:Atmospheric_carbon_dioxide_concentrations_and_global_annual_average_temperatures_over_the_years_1880_to_2009.png|thumb|300x300px|黒い線は、1880-2008年の大気中の二酸化炭素濃度を示す。赤色は平均気温より高い温度を示し、青色は未満の温度を示す。毎年の気温変動は、[[エルニーニョ現象]]、[[ラニーニャ現象]]、大規模な[[火山噴火]]などの自然現象に起因する。.<ref>{{Harvnb|USGCRP|2009}}.</ref>]] |
|||
気候変動については、大気中の二酸化炭素濃度と[[放射強制力]]の2つが制御変数とされる。[[古気候学]]のデータをもとにした予想では、二酸化炭素濃度の限界値は350ppm以下であり、それを上回ると極地の氷が大規模に溶け、[[海面上昇]]や海洋酸性化などの結果をもたらす可能性がある{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=73}}。人類が排出する温室効果ガスの正味エネルギー量は、1平方メートルあたり1ワット以下の増加が限界値とされ、地球の平均気温1度の上昇に相当する{{efn|二酸化炭素濃度と放射強制力は2015年時点で連動している。ただし、大気は温室効果ガスと冷却化物質が混じり合う複雑な状態にあるため、つねに連動する保証はない{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=76}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=76}}。 |
|||
気候変動によって、人類がこれまで築いた文明の前提が失われる可能性がある。250万年前の[[更新世]]に人類の祖先が発生した時には、気候は氷河期と温暖期の変動を繰り返しており、人類にとって過酷な環境だった。7万5000年前には、人口が1万5000人まで減少したことも判明している。農耕による安定した食糧生産が可能になったのは、1万1700年ほど前から気候が暖かくなり、変化が緩やかになったことが原因にある。これが[[完新世]]と呼ばれている[[間氷期]]にあたり、暖かく湿気があり、予測できる気候は農耕にとって好条件だった。21世紀時点でも人類の繁栄は完新世の条件に依存しているが、気候変動によって安定性が失われ、[[人新世]]と呼ばれる地質時代に入ったともいわれている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=29-31}}。 |
|||
気候が外部要因によって影響を受ける度合いを[[気候感度]]とも呼び、この気候感度の予測は幅が大きい。理由としては、(1) 温暖化した際の雲の変化が予測しにくい点{{efn|雲の高さや面積などによって、温暖化への影響が異なる。たとえば高い雲は地球を暖める傾向があり、低い雲は地球を冷やす傾向がある{{Sfn|杉山|2011|p=15}}。}}、(2) 温暖化による炭素循環の変化が予測しにくい点にある。予測の幅が大きいため、温室効果ガスの削減目標と気温の上昇を関係づけることを困難としている。温度上昇と温暖化の影響は確率的にしか分からない{{Sfn|杉山|2011|pp=15-17}}。 |
|||
=== 気候変動 === |
|||
[[ファイル:Atmospheric_carbon_dioxide_concentrations_and_global_annual_average_temperatures_over_the_years_1880_to_2009.png|thumb|300x300px|黒い線は、1880-2008年の大気中の二酸化炭素濃度を示す。 赤色のバーは平均気温より高いの温度を示し、青色のバーは未満の温度を示しています。 年毎の気温変動は、[[エルニーニョ現象]]、[[ラニーニャ現象]]、大規模な[[火山噴火]]などの自然現象に起因する。.<ref>{{Harvnb|USGCRP|2009}}.</ref>|左]] |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
=== 生物多様性の損失 === |
=== 生物多様性の損失 === |
||
生態系への影響の変数として、21世紀初頭における生物種の絶滅率を使っている。化石記録によれば、海洋生物と哺乳動物の平均絶滅率は年間で100万種あたり0.1から1とされる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=76}}。2019年時点の報告では、約100万種の動植物が絶滅の危機に瀕しており、生物種絶滅のペースは過去1,000万年の平均と比べて少なくとも数十倍から数百倍といわれている<ref name=unic20190510>{{Cite news|url=https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33018/ |title=国連報告書が世界に「警告」:100万種の生物が絶滅の危機に |last= |first= |date=2019-05-10 |work=国際連合広報センター |access-date=2021-04-21|language= |issn=}}</ref>。 |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
=== Biogeochemical === |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
==== 窒素の循環 ==== |
|||
[[ファイル:Nitrogen_Cycle.svg|thumb|380x380px|窒素の循環|左]] |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
研究されている全生物種の24%が絶滅の危機にあり、この状態が続けば生物種に依存している人類にとって不都合になると予想されている。指標として、平均絶滅率を100万種あたり10種まで抑えることが提示されている。それぞれの生物種は生態系における機能が異なるため、機能を考慮した対応も必要とされている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=76-77}}。 |
|||
==== リンの循環 ==== |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
人類による生物多様性の損失は、これまで5回あった生物の[[大量絶滅]]に続く第6次大量絶滅とも呼ばれている。食物連鎖の[[頂点捕食者]]が減少することで、生態系が急速に変化する。絶滅した生物を復活させることはできないため、他の8つのプロセスとは異なり取り返しがつかない点も重要とされる{{efn|絶滅した頂点捕食者であるオオカミを他の土地から再導入して生態系を回復した例として、1995年の[[イエローストーン国立公園]]の試みがある{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=131-132}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=80}}。 |
|||
=== 生物地球化学的循環 === |
|||
[[File:Nitrogen Cycle ja.svg|thumb|380x380px|[[窒素循環]]のモデル図|左]] |
|||
[[窒素循環]]には[[微生物叢]]が関わっており、[[マメ科]]などの植物の根には[[窒素固定菌]]が生息して土壌に窒素を蓄積する。土壌の窒素は、[[脱窒#硝酸還元菌、脱窒菌|脱窒素細菌]]によって窒素ガスとして大気中に放出され、河川や海洋への流出を防ぐ。こうして窒素固定細菌と脱窒素細菌による循環が作られている{{Sfn|ウォルフ|2016|pp=114-121}}。 |
|||
古来から農業で作物を育てるために窒素が必要とされ、工業化の前には堆肥などで窒素を補充したり、豆類との混作によって空気中の窒素を取り入れていた{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=165}}。[[メソアメリカ]]における[[トウモロコシ]]や[[カボチャ]]と豆類の混作、[[西アフリカ]]における穀物と[[ササゲ]]の混作、日本の[[縄文時代]]における[[アズキ]]や[[ダイズ]]の栽培は、マメ科植物の利点を経験から学んだ方法だった{{Sfn|矢ケ崎|1995|p=}}{{Sfn|川田|1991|pp=45-46}}<ref name=千葉大学20190726>{{Cite news|url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000362.000015177.html |title=マメ科植物と共生する根粒菌の多様性を解明 -持続可能な農業への応用に期待- |last= |first= |date=2019-07-26 |work=国立大学法人千葉大学 |access-date=2021-04-08|language= |issn=}}</ref>。 |
|||
工業化によって人工肥料が使われるようになると、大量の窒素が余って土壌に残るようになった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=165}}。過剰となった窒素と[[リン]]は河川や沼沢地、海洋に流れ込んで富栄養化による無酸素現象などを引き起こす。当初の限界値の指標は、農業による窒素固定は年間3500万トン、海洋へのリン流入量は自然な風化で海に流入する量の10倍以下とされている。のちの研究により、大気中の窒素ガスは年間4400万トン以下という新たな指標が定められ、リンについては淡水の限界値も加わった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=78}}。しかし窒素生産量は1990年代ですでに4400万トンを越えており、2015年時点で1億5000万トンに達している{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=80}}。 |
|||
=== 海洋酸性化 === |
|||
[[ファイル:AYool_GLODAP_del_pH.png|thumb|300x300px|産業革命(1700年代)から現在(1990年代)までの海面pHの変化の推定。ΔpHは標準pH単位である<ref>{{Harvnb|Gruber|Sarmiento|Stocker|1996}}.</ref>]] |
|||
海洋酸性度は[[産業革命]]以来30%も増加している。人間の活動で輩出された[[二酸化炭素]]の約4分の1が海洋に溶解し、炭酸が生成される。この酸はサンゴ、甲殻類およびプランクトンが殻や骨格を作る能力を阻害する。こうした生態系の主要な種が一次的に絶滅することで、さらに二次的な絶滅([[カスケード効果]])が引き起こされ、魚資源に深刻な影響を与えるおそれがある。この限界点は大気中の二酸化炭素濃度増加が基礎となる制御変数でもあるため、気候変動の限界点と相互に強く関連している<ref name="Stockholm Resilience Centre 2009">{{Harvnb|Stockholm Resilience Centre|2009}}.</ref>。海洋化学者Peter Brewerは、「海洋の酸性化はpHの単純な変化以外の影響を有しており、これらには境界も必要である」と考えている<ref name="Brewer 2009">{{Harvnb|Brewer|2009}}</ref>。 |
|||
指標とされている[[アラレ石]](アラゴナイト)は、海水が酸性になることで溶解する炭酸カルシウムの一種であり、この水準が産業革命以前の80%を下回ると[[サンゴ礁]]は絶滅の危機におちいる。サンゴ礁の絶滅は海洋の生態系の崩壊につながる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=76}}。海洋酸性化によって魚やクジラの[[耳小骨]]も変形も起こす{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=206-207}}。 |
|||
=== 土地利用変化 === |
=== 土地利用変化 === |
||
[[File:Europe land use map.png|thumb |
[[File:Europe land use map.png|thumb|right|350px|欧州の土地利用地図。人間の土地利用は、耕作農地(黄色)と牧草地(ライトグリーン)が含まれる]] |
||
地球上では、森林、湿地、その他の植生の |
地球上では、森林、湿地、その他の植生の生態系が農業などの土地利用によって減少してきた。生物多様性の損失、淡水の枯渇、二酸化炭素吸収源の減少などの影響を与えている。開発する土地の限界値の指標は、凍結していない地表の15%以下とされ、2015年時点で12%に達している{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=77}}。 |
||
{{節スタブ}} |
|||
二酸化炭素を吸収する森林は、生物多様性を保ち、淡水資源を保全する役割も果たしている。のちの研究では、生物圏を維持するための森林として、[[アマゾン川]]・[[コンゴ川]]流域・東南アジアの[[熱帯雨林]]の85%、北方林の85%、温帯林の50%を保全する必要があるという提案が追加された{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=78}}。しかし伐採が進んだため、2015年時点で元来の森林被覆のうち60%しか残っておらず、これを75%まで回復させる必要があると指摘されている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=80}}。持続可能な伐採とされている小規模な[[択伐]]も、積み重なると大規模な伐採よりも有害になる場合もある。樹木1本の伐採で平均30本が乾燥や土壌劣化などの有害な影響を受け、[[森林火災]]のリスクも高まる{{Sfn|ヴィンス|2015|p=350}}。 |
|||
{{clear}} |
|||
このままのペースで開発が進んだ場合、2100年にはアマゾン地域の森林面積が減少して砂漠化が進むとする研究があり、残される森林面積の予測は28%から10%まで幅がある。先進国が資金を提供して熱帯雨林を守るプロジェクトとして、{{仮リンク|森林減少・劣化からの温室ガス排出削減|en|Reducing emissions from deforestation and forest degradation}}(REDD+)が開始された{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=347-348}}。 |
|||
=== グローバルな淡水利用 === |
=== グローバルな淡水利用 === |
||
[[ファイル:PeakWaterAquifer.PNG |
[[ファイル:PeakWaterAquifer.PNG|thumb|300x300px|[[帯水層]]から[[地下水]]を汲み上げる際に、生産量が自然の涵養量を超えた後の水の生産曲線を示す<ref name="Palaniappan 2008">{{Harvnb|Palaniappan|Gleick|2008}}.</ref>]] |
||
淡水利用の指標は、流水資源の消費を年間4000万立方キロメートル以下に抑えることとされる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=77}}。淡水消費の92%は農業が占めており、生態系の崩壊を避けるために、[[灌漑]]などの方法で河川や帯水層を開発しないことが必要となる{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=126-127}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=77}}。また、世界の各河川の限界値も計算され、それぞれの河川が保持すべき最小限の水量も提案されている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=73}}。 |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
河川の淡水利用が増加したため、世界の河川の25%が海に到達していない。[[アラル海]]や[[チャド湖]]などの湖では淡水利用によって水位の減少が起きている{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=80}}。淡水利用の増加は、淡水種の生物の生息域の減少につながっており、淡水種の30%に絶滅の可能性がある{{Sfn|ヴィンス|2015|p=90}}。温暖化による氷河の減少は、山岳地の水不足の原因となっており、人口氷河や、山を白く塗って温度を下げる試みによって水資源の確保が行われている{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=71-78}}。淡水が少ない土地では、[[帯水層]]から[[地下水]]を汲み上げて使っているが、帯水層の中には数千年前に形成された枯渇性の水資源もある。こうした水は{{仮リンク|化石水|en|Fossil water}}と呼ばれており、取り尽くすと補充できない{{efn|[[インド]]では灌漑に使う化石水が世界最大であり、将来の農業への影響が懸念されている{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=142}}。}}{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=142, 262}}。 |
|||
直接的な利用に加えて、水を使って作られる財やサービスも重要となる。輸入する食品に水が使われていれば、国境を越えて間接的に水が取引されていることを表す。こうした水は[[バーチャルウォーター]]と呼ばれる{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=126-127}}。たとえば日本では[[食料自給率]]が低く、木材も大量に輸入している。このため水の消費量は国内の570億立方メートルに対して、国外の農産物関連は640億立方メートル、木材は471億立方メートルあり、国外の消費量が国内の2倍近くとなる{{Sfn|沖|2008|pp=69-70}}{{Sfn|渡邉, 沖, 太田|2009|pp=127-128}}。アメリカで消費される水の80%は国内だが、20%は中国の長江の水となっている{{efn|[[環境省]]のサイトで、バーチャル・ウォーターの計算ソフトが公開されている。製作はNPO法人日本水フォーラムによる<ref name=仮想水2021>{{Cite news|url=https://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html |title=仮想水計算機 |last= |first= |date= |work=環境省 |access-date=2021-04-08 |language= |issn=}}</ref>。}}{{Sfn|ヴィンス|2015|pp=126-127}}。 |
|||
=== 成層圏オゾン層の破壊 === |
=== 成層圏オゾン層の破壊 === |
||
[[ファイル:NASA_and_NOAA_Announce_Ozone_Hole_is_a_Double_Record_Breaker.png|thumb| |
[[ファイル:NASA_and_NOAA_Announce_Ozone_Hole_is_a_Double_Record_Breaker.png|thumb|2006年9月21日から30日にかけて、南極のオゾンホールの面積は観測史上最大となった。|左]] |
||
[[オゾン層|成層圏オゾン層]]は[[紫外線]]を遮断する効果があり、オゾン層の破壊は生物への健康被害となる。指標では、オゾン層濃度は産業革命前と比較した損失を5%以下に抑えることとされている。損失が5%を上回ると、[[オゾンホール]]が毎年極地に出現する可能性が高くなる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=77}}。 |
|||
[[ファイル:China.A2002007.0310.250m.jpg|left|thumb|中国南部およびベトナムを覆うスモッグ]] |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
=== 大気エアロゾルの負荷 === |
=== 大気エアロゾルの負荷 === |
||
[[ファイル:China.A2002007.0310.250m.jpg|thumb|中国南部およびベトナムを覆うスモッグ]] |
|||
{{節スタブ}} |
|||
炭素粒子・硝酸塩・硫酸塩などによる大気汚染が問題とされているが、明確な指標が定められていない{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=72}}。 |
|||
{{clear}} |
|||
大気汚染の明確な指標はないが、イギリスで石炭利用が進んだ17世紀から問題とされてきた。17世紀には建築物の腐食、肺結核や風邪の増加が起き、18世紀には[[酸性雨]]が始まった。このため大気中の二酸化炭素・塩素・硫黄・アンモニアを測定する公害観測が始まった{{Sfn|工藤|1975|p=}}。19世紀以降は排出ガスが国境を越えた酸性雨の原因にもなり、1972年に初の環境問題の国際会議である[[国際連合人間環境会議]]設立のきっかけとなった{{efn|霧の都とも呼ばれるロンドンでは冬のスモッグが有名であり、[[ロンドンスモッグ]](1952年)によって1万人以上が死亡する事件も起きた{{Sfn|溝口|1998|p=}}。}}{{Sfn|藤田|1998|p=}}。 |
|||
21世紀に入ってからは中国やインドの都市部で大気汚染が深刻になっており、2015年の大気汚染による死亡者は900万人で、最多の国はインドの250万人だった{{Sfn|バナジー, デュフロ|2020|p=4811/8512}}。OECDの調査によれば、大気汚染による死者は2050年までに汚水や不衛生環境による死者よりも多くなるとされている。また、燃焼で発生した微粒子は太陽光を吸収して温暖化を加速させ、寒冷地で堆積すると氷解を促進し、植物にとっては光合成の制約になる{{Sfn|ヴィンス|2015|p=48}}。 |
|||
=== 化学物質による汚染 === |
=== 化学物質による汚染 === |
||
重金属・有機化学物質・放射性物質などの有害物質による生物圏の汚染が問題とされる。明確な指標が定められていない{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=72}}。 |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
指標はないものの、化学物質の汚染は以前から問題とされてきた。生物学者の[[レイチェル・カーソン]]は、著書『[[沈黙の春]]』(1962年)において問題提起をしている。しかし、当時は全地球的なデータが存在しなかったため、保守的な政治家、エコノミスト、ビジネスリーダーらは人類が環境を変えた証拠はないと主張して問題の存在を認めなかった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=61}}。 |
|||
== 境界間の相互作用 == |
|||
{{節スタブ}} |
|||
{{clear}} |
|||
== |
== 不可逆的な変化 == |
||
限界点を超えた場合、環境に不可逆的な変化が起きると予測されている。これを[[レジームシフト]](均衡状態の移行)とも呼ぶ{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=48-49}}。地球システムは、自己制御のプロセスが2段階になっている。第1段階では変化に対して生物学的・物理的・化学的プロセスが負のフィードバックとして働き、もとの状態に戻ろうとする。この負のフィードバックは回復力とも表現される。しかし限界を超えて第2段階になると、負のフィードバックが働かず、温暖化や寒冷化など別の均衡状態へと移行し、後戻りができなくなる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=53}}。 |
|||
=== 気候変動 === |
|||
北極の温暖化が限界点を超えた場合、海氷が解ける現象が自己加速する。海氷がなくなった海面は氷がある状態よりも色が暗くなるため、太陽放射からより多くの熱を吸収する。地球全体で気候の調節機能が影響を受け、農業や漁業など生業への被害、疫病、生活様式が変化する{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=48-49}}。 |
|||
すでに限界点を超えている二酸化炭素濃度については、二酸化炭素が海洋に吸収されて酸性化を起こしており、正確な予測が困難なものもある{{Sfn|ヴィンス|2015|p=188-189, 214-215}}。海洋は温暖化によってより多くの二酸化炭素を吸収し、酸性化が進む。海面上昇は沿岸の海岸侵食、インフラストラクチャーへの被害も起こす{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=48-49}}。 |
|||
12万年前は現在より気温が2度高く、当時の海面は4メートルから8メートル高かった。仮に同様の海面上昇が起きた場合、[[モルディブ]]や[[キリバス]]などの島嶼部の国家は国土を喪失し{{Sfn|ヴィンス|2015|p=188-189, 214-215}}、[[ニューヨーク]]、[[シドニー]]、東京など沿岸部の都市は維持が困難となる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=89}}<ref name=JCCCA>{{Cite news|url=https://www.jccca.org/faq/15931 |title=海面上昇の影響について |last= |first= |date= |work=全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA) |access-date=2021-04-08 |language= |issn=}}</ref>。 |
|||
=== 生物多様性の損失 === |
|||
生態系においても不可逆的な変化が起きている。ブラジルの熱帯雨林は伐採によって湿度が減少して[[サバナ (植生)|サバンナ]]が拡大し、新しい状態への固定化が進んでいる。硬質サンゴの生態系が崩壊すると、軟質サンゴや岩礁に変化する。[[海洋無酸素事変]]も起きている。変化は急激な場合もあり、沼沢地や川に窒素やリンを含む廃水が流されると急激な無酸素化や藻類の大発生が起きる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=92-93}}。サンゴ礁をはじめ海洋の生態系では、[[エルニーニョ]]現象などへの抵抗力が弱まる。サンゴ礁の崩壊や過剰な漁獲は生物多様性や漁業に悪影響を与える{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=48-49}}。 |
|||
=== 生物地球化学的循環 === |
|||
農業と都市生活からの窒素やリンの過剰な排水が淡水システムに影響を与える。地下水、湖、湿地、河川では富栄養化によって無酸素化が起きる。水質の低下は漁業、飲料水、健康への被害につながる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=48-49}}。 |
|||
=== 土地利用変化 === |
|||
土地利用の増加は、温暖化とともに乾燥化を進める。森林の減少は水循環の喪失をまねき、雨量の減少、サバンナの自己乾燥の悪化、草原の砂漠化などを起こす。乾燥化や砂漠化は農業や牧畜業に影響を与え、食糧安全保障への悪影響、紛争増加の可能性がある{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|pp=48-49}}。 |
|||
== 政治・経済 == |
|||
=== 経済的コスト === |
|||
プラネタリー・バウンダリーを超えないことによって、人類は環境から経済的な恩恵を受けてきた。生態系が変化すると、それは損失へと変化する。世界経済の規模は約75兆USドルだが、2007年から2011年にかけて約20兆USドルに相当する生態系サービスを失っている。この生態系サービスとは淡水や土壌の質、木材の価値など直接的なサービスを指しており、自然を保全するための間接的なサービスは含まれておらず、実態はさらに多額にのぼる。仮に企業がこうしたサービスに対価を払うとすると、世界経済の純生産額は27%減少する{{efn|2014年の調査による{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=129}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=129}}。 |
|||
気候変動による経済的損失は世界各地で起きており、毎年の環境災害による損害を金額に換算すると1500億[[USドル]]にのぼる{{efn|オーストラリアでは2000年から2012年の12年間の旱魃で40億USドルの損害となった。2012年の[[ハリケーン・サンディ]]によって、[[ニューヨーク市]]は190億USドルの損害となった{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=129}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=129}}。 |
|||
=== 不平等 === |
|||
気候変動の対策として、2030年までに25%の温室効果ガスを削減し、気温上昇を1.5度未満に抑えることが[[パリ協定 (気候変動)|パリ協定]](2015年)で決定された。しかし温室効果ガスは主に富裕国で排出されており、深刻な影響を受けるのは技術や資金が不足する途上国となる{{Sfn|バナジー, デュフロ|2020|p=4518-4526/8512}}。地域による不平等の他に、所得層による不平等がある。富裕層ほどエネルギー消費が多くなるために排出量も増えることが複数の研究で判明しており、平均的には所得が10%増えると炭素排出量は9%増える。世界で最も排出量が多い上位10%の所得層は排出量の50%を占め、最も排出量が少ない50%の所得層は排出量の10%にとどまる。このため、富裕国および富裕層により大きな責任があるとされる{{Sfn|バナジー, デュフロ|2020|p=4544-4551/8512}}。 |
|||
=== 政策提案 === |
|||
プラネタリー・バウンダリーにもとづき、ロックストロームらは以下の提案を行った{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=153}}。 |
|||
# 地球上の安全な機能空間の規制:生物多様性の損失をゼロとし、地球温暖化を2度以内に抑えることなどを目的として世界的に規制をする{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=153}}。 |
|||
# 生物物理学的な余地空間を公平に分配する方法についての合意:炭素排出、土地利用、淡水利用、窒素とリン排出についての配分を合意する。森林の保全や生物多様性を食い止める点についても合意する{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=153}}。 |
|||
# 政策的手段とガバナンスのあり方に多様性を許容する:市民運動、提携・誓約、アクティヴィズムなどのボトムアップの活動と、国や地域のガバナンスなどのトップダウンの活動をともに発展すること{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=153}}。 |
|||
# [[国内総生産]](GDP)とは異なる成長と進歩に関する新しい基準を設定する:進歩を図る新しい指標と環境志向の経済発展の概念を構築する{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=153}}。 |
|||
# 対応能力の開発への投資:途上国への自由な技術移転と、新たな技術革新を本格化するための必要な投資を含む{{efn|新たな技術革新について、[[マサチューセッツ工科大学]](MIT)のエリク・ブリンジョルフソンとアンドリュー・マカフィーは「第二の機械時代」と呼んでいる{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=151}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=153}}。 |
|||
[[持続可能な開発目標]](SDGs)の策定において、国連オープンワーキンググループ(OWG)が2013年から2014年に草案をまとめ、プラネタリー・バウンダリーの概念も反映された{{efn|SDGsの議論は、[[国際連合事務総長]]の[[潘基文]]が設置した地球の持続可能性に関する上級会合(GSP)から始まっている。OWGは、政府間協議プロセスとして活動した{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=165}}。}}{{Sfn|ロックストローム, クルム|2018|p=165}}。 |
|||
== 映像作品 == |
|||
* 『地球の限界: 私たちの地球の科学』(2021年) |
|||
Netflixのドキュメンタリー。原題は『Breaking Boundaries: The Science of Our Planet』。ロックストロームや[[デイビッド・アッテンボロー]]が出演した<ref>{{IMDB title|14539726|Breaking Boundaries}}</ref>。 |
|||
== 脚注 == |
|||
{{脚注ヘルプ}} |
|||
=== 注釈 === |
|||
{{Reflist|group="†"}} |
|||
{{Notelist|2}} |
|||
=== 出典 === |
|||
{{Reflist|3}} |
|||
== 参考文献 == |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
| author = {{仮リンク|ガイア・ヴィンス|en|Gaia Vince}} |
|||
| title = 人類が変えた地球: 新時代アントロポセンに生きる |
|||
| ref = {{sfnref|ヴィンス|2015}} |
|||
| translator = 小坂恵理 |
|||
| series = |
|||
| publisher = 化学同人 |
|||
| editor = |
|||
| pages = |
|||
| periodical = |
|||
| year = 2015 |
|||
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
|||
| author = Gaia Vince |
|||
| year = 2014 |
|||
| title = Adventures in the Anthropocene: A Journey to the Heart of the Planet We Made |
|||
| publisher = Penguin Books |
|||
| isbn = |
|||
}}) |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
|author=デヴィッド・W・ウォルフ |
|||
| title = 地中生命の驚異 - 秘められた自然誌 |
|||
| publisher = 青土社 |
|||
| series = |
|||
| translator = [[長野敬]], 赤松眞紀 |
|||
| year = 2016 |
|||
| isbn = |
|||
| ref = {{sfnref|ウォルフ|2016}} |
|||
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
|||
| last = Wolfe |
|||
| first = David W. |
|||
| authorlink = |
|||
| year = 2001 |
|||
| title = Tales From The Underground: A Natural History Of Subterranean Life |
|||
| publisher = |
|||
| isbn = }}) |
|||
* {{Cite journal|和書|author=[[沖大幹]] |title=バーチャルウォーター貿易 |url=https://doi.org/10.20820/suirikagaku.52.5_61 |journal=水利科学 |publisher=日本治山治水協会 |year=2008 |month= |volume=52 |issue=5 |pages=61-82 |naid= |issn= |accessdate=2021-04-03|ref={{sfnref|沖|2008}}}} |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
| author = [[川田順造]] |
|||
| title = [[サバナ (植生)|サバンナ]]の博物誌 |
|||
| publisher = 筑摩書房 |
|||
| series = ちくま文庫 |
|||
| year = 1991 |
|||
| isbn = |
|||
| ref = {{sfnref|川田|1991}} |
|||
}} |
|||
* {{Cite journal|和書|author=工藤雄一 |title=公害法 (一八六三年アルカリ工場規制法) の成立 : イギリス公害史研究の一階梯 |url=https://doi.org/10.20624/sehs.40.6_576 |journal=社会経済史学 |publisher=社会経済史学会 |year=1975 |month= |volume=40 |issue=6 |pages=576-606 |naid= |issn= |ref={{sfnref|工藤|1975}}}} |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
| author = 杉山昌広 |
|||
| title = 気候工学入門 - 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング |
|||
| ref = {{sfnref|杉山|2011}} |
|||
| series = |
|||
| publisher = 日刊工業新聞社 |
|||
| pages = |
|||
| periodical = |
|||
| year = 2011 |
|||
}} |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
| author1 = [[アビジット・V・バナジー]] |
|||
| author2 = [[エステル・デュフロ]] |
|||
| year = 2020 |
|||
| title = 絶望を希望に変える経済学 - 社会の重大問題をどう解決するか |
|||
| publisher = 日経BP(Kindle版) |
|||
| series = |
|||
| isbn = |
|||
| translator = 村井章子 |
|||
| ref = {{sfnref|バナジー, デュフロ|2020}} |
|||
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
|||
| author1 = Abhijit Vinayak Banerjee |
|||
| author2 = Esther Duflo |
|||
| year = 2019 |
|||
| title = Good Economics for Hard Times |
|||
| publisher = PublicAffairs |
|||
| isbn = |
|||
}}) |
|||
* {{Cite journal|和書|author=[[福士正博]] |title=持続可能な消費 : 二つのバージョン(完) (橋谷弘教授退任記念号) |journal=東京経大学会誌. 経済学 |issn=1348-6403 |publisher=東京経済大学経済学会 |year=2018 |month=2 |volume=297 |pages=217-237 |naid=120006399822 |url=https://hdl.handle.net/11150/11021 |accessdate=2021-08-31 |ref={{sfnref|福士|2018}}}} |
|||
* {{Cite journal|和書 |author=藤田慎一 |title=東アジアの酸性雨:ー問題の経緯, 研究の現状, 今後の課題ー |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010572627 |journal=水利科学 |issn=0039-4858 |publisher=日本治山治水協会 |date=1998-06 |volume=42 |issue=2 |pages=1-24 |naid=130007603276 |doi=10.20820/suirikagaku.42.2_1 |accessdate=2021-08-31 |ref={{sfnref|藤田|1998}}}} |
|||
* {{Cite journal|和書|author=溝口次夫 |title=環境問題へのアプローチ:過去, 現在, 未来 |url=https://archives.bukkyo-u.ac.jp/repository/baker/rid_BS002200007110 |journal=佛大社会学 |publisher=佛教大学社会学研究会 |year=1998 |month=jan |volume=22 |issue= |pages=141-146 |naid=110009556594 |issn=03859592 |accessdate=2021-04-03|ref={{sfnref|溝口|1998}}}} |
|||
* {{Cite journal|和書|author=矢ケ崎典隆 |title=南北アメリカにおける先住民の農業様式と地域生態 |url=https://hdl.handle.net/10131/2575 |journal=横浜国立大学人文紀要. 第一類, 哲学・社会科 |publisher=横浜国立大学 |year=1995 |month=oct |volume= |issue=41 |pages=41-65 |naid=110005858466 |issn=05135621 |accessdate=2021-04-03|ref={{sfnref|矢ケ崎|1995}}}} |
|||
* {{Citation| 和書 |
* {{Citation| 和書 |
||
| author1 = [[ヨハン・ロックストローム]] |
| author1 = [[ヨハン・ロックストローム]] |
||
168行目: | 327行目: | ||
| chapter = |
| chapter = |
||
| title = 小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発 |
| title = 小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発 |
||
| ref = {{sfnref|ロックストローム, クルム|2018}} |
| ref = {{sfnref|ロックストローム, クルム|2018}} |
||
| translator = 谷淳也, 森秀行 |
| translator = 谷淳也, 森秀行 |
||
| series = |
| series = |
||
| publisher = 丸善出版 |
| publisher = 丸善出版 |
||
| editor = |
| editor = |
||
| pages = |
| pages = |
||
| periodical = |
| periodical = |
||
| year = 2018 |
| year = 2018 |
||
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
||
181行目: | 340行目: | ||
| title = Big World Small Planet - Abundance within Planetary Boundaries |
| title = Big World Small Planet - Abundance within Planetary Boundaries |
||
| publisher = Yale University Press |
| publisher = Yale University Press |
||
| isbn = |
| isbn = |
||
}}) |
|||
* {{Cite journal|和書|author=渡邉悟, 沖大幹, 太田猛彦 |title=木材の輸入に伴う仮想水(バーチャルウォーター)の算定 |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010782604 |journal=水利科学 |publisher=日本治山治水協会 |year=2009 |month=dec |volume=53 |issue=5 |pages=119-132 |naid=130006026426 |issn=0039-4858 |DOI=10.20820/suirikagaku.53.5_119 |accessdate=2021-04-03|ref={{sfnref|渡邉, 沖, 太田|2009}}}} |
|||
== 関連文献 == |
|||
* {{Cite book|和書|year=2017|title= 「現代思想」2017年12月号 人新世 ―地質年代が示す人類と地球の未来― |editor=|publisher=青土社|ISBN=|ref=harv}} |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
| author = |
|||
| title = 水をめぐる人と自然 |
|||
| ref = {{sfnref|嘉田|2003}} |
|||
| series = 有斐閣選書 |
|||
| editor = [[嘉田由紀子]] |
|||
| publisher = 有斐閣 |
|||
| pages = |
|||
| periodical = |
|||
| year = 2003 |
|||
}} |
|||
* {{Cite book|和書|year=2021|title=人新世を問う - 環境、人文、アジアの視点 |editor=寺田匡宏, ダニエル・ナイルズ|publisher=京都大学学術出版会|ISBN=|ref=harv}} |
|||
** {{Cite book|和書|author=寺田匡宏, ダニエル・ナイルズ|title=人新世(アンソロポシーン)をどう考えるか|ref={{SfnRef|寺田, ナイルズ|2021}}}} |
|||
* {{Citation| 和書 |
|||
| author1 = デイビッド・ファリアー |
|||
| chapter = |
|||
| title = FOOTPRINTS(フットプリント) 未来から見た私たちの痕跡 |
|||
| ref = {{sfnref|ファリアー|2021}} |
|||
| translator = 東郷えりか |
|||
| series = |
|||
| publisher = 東洋経済新報社 |
|||
| editor = |
|||
| pages = |
|||
| periodical = |
|||
| year = 2021 |
|||
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
|||
| author = David Farrier |
|||
| year = 2020 |
|||
| title = Footprints: In Search of Future Fossils |
|||
| publisher = Fourth Estate |
|||
| isbn = |
|||
}}) |
}}) |
||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
||
{{Colbegin}} |
|||
* [[宇宙船地球号]] |
* [[宇宙船地球号]] |
||
* [[成長の限界]] |
|||
* [[学際領域]] |
|||
* [[開発経済学]] |
* [[開発経済学]] |
||
* [[学際領域]] |
|||
* [[環境人文学]] |
|||
* [[企業の社会的責任]](CSR) |
* [[企業の社会的責任]](CSR) |
||
* [[グレート・アクセラレーション]] |
|||
* [[成長の限界]] |
|||
* [[ハビタブルゾーン]] |
|||
* [[エクメーネ]] - [[アネクメーネ]] |
|||
* [[人新世]] |
|||
*{{仮リンク|地球システム科学|en|Earth system science}} |
|||
{{Colend}} |
|||
== |
== 外部リンク == |
||
{{Commons category|Planetary boundaries}} |
|||
{{Reflist|30em}} |
|||
* [https://www.stockholmresilience.org/research/planetary-boundaries/planetary-boundaries-data.html Figures and data] for the updated Planetary Boundaries can be found at the Stockholm Resilience Centre website. |
|||
* [http://www.nature.com/news/specials/planetaryboundaries/index.html#feature Planetary Boundaries: Specials] ''[[Nature (journal)|Nature]],'' 24 September 2009. |
|||
* [http://www.ted.com/talks/lang/eng/johan_rockstrom_let_the_environment_guide_our_development.html Johan Rockstrom: Let the environment guide our development] [[TED (カンファレンス)|TED]] video, July 2010. [http://initforthegold.blogspot.com/2010/09/rockstrom-on-planetary-boundaries.html Transcript html] |
|||
* [https://www.theguardian.com/sustainable-business/planetary-boundaries-limits-earth-podcast Planetary boundaries: what are the limits of the earth? - podcast] ''The Guardian'', 30 January 2013. |
|||
* {{YouTube|id=SieN0IrZ5wg|title=The Planetary Boundaries and what they mean for the Future of Humanity}} |
|||
{{Socsci-stub}} |
{{Socsci-stub}} |
||
{{Economy-stub}} |
{{Economy-stub}} |
||
{{Env-stub}} |
{{Env-stub}} |
||
{{環境問題|uncollapsed |
{{環境問題|uncollapsed||}} |
||
{{DEFAULTSORT:ふらねたりいはうんたりい}} |
{{DEFAULTSORT:ふらねたりいはうんたりい}} |
||
[[Category:地球科学]] |
[[Category:地球科学]] |
2024年3月25日 (月) 10:02時点における最新版
プラネタリー・バウンダリー(英: Planetary boundaries)は、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念である。地球の限界[1]、あるいは惑星限界[2]とも呼ばれる。
プラネタリー・バウンダリーは、安全域や程度を示す限界値を有する9つのプロセスを定めている。人間活動が限界値を超えた場合、地球環境に不可逆的な変化が急激に起きる可能性がある。定量化できていないプロセスもあり、研究が進められている。科学者によってプラネタリー・バウンダリーにもとづく政策提案が行われており、持続可能な開発目標(SDGs)の内容にも採用された[3]。
提唱者の1人であるヨハン・ロックストロームは、プラネタリー・バウンダリーが人類による大惨事を防ぐためのものだとしており、崖道に付けられたガードレールにたとえている[4]。
背景
[編集]18世紀の産業革命以降、石炭の燃焼による大気汚染をきっかけとして、人類が環境に与える影響についての研究や立法が進んだ[5]。国際社会で環境問題が論じられるようになったのは、20世紀後半からだった。1992年のリオデジャネイロの国連気候変動枠組条約、1997年の京都議定書をへて、2009年12月にコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約締約国会議(COP15)では各国の首脳が集まった[6]。
COP15の前に、プラネタリー・バウンダリーについての最初の論文が発表された。論文は、ストックホルム・レジリエンス・センターの環境学者ヨハン・ロックストロームと、オーストラリア国立大学の化学者ウィル・ステフェンが主導する約20名の地球システムと環境科学者のグループがまとめた。論文のタイトルは「人類にとっての(地球の)安全な機能空間」で、2009年9月24日に学術誌『ネイチャー』に掲載された[注釈 1][7]。この論文は、全地球的な気候、成層圏オゾン、生物多様性、海洋酸性化などの自然システムを継続的に計測・監視することを提案した。計測や監視を通して、人類は貧困の緩和や経済成長の追求が安定的に可能になると論じた。論文の発表によって、プラネタリー・バウンダリーの必要性が科学界で認められていった[7]。
プラネタリー・バウンダリーは、持続可能な開発のための条件であり、「人類のための安全動作領域」を定義するフレームワークとして考えられた。政府、国際機関、市民社会、科学界および民間部門を含む国際社会に向けた提案でもあった[8]。このフレームワークは、産業革命以降の人間の活動が、地球環境の変動の主な要因となってきたことを示す。地球にとっての安全域や程度を示す限界値を有する9つの地球システムを定義しており、いくつかはすでに人類の活動によって限界値を超えており、それ以外も差し迫った危機にある[9]。しかし当初はビジネスや政策担当者への影響は少なく、COP15の参加国は温室効果ガスを防ぐための合意を達成できなかった[注釈 2][11]。
2012年、ロックストロームは写真家・映画監督のマティアス・クルムとの共著『人類の挑戦:プラネタリー・バウンダリーの範囲内での繁栄』を出版し、プラネタリー・バウンダリーの概念を再び提案した[注釈 3]。この本は同年にリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議で各国代表に渡された。政策立案者の間でプラネタリー・バウンダリーの理解が進み、オックスファムや世界自然保護基金(WWF)、NGOのフォーラムでも注目されるようになっていった[13]。
分類
[編集]プラネタリー・バウンダリーの特定にあたり、科学者グループが検討を行い、50以上の候補から最重要なプロセスを9つ選んだ。この9つは、機能によって3種類のグループに分けられる[14]。
地球的な閾値が明確に定義されたグループ
[編集]気候変動、成層圏オゾン層の破壊、海洋酸性化が含まれる。これらには明確な閾値があり、ある状態から別の状態に急激に移行すると地球全体に影響を与える[15]。
緩やかに変化する地球環境にかかる変数にもとづくグループ
[編集]土地利用の変化、淡水利用、生物多様性の損失、生物地球化学的循環(窒素とリンの循環)が含まれる。これらは緩やかな限界値とも呼ばれ、地球システムのフィードバックを支えている。第1グループが地球全体の変動であるのに対して、限定された地域の限界値に関係している。地球規模での独自の閾値はないが、複数の組み合わせによって急激な変化がありうる[15]。
人類が作り出した脅威
[編集]大気エアロゾルの負荷化学物質、重金属や有機化学物質による生物圏の汚染が含まれる。これらは多数のプロセスに関連するため、閾値の設定を定めるための研究が進められている[15]。
ロックストロームらは2009年の発表で、見逃しているものやプラネタリー・バウンダリーではないものが含まれているかを科学界に問題提起し、制作立案者、ビジネスリーダー、市民にも精査を求めた。その結果をもとに、2014年に9つのプロセスが適切であると結論づけた[16]。
9つのプロセスの中で、気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環は2009年時点で限界を超えたともいわれている[17]。
プラネタリー・バウンダリー[18] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
地球システムでのプロセス | 制御値[19] | 限界値 | 現在値 | 限界値を超えた? | 産業革命以前の値 | コメント |
1. 気候変動 | 大気中の二酸化炭素濃度(ppm)[20] | 350 | 400 | はい | 280 | [21] |
産業革命以来(1750年以降)の放射強制力の増加量(W / m2) | 1.0 | 1.5 | はい | 0 | [22] | |
2. 生物多様性の損失 | 絶滅率(年当たりの種数) | 10 | 100 | はい | 0.1-1 | [23] |
3. 生物地球化学的循環 | (a) 人為的に大気中から除去された窒素の量(年間あたり百万トン単位) | 35 | 121 | はい | 0 | [24] |
(b) 人為的に海洋に入るリンの量(年間あたり百万トン単位) | 11 | 8.5-9.5 | いいえ | -1 | [25] | |
4. 海洋酸性化 | 表層海水中のアラレ石の全球平均飽和状態(オメガ単位) | 2.75 | 2.90 | いいえ | 3.44 | [26] |
5. 土地利用の変化 | 農地に変換された地表面(パーセント) | 15 | 11.7 | いいえ | low | [27] |
6. 淡水 | グローバルな淡水利用(km3/yr) | 4000 | 2600 | いいえ | 415 | [28] |
7. オゾンホール | 成層圏オゾン濃度(ドブソン単位) | 276 | 283 | いいえ | 290 | [29] |
8. 大気エアロゾル粒子 | 大気中の全体的な 粒子状物質 の濃度 | 定量化できていない | [30] | |||
9. 化学物質による汚染 | 有害物質、合成樹脂、内分泌攪乱物質、重金属、放射能汚染の環境中の濃度 | 定量化できていない | [31] |
各プロセスの詳細
[編集]気候変動
[編集]気候変動については、大気中の二酸化炭素濃度と放射強制力の2つが制御変数とされる。古気候学のデータをもとにした予想では、二酸化炭素濃度の限界値は350ppm以下であり、それを上回ると極地の氷が大規模に溶け、海面上昇や海洋酸性化などの結果をもたらす可能性がある[33]。人類が排出する温室効果ガスの正味エネルギー量は、1平方メートルあたり1ワット以下の増加が限界値とされ、地球の平均気温1度の上昇に相当する[注釈 4][34]。
気候変動によって、人類がこれまで築いた文明の前提が失われる可能性がある。250万年前の更新世に人類の祖先が発生した時には、気候は氷河期と温暖期の変動を繰り返しており、人類にとって過酷な環境だった。7万5000年前には、人口が1万5000人まで減少したことも判明している。農耕による安定した食糧生産が可能になったのは、1万1700年ほど前から気候が暖かくなり、変化が緩やかになったことが原因にある。これが完新世と呼ばれている間氷期にあたり、暖かく湿気があり、予測できる気候は農耕にとって好条件だった。21世紀時点でも人類の繁栄は完新世の条件に依存しているが、気候変動によって安定性が失われ、人新世と呼ばれる地質時代に入ったともいわれている[35]。
気候が外部要因によって影響を受ける度合いを気候感度とも呼び、この気候感度の予測は幅が大きい。理由としては、(1) 温暖化した際の雲の変化が予測しにくい点[注釈 5]、(2) 温暖化による炭素循環の変化が予測しにくい点にある。予測の幅が大きいため、温室効果ガスの削減目標と気温の上昇を関係づけることを困難としている。温度上昇と温暖化の影響は確率的にしか分からない[37]。
生物多様性の損失
[編集]生態系への影響の変数として、21世紀初頭における生物種の絶滅率を使っている。化石記録によれば、海洋生物と哺乳動物の平均絶滅率は年間で100万種あたり0.1から1とされる[34]。2019年時点の報告では、約100万種の動植物が絶滅の危機に瀕しており、生物種絶滅のペースは過去1,000万年の平均と比べて少なくとも数十倍から数百倍といわれている[38]。
研究されている全生物種の24%が絶滅の危機にあり、この状態が続けば生物種に依存している人類にとって不都合になると予想されている。指標として、平均絶滅率を100万種あたり10種まで抑えることが提示されている。それぞれの生物種は生態系における機能が異なるため、機能を考慮した対応も必要とされている[39]。
人類による生物多様性の損失は、これまで5回あった生物の大量絶滅に続く第6次大量絶滅とも呼ばれている。食物連鎖の頂点捕食者が減少することで、生態系が急速に変化する。絶滅した生物を復活させることはできないため、他の8つのプロセスとは異なり取り返しがつかない点も重要とされる[注釈 6][41]。
生物地球化学的循環
[編集]窒素循環には微生物叢が関わっており、マメ科などの植物の根には窒素固定菌が生息して土壌に窒素を蓄積する。土壌の窒素は、脱窒素細菌によって窒素ガスとして大気中に放出され、河川や海洋への流出を防ぐ。こうして窒素固定細菌と脱窒素細菌による循環が作られている[42]。
古来から農業で作物を育てるために窒素が必要とされ、工業化の前には堆肥などで窒素を補充したり、豆類との混作によって空気中の窒素を取り入れていた[43]。メソアメリカにおけるトウモロコシやカボチャと豆類の混作、西アフリカにおける穀物とササゲの混作、日本の縄文時代におけるアズキやダイズの栽培は、マメ科植物の利点を経験から学んだ方法だった[44][45][46]。
工業化によって人工肥料が使われるようになると、大量の窒素が余って土壌に残るようになった[43]。過剰となった窒素とリンは河川や沼沢地、海洋に流れ込んで富栄養化による無酸素現象などを引き起こす。当初の限界値の指標は、農業による窒素固定は年間3500万トン、海洋へのリン流入量は自然な風化で海に流入する量の10倍以下とされている。のちの研究により、大気中の窒素ガスは年間4400万トン以下という新たな指標が定められ、リンについては淡水の限界値も加わった[47]。しかし窒素生産量は1990年代ですでに4400万トンを越えており、2015年時点で1億5000万トンに達している[41]。
海洋酸性化
[編集]海洋酸性度は産業革命以来30%も増加している。人間の活動で輩出された二酸化炭素の約4分の1が海洋に溶解し、炭酸が生成される。この酸はサンゴ、甲殻類およびプランクトンが殻や骨格を作る能力を阻害する。こうした生態系の主要な種が一次的に絶滅することで、さらに二次的な絶滅(カスケード効果)が引き起こされ、魚資源に深刻な影響を与えるおそれがある。この限界点は大気中の二酸化炭素濃度増加が基礎となる制御変数でもあるため、気候変動の限界点と相互に強く関連している[49]。海洋化学者Peter Brewerは、「海洋の酸性化はpHの単純な変化以外の影響を有しており、これらには境界も必要である」と考えている[50]。
指標とされているアラレ石(アラゴナイト)は、海水が酸性になることで溶解する炭酸カルシウムの一種であり、この水準が産業革命以前の80%を下回るとサンゴ礁は絶滅の危機におちいる。サンゴ礁の絶滅は海洋の生態系の崩壊につながる[34]。海洋酸性化によって魚やクジラの耳小骨も変形も起こす[51]。
土地利用変化
[編集]地球上では、森林、湿地、その他の植生の生態系が農業などの土地利用によって減少してきた。生物多様性の損失、淡水の枯渇、二酸化炭素吸収源の減少などの影響を与えている。開発する土地の限界値の指標は、凍結していない地表の15%以下とされ、2015年時点で12%に達している[52]。
二酸化炭素を吸収する森林は、生物多様性を保ち、淡水資源を保全する役割も果たしている。のちの研究では、生物圏を維持するための森林として、アマゾン川・コンゴ川流域・東南アジアの熱帯雨林の85%、北方林の85%、温帯林の50%を保全する必要があるという提案が追加された[47]。しかし伐採が進んだため、2015年時点で元来の森林被覆のうち60%しか残っておらず、これを75%まで回復させる必要があると指摘されている[41]。持続可能な伐採とされている小規模な択伐も、積み重なると大規模な伐採よりも有害になる場合もある。樹木1本の伐採で平均30本が乾燥や土壌劣化などの有害な影響を受け、森林火災のリスクも高まる[53]。
このままのペースで開発が進んだ場合、2100年にはアマゾン地域の森林面積が減少して砂漠化が進むとする研究があり、残される森林面積の予測は28%から10%まで幅がある。先進国が資金を提供して熱帯雨林を守るプロジェクトとして、森林減少・劣化からの温室ガス排出削減(REDD+)が開始された[54]。
グローバルな淡水利用
[編集]淡水利用の指標は、流水資源の消費を年間4000万立方キロメートル以下に抑えることとされる[52]。淡水消費の92%は農業が占めており、生態系の崩壊を避けるために、灌漑などの方法で河川や帯水層を開発しないことが必要となる[56][52]。また、世界の各河川の限界値も計算され、それぞれの河川が保持すべき最小限の水量も提案されている[33]。
河川の淡水利用が増加したため、世界の河川の25%が海に到達していない。アラル海やチャド湖などの湖では淡水利用によって水位の減少が起きている[41]。淡水利用の増加は、淡水種の生物の生息域の減少につながっており、淡水種の30%に絶滅の可能性がある[57]。温暖化による氷河の減少は、山岳地の水不足の原因となっており、人口氷河や、山を白く塗って温度を下げる試みによって水資源の確保が行われている[58]。淡水が少ない土地では、帯水層から地下水を汲み上げて使っているが、帯水層の中には数千年前に形成された枯渇性の水資源もある。こうした水は化石水と呼ばれており、取り尽くすと補充できない[注釈 7][60]。
直接的な利用に加えて、水を使って作られる財やサービスも重要となる。輸入する食品に水が使われていれば、国境を越えて間接的に水が取引されていることを表す。こうした水はバーチャルウォーターと呼ばれる[56]。たとえば日本では食料自給率が低く、木材も大量に輸入している。このため水の消費量は国内の570億立方メートルに対して、国外の農産物関連は640億立方メートル、木材は471億立方メートルあり、国外の消費量が国内の2倍近くとなる[61][62]。アメリカで消費される水の80%は国内だが、20%は中国の長江の水となっている[注釈 8][56]。
成層圏オゾン層の破壊
[編集]成層圏オゾン層は紫外線を遮断する効果があり、オゾン層の破壊は生物への健康被害となる。指標では、オゾン層濃度は産業革命前と比較した損失を5%以下に抑えることとされている。損失が5%を上回ると、オゾンホールが毎年極地に出現する可能性が高くなる[52]。
大気エアロゾルの負荷
[編集]炭素粒子・硝酸塩・硫酸塩などによる大気汚染が問題とされているが、明確な指標が定められていない[64]。
大気汚染の明確な指標はないが、イギリスで石炭利用が進んだ17世紀から問題とされてきた。17世紀には建築物の腐食、肺結核や風邪の増加が起き、18世紀には酸性雨が始まった。このため大気中の二酸化炭素・塩素・硫黄・アンモニアを測定する公害観測が始まった[5]。19世紀以降は排出ガスが国境を越えた酸性雨の原因にもなり、1972年に初の環境問題の国際会議である国際連合人間環境会議設立のきっかけとなった[注釈 9][66]。
21世紀に入ってからは中国やインドの都市部で大気汚染が深刻になっており、2015年の大気汚染による死亡者は900万人で、最多の国はインドの250万人だった[67]。OECDの調査によれば、大気汚染による死者は2050年までに汚水や不衛生環境による死者よりも多くなるとされている。また、燃焼で発生した微粒子は太陽光を吸収して温暖化を加速させ、寒冷地で堆積すると氷解を促進し、植物にとっては光合成の制約になる[68]。
化学物質による汚染
[編集]重金属・有機化学物質・放射性物質などの有害物質による生物圏の汚染が問題とされる。明確な指標が定められていない[64]。
指標はないものの、化学物質の汚染は以前から問題とされてきた。生物学者のレイチェル・カーソンは、著書『沈黙の春』(1962年)において問題提起をしている。しかし、当時は全地球的なデータが存在しなかったため、保守的な政治家、エコノミスト、ビジネスリーダーらは人類が環境を変えた証拠はないと主張して問題の存在を認めなかった[69]。
不可逆的な変化
[編集]限界点を超えた場合、環境に不可逆的な変化が起きると予測されている。これをレジームシフト(均衡状態の移行)とも呼ぶ[70]。地球システムは、自己制御のプロセスが2段階になっている。第1段階では変化に対して生物学的・物理的・化学的プロセスが負のフィードバックとして働き、もとの状態に戻ろうとする。この負のフィードバックは回復力とも表現される。しかし限界を超えて第2段階になると、負のフィードバックが働かず、温暖化や寒冷化など別の均衡状態へと移行し、後戻りができなくなる[71]。
気候変動
[編集]北極の温暖化が限界点を超えた場合、海氷が解ける現象が自己加速する。海氷がなくなった海面は氷がある状態よりも色が暗くなるため、太陽放射からより多くの熱を吸収する。地球全体で気候の調節機能が影響を受け、農業や漁業など生業への被害、疫病、生活様式が変化する[70]。
すでに限界点を超えている二酸化炭素濃度については、二酸化炭素が海洋に吸収されて酸性化を起こしており、正確な予測が困難なものもある[72]。海洋は温暖化によってより多くの二酸化炭素を吸収し、酸性化が進む。海面上昇は沿岸の海岸侵食、インフラストラクチャーへの被害も起こす[70]。
12万年前は現在より気温が2度高く、当時の海面は4メートルから8メートル高かった。仮に同様の海面上昇が起きた場合、モルディブやキリバスなどの島嶼部の国家は国土を喪失し[72]、ニューヨーク、シドニー、東京など沿岸部の都市は維持が困難となる[73][74]。
生物多様性の損失
[編集]生態系においても不可逆的な変化が起きている。ブラジルの熱帯雨林は伐採によって湿度が減少してサバンナが拡大し、新しい状態への固定化が進んでいる。硬質サンゴの生態系が崩壊すると、軟質サンゴや岩礁に変化する。海洋無酸素事変も起きている。変化は急激な場合もあり、沼沢地や川に窒素やリンを含む廃水が流されると急激な無酸素化や藻類の大発生が起きる[75]。サンゴ礁をはじめ海洋の生態系では、エルニーニョ現象などへの抵抗力が弱まる。サンゴ礁の崩壊や過剰な漁獲は生物多様性や漁業に悪影響を与える[70]。
生物地球化学的循環
[編集]農業と都市生活からの窒素やリンの過剰な排水が淡水システムに影響を与える。地下水、湖、湿地、河川では富栄養化によって無酸素化が起きる。水質の低下は漁業、飲料水、健康への被害につながる[70]。
土地利用変化
[編集]土地利用の増加は、温暖化とともに乾燥化を進める。森林の減少は水循環の喪失をまねき、雨量の減少、サバンナの自己乾燥の悪化、草原の砂漠化などを起こす。乾燥化や砂漠化は農業や牧畜業に影響を与え、食糧安全保障への悪影響、紛争増加の可能性がある[70]。
政治・経済
[編集]経済的コスト
[編集]プラネタリー・バウンダリーを超えないことによって、人類は環境から経済的な恩恵を受けてきた。生態系が変化すると、それは損失へと変化する。世界経済の規模は約75兆USドルだが、2007年から2011年にかけて約20兆USドルに相当する生態系サービスを失っている。この生態系サービスとは淡水や土壌の質、木材の価値など直接的なサービスを指しており、自然を保全するための間接的なサービスは含まれておらず、実態はさらに多額にのぼる。仮に企業がこうしたサービスに対価を払うとすると、世界経済の純生産額は27%減少する[注釈 10][76]。
気候変動による経済的損失は世界各地で起きており、毎年の環境災害による損害を金額に換算すると1500億USドルにのぼる[注釈 11][76]。
不平等
[編集]気候変動の対策として、2030年までに25%の温室効果ガスを削減し、気温上昇を1.5度未満に抑えることがパリ協定(2015年)で決定された。しかし温室効果ガスは主に富裕国で排出されており、深刻な影響を受けるのは技術や資金が不足する途上国となる[77]。地域による不平等の他に、所得層による不平等がある。富裕層ほどエネルギー消費が多くなるために排出量も増えることが複数の研究で判明しており、平均的には所得が10%増えると炭素排出量は9%増える。世界で最も排出量が多い上位10%の所得層は排出量の50%を占め、最も排出量が少ない50%の所得層は排出量の10%にとどまる。このため、富裕国および富裕層により大きな責任があるとされる[78]。
政策提案
[編集]プラネタリー・バウンダリーにもとづき、ロックストロームらは以下の提案を行った[79]。
- 地球上の安全な機能空間の規制:生物多様性の損失をゼロとし、地球温暖化を2度以内に抑えることなどを目的として世界的に規制をする[79]。
- 生物物理学的な余地空間を公平に分配する方法についての合意:炭素排出、土地利用、淡水利用、窒素とリン排出についての配分を合意する。森林の保全や生物多様性を食い止める点についても合意する[79]。
- 政策的手段とガバナンスのあり方に多様性を許容する:市民運動、提携・誓約、アクティヴィズムなどのボトムアップの活動と、国や地域のガバナンスなどのトップダウンの活動をともに発展すること[79]。
- 国内総生産(GDP)とは異なる成長と進歩に関する新しい基準を設定する:進歩を図る新しい指標と環境志向の経済発展の概念を構築する[79]。
- 対応能力の開発への投資:途上国への自由な技術移転と、新たな技術革新を本格化するための必要な投資を含む[注釈 12][79]。
持続可能な開発目標(SDGs)の策定において、国連オープンワーキンググループ(OWG)が2013年から2014年に草案をまとめ、プラネタリー・バウンダリーの概念も反映された[注釈 13][43]。
映像作品
[編集]- 『地球の限界: 私たちの地球の科学』(2021年)
Netflixのドキュメンタリー。原題は『Breaking Boundaries: The Science of Our Planet』。ロックストロームやデイビッド・アッテンボローが出演した[81]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 論文の原題は「A Safe Operating Space for Humanity」[6]。
- ^ ロックストロームは、当初の失敗を次のように回想している。「『事実を目の前にすれば人は正しい決断を下す』と考えることがいかに素朴すぎるか、私にとって痛いほどはっきりした。大多数の人が自分に関わりがあると感じ、何かを信じる場合にのみ、社会の大きな変化が起こる。(中略)それは感情と思考の両面から起こることが必要だった」[10]。
- ^ 書籍の原題は『The Human Quest: Prospering within Planetary Boundaries』[12]。
- ^ 二酸化炭素濃度と放射強制力は2015年時点で連動している。ただし、大気は温室効果ガスと冷却化物質が混じり合う複雑な状態にあるため、つねに連動する保証はない[34]。
- ^ 雲の高さや面積などによって、温暖化への影響が異なる。たとえば高い雲は地球を暖める傾向があり、低い雲は地球を冷やす傾向がある[36]。
- ^ 絶滅した頂点捕食者であるオオカミを他の土地から再導入して生態系を回復した例として、1995年のイエローストーン国立公園の試みがある[40]。
- ^ インドでは灌漑に使う化石水が世界最大であり、将来の農業への影響が懸念されている[59]。
- ^ 環境省のサイトで、バーチャル・ウォーターの計算ソフトが公開されている。製作はNPO法人日本水フォーラムによる[63]。
- ^ 霧の都とも呼ばれるロンドンでは冬のスモッグが有名であり、ロンドンスモッグ(1952年)によって1万人以上が死亡する事件も起きた[65]。
- ^ 2014年の調査による[76]。
- ^ オーストラリアでは2000年から2012年の12年間の旱魃で40億USドルの損害となった。2012年のハリケーン・サンディによって、ニューヨーク市は190億USドルの損害となった[76]。
- ^ 新たな技術革新について、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエリク・ブリンジョルフソンとアンドリュー・マカフィーは「第二の機械時代」と呼んでいる[80]。
- ^ SDGsの議論は、国際連合事務総長の潘基文が設置した地球の持続可能性に関する上級会合(GSP)から始まっている。OWGは、政府間協議プロセスとして活動した[43]。
出典
[編集]- ^ 環境省 (2018年6月5日). 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書. 環境省
- ^ 国連環境計画編 青山益夫訳 (2015). 『GEO5 地球環境概観 第5次報告書 上巻』. 一般社団法人 環境報告研. pp. 207-208,5,23,103,111,119,128,206
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 165–167.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 59.
- ^ a b 工藤 1975.
- ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 2.
- ^ a b ロックストローム, クルム 2018, pp. 2–3.
- ^ Rockström, Johan m. fl. (2009). “=Planetary Boundaries: Specials,”. Nature.
- ^ Editorial, Nature 2009
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 4.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 3.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 5.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 5–6.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 68–72.
- ^ a b c ロックストローム, クルム 2018, pp. 70–72.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 69.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 88.
- ^ Steffen, Rockström & Costanza 2011.
- ^ Rockström, Steffen & 26 others 2009; Stockholm Resilience Centre 2009.
- ^ Recent Mauna Loa CO2 Earth System Research Laboratory, NOAA Research.
- ^ Allen 2009; Heffernan 2009; Morris 2010; Pearce 2010, pp.34-45, "Climate change".
- ^ Allen 2009.
- ^ Samper 2009; Daily 2010; Faith & others 2010; Friends of Europe 2010; Pearce 2010, p.33, "Biodiversity".
- ^ Schlesinger 2009; Pearce 2009; UNEP 2010, pp.28-29; Howarth 2010; Pearce 2010, pp.33-34, "Nitrogen and phosphorus cycles".
- ^ Schlesinger 2009; Carpenter & Bennett 2011; Townsend & Porder 2011; Ragnarsdottir, Sverdrup & Koca 2011; UNEP 2011; Ulrich, Malley & Voora 2009; Vaccari 2010.
- ^ Brewer 2009; UNEP 2010, pp.36-37; Doney 2010; Pearce 2010, p.32, "Acid oceans".
- ^ Bass 2009; Euliss & others 2010; Foley 2009; Lambin 2010; Pearce 2010, p.34, "Land use".
- ^ Molden 2009; Falkenmark & Rockström 2010; Timmermans & others 2011; Gleick 2010; Pearce 2010, pp.32-33, "Fresh water".
- ^ Molina 2009; Fahey 2010; Pearce 2010, p.32, "Ozone depletion".
- ^ Pearce 2010, p.35, "Aerosol loading".
- ^ Handoh & Kawai 2011; Handoh & Kawai 2014; Pearce 2010, p.35, "Chemical pollution".
- ^ USGCRP 2009.
- ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 73.
- ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 76.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 29–31.
- ^ 杉山 2011, p. 15.
- ^ 杉山 2011, pp. 15–17.
- ^ “国連報告書が世界に「警告」:100万種の生物が絶滅の危機に”. 国際連合広報センター. (2019年5月10日) 2021年4月21日閲覧。
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 76–77.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 131-132.
- ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 80.
- ^ ウォルフ 2016, pp. 114–121.
- ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 165.
- ^ 矢ケ崎 1995.
- ^ 川田 1991, pp. 45–46.
- ^ “マメ科植物と共生する根粒菌の多様性を解明 -持続可能な農業への応用に期待-”. 国立大学法人千葉大学. (2019年7月26日) 2021年4月8日閲覧。
- ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 78.
- ^ Gruber, Sarmiento & Stocker 1996.
- ^ Stockholm Resilience Centre 2009.
- ^ Brewer 2009
- ^ ヴィンス 2015, pp. 206–207.
- ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 77.
- ^ ヴィンス 2015, p. 350.
- ^ ヴィンス 2015, pp. 347–348.
- ^ Palaniappan & Gleick 2008.
- ^ a b c ヴィンス 2015, pp. 126–127.
- ^ ヴィンス 2015, p. 90.
- ^ ヴィンス 2015, pp. 71–78.
- ^ ヴィンス 2015, pp. 142.
- ^ ヴィンス 2015, pp. 142, 262.
- ^ 沖 2008, pp. 69–70.
- ^ 渡邉, 沖, 太田 2009, pp. 127–128.
- ^ “仮想水計算機”. 環境省 2021年4月8日閲覧。
- ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 72.
- ^ 溝口 1998.
- ^ 藤田 1998.
- ^ バナジー, デュフロ 2020, p. 4811/8512.
- ^ ヴィンス 2015, p. 48.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 61.
- ^ a b c d e f ロックストローム, クルム 2018, pp. 48–49.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 53.
- ^ a b ヴィンス 2015, p. 188-189, 214-215.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 89.
- ^ “海面上昇の影響について”. 全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA) 2021年4月8日閲覧。
- ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 92–93.
- ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 129.
- ^ バナジー, デュフロ 2020, p. 4518-4526/8512.
- ^ バナジー, デュフロ 2020, p. 4544-4551/8512.
- ^ a b c d e f ロックストローム, クルム 2018, p. 153.
- ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 151.
- ^ Breaking Boundaries - IMDb
参考文献
[編集]- ガイア・ヴィンス 著、小坂恵理 訳『人類が変えた地球: 新時代アントロポセンに生きる』化学同人、2015年。(原書 Gaia Vince (2014), Adventures in the Anthropocene: A Journey to the Heart of the Planet We Made, Penguin Books)
- デヴィッド・W・ウォルフ 著、長野敬, 赤松眞紀 訳『地中生命の驚異 - 秘められた自然誌』青土社、2016年。(原書 Wolfe, David W. (2001), Tales From The Underground: A Natural History Of Subterranean Life)
- 沖大幹「バーチャルウォーター貿易」『水利科学』第52巻第5号、日本治山治水協会、2008年、61-82頁、2021年4月3日閲覧。
- 川田順造『サバンナの博物誌』筑摩書房〈ちくま文庫〉、1991年。
- 工藤雄一「公害法 (一八六三年アルカリ工場規制法) の成立 : イギリス公害史研究の一階梯」『社会経済史学』第40巻第6号、社会経済史学会、1975年、576-606頁。
- 杉山昌広『気候工学入門 - 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング』日刊工業新聞社、2011年。
- アビジット・V・バナジー; エステル・デュフロ 著、村井章子 訳『絶望を希望に変える経済学 - 社会の重大問題をどう解決するか』日経BP(Kindle版)、2020年。(原書 Abhijit Vinayak Banerjee; Esther Duflo (2019), Good Economics for Hard Times, PublicAffairs)
- 福士正博「持続可能な消費 : 二つのバージョン(完) (橋谷弘教授退任記念号)」『東京経大学会誌. 経済学』第297巻、東京経済大学経済学会、2018年2月、217-237頁、ISSN 1348-6403、NAID 120006399822、2021年8月31日閲覧。
- 藤田慎一「東アジアの酸性雨:ー問題の経緯, 研究の現状, 今後の課題ー」『水利科学』第42巻第2号、日本治山治水協会、1998年6月、1-24頁、doi:10.20820/suirikagaku.42.2_1、ISSN 0039-4858、NAID 130007603276、2021年8月31日閲覧。
- 溝口次夫「環境問題へのアプローチ:過去, 現在, 未来」『佛大社会学』第22巻、佛教大学社会学研究会、1998年1月、141-146頁、ISSN 03859592、NAID 110009556594、2021年4月3日閲覧。
- 矢ケ崎典隆「南北アメリカにおける先住民の農業様式と地域生態」『横浜国立大学人文紀要. 第一類, 哲学・社会科』第41号、横浜国立大学、1995年10月、41-65頁、ISSN 05135621、NAID 110005858466、2021年4月3日閲覧。
- ヨハン・ロックストローム; マティアス・クルム 著、谷淳也, 森秀行 訳『小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』丸善出版、2018年。(原書 Johan Rockström, Mattias Klum (2015), Big World Small Planet - Abundance within Planetary Boundaries, Yale University Press)
- 渡邉悟, 沖大幹, 太田猛彦「木材の輸入に伴う仮想水(バーチャルウォーター)の算定」『水利科学』第53巻第5号、日本治山治水協会、2009年12月、119-132頁、doi:10.20820/suirikagaku.53.5_119、ISSN 0039-4858、NAID 130006026426、2021年4月3日閲覧。
関連文献
[編集]- 『「現代思想」2017年12月号 人新世 ―地質年代が示す人類と地球の未来―』青土社、2017年。
- 嘉田由紀子 編『水をめぐる人と自然』有斐閣〈有斐閣選書〉、2003年。
- 寺田匡宏, ダニエル・ナイルズ 編『人新世を問う - 環境、人文、アジアの視点』京都大学学術出版会、2021年。
- 寺田匡宏, ダニエル・ナイルズ『人新世(アンソロポシーン)をどう考えるか』。
- デイビッド・ファリアー 著、東郷えりか 訳『FOOTPRINTS(フットプリント) 未来から見た私たちの痕跡』東洋経済新報社、2021年。(原書 David Farrier (2020), Footprints: In Search of Future Fossils, Fourth Estate)
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Figures and data for the updated Planetary Boundaries can be found at the Stockholm Resilience Centre website.
- Planetary Boundaries: Specials Nature, 24 September 2009.
- Johan Rockstrom: Let the environment guide our development TED video, July 2010. Transcript html
- Planetary boundaries: what are the limits of the earth? - podcast The Guardian, 30 January 2013.
- The Planetary Boundaries and what they mean for the Future of Humanity - YouTube