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'''営団08系電車'''(えいだん08けいでんしゃ)は、[[2003年]]([[平成]]15年)[[1月7日]]に営業運転を開始した<ref>ネコ・パブリッシング「レイルマガジン」2003年4月号News Scramble 125頁「営団08系営業開始!」 同誌によれば当時の69S運用より営業運転を開始した。</ref> [[帝都高速度交通営団]](営団)の[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]である。[[2004年]](平成16年)4月の営団民営化にともない、[[東京地下鉄]](東京メトロ)に継承された。[[東京メトロ半蔵門線|半蔵門線]]用の車両である。



2021年3月21日 (日) 05:20時点における版

営団地下鉄08系電車
乗り入れ先の東急田園都市線を走る08系(2018年5月11日)
基本情報
運用者
製造所 日本車輌製造
製造年 2002年 - 2003年
製造数 6編成60両
運用開始 2003年1月7日
投入先 半蔵門線東急田園都市線東武伊勢崎線東武日光線
主要諸元
編成 10両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V 架空電車線方式
最高運転速度
  • 80 km/h(半蔵門線内)
  • 110 km/h(東急線内)
  • 100 km/h(東武線内)
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 1,500(座席522)人
車両定員
  • 先頭車141(座席48)人
  • 中間車152(座席54)人
  • 車いすスペース付中間車153(座席51)人
自重 21.5 - 32.1 t
編成重量 269.6 t
全長
  • 20,240 mm(先頭車)
  • 20,000 mm(中間車)
全幅 2,780 mm
全高
  • 4,022 mm
  • 4,080 mm(パンタグラフ付き)
車体 アルミニウム合金
台車 モノリンク式ボルスタレス台車
ND-730形
主電動機 かご形三相誘導電動機
主電動機出力 定格出力 165 kW × 4基
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 87:14=6.21
制御方式 VVVFインバータ制御
制御装置 三菱電機IPM方式インバータ(IGBT素子
制動装置 TRT-11型回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、保安、対雪ブレーキ付き
保安装置 新CS-ATCATC-P東武形ATS
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lift

営団08系電車(えいだん08けいでんしゃ)は、2003年平成15年)1月7日に営業運転を開始した[1] 帝都高速度交通営団(営団)の通勤形電車である。2004年(平成16年)4月の営団民営化にともない、東京地下鉄(東京メトロ)に継承された。半蔵門線用の車両である。

概要

2003年3月19日の半蔵門線の水天宮前 - 押上間の開業と東武鉄道伊勢崎線日光線との相互直通運転開始による必要編成数の増加に伴い、10両編成6本(60両)が日本車輌製造で製造された。営団地下鉄では最後の新製系列である。

本形式は「人や環境に快適でやさしい車両」をテーマに設計した。また、2000年(平成12年)3月に発生した日比谷線脱線衝突事故を踏まえ、車体構造の見直し、安全性の向上を目的に改良を加えた新設計の台車を採用した[2]

東西線用の05N系が設計のベースとなっているが、細部に変更点がある。

外観

アルミニウムの無塗装車体に、半蔵門線のラインカラーの紫帯を巻く(前面のみ1色)。側面のラインカラーには紫色に加えて白・ピンクを加えてソフトなイメージとしている。車両床面高さは車椅子での乗降を考慮して8000系よりも60mm低い1,140mmとした。

前面デザインは、8000系のイメージを残したものとしている。ただし、全体的には05N系の縦曲線をベースにし、フロントガラスの四隅形状や下部の前照灯形状など角ばった直線性を強調したデザインを採用している。前照灯は四角形のHID尾灯は三角形のLEDである。現在は、前照灯はLEDのものに交換されている。スカートは、05N系に準じた形状のものを設置し、連結器は自動連結器である。

前面ガラスにはすべてグリーンの熱線吸収ガラスが使用され、いずれの窓上部には遮光フィルムが貼られている。前面には地下鉄線内におけるプラグドア式の非常扉と車内に非常階段を設置する。

前述した事故を教訓として、側構体を従来のシングルスキン構造からダブルスキン構造(セミダブルスキン構造)に変更し、車体強度の向上を図った[2]。合わせて車端部の隅柱を強化・三角形断面構造とし、側構体は戸袋部および下部構造を中空形材による二重構造とした[3]

これらの技術により、万が一衝突事故が発生した際には、相手車体が自車体へ侵入することを防止できるほか、衝撃により各構体が分離するのを防止することができ、事故の拡大を抑えることができる構造となっている[3]。そのほか、車体外板接合の一部には摩擦攪拌接合 (FSW) を採用し、外観見付けの向上を図った。側面屋根は張り上げ屋根構造となっている。

各車連結面に灰色の転落防止幌を装備する。ただし、4号車の妻面には誘導無線用のアンテナがあるためここにはステンレス製の板を巻く。

車内設備

車内は清潔感ある白を基調とし、床材はラベンダー色となっている。

  • 車椅子スペース:3・9号車
  • 弱冷房車:2号車
  • 座席モケットは、江戸紫をイメージした濃いめの紫色となっている。1人分の掛け幅が450mmの片持ち式バケットシートで、中間車の座席配置は3-7-7-7-3人掛けであり、7人掛け座席は3+4人にスタンションポールで区切られている。
  • 優先席の座席モケットは青色であり、この付近のつり革はオレンジ色である。
  • 客用ドアは車内も化粧板仕上げで、ドアガラスは複層ガラスである。連結面は各車貫通扉があり、妻窓も設置している。
  • 側窓は扉間は2連の下降式のユニット窓、車端部は固定窓である。カーテンはベージュ色、波線状の模様入りで、フリーストップ式を採用している。
  • 冷房の送風はラインフローファン方式で、補助送風機であるラインデリアは先頭車9台・中間車は10台設置している。
  • 2007年より10000系で採用された車内の非常通報器、号車札、消火器などの表記類を蓄光性のシールに交換している。
車内画像
車外の旅客へ
LED式種別・行先表示器を設置した。ゴシック体である前面運行番号表示器を除き明朝体で、前面・側面とも英字併記である。2014年度より3色LED式からフルカラー式に交換した。
車外案内用に車外スピーカーを搭載する。車掌による車外放送や押しボタンによる乗降促進放送「ドアが閉まります、ご注意ください」が流せる。
車内の旅客へ
客用ドア上部の2段式案内表示器
東急線・東武線に対応した自動放送装置が設置されている。この装置はマナーなどの啓発放送にも対応している。
各ドア上部にLED式案内表示器ドアチャイムを設置。この表示器は南北線用の9000系と同じく2段式表示式であったが、同系列とは異なり、鴨居部には埋め込まれず単体で設置されていた[注 1]。2014年以降は順次17インチワイド液晶表示器に更新され、ドアチャイムも変更された[注 2]

運転台

乗務員室は乗務員の居住性の拡大、乗務員室機器の操作性の向上・車内信号の視認性向上・前方視野の拡大を考慮して設計されたものである。

室内はクリーム色の配色、運転台計器盤は濃い灰色の配色としている。室内は乗務員の居住性確保のために線路方向に1,900mm確保されている。メインハンドルは8000系と同様形状のデッドマン装置付きT字形ワンハンドルマスコン[注 3]であり、計器盤には従来のブレーキ指示計に代わってノッチ位置を表示する灯が設置されている。

速度計は白地で最大120km/h表示であり、地下などでオレンジ色に電照する。この指針は2針あり、黒針は速度現示用、赤針は半蔵門線内におけるATC過走防護信号 (ORP) の制限速度を現示するためのものである。運転台前のフロントガラスのみ日除けカーテンがある。車掌スイッチは駅折り返し時に操作の不要な間接制御式(リレー式)を採用した。

運転台の右側には車両情報管理装置 (TIS) のモニター画面がある。TISでは制御伝送機能や搭載機器の動作監視のほか、サービス機器である自動放送装置・車内表示器や行先表示器の設定機能などがある。

乗務員室仕切りは、前面と同じような割合で左から大窓・仕切扉窓・小窓の3か所窓が設置されている。遮光幕は客室から向かって左側2枚で使用される。なお、最も右端の小窓には遮光幕はない。

主要機器

編成構成はMT比5M5T、VVVFインバータ制御装置は2レベル方式・ベクトル制御による1C4M1群/2群制御[注 4]である。乗り入れ先における高速性能を向上させるため、従来の営団車両の設計最高速度である110km/hから120km/hに向上させた。このために編成形態を5M5Tとし、主電動機は165kW品を採用、合わせて歯車比を6.21として高速性能の向上と主電動機の回転数を抑えることで車外騒音を低減させるものとした。

補助電源装置には東芝製のIGBT素子を使用した静止形インバータ (SIV) (出力240kVA)を搭載した。空気圧縮機 (CP) は三菱電機製のレシプロ式C-2500LB形を搭載する。CPの除湿装置には05N系8次車以降で実績のあるメンテナンスの容易な中空糸膜式除湿装置が採用されている。パンタグラフ剛体架線に対応した新造車両では初のシングルアーム式を採用しており、編成で5基搭載される。

冷房装置集中式の東芝製58.0kW(50,000kcal/h・形式RPU-15003形)の装置を搭載する。暖房装置は700W出力の座席下つり下げ式で、各座席下に7人掛け座席部では2台、車端部では1台を設置する。空調運転モードは「全自動」「除湿」「冷房」「暖房」と「送風」(ラインデリア)が可能である。

台車は、営団0系シリーズで従来から使われてきた住友金属工業製のSS台車ではなく、日本車輌製のND台車を装着する。ただし、同台車は東西線05系11次車以降に採用されているSS161タイプのものと同一設計品である。軸箱支持はモノリンク式でボルスタレス方式の台車である。基礎ブレーキは片押し式のユニットブレーキ方式を採用している。

この台車は従来のものと比べ、仕様を見直して急曲線における低速走行時の安全性向上、乗り心地の向上を目的に各種の安全対策を重点として製作したものである。さらに検修時における輪重調整作業の作業性の向上を図れるようになっている。これは従来、輪重調整作業には台車の分解作業が必要であったが、この台車では小形ジャッキの使用により在姿状態で調整を可能とした。

機器の画像
  • 東京地下鉄では左右側面の呼称方法として、08-100形の進行方向から見て、右側を1側、左側を2側と呼称する。

保安装置としてのATC装置は東京地下鉄用と東急用共用形で、信号周波数や機能を切り換えて両社に対応する。さらに東武ATS装置も搭載し、これらは「ATC/ATS」装置箱として両先頭車に搭載される。

編成

10両編成6本(60両)が鷺沼検車区に在籍する。8000系と共通に運用されている。8000系19本と08系6本の計25本のうち、最大22本(予備は3本)が運用されている。 2003年に入線した編成を含め、車内の銘板は全て「日本車輌 平成14年」である。

 
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
形式 08-
100形

(CT1)
08-
200形

(M1)
08-
300形

(M2)
08-
400形

(T)
08-
500形

(Mc1)
08-
600形

(Tc)
08-
700形

(T')
08-
800形

(M1)
08-
900形

(M2)
08-
000形

(CT2)
搭載機器   VVVF2 SIV
CP
BT
  VVVF1
CP
BT
    VVVF2 SIV
CP
BT
 
車両重量 (t) 23.7 31.3 32.1 21.6 30.8 21.5 21.5 31.3 32.1 23.7
車両番号 08-101

08-106
08-201

08-206
08-301

08-306
08-401

08-406
08-501

08-506
08-601

08-606
08-701

08-706
08-801

08-806
08-901

08-906
08-001

08-006
凡例
  • VVVF2:制御装置(1C4M2群)
  • VVVF1:制御装置(1C4M1群)
  • SIV:補助電源装置(静止形インバータ)
  • CP:空気圧縮機
  • BT:蓄電池

運用

渋谷駅から東京急行電鉄田園都市線に乗り入れて中央林間駅まで、押上駅から東武鉄道日光線の南栗橋駅と伊勢崎線の久喜駅まで直通運転を行っている。直通運転先(東急田園都市線中央林間 - 東武日光線南栗橋間)を含めた運行距離は98.5kmにも及ぶ。

臨時運用

2007年(平成19年)7月28日に、第5編成 (08-105F) が隅田川花火大会輸送用臨時列車「SUMIDA HA・NA・BI」号にも運用された。

脚注

注釈

  1. ^ 後に副都心線向けに改造された7000系でも設置。
  2. ^ 本形式の液晶表示器は東京メトロ8000系更新車と異なり、液晶表示器下部にあるドア開閉表示灯が付いていない。
  3. ^ 力行4ノッチ・常用制動7ノッチ。
  4. ^ 1C4M2群制御用がMAP-178-15V108形、1C4M1群制御用がMAP-174-15V109形。

出典

  1. ^ ネコ・パブリッシング「レイルマガジン」2003年4月号News Scramble 125頁「営団08系営業開始!」 同誌によれば当時の69S運用より営業運転を開始した。
  2. ^ a b 帝都高速度交通営団「東京地下鉄道半蔵門線建設史(水天宮前 - 押上)」653頁
  3. ^ a b レールアンドテック出版「鉄道車両と技術」No.81記事「帝都高速度交通営団 08系の概要」

参考文献

関連項目

外部リンク