コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「世界都市」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
タグ: 差し戻し済み モバイル編集 モバイルウェブ編集
編集の要約なし
タグ: 差し戻し済み モバイル編集 モバイルウェブ編集
1行目: 1行目:

{{告知|議論|ソウルの記載の是非に関して|date=2021-03|section=ソウルの記載の是非に関して}}





2021年3月18日 (木) 16:15時点における版


世界都市(せかいとし、: world city: Weltstadt)とは、主に経済的、政治的、文化的な中枢機能が集積しており、世界的な観点による重要性や影響力の高い都市グローバル都市: global city)ともいう。必ずしも大都市とは限らず、メガシティとは意味合いが異なる。JLLはトップグループ都市として世界4大都市ロンドンニューヨーク東京パリを挙げており、世界的な認識として代表的世界都市とはこの4都市を指すことが多い。

定義

多国籍企業とグローバル・マネーの形成が本格化した1970年代、国際的な企業・法人本部とそれを支える活動の複合体を擁する都市を「世界都市」と定義し、こうした都市の育成をはかる議論が始まった[1]。1986年、カリフォルニア大学教授のジョン・フリードマン英語版は「世界都市仮説」を著し、世界都市を定義した[2]。フリードマンの主要な世界都市の定義は以下の通りである。

  • 資本主義の世界システムの中で、法人の拠点、金融センター、グローバル・システムや地域・国民経済の結節点としてその機能を果たす都市[2]
  • 多国籍企業がその基地として立地し利用するため、複雑な国際的・空間的階層の中に位置付けられる都市[2]
  • グローバルな管理機能の集積を反映して、法人の中枢部門、国際的な金融・輸送・通信・広告・保険・法務などの高次ビジネス・サービスなどが成長する都市[2]

フリードマンは多国籍企業の本社部門の所在それ自体を重くみる世界都市論を展開していたが、サッセンは「1960年代、1970年代に比べて都市の経済力を測定する尺度としては十分なものではなくなっている」と述べ、今や金融、高次法人サービスなどの活動こそが国際都市ヒエラルキーを左右し、世界都市を形成する要因として重要性をもつものと説明した[3]。経済活動の地球的な規模での分散が同時に地球規模の統合、コントロール機能の形成を促しており、こうしたセンター機能が集積する少数の都市(ロンドンニューヨーク東京など)こそグローバル都市だとした[4]

2017年、アメリカのシンクタンクであり、世界都市研究に深く関与し続けてきたシカゴ国際問題評議会英語版は、「何がグローバル都市を作るのか?」(What Makes a Global City?)という題名でグローバル都市の定義や傾向を定めた[5]。主な内容な以下の通りである。

  • 世界経済をリードしている。
  • 都市規模が大きい傾向にあるが、それだけでは十分ではない。
  • 国内の若者なども含む、世界の人々を惹きつける魅力がある。
  • 大学など高等教育が発展しており、子供や労働者にも充実した教育環境を提供している。
  • 外国人の人口が多い。移民を惹きつける仕事があり、その情熱、気迫が都市のバイタリティーを高めている。
  • 文化的な中心地である。博物館、劇場、レストラン、スポーツ、ナイトライフなどが充実している。
  • デスティネーション、いわば目的地であり、観光客にとって魅力的である。
  • 政治的影響力があることは有利な条件である。首都ではないグローバル都市も領事館、シンクタンク、国際会議場などを有する。
  • 国際的なハブであり、グローバルな連結性が高い。都市圏にメジャーな国際空港がある。
  • グローバル都市に必要な先見の明のある指導者がいる。
  • 生活の質が高い。公共交通機関、クリーンな生活環境、治安の良さ、ヘルスケア、地方政府の効率性などが発展している。
  • オープンである。移民、デジタルコミュニケーション、トレードの制限などが少ない。報道の自由度が高い。

特徴

経済的特徴

ニューヨーク証券取引所
  • ビジネス活動が盛んであり、都市の経済規模が大きい(東京は都市の経済規模が世界最大であり、2位のニューヨークも巨大な経済圏を形成している [6])。
  • 国際的に活動している法人本社部門とその活動を支える金融、保険、通信、証券、不動産、法務、会計、広告、コンサルティングなどの高次法人サービス、それにレストラン、出版・印刷、運輸・倉庫、専門店、ファッション、ホテル、観光、教育、芸術、医療、福祉、娯楽などの補助サービスが集積している。
  • 多国籍企業の本社など、世界経済に影響を及ぼす組織の中枢が所在する(2016年時点で世界の500大企業の中で最も本社数が多い都市は北京であり、2位は東京である[7])。
  • 証券取引所、銀行、保険会社などが集積し、高度に発達した金融センターを形成している(世界を代表する金融センターとしてロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港、東京が挙げられる[8])。
  • 労働人口における高学歴者の割合が高く、企業や市場にサービスを提供する専門サービス業や知的産業が発展している。
  • 学術研究やビジネス、文化人など各分野における著名人が拠点を置いており、実績ある人材が集積している。

政治的特徴

ホワイトハウス
  • 中央政府など行政機関が所在し、グローバルな政治的影響力がある(例えば、主要国の首都であるワシントンD.C.、北京、東京、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、モスクワなどが代表的である)。
  • 大使館や領事館が所在しており、外交の舞台となり得る。
  • 主要なシンクタンクがある(例えば、ニューヨークの外交問題評議会、ロンドンの王立国際問題研究所、北京の中国社会科学院)。
  • 国際機関や地域統合体の本部が所在する(例えば、ニューヨークには国連本部があり、ブリュッセルには欧州連合の主要機関が置かれている)。
  • 行政区画の人口が通常数百万人規模の大都市であり、さらに都市圏の中枢として機能している場合が多い。
  • 都市が世界的な影響力を持つ事から、通常世界政治ではあまり注目されない地方首長も各国から注目される場合が多い(例えば、ニューヨーク市長東京都知事ロンドン市長といった上位世界都市の選挙の場合は、世界的なニュースとなる)。

文化的特徴

大英博物館
  • 都市の世界的な認知度が高い(例えば、パリは「フランスのパリ」と国名を補足しなくてもそれが何かが自明であり、エッフェル塔凱旋門など有名なランドマークがある)。
  • 外国人の訪問者数が多い(2016年の統計によると、世界で最も外国人の訪問者数が多いのはバンコクであり、2位はロンドンである[9])。
  • 世界的に有名な学府や文化施設を擁する(例えば、ロンドンのロンドン大学大英博物館、ニューヨークのコロンビア大学やメトロポリタン美術館などが挙げられる)。
  • 世界的に有名で世界情勢に多大な影響力をもつ通信社やマスメディアが本拠を置く(例えば、ニューヨークのAP通信ニューヨーク・タイムズ、ロンドンのロイター通信BBC、パリのフランス通信などが挙げられる)。
  • チャイナタウンなど、都市の内部に複数の移民コミュニティーや異文化圏が存在することが多い。また、国際都市として大規模なビジネスを引き付けることから、その土地本来の文化とは別に異邦人文化も形成される傾向もある。
  • アートシーンをリードする様々な媒体や受け皿となる施設がある(例えば、ニューヨークのブロードウェイ(演劇・ミュージカル)、リンカーンセンター(オペラ、バレエ、音楽)、ソーホー(美術館)、七番街(ファッション)、マディソン街(広告)などが挙げられる)。
  • 幅広いスポーツコミュニティが存在し、メジャースポーツチームが本拠を置く(例えば、ニューヨークのヤンキースメッツ(プロ野球チーム)、ロンドンのアーセナルFCチェルシーFC(プロサッカーチーム)などが挙げられる)。また、オリンピック世界陸上世界水泳サッカーワールドカップなどの国際スポーツイベントを開催可能な、あるいは過去に開催した実績のある施設が存在する。

社会基盤の特徴

ドバイ国際空港
  • 公共交通機関や高速道路網が整備され、多種多様な交通手段をもつ。
  • 複数の航空会社がハブ空港としている大規模な国際空港がある(2015年において国際線の利用者数が世界で最も多い空港はドバイ国際空港である[10])。
  • 多国籍企業の運営には不可欠な、先端技術を用いた高速通信の都市基盤設備が整備されている(例えば、光ファイバーケーブル網、セリュラーネットワーク、インターネットアクセスなどが挙げられる)。
  • 住居コストが高い(2016年の調査報告によると、シンガポールが世界で最も生活コストのかかる都市である[11])。
  • コミュニティの崩壊、ホームレスの増大、交通渋滞、外国人労働者の大量流入などの社会問題も抱える傾向にある[12](例えば、ドバイの人口の83%は外国出身者で占められている[13])。
  • 富豪、富裕層が多く、社会格差が大きい(2016年時点で、個人資産10億ドル以上の富裕層が最も多い都市はニューヨークであり、2位は香港である[14])。

対照的な概念

世界都市と対照的な都市概念として、主に人口に基づいた都市規模の大きさを示すメガシティ(巨大都市)がある。国連の統計によると、2018年現在で世界最大の都市は東京である[15]東京都市圏は、世界で唯一人口3500万人を超えている大都市圏であり[16]、経済規模も世界最大である[6]。ニューヨークも人口2000万人前後を抱える世界有数の都市圏を形成しており、東京と共に世界都市とメガシティの両性を強く兼ね備えた都市である。一方、同じく代表的な世界都市に挙げられるロンドンやパリは、都市圏人口において名古屋市とほぼ同水準であるなど[16]、世界トップクラスのメガシティとは言い難い。サスキア・サッセンが「多くの世界都市はメガシティではない」と述べているように、例えばチューリッヒジュネーヴは都市圏人口が100万人にも満たない非メガシティであるが、世界都市としては高い評価を得ている[17]

1970-1990年代

1970年代から1980年代の世界都市形成は、次第に金融主導型のそれに傾斜し、金融マネーのグローバリズムの所産という性格が、多分に強くなったと考えられる[18]。衛星通信やコンピュータ通信の飛躍的発展によって、世界の金融センターを結ぶ24時間取引や多国籍産業のグローバル・マネージメントが可能になったことも要因だと考えられる[19]。こうして国際情報を集積し、ボーダレス・マネーを動かして世界経済をコントロールする国際金融センターが現れ、世界的な都市ヒエラルキーの頂点に立った[19]。1990年頃には、ロンドン・ニューヨーク・東京が「三大世界都市」と呼ばれ、グローバル経済と世界都市システムの頂点に姿を現していた[20]。 ロンドンやニューヨークは国際金融と世界的な経済センターとしての位置を強化し、高次ビジネス・サービスに経済の重点を移したのである[21]。世界経済はますます金融に傾斜し、世界的な金融市場の拡大は国際金融と関連したビジネス・サービスの収益性を高めた[21]。ロンドンやニューヨークは、これらの国際的な金融、ビジネス・サービスと文化、人の移動、ものの輸送、デザイン、通信などの中心として生まれ変わることで「世界都市」と呼ばれるようになったのである[21]。一方、東京はロンドンやニューヨークとは経済構造が異なり、大都市圏としてみてみると金融やサービスはいうに及ばず、ハイテク、卸売業から都市型工業にいたるまで集積した、フルセット型の産業構造であり、いわばオールマイティーな経済機能をもつ都市として世界都市形成を行った[22]。2001年に大ロンドン庁が公表した報告書「ロンドン・プラン」においても、ロンドン・ニューヨーク・東京の3都市を「本物の世界都市」と定義しており、世界都市としての三強時代が続いていた[23]

トップクラスの世界都市

ニューヨーク

ロンドンと共に世界最高峰と位置づけられる都市[24][17][25][26]超大国アメリカ合衆国並びに世界における経済、金融、文化、交通、メディア、娯楽、観光などの中心的な都市の一つである。ニューヨーク証券取引所は世界最大の証券取引所であり、世界経済に大きな影響力を持つ。中心街のマンハッタン国際連合の本部が所在するなど、数々の国際機関も集積しており首都ではないながらも絶大な政治的影響力がある。世界大手の通信社AP通信ニューヨーク・タイムズウォール・ストリート・ジャーナル、さらにアメリカ三大テレビ局の本社もあり、メディアに関してもグローバルな影響力を有する。メトロポリタン美術館など文化施設も多く、世界遺産自由の女神像はニューヨーク並びに自由民主主義の象徴である。2016年の調査では、個人資産が10億ドル以上の大富豪が世界で最も多い都市である[14]

ロンドン

ニューヨークと並んで世界最高峰に位置づけられる都市[17][25][26][24]。世界における金融、文化、交通、教育、メディア、娯楽、観光などの中心的都市の一つである。世界最高の金融センターとされ[8]外国為替市場の取引額はイギリスが世界一であり[27]、その中心は首都ロンドンである。世界で最も外国人の訪れる都市の一つであり、ロンドン・ヒースロー空港は世界最大級のハブ空港である。ロンドンで2番目に大きいロンドン・ガトウィック空港も国際線の年間利用者数でニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港を上回る[10]。外国出身者の人口は2011年時点で約300万人であり[28]、多種多様な民族が混在して暮らしている。ロンドン塔ウェストミンスター宮殿など数々の世界遺産を有し、大英博物館など著名な文化施設も多い。特に文化的な交流の面で強く、王立国際問題研究所は世界的なシンクタンクであり、メディア大手のタイムズBBC英語が事実上の世界共通語であることからも国際的な影響力を有する。2016年の調査では、個人資産が3000万ドル以上の超富裕層が世界で最も重要とする都市である[29]。一方で、2020年にイギリスがEU離脱したことにより、世界都市としての地位の低下も懸念されている[30]

東京

ロンドン、ニューヨークに次ぐ世界第三位の世界都市であり、アジアを代表する世界都市のひとつ。経済的な評価は相対的に低下傾向にあるものの[31][26]、政治や文化を含めた総合的な評価はアジアで最高位に位置づけられる[17][25][32]。世界第3位の経済大国並びにG7加盟国の首都である。日本の政治や経済の本部機能が一極集積しており、ニューヨークを上回る世界最大の経済規模の都市圏を形成している[6]。アメリカの大手旅行誌に2年連続で「世界で最も魅力のある都市」に選出されるなど、観光面でも高い評価を得ている[33]。また、世界主要60都市の中で「最も安全な都市」との評価も受けている[34]。また東京は、北京に次いで大企業の本社が多い都市とされる[35]。なお日本の森記念財団は、美術館・博物館や高級ホテルの数において東京は出遅れており、日本の国家的な事情として所得税率の高さや外国人が起業しにくい制度、英語人材の少なさなどが評価の足を引っ張っているとの分析を示している[36][37][38]

パリ

ロンドン、ニューヨーク、東京に次ぐ第四の世界都市[17][24]国連安保理常任理事国G7に加盟している国の首都であり、経済、文化、交通、メディア、娯楽、観光の中心地である。OECDユネスコなど国際機関の本部が多数集積しており、フランス通信社BNPパリバなどはグローバルな影響力を有する。パリ=シャルル・ド・ゴール空港は世界屈指のハブ空港であり、地下鉄のメトロなど交通・アクセス部門も充実している。ルーブル美術館フランス料理に代表される文化に恵まれた世界屈指の観光都市であり、エッフェル塔凱旋門など都市を象徴する世界的認知度の高いランドマークが多い。2024年オリンピックパラリンピック開催が決定した。

各地域の世界都市

アジア

東アジア

東アジアには経済規模の大きい世界都市が多く存在する[39]。中でも、東京上海香港が代表的な世界都市として挙げられる。 東京は日本の政治・経済・情報の中枢であるだけでなくアジア太平洋地域のヘッドクォーターが集積している。[25][17][6]


香港はロンドンやニューヨークに次ぐ世界有数の巨大な金融センターであり、中国語圏と英語圏の結節点で、世界トップクラスの経済競争力を持つ都市である[17][26]

日本

日本では東京をはじめ、メガシティに数えられる第二都市大阪、東京と大阪を結ぶ交通の要所であり製造業の中心である名古屋の三大都市が大きな影響を持つ都市として挙げられる。

また、古来から朝鮮半島のある大陸との玄関口となっている福岡も世界への影響力を持つ都市として「世界の都市総合力ランキング」などで評価されている[25][17][6]。 その他にも、国際観光都市であり古都である京都、かつて東洋一の港湾都市であった神戸、冬季五輪大会など開催された札幌、留学生の受け入れが盛んな学都仙台、クルーズ船の受け入れなど盛んな横浜なども評価されている[40]

中国

中国はその経済力の高さからアメリカに次いで多くの世界都市を有している[17][26]。政治の中心地北京と経済の中心地上海が双璧を成し、世界都市としても上位に位置付けられる。その他に広東省の大都市である広州、巨大な人口を抱えるハイテク工業都市深圳は、経済面に特化した指標では高い評価を受けている[26]。加えて、北京に隣接する天津中国四大古都の一つに数えられる南京、中国内陸部有数の大都市成都長江漢江の合流地点にある武漢東北アジアの交通拠点大連、海洋産業の中心都市青島、歴代中国王朝の首都であった西安、内陸部唯一の直轄市である重慶、上海に隣接する蘇州湖南省の大都市である長沙浙江省の中心都市杭州、中国有数の港湾都市である寧波中国東北地方の中心都市瀋陽モンゴルロシアとの結節点である哈爾浜、東西中国の結節点である鄭州、上海との近さを活かして発展を続ける無錫、香港やマカオに近接する仏山、経済特区の一つ厦門山東省の大都市である済南、広州に隣接する東莞東南アジアへの出口である昆明安徽省の中心地である合肥、台湾との繋がりも深い福州、景観の良さから観光地として人気のある煙台なども、近年の経済成長により「グローバル都市指標」や「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」など複数の指標で、成長中である都市として認められつつある[17][26]


台湾

台湾では政治や経済の中心都市である台北や同国最大の港湾都市であり第二都市である高雄が挙げられる[17]。また「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」では、台北と高雄を結ぶように台湾中部に位置している都市台中や古都である台南やIT関連企業の本社や工場が多く拠点を置く新竹もまた、世界への影響力を持つ都市に数えられている[26]

東南アジア

東南アジアは東アジアほど経済規模が大きくないため世界都市は少ない傾向にあるが、地域大国インドネシアを中心にミドルパワー国家が集積している為、地域に満遍なく世界都市が点在している。中でも、都市国家シンガポールは際立った存在感を放ち、金融や観光に強みを持つ世界有数の世界都市に数えられる[24]。他にもタイバンコクマレーシアクアラルンプールインドネシアの首都ジャカルタや第二の都市スラバヤ、第三の都市バンドンフィリピンマニラベトナムホーチミンや首都ハノイ、急成長しているカンボジアプノンペンASEAN主要国の首都や大都市であり、有力な世界都市である[17][26]

南アジア

南アジアインドという大国を抱えているためアジアでは東アジアに次いで経済規模が大きく、世界都市も少なくない。その中でも、ムンバイが随一の存在感を放つ[17][25]。世界第二の人口大国インドの経済都市であり、ボリウッドに代表される現代文化の中心都市でもある。他にもインドの首都デリーは大国の首都として高い政治的影響力を発揮し、ムンバイと並ぶ南アジア有数の世界都市に数えられる[17]。加えて、インドも中国同様に21世紀に入ってからの経済発展で地方都市も世界的影響力を増しつつあり、ベンガル地方への玄関口である都市コルカタインド南部の主要都市チェンナイ、インドのシリコンバレーと呼ばれるベンガルールを筆頭に、アジア有数のIT都市であるプネーヒンドゥー教イスラム教の結節点となるアフマダーバード、ダイヤモンド産業が栄えるスーラトテルグ語圏の中心地であるハイデラバードなども世界都市とされる[26][17]

インド以外では、パキスタンの最大都市カラチや第二の都市ラホール、首都イスラマバード、バングラデシュの首都ダッカスリランカ最大の都市コロンボなども影響力の大小はあるが、同地域有数の世界都市である[26][17]

西アジア

西アジアも東南アジア同様、秀でた大国は存在しない代わりにミドルパワーが集積している為、世界都市が各地に点在している。中でも、アラブ首長国連邦ドバイが同地域最高の世界都市と評価を受けることが多い[17][26][25]。金融・観光・交通の中心地の一つであり、ドバイ国際空港の国際線の年間乗降者数はロンドン・ヒースロー空港を上回り世界一になるなど[10]、国際色に溢れている。他には同じくアラブ首長国連邦のアブダビイスラエルテルアビブサウジアラビアの首都リヤドと第二の都市ジッダイランテヘランカタールドーハバーレーンマナーマクウェートクウェートシティレバノンベイルートヨルダンアンマンアゼルバイジャンバクーオマーンマスカット、EUとの結節点となるキプロスニコシアなどが続く[26][17]。トルコについては東ヨーロッパに分類する。

中央アジア

かつてはシルクロードのオアシス都市として栄えたが、中央アジアは地理的に砂漠草原が多く人口が密集しづらく、海がないため交易都市が大規模な発展を遂げづらい。またソ連から独立して間もないため政治的・経済的に軌道に乗っていない国が多いなど、複数の理由から、世界都市と評される都市が他のアジア地域に比べ極端に少なくなっている[26][17]。 その中でも存在感を放つのは地域大国であるカザフスタンであり、カザフスタンの最大の都市アルマトイは中央アジア最大の経済都市として知られる。続く第二の都市かつ首都として知られるヌルスルタン(旧アスタナ)も同地域で大きな影響力を発揮し、この二つが世界都市と呼べる規模を持つ[26]

ヨーロッパ

イギリスフランスドイツイタリアロシアなどの大国、そして先進国が集積していることもあり、東アジアや北米と並んで多数の世界都市を有する。代表的なのはイギリスロンドンフランスパリであり、どちらも大国の首都かつ世界で最も観光客の多い観光都市と知られていて、都市内に世界遺産を有する点も共通している。またロンドンはシティ・オブ・ロンドンに代表される金融面で、フランスはOECDユネスコなどの国際機関の本部が所在している事から政治面でそれぞれ強みを持ち、ニューヨークや東京と並んで世界最高峰の評価を受けている[17][25][26]

ヨーロッパは歴史的に中欧東欧西欧南欧北欧の五地域に分割されるが、傾向として先進国や主要国が位置している中欧、西欧、南欧は経済規模の大きさから世界都市が多く、一方でヨーロッパの中では発展途上といわれる東欧と人口が少ない北欧は世界都市が少ない。

中央ヨーロッパ

大国であるドイツを筆頭に、ポーランド、オーストリア、スイス、ハンガリー、チェコ、スロバキアなどの先進国もしくは上位中所得国が集まっている地域であるため、多くの世界都市を有する。中央ヨーロッパで最も代表的な世界都市はドイツの首都ベルリンであり、大国の首都であるという政治的影響力から世界的に見ても有力である[17]。他にも地方分権が進んでいるためドイツ国内には複数の世界都市があり、金融の中心地であるフランクフルトBMWの本社が所在するミュンヘン、物流の拠点であるハンブルク、多数の大都市が連なるルール地方の牽引役であるケルンダイムラーポルシェが本社を置くシュトゥットゥガルドは世界的な影響力を有し、様々なランキングで評価されている[17][25][26]

ポーランドでは首都のワルシャワが世界都市に挙げられる。オーストリアウィーンはかつて列強であったオーストリア=ハンガリー帝国の帝都だった歴史があり、今なお音楽と学問の都として世界都市の中でも比較的上位に位置付けられている[17]スイスの都市は比較的人口規模は小さいものの、チューリッヒは世界有数の金融センターとして、ジュネーヴ国際連合専門機関が集積する外交都市として、ローザンヌIOCが本部を置くオリンピックの首都として、それぞれ強みを持っている[17][26]ハンガリーの首都ブダペストチェコの首都プラハスロバキアの首都ブラチスラヴァも経済や文化面で影響力があり、世界都市に数えられる[17][25][26]

東ヨーロッパ

東ヨーロッパはヨーロッパの中では新興国と呼べる国々の集まりであり、世界都市はさほど多くない。そんな中でもロシアモスクワは世界的にも上位に位置付けられる世界都市、トルコイスタンブールはアジアとヨーロッパの結節点となる世界都市であり、この両都市はともに都市圏人口1000万人を越えるメガシティである[16]。さらにはロシア第二の都市サンクトペテルブルク、「シベリアの首都」と呼ばれる第三の都市ノヴォシビルスク、「ウラルの首都」と呼ばれる第四の都市エカテリンブルク、トルコの首都アンカラルーマニアブカレストブルガリアソフィアウクライナキエフなどがヨーロッパ新興国の代表的な世界都市と言える[32][17][26]

西ヨーロッパ

西ヨーロッパは属する国家の全てが先進国とされており、経済規模の大きさは中央ヨーロッパや南ヨーロッパと並ぶ。この地域の頂点にある世界都市は世界最高峰とされるイギリスロンドンフランスパリである[17][25][26][24]。この両国は国家統一が歴史的に見て早かった事から首都一極集中の傾向が強い。しかしイギリスでは第二の都市バーミンガムや国内第三位の都市圏を形成するマンチェスタースコットランドの経済都市グラスゴーや主都エディンバラが、フランスでは第二の都市リヨンが中規模な影響力を持つ世界都市とされている[26]

オランダでは国内最大の都市であるアムステルダムを筆頭に、世界最大の貿易港のひとつであるロッテルダム国際司法裁判所を有するハーグが世界都市に挙げられる[26]ベルギーでは欧州連合の本部が置かれるブリュッセルがその政治的影響力から世界的にも上位に位置付けられているほか、第二の都市アントウェルペンも影響力を有している[17][26]。人口は小規模だが、税率の低さゆえ金融に強みを持つルクセンブルク市も世界都市である[26]ベネルクス以外では、アイルランドダブリンも有力なヨーロッパの世界都市である[17]

南ヨーロッパ

南ヨーロッパもまた経済規模の大きなイタリアスペインといった国家を抱えているため、多数の世界都市を有している。特に主要国であるイタリアの、世界的な観光地であり首都であるローマと北部の経済都市ミラノは南欧を代表する世界都市である[17]イタリア南部の経済都市ナポリフィアットが本社を置く商工業都市トリノも、上記の二都市に続く[26]スペインでは首都マドリードカタルーニャ州の中心都市バルセロナが世界的にも上位に、バレンシアビルバオが下位に位置付けられている[17][26]ポルトガルは首都リスボンポルトが、ギリシャでは世界的な観光都市であるアテネが世界都市に挙げられる[26]。旧ユーゴスラビア諸国は未だに貧しい国が多い為世界都市はさほど多くないが、中でもクロアチアザグレブセルビアベオグラードスロベニアリュブリャナは南欧と東欧の結節点として発展途上の世界都市に位置付けられ「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」などで評価されている[26]

北ヨーロッパ

北ヨーロッパは先進国が集まりながらも、寒い気候ゆえに人口が希薄な地域であり世界都市は少ない。スウェーデンは首都であるストックホルムが世界都市とされ[17][25][26]、第二の都市であるイェーテボリや第三の都市であるマルメも「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」などの指標で世界都市に位置付けられている[26]。また、デンマークではコペンハーゲンが、ノルウェーではオスロが、フィンランドではヘルシンキが、それぞれヨーロッパ有数の世界都市として評価されている[17][26]。また東ヨーロッパとの境界線にあたるバルト三国では、それぞれの首都であるラトビアリガエストニアタリンリトアニアヴィリニュスが中規模の世界都市とされる[26]

北アメリカ

アメリカ合衆国

超大国アメリカ合衆国地方分権が進んでいるため、規模や影響力の大小こそあれど各地に多くの世界都市を有する[26]。同国の最大都市であるニューヨークは世界最高峰の一角である[26]。経済・政治・文化・交通・研究・教育・医療・福祉・芸術・金融・娯楽・情報・観光などあらゆる分野において世界的な影響力を発揮し、現状存在する国際組織の中でも最も普遍性の高い国際連合の本部が置かれている。西海岸最大の都市ロサンゼルスや物流の中心地シカゴ、グローバルな政治的影響力を有する首都ワシントンD.C.も強力な世界都市であり、世界的にも上位に位置付けられている[17]

さらにはシリコンバレーの窓口として機能するサンフランシスコ、世界的な金融センターであるボストン、アメリカ第四の都市であるヒューストン夏季オリンピックを開催したアトランタ、大西洋の主要な港湾都市であるマイアミペンシルベニア大学など名門大学が集積する学術都市フィラデルフィア、古くからの交通の要衝ダラス、北西部最大のハイテク都市シアトル砂漠に位置する南部の工業都市フェニックス、シカゴとアメリカ西海岸を結び付ける商業都市ミネアポリス、財政破綻から復興しつつあるゼネラルモーターズが本社を置くデトロイト、内陸部の交通の要衝デンバーメキシコへの玄関口となる都市サンディエゴなどは様々なランキングで他国の首都や最大の都市と同格の評価を受けており、アメリカ合衆国内でも比較的上位の世界都市に位置づけられている[17][25][26][24][41]

他にも、上記したものより影響力の面ではやや劣るが、半導体産業が発達したタンパシリコンバレーの中心地サンノゼ、経済規模が大きいテキサス州の州都オースティン、いくつものテーマパークを有する世界的な観光都市オーランド、かつてシカゴと並ぶ全米有数の鉄道ハブであったセントルイス、東西アメリカの結節点カンザスシティ、金融に強みを持つ東部の主要都市シャーロットアメリカ中西部の学術都市コロンバス、首都ワシントンD.C.の外港ボルティモア、音楽産業で影響力を発揮するナッシュビルなどは「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」でそれぞれガンマ都市として評されるなど、アメリカ合衆国内では中位の世界都市に挙げられる[17][26]

カリフォルニア州の政治の中心地サクラメント冬季オリンピックを開催した宗教都市としての側面も持つソルトレイクシティ、重工業からサービス産業への転換に成功したクリーブランド、空軍基地を持つ軍都サンアントニオビール生産地として名高いミルウォーキーデルタ航空ハブ空港のひとつシンシナティ、中西部有数のハイテク都市ピッツバーグ、運輸産業の中心地インディアナポリス、有力な軍港であるジャクソンビル、世界最大のカジノ都市ラスベガス、世界最大の家畜市場オクラホマシティバイオテクノロジーに強みを持つリッチモンドKFCの本社が置かれるルイビルスペイン語圏との結節点であるニューオーリンズ、急成長を遂げているポートランドニューヨーク州北部の経済都市バッファロー、保険業が集積し「保険の首都」との異名を持つハートフォード動物園などの文化施設が集積するオマハ、本土以外ではハワイ州の州都ホノルルなども、「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」などの指標では各分野において強みを持つ都市に挙げられ、無視できない影響力を有している[26]


その他

カナダ連邦メキシコ合衆国に加え、中央アメリカ諸国やカリブ海諸国などで構成される。カナダでは同国の経済や金融の中心都市であるトロントが北米屈指に数えられ、世界的にも上位に位置付けられる。フランス語圏である第二の都市モントリオール、人種や民族が多様な太平洋に面する都市バンクーバー、石油や天然ガスを主産業とするカルガリー、北米最北端の百万都市であるエドモントンがそれに続く。首都であるオタワは上記の五大都市のように高層ビル群は形成されていないが、G7に属する先進国の首都として政治的影響力を発揮する[17][25][26]

メキシコでは首都メキシコシティが随一の存在感を放ち、北米有数のメガシティである。第二都市を争っているグアダラハラモンテレイもまた世界都市に数えられる[17][25][26]

中央アメリカ

中央アメリカは小国が多い一方で、アジアにおける東南アジア中東と同様に広く世界都市が点在している。頂点に立つのはパナマの首都パナマシティであり、タックスヘイブンのひとつとして金融に強みも持つほか、パナマ運河により物流や観光にも影響力を発揮する、中央アメリカ随一の世界都市である[17][26]。それに続くのは中央アメリカでは比較的豊かな国であるコスタリカの首都サン・ホセグアテマラの首都グアテマラシティエルサルバドルの首都サンサルバドルなどであり、それぞれ中米有数の世界都市である。また、同地域では貧しい国であるホンジュラスの首都テグシガルパニカラグアの首都マナグアなども「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」ではガンマ都市と評されるなど、成長中の世界都市に数えられる[26]

カリブ海地域は都市を発達させるのに十分な面積を持たない小さな島国が多いため世界都市は少ない。しかし、地域大国であるドミニカ共和国の首都サンドドミンゴが同地域の中心都市たる世界都市として挙げられるほか、観光都市として有力なバハマの首都ナッソーキューバの首都ハバナも下位の世界都市である。独立国家ではないがアメリカ領プエルトリコの主都サンフアンも有力である。イギリス領ケイマン諸島の主都ジョージタウンは高層ビルもない人口数万人の小さな町だが高度な金融センターを築いており、世界都市とされる[26]

南アメリカ

南アメリカは大陸全土にミドルパワー国家が散らばっており、世界都市も点在している。大国ブラジルの最大都市サンパウロ南半球最大の都市でもあり、金融に強みを持つ世界都市として同地域最高峰のひとつに数えられる。2016年に南米初の夏季オリンピックを開催したリオデジャネイロも南米有数の世界都市である[17]。また、上記の二都市以外にも経済発展により世界的影響力を持ちつつある都市をブラジルは複数有しており、首都であるブラジリア、第三の都市ベロオリゾンテ、南部の中心地ポルト・アレグレ、高速道路の起点となるフォルタレザ、植民地時代の建築が残る大都市サルヴァドール、大西洋有数の港湾都市レシフェ、精緻な計画都市として知られるクリチバ、内陸部の中心地ゴイアニア、サンパウロの隣接する地の利を活かすカンピーナスアマゾンの首都マナウスなどが成長中である下位の世界都市として認められつつある[17][26]。ブラジルに次ぐ南米の地域大国アルゼンチンでは、ブエノスアイレススペイン語圏の都市として南米で最も高い評価を受ける。コロンビアの首都ボゴタと第二の都市メデジンベネズエラカラカスペルーリマチリサンティアゴエクアドルキトグアヤキルパラグアイアスンシオンウルグアイモンテビデオボリビアラパスも南米有数の世界都市である[17][26]

アフリカ

アフリカは属する国家すべてが発展途上国であり、経済規模が小さく国数の多さや大陸の大きさに反して世界都市は少ない傾向にある。その中でも、アフリカの中で随一の存在感を放つのが北アフリカに位置するエジプトとアフリカ大陸南端にある南アフリカ共和国であり、両国はアフリカ有数の経済大国として複数の世界都市を抱える[17][25]エジプトの首都カイロはアフリカ最高峰の世界都市の一つに数えられ、またアラブ連盟本部所在地であるなどアラブ世界の政治・文化の中心都市の一つであり、アフリカ最大のメガシティでもある[16]。エジプト第二の都市アレキサンドリアは下位の世界都市に位置付けられており、欧米風の雰囲気を漂わせる国際観光都市として、また世界保健機関の東地中海方面本部が置かれる政治都市として機能する[17][25]。アフリカからG20に参加する唯一の国家である南アフリカは同地域で最も多くの世界都市を擁しており、最大都市ヨハネスブルグは世界的な証券取引所であるJSEが所在するアフリカ最大の金融センターであると同時に、カイロと並びアフリカ最高峰の世界都市の一つである[17][25]。他にも、海上交通の要衝である第二の都市ケープタウン、リゾート地として名高い第三の都市ダーバン、政治的な中心地である行政首都プレトリアなどが世界都市に挙げられる[17][25]

上記した二ヵ国以外では、国際連合専門機関が集積するケニアの首都ナイロビがアフリカ最高峰の都市の一つと評されており、経済と国際政治の両面において影響力を発揮する[17][25]。また、エジプトや南アフリカと並びうるアフリカ有数の経済大国ナイジェリアからは、巨大都市ラゴスがアフリカ有数の世界都市とされる[17][25]モロッコの最大都市カサブランカはヨハネスブルグに次ぐ金融センターとして知られ、またカイロと並び北アフリカの中心都市にも数えられる[17][25]。これらは世界的にも中位の世界都市であり、その他、チュニジアの首都チュニス、「北アフリカのパリ」の異名を取るアルジェリアの首都アルジェ中部アフリカの中心都市であるコンゴ民主共和国の首都キンシャサアフリカ連合の本部が置かれるエチオピアの首都アディスアベバウガンダの首都カンパラコートジボワールの経済都市アビジャンガーナの首都アクラタンザニアの首都ダルエスサラームアンゴラの首都ルアンダセネガルの首都ダカールカメルーン最大の都市ドゥアラジンバブエの首都ハラレスーダンの首都ハルツームモザンビークの首都マプト、アフリカ大陸以外からはアフリカで最も経済的に豊かな都市としてモーリシャスの首都ポートルイスなどが世界的には下位、アフリカでは有数の世界都市に数えられる[17][25]

オセアニア

オセアニアは都市を形成するのに十分な面積を持たない国が多く、世界都市は少数である。その中でもオーストラリアの最大都市シドニーと第二の都市メルボルンが代表的であり、南半球の世界都市の代表として、また上位の世界都市として位置付けられる[17][25]。それに次いで第三の都市ブリスベン西オーストラリア唯一の都市部であるパース、第五の都市アデレードの名前が挙げられることがある。ニュージーランドでは最大の都市オークランド、それに続く首都ウェリントンが同国を代表する世界都市である。

研究調査

世界都市に関してもランキング指標が作成されている[42]

埴淵 (2018)では、代表的なランキング指標としてGaWC英語版、グローバル都市指標、世界の都市総合力ランキングが挙げられている[42]

グローバル都市指標

グローバル都市指標Global Cities Index)は、A.T.カーニーによる指標である[43]

アメリカの世界的な経営コンサルティング会社A.T.カーニーは2020年、第10回目となるグローバル都市指標のレポートを公表した[17]。2008年から開始されたこのランキングは、グローバル都市研究の第一人者であるコロンビア大学教授のサスキア・サッセンや世界都市研究で有名なGaWCディレクターのピーター・テイラーが同レポートで見解を示すなど、代表的な世界都市指標の一つになっている。2020年版では世界主要151都市を評価の対象としており、「ビジネス活動」(加重平均30%)、「人的資本」(同30%)、「情報流通」(同15%)、「文化的経験」(同15%)、「政治的関与」(同10%)の5つの分野、合計29の測定基準による総合評価によって順位を決めている。調査結果によると、ニューヨークが世界最高であり、ロンドン、パリ、東京が続いた。上位10都市は以下の通りである。

順位
都市
1 アメリカ合衆国の旗 ニューヨーク
2 イギリスの旗 ロンドン
3 フランスの旗 パリ
4 日本の旗 東京
5 中華人民共和国の旗 北京
6 香港の旗 香港
7 アメリカ合衆国の旗 ロサンゼルス
8 アメリカ合衆国の旗 シカゴ
9 シンガポールの旗 シンガポール
10 アメリカ合衆国の旗 ワシントンD.C.

世界の都市総合力ランキング

世界の都市総合力ランキング(GPCI, Global Power City Index)は、森記念財団都市戦略研究所(森ビル)による指標である[43]。2008年に発表を開始して以来、毎年そのランキングを更新している[25]。最高顧問にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン元教授で「世界都市」を著したピーター・ホール、委員にグローバル都市研究の第一人者であるコロンビア大学教授のサスキア・サッセンなど世界的な有力者によって作成・監修されている。

最新の2020年版では、世界を代表する主要48都市を選定し、都市の力を表す6分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」)における70の指標に基づいて評価を行った[44]。総合順位の首位は9年連続でロンドンであった[45]。分野別では「経済」及び「研究・開発」でニューヨーク、「文化・交流」及び「交通・アクセス」でロンドン、「居住」でアムステルダム、「環境」でストックホルムがそれぞれ首位になった[46]。総合順位の上位10都市は以下の通りである[47]

順位
都市
1 イギリスの旗 ロンドン
2 アメリカ合衆国の旗 ニューヨーク
3 日本の旗 東京
4 フランスの旗 パリ
5 シンガポールの旗 シンガポール
6 オランダの旗 アムステルダム
7 ドイツの旗 ベルリン
8 大韓民国の旗 ソウル
9 香港の旗 香港
10 中華人民共和国の旗 上海

JLL

アメリカの総合不動産大手のJLL(ジョーンズ・ラング・ラサール)は2017年、The Business of Cities(ザ・ビジネス・オブ・シティーズ)と共著で世界都市ランキングを発表した[41][24]。世界300以上の最先端の都市比較インデックスの中から網羅性、安定性、認知度に基づき選出された44の都市比較インデックスを7項目(企業のプレゼンス、ゲートウェイ機能、市場規模インフラ基盤、人材、専門性とイノベーションソフトパワー) において分析し、都市の現状や発展のレベルなどを総合的に評価した[48]。 世界で最もグローバル化が進み、競争力のある経済があり、企業資本、有能な人材が集中している都市を「確立された世界都市」(Established World Cities)として最上層のヒエラルキーに位置付けた[49]。ロンドン(1位)、ニューヨーク(2位)、パリ(3位)、東京(4位)、シンガポール(5位)、香港(6位)が上位6都市となっており、[48]。特にロンドンとニューヨークが世界のグローバル都市を牽引し、企業の存在感、人材を惹きつける魅力、投資総額、文化や価値観で主導的な地位を維持している[48]2017年版において「確立された世界都市」に特定された17都市は以下の通りである。

格付け 都市
トップグループ
第2グループ

GaWC

GaWCGlobalization and World City Research Network、グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク)[注釈 1]は、イギリスのラフバラー大学に研究拠点を置くグループである[50]ピーター・テイラーなどがこのグループの中心となり[43]、世界都市システム研究をリードしてきた[50]。世界都市の評価基準はビジネス分野にほぼ特化しており、会計、広告、法律、経営コンサルタント、金融など特定の高度サービス企業のオフィスの立地、充実度、都市間におけるグローバルな連結性などである[51]

1998年に最初の格付けを行い、最高峰の世界都市としてロンドン、ニューヨーク、パリ及び東京を選定した[52]。2008年以降2年ごとに公表しており、いずれも最高峰のアルファ++に格付けされた都市はロンドンとニューヨークと東京とパリの4都市のみである[26]。最新の2020年版においてアルファ++とアルファ+に格付けされた都市は以下の通りである[53]

格付け 都市
アルファ ++

|アルファ + |

グローバルシティズ・イニシアチブ

ブルッキングス研究所は2016年、独自の定義により世界都市を7つのカテゴリに分けて評価した研究を発表した[54]。その中でも裕福かつ巨大な大都市圏を形成し、金融と大企業の本社機能のハブでもあり、国際的な資本と才能の集まる結節点になっている先進国の都市をグローバルジャイアントと定義した。グローバルジャイアントとして評価されている都市は以下の通りである。

脚注

注釈

出典

  1. ^ 加茂利男『世界都市』 12頁 有斐閣
  2. ^ a b c d 加茂利男『世界都市』 16頁 有斐閣
  3. ^ 加茂利男『世界都市』 17-18頁 有斐閣
  4. ^ 加茂利男『世界都市』 17頁 有斐閣
  5. ^ What Makes a Global City? The Chicago Council on Global Affairs、2017年10月15日閲覧。
  6. ^ a b c d e Cities Rank Among the Top 100 Economic Powers in the World Chicago Council on Global Affairs 2016年10月28日閲覧。
  7. ^ Fortune 500 and Fortune 10002016年10月18日閲覧。
  8. ^ a b The Global Financial Centres Index 22 2017年10月28日閲覧。
  9. ^ Bangkok Takes Title in 2016 Mastercard Global Destinations Cities Index Mastercard.com 2016年10月18日閲覧。
  10. ^ a b c ACI Media ReleasesAirport Council International 2016年10月18日閲覧。
  11. ^ The world's most expensive city in 2016 is ... CNN 2016年11月2日閲覧。
  12. ^ 加茂利男『世界都市』15頁 有斐閣
  13. ^ Dubai most cosmopolitan city globally, 83% population is foreign-born emirates247 2016年11月3日閲覧。
  14. ^ a b The Cities With The Most Billionaires Forbes.com. 2016年3月公表
  15. ^ Demographia World Urban Areas 14th Annual Edition: 201804 2018年5月19日閲覧。
  16. ^ a b c d Demographia:World Urban Areas & Population Projections
  17. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az 2020 Global Cities Index: New priorities for a new world AT Kearney 2020年公表
  18. ^ 加茂利男『世界都市』 61頁 有斐閣
  19. ^ a b 加茂利男『世界都市』 66頁 有斐閣
  20. ^ 加茂利男『世界都市』138頁 有斐閣
  21. ^ a b c 加茂利男『世界都市』121頁 有斐閣
  22. ^ 加茂利男『世界都市』 99-100頁 有斐閣
  23. ^ 独立行政法人 経済産業研究所
  24. ^ a b c d e f g 2017年版 都市比較インデックス 都市パフォーマンスの解読 JLL 2017年10月24日閲覧。
  25. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 世界の都市総合力ランキング([1]
  26. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at The World According to GaWC GaWC 2017年4月2日閲覧。
  27. ^ Triennial Central Bank Survey of foreign exchange and OTC derivatives markets in 2016 Bank of International Settlements 2016年10月30日閲覧。
  28. ^ London Census Profile The Migration Observatory 2016年11月14日閲覧。
  29. ^ The Wealth Report Knight Frank 2016年11月14日閲覧。
  30. ^ London will remain the top financial centre post-Brexit, says Deutsche Bank chief The Telegraph 2016年11月14日閲覧。
  31. ^ GaWC - The World According to GaWC 2004”. www.lboro.ac.uk. 2020年4月29日閲覧。
  32. ^ a b 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「JLL」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  33. ^ 米国旅行誌の最も魅力的な都市ランキングで東京が2年連続1位 日本政府観光局 2017年10月28日閲覧。
  34. ^ Safe Cities Index 2017 The Economist 2017年10月28日閲覧。
  35. ^ 東京の都市力|東京でのビジネスを強力にバックアップする特区”. www.senryaku.metro.tokyo.lg.jp. 2020年4月29日閲覧。
  36. ^ 世界の都市総合力ランキング東京は3位。伸び悩みは「世界で出来ていることが実現できていないため」-不動産投資の調査都市・マーケット記事/2019年11月23日掲載【健美家】”. 健美家. 2020年4月29日閲覧。
  37. ^ 東京は世界都市3位 森ビル系調べ、経済は北京が上に”. 日本経済新聞 電子版. 2020年4月29日閲覧。
  38. ^ 森記念財団から「世界の都市総合力ランキング」等について聞く (2018年12月13日 No.3389) | 週刊 経団連タイムス”. 一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren. 2020年4月29日閲覧。
  39. ^ AT-Kearney PDF (P14参照)
  40. ^ GaWC世界都市ランキング
  41. ^ a b Decoding City Performance JLL 2017年10月14日閲覧。
  42. ^ a b 埴淵 2018, p. 491.
  43. ^ a b c 埴淵 2018, p. 492.
  44. ^ 森記念財団都市戦略研究所 2020, pp. 2–3.
  45. ^ 森記念財団都市戦略研究所 2020, p. 4.
  46. ^ 森記念財団都市戦略研究所 2020, p. 11.
  47. ^ 森記念財団都市戦略研究所 2020, pp. 4–5.
  48. ^ a b c JLL、世界の都市比較インデックスを分析「都市パフォーマンスの解読」を発表 JLL 2017年10月25日閲覧。
  49. ^ 世界の都市活力ランキング「2017年版JLLシティ・モメンタム・インデックス」を発刊 JLL 2017年10月14日閲覧。
  50. ^ a b 埴淵 2008, p. 572.
  51. ^ GaWC Research Bulletin 310 GaWC 2016年10月30日閲覧。
  52. ^ Inventory of World Cities (1998) GaWC 2016年10月30日閲覧。
  53. ^ GaWC - The World According to GaWC 2020” (2020年8月21日). 2021年3月17日閲覧。
  54. ^ Parilla, Jesus Leal Trujillo and Joseph (-001-11-30T00:00:00+00:00). “Redefining Global Cities” (英語). Brookings. 2019年11月30日閲覧。

参考文献

  • 埴淵知哉「GaWCによる世界都市システム研究の成果と課題ー組織論およびNGO研究の視点からー」『地理学評論』第81巻第7号、2008年、571-590頁、doi:10.4157/grj.81.571 
  • 埴淵知哉 著「世界都市ランキング」、経済地理学会 編 編『キーワードで読む経済地理学』原書房、2018年、491-494頁。ISBN 978-4-562-09211-6 
  • 森記念財団都市戦略研究所 編 (2020年12月). “GPCI-2020 SUMMARY”. 2021年3月17日閲覧。

関連項目