「アルデバラン」の版間の差分
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2021年5月6日 (木) 12:56時点における版
アルデバラン[1] Aldebaran[2][3] | ||
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アルデバラン(画像中央の星)
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仮符号・別名 | おうし座α星[4] | |
星座 | おうし座 | |
見かけの等級 (mv) | 0.86[4] 0.75 - 0.95(変光)[5] | |
変光星型 | 脈動変光星(LB)と推測[5] | |
分類 | 橙色巨星 | |
位置 元期:J2000.0[4] | ||
赤経 (RA, α) | 04h 35m 55.23907s[4] | |
赤緯 (Dec, δ) | +16° 30′ 33.4885″[4] | |
赤方偏移 | 0.000181[4] | |
視線速度 (Rv) | 54.26km/s[4] | |
固有運動 (μ) | 赤経: 63.45 ミリ秒/年[4] 赤緯: -188.94 ミリ秒/年[4] | |
年周視差 (π) | 48.94 ± 0.77ミリ秒[4] (誤差1.6%) | |
距離 | 67 ± 1 光年[注 1] (20.4 ± 0.3 パーセク[注 1]) | |
絶対等級 (MV) | -0.7[注 2] | |
アルデバランの位置
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物理的性質 | ||
半径 | 44.2 ± 0.9 R☉[6] | |
質量 | 1.5 ± 0.3 M☉[7] | |
表面重力 | 1.59 (log g)[8] | |
自転周期 | 643 日[9] | |
スペクトル分類 | K5III[4] | |
光度 | 518 ± 32 L☉[8] | |
表面温度 | 3,910 K[8] | |
色指数 (B-V) | +1.54[10] | |
色指数 (U-B) | +1.90[10] | |
色指数 (R-I) | +0.94[10] | |
金属量[Fe/H] | -0.34[8] | |
年齢 | 66 ± 24 億年[11] | |
他のカタログでの名称 | ||
おうし座87番星[4] Parilicium, Cor Tauri BD +16 629[4] FK5 168[4] HD 29139[4] HIP 21421[4] HR 1457[4], SAO 94027[4] LTT11462[4] |
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■Template (■ノート ■解説) ■Project |
おうし座α星 B[12] α Tau B[12] | ||
---|---|---|
見かけの等級 (mv) | 13.6[12] | |
分類 | 赤色矮星 | |
位置 | ||
赤経 (RA, α) | 04h 35m 57.21s[12] | |
赤緯 (Dec, δ) | +16° 30′ 21.7″[12] | |
固有運動 (μ) | 赤経: 64 ミリ秒/年[12] 赤緯: -191 ミリ秒/年[12] | |
絶対等級 (MV) | 11.98[要出典] | |
物理的性質 | ||
半径 | 0.04 R☉[要出典] | |
質量 | 0.15 M☉[要出典] | |
スペクトル分類 | M2V[12] | |
光度 | 0.00014 L☉[要出典] | |
表面温度 | 3,050 K[要出典] | |
他のカタログでの名称 | ||
BD +16 629B[12], GJ 171.1 B[12],GJ 9159 B[12] HD 29139 B[12] |
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■Template (■ノート ■解説) ■Project |
アルデバラン[1][13] (Aldebaran[2][3])、またはおうし座α(アルファ)星は、おうし座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。
惑星探査機パイオニア10号は現在、おおよそ、アルデバランの方向へ飛行を続けているが、アルデバランに最接近するのは約200万年後と考えられている[14]。
観測の歴史
西暦509年の3月11日、ギリシアのアテネで、月によるアルデバランの星食(掩蔽)が観測された[15]。1718年にイギリスの天文学者エドモンド・ハレーがその星食の記録を調べていると、アルデバランが数分、北に移動している事を発見した。よって、ハレーは恒星が長い年月をかけて移動していると結論付けた。これは固有運動と呼ばれ、後にシリウスとアークトゥルスでもそれが確認された。現在では、アルデバランは過去2000年間の間に、7分移動しており、これは満月の4分の1に相当する[16][17]。また、1年間に0.2秒角の速度で南南東に動いており、秒速54 kmで太陽系から遠ざかっていることが分かっている。
イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは、1782年にアルデバランから117秒離れた位置に11等の伴星らしき天体を発見した[18]。また、1888年にシャーバーン・バーナムは31秒離れた位置にある14等級の恒星とアルデバランを二重星として観測した。後の固有運動の測定から、ハーシェルが発見した恒星は、アルデバランと重力的に結合していない、見かけ上の二重星だと判明した。しかし、バーナムが発見した恒星は、アルデバランとほぼ同じ固有運動である事が判明し、アルデバランとは真の連星である事が示唆された[19]。
1864年に、イギリスのTulse丘にある民間天文台で働いていたウィリアム・ハギンズは、最初のアルデバランのスペクトルの観測を行った。その結果、鉄、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの9つの成分が検出された。1886年、ハーバード大学天文台で観測を行っていたエドワード・ピッカリングは、写真乾板を使って、アルデバランのスペクトルから、50本の吸収線を捉えた。この結果は、1890年に出版された天体カタログ『Draper Catalogue of Stellar Spectra』(後に出版されるヘンリー・ドレイパーカタログの前身に相当) の一部となった。1887年の時点で、スペクトルのドップラーシフトの大きさから恒星の視線速度を測定できるまでに撮影技術は進歩していた。これを用いて、ヘルマン・カール・フォーゲルとその助手J・シャイナーによってポツダム天体物理天文台で行われた観測より、アルデバランの後退速度が 48 km/s と推定された[20]。
アルデバランの角直径は1921年にウィルソン山天文台のフッカー望遠鏡に備えられている干渉計を使って、初めて測定された。その角直径は0.0237秒で、それまでの推定値とほぼ一致していた[21]。
特徴
アルデバランは、スペクトル型K5III型に属する。これは、橙色に輝く巨大な恒星である事を示しており、すでに主系列星の段階を終えている。ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)上でも、主系列の範囲から外れている。アルデバランが橙色をしているのは、核融合の燃料となる水素を使い果たして主系列星から赤色巨星に移行しているからであり、現在はヘリウムを核融合させている段階である。そのヘリウムが凝縮される事によって、外側の水素が外側に膨張しており、現在、アルデバランは太陽半径の44.2倍まで膨張している[6][22]。これは約6,100万kmに相当する。
ヒッパルコス衛星によって測定された年周視差の値に基づくと、アルデバランまでの距離は約65.3光年(約20パーセク)となる[23]。質量は、太陽質量の約50 %の誤差がある。光度は太陽光度の518倍にもなる変光星であり、肉眼で変光を確認するのは難しい。しかし、光電測光を用いなくても写真観測で僅かに変光するのが分かる。LB型の脈動変光星であり、0.75等から0.95等までわずかに明るさを変える[5]。赤外線で観測したJバンドでの視等級は-2.1等で、これはベテルギウス(-2.9等)、かじき座R星(-2.6等)、アークトゥルス(-2.2等)に次いで明るい[24]。
可視性
アルデバランは、夜空の中でも、見つけるのが最も簡単な恒星の1つである。オリオン座γ星からプレアデス星団の中間に位置する。オリオン座の真ん中に並んでいる3つの星を、東から西に結んで延長していくと、最初に突き当たる明るい星がアルデバランである。
地球から見ると、アルデバランのすぐ傍に散開星団のヒアデス星団が見える。双眼鏡でアルデバランを見ると、周囲にたくさんの星が輝いていて大変美しい。ヒアデス星団までの距離はアルデバランまでの倍以上の、約150光年とされているため、アルデバランはヒアデス星団のメンバーではなく、偶然重なっているように見えるだけだとされている。
黄道のすぐそばにあるため、毎年5月下旬から6月上旬には太陽がすぐそばを通り、この頃は地上からは全く観測することができない。同じように、惑星や月も頻繁にそばを通過する。時には月に隠されてしまう星食が起きることもある。1等星のなかで、月に隠されることがある恒星は、他にレグルス、スピカ、アンタレスがある。2015年1月29日から2018年9月3日までに49回、月による星食が起きる[25]。北半球の中緯度地域では、12月上旬頃には、ほぼ一晩中アルデバランを観察することができる。また、春の夕方や、秋の明け方にも見えることができる。逆にオーストラリアや南アフリカでは、アルデバランの星食を観測する事は決して無い。アルデバランの直径は1978年9月22日の星食中に測定された[26]。合は毎年6月1日である[27]。
二重星
アルデバランの周りには、5つの恒星が発見されている。これらは、アルデバランを「おうし座α星A」として、便宜上のアルファベットでの名前がつけられている。これらのデータの一覧を下に記す。
アルファベットでの名称 | 視等級 | 分離角 | 位置角 | 調査年 |
---|---|---|---|---|
B | 13.60 | 31.60″ | 113° | 2007 |
C | 11.30 | 129.50″ | 32° | 2011 |
D | 13.70 | ? | ? | ? |
E | 12.00 | 36.10″ | 323° | 2000 |
F | 13.60 | 255.70″ | 121° | 2000 |
いくつかの調査では、おうし座α星Bは、先述の通り、固有運動がアルデバランとほぼ一致しているため、物理的にも連星である可能性が高い。しかし、これらの恒星は、アルデバランが非常に明るいせいで、観測が困難である。観測結果にも誤差が大きく、アルデバランとの物理的関係を確立する事が出来ない。今のところ、Bや他の恒星が、アルデバランと物理的に関連している事は明確に示されていない[29]。
CとDは連星を成しており、互いの恒星を公転しあっている。この連星は、アルデバランよりも遠くにあるヒアデス星団のメンバーである可能性があり、その場合、アルデバランとは全くの無関係になる[18]。
名称
学名はα Tauri(略称はαTau)[4]。これは、「おうし座α星」という意味で、バイエル符号に基づく命名である。アルデバランという名前は、アラビア語のアッ・ダバラーン(الدبران ; ad-dabarān、ad は定冠詞 al の連接形)に由来する[2]。これは、「後に続くもの」という意味であり、アルデバランが東の地平線から昇ってくるときに、プレアデス星団の後に続いて昇ってくることからの命名である[2][1]。
2016年に国際天文学連合(IAU)は、恒星に関するワーキンググループ(WGSN)を組織した[30]。2016年6月30日に、ワーキンググループは、Aldebaran をおうし座α星Aの固有名として正式に承認した[31]。現在、アルデバランはワーキンググループが正式に承認した恒星の固有名の一覧にリストアップされている[3]。
他言語での名称
- ペルシアでは、Tascheterと呼ばれていた。
- ギリシアでは、Paliliciumと呼ばれていた。
- ポルトガルでは、Olho de Touroと呼ばれていた。
- 中世のヨーロッパでは、コル・タウリ(Cor Tauri)とも呼ばれており、これはラテン語で「牡牛の心臓」という意味である。現代英語では一般的にAldebaran (アルデバラン)、Alpha Tauri (アルファ・タウリ) と呼ばれる[32]。
- 日本では、後星(あとぼし)、統星の後星(すばるのあとぼし)、統星の尾の星などという、アラビア語と同じ発想の名前が見られる[34]。また、赤星という、色に着目した名前もある[1]。→「アルデバラン(おうし座)の方言」も参照
神話
肉眼でも簡単に観測出来るアルデバランは古代、現代においても、様々な神話でモデルとなっている。
- メキシコ: メキシコ北西部に居住するセリ族では、この星は7人の子(プレアデス星団を指す)を産んだ母として崇められている。Hant Caalajc Ipápjö、Queeto、そして、Azoj Yeen oo Caapという3つの名称で呼ばれている[35]。
- アボリジニ文化: オーストラリアのニューサウスウェールズ州北西部に居住しているアボリジニでは、この星は、別の男の妻を盗んだ先祖、Karambal とされている。盗まれた妻の夫は、彼を追いかけ、彼が隠れていた木を燃やした。そして、彼は煙となり、空にアルデバランとなって輝いていると伝えられている[36]。
惑星系
1993年、アークトゥルスとポルックスと共に視線速度の観測が行われた。その結果アルデバランの視線速度の有意な変動が検出された。伴星が存在することによるケプラー運動が視線速度の変動の原因だと解釈した場合、アルデバランAから約 2 au (約3億 km) 離れた距離を643日で公転している、下限質量が木星の11.4倍の惑星か褐色矮星が存在する可能性があるとされた[37]。調査した3つの恒星全てに、何かしらの天体が存在することを示唆する観測結果が得られた。ただしこの観測を報告した研究者らは、惑星か褐色矮星の低質量の天体が存在する可能性を否定はしなかったものの、視線速度の変動は恒星固有の、自転によるものか非動径方向の脈動によって引き起こされている可能性が高いと結論付けた[37]。
その後の2015年の観測では、長周期で公転する惑星と恒星活動の両方の存在を示す兆候が存在することが報告された[11]。ただし太陽系外惑星エンサイクロペディアではアルデバランbの発見報告は Controversial (論争中) となっており、発見が確定した系外惑星としては扱われていない[38]。また2019年のさらなる視線速度の観測データを加えた再解析では、視線速度の変動は惑星の公転ではなく恒星自身の振動に由来するものである可能性が指摘され、アルデバランbの存在には否定的な結果も報告されている[39]。またこの再解析では、2つ目の惑星 (アルデバランc[40]) が存在する可能性を考慮した解析も行われた[39]。この解析を行った著者らは、1つもしくは複数の惑星が存在する可能性は完全に否定はできないものの、恒星の対流に起因する振動である可能性が高いことを指摘している。なお2つの惑星が存在する場合、アルデバランcの公転周期は772.83日となる[39]。
名称 (恒星に近い順) |
質量 | 軌道長半径 (天文単位) |
公転周期 (日) |
軌道離心率 | 軌道傾斜角 | 半径 |
---|---|---|---|---|---|---|
b (未確認) | ≥6.47 ± 0.53 MJ | 1.46 ± 0.27 | 628.96 ± 0.9 | 0.1 ± 0.05 | — | — |
c (未確認) | — | — | 772.83 ± 4.34 | 0.09 ± 0.08 | — | — |
占星術
占星術では、アルデバランは富と幸福の前兆となる幸運の星だと考えられてきた。ペルシア人にとっては、紀元前3000年頃から、アンタレス、フォーマルハウト、レグルスと並んで、ロイヤル・スター(王家の星)の1つだった。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、219-220頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
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