「エナガ」の版間の差分
編集の要約なし |
自身の会話ページで指摘を受けたので定義文および分類について再度編集(定義文から属名を除去するなど)、リンク切れしていた出典を新しいものに更新(#種の保全状況評価について埼玉県ではRDBから除外されたので、長崎県でも公式ホームページに掲載されているレッドリストに掲載されている事実が確認できないためそれぞれ除去) |
||
16行目: | 16行目: | ||
}} |
}} |
||
'''エナガ''' (''Aegithalos caudatus''<ref name=" |
'''エナガ'''<ref name="osj"/> (''Aegithalos caudatus''<ref name="iucn" />、柄長<ref>{{Cite Kotobank|柄長|accessdate=2020-11-23}}</ref>{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}) は、鳥綱[[スズメ目]][[エナガ科]]に分類される鳥類<ref>{{Cite book|和書|title=日本の野鳥|publisher=[[学研プラス|学研教育出版]]|date=2010-02-16|author=[[小宮輝之]](監修・執筆)|edition=増補改訂版初版|series=増補改訂フィールドベスト図鑑|isbn=978-4054044364|page=27|issue=8|origdate=2000年5月11日:初版発行}}</ref>{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。<!-- エナガ科は2020年の時点で本種も含め3属13種 --> |
||
== 分布 == |
== 分布 == |
||
[[ユーラシア大陸]]の中[[緯度]]地方を中心に[[ヨーロッパ]]から[[中央アジア]]、[[日本]]まで広く分布する{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。 |
[[ユーラシア大陸]]の中[[緯度]]地方を中心に[[ヨーロッパ]]から[[中央アジア]]、[[日本]]まで広く分布する{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。 |
||
日本では[[九州]]以北に[[留鳥]]または[[漂鳥]]として生息する{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}}{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。 |
日本では[[九州]]以北に[[留鳥]]または[[漂鳥]]として生息する{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}}{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。[[渡り鳥|渡り]]はしない<ref name="世界文化社"/>。 |
||
== 形態 == |
== 形態 == |
||
38行目: | 38行目: | ||
ファイル:ItsukushimaDipperBasin7431.jpg|[[和名]]の由来である[[柄杓]] |
ファイル:ItsukushimaDipperBasin7431.jpg|[[和名]]の由来である[[柄杓]] |
||
</gallery> |
</gallery> |
||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
* [[対馬]] - '''チョウセンエナガ'''''A. c. magnus'' {{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}} |
|||
== 分類 == |
== 分類 == |
||
51行目: | 44行目: | ||
[[ファイル:Long-tailed tit at Tennōji Park in Osaka, March 2016.jpg|right|thumb|亜種エナガ<br />''A. c. trivirgatus'']] |
[[ファイル:Long-tailed tit at Tennōji Park in Osaka, March 2016.jpg|right|thumb|亜種エナガ<br />''A. c. trivirgatus'']] |
||
以下の亜種の分類・分布は、IOC World Bird List (v10.1)に従う<ref name="ioc" />。基亜種を除く日本に分布する亜種の分布・和名は、日本産鳥類目録 改訂第7版に従う<ref name="osj" />。 |
以下の亜種の分類・分布は、IOC World Bird List (v10.1)に従う<ref name="ioc" />。基亜種を除く日本に分布する亜種の分布・和名は、日本産鳥類目録 改訂第7版に従う<ref name="osj" />。 |
||
; ''Aegithalos caudatus caudatus'' (Linnaeus, 1758) <!-- シマエナガ --> |
; ''Aegithalos caudatus caudatus'' (Linnaeus, 1758) <!-- シマエナガ --> |
||
: ヨーロッパ北部および東部 - [[シベリア]]、朝鮮半島、日本 |
: ヨーロッパ北部および東部 - [[シベリア]]、朝鮮半島、日本 |
||
⚫ | :亜種'''シマエナガ''' ''A. c. japonicus'' をシノニムとする説{{Efn2|シマエナガを基亜種 ''A. c. caudatus'' の亜種とする学説が提唱される以前には、基亜種を'''コウライシマエナガ'''と呼称する場合もあった<ref>{{Cite book|title=A Hand-List of the Japanese Birds|publisher=[[日本鳥学会|Ornithological Society of Japan]]|year=1958|author=edited by a special committee of the Ornithological Society of Japan|language=en|page=50|location=[[東京|Tokyo]]|oclc=1434704}}</ref>。}}もある<ref name="IOCリストとの相違">浅井芝樹・岩見恭子・斉藤安行・亀谷辰朗 「スズメ目15科を対象とした日本鳥類目録改訂第7版の学名と分類の検証 第6版およびIOCリストとの相違」『日本鳥学会誌』第65巻 2号、日本鳥学会、2016年、105-128頁。</ref>。シマエナガ(漢字表記:島柄長){{Efn2|シマエナガの「シマ」は「縞」ではなく「島」(=限られた特定の地域、すなわち北海道)の意味{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=499}}。また北海道産であることから「えぞえなが」、頭部が白いことから「[[綿帽子|わたぼうし]]」とも呼ばれる{{Sfn|菅原浩|柿澤亮三|1993|p=216}}。}}{{Sfn|菅原浩|柿澤亮三|1993|p=559}}<ref>{{Cite Kotobank|島柄長|デジタル大辞泉|accessdate=2020-11-23}}</ref>は日本では[[北海道]]に生息する{{Efn2|「本州中部以北で記録されたこともある」とする文献もある{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}}。}}{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}}。本州以南に生息する3亜種とは異なり{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}、黒い眉斑{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}}(過眼線)がなく{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|pp=540-541}}、頭部全体が白い{{Sfn|大西敏一|五百澤日丸|2014|p=540}}{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。ただし、幼鳥はエナガと同様に眉斑などが褐色味を帯びるため、幼鳥の亜種間の区別は難しい{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。 |
||
:亜種'''シマエナガ''' ''A. c. japonicus'' をシノニムとする説もある<ref>浅井芝樹・岩見恭子・斉藤安行・亀谷辰朗 「スズメ目15科を対象とした日本鳥類目録改訂第7版の学名と分類の検証 第6版およびIOCリストとの相違」『日本鳥学会誌』第65巻 2号、日本鳥学会、2016年、105-128頁。</ref>。 |
|||
; ''Aegithalos caudatus alpinus'' (Hablizl, 1783) |
; ''Aegithalos caudatus alpinus'' (Hablizl, 1783) |
||
:[[アゼルバイジャン]]南東部、[[イラン]]北部、[[トルクメニスタン]]南西部 |
:[[アゼルバイジャン]]南東部、[[イラン]]北部、[[トルクメニスタン]]南西部 |
||
; ''Aegithalos caudatus aremoricus'' Whistler, 1929 |
; ''Aegithalos caudatus aremoricus'' Whistler, 1929 |
||
:[[フランス]]西部 |
:[[フランス]]西部 |
||
; ''Aegithalos caudatus europaeus'' (Hermann, 1804) |
; ''Aegithalos caudatus europaeus'' (Hermann, 1804) |
||
:フランス北東部・[[ドイツ]]から[[イタリア]]北部・[[トルコ]]にかけて |
:フランス北東部・[[ドイツ]]から[[イタリア]]北部・[[トルコ]]にかけて |
||
; ''Aegithalos caudatus irbii'' (Sharpe & Dresser, 1871) |
; ''Aegithalos caudatus irbii'' (Sharpe & Dresser, 1871) |
||
:スペイン南部、ポルトガル、[[コルシカ島]] |
:スペイン南部、ポルトガル、[[コルシカ島]] |
||
; ''Aegithalos caudatus italiae'' Jourdain, 1910 |
; ''Aegithalos caudatus italiae'' Jourdain, 1910 |
||
:イタリア中部および南部、[[スロベニア]]南西部 |
:イタリア中部および南部、[[スロベニア]]南西部 |
||
; ''Aegithalos caudatus kiusiuensis'' |
; ''Aegithalos caudatus kiusiuensis'' Kuroda, 1923 |
||
:[[四国]]、[[九州]]<ref name="osj" /> |
:[[四国]]、[[九州]]<ref name="osj" /> |
||
⚫ | |||
; ''Aegithalos caudatus macedonicus'' (Salvadori & Dresser, 1892) |
; ''Aegithalos caudatus macedonicus'' (Salvadori & Dresser, 1892) |
||
:[[アルバニア]]・[[ギリシャ]]から、[[ブルガリア]]・トルコ北西部にかけて |
:[[アルバニア]]・[[ギリシャ]]から、[[ブルガリア]]・トルコ北西部にかけて |
||
; ''Aegithalos caudatus magnus'' |
; ''Aegithalos caudatus magnus'' (Clark, 1907) |
||
:朝鮮半島、[[対馬]]、[[壱岐]]<ref name="osj" /> |
:朝鮮半島、[[対馬]]、[[壱岐]]<ref name="osj" /> |
||
⚫ | |||
; ''Aegithalos caudatus major'' (Radde, 1884) |
; ''Aegithalos caudatus major'' (Radde, 1884) |
||
:トルコ北東部、[[コーカサス]] |
:トルコ北東部、[[コーカサス]] |
||
; ''Aegithalos caudatus passekii''(Zarudny, 1904) |
; ''Aegithalos caudatus passekii''(Zarudny, 1904) |
||
:イラン南西部、トルコ南東部 |
:イラン南西部、トルコ南東部 |
||
; ''Aegithalos caudatus rosaceus'' Mathews, 1938 |
; ''Aegithalos caudatus rosaceus'' Mathews, 1938 |
||
:[[ブリテン諸島]] |
:[[ブリテン諸島]] |
||
; ''Aegithalos caudatus siculus'' (Whitaker, 1901) |
; ''Aegithalos caudatus siculus'' (Whitaker, 1901) |
||
:[[シチリア|シチリア島]] |
:[[シチリア|シチリア島]] |
||
; ''Aegithalos caudatus taiti'' Ingram, 1913 |
; ''Aegithalos caudatus taiti'' Ingram, 1913 |
||
:フランス南部および南西部から、[[スペイン]]中部・[[ポルトガル]]にかけて |
:フランス南部および南西部から、[[スペイン]]中部・[[ポルトガル]]にかけて |
||
; ''Aegithalos caudatus tauricus'' (Menzbier, 1903) |
; ''Aegithalos caudatus tauricus'' (Menzbier, 1903) |
||
:[[クリミア半島]] |
:[[クリミア半島]] |
||
; ''Aegithalos caudatus tephronotus'' (Gunther, 1865) |
; ''Aegithalos caudatus tephronotus'' (Gunther, 1865) |
||
:ギリシャ東部から、[[イラク]]北部・[[シリア]]・トルコ中部にかけて |
:ギリシャ東部から、[[イラク]]北部・[[シリア]]・トルコ中部にかけて |
||
; ''Aegithalos caudatus trivirgatus'' |
; ''Aegithalos caudatus trivirgatus'' (Temminck & Schlegel, 1848) エナガ |
||
:本州、佐渡島、隠岐 |
:本州、[[佐渡島]]、[[隠岐]]<ref name="osj" /> |
||
⚫ | |||
⚫ | |||
== 生態 == |
== 生態 == |
||
主に[[平地]]から[[山地]]にかけての[[森林|林]]{{Efn2|特に[[落葉広葉樹林]]や、[[針葉樹]]との[[混交林|混合林]]を好む<ref name="kotobank"/>。特に林縁部や、[[クリ]]・[[ナラ]]と[[マツ]]の混交した[[天然林|二次林]]でよく見かける<ref name="kotobank"/>。}}に生息するが<ref name="中川 (2010)、204頁" />、木の多い[[公園]]や[[街路樹]]の上などでもみることができる。山地上部にいた個体が越冬のため低地の[[里山]]に降りてくることがある<ref name="高木 (2000)、110-111頁" />。 |
主に[[平地]]から[[山地]]にかけての[[森林|林]]{{Efn2|特に[[落葉広葉樹林]]や、[[針葉樹]]との[[混交林|混合林]]を好む<ref name="kotobank"/>。特に林縁部や、[[クリ]]・[[ナラ]]と[[マツ]]の混交した[[天然林|二次林]]でよく見かける<ref name="kotobank"/>。}}に生息するが<ref name="中川 (2010)、204頁" />、木の多い[[公園]]や[[街路樹]]の上などでもみることができる。山地上部にいた個体が越冬のため低地の[[里山]]に降りてくることがある<ref name="高木 (2000)、110-111頁" />。 |
||
[[繁殖]]期は群れの中につがいで小さな[[縄張り]]を持つ<ref>[[#エナガの個体群の行動圏構造|中村 (1972)、464頁]]</ref>。非繁殖期も小さな群れ{{Efn2|数羽 - 約30羽前後の小群を作り、一定の区域内で行動する{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。}}をつくるが、[[シジュウカラ]]、[[ヤマガラ]]、[[ヒガラ]]、[[メジロ]]、[[コゲラ]]などの違う種の小鳥と混群{{Efn2|ただし、長時間に |
[[繁殖]]期は群れの中につがいで小さな[[縄張り]]を持つ<ref>[[#エナガの個体群の行動圏構造|中村 (1972)、464頁]]</ref>。非繁殖期も小さな群れ{{Efn2|数羽 - 約30羽前後の小群を作り、一定の区域内で行動する{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。}}をつくるが、[[シジュウカラ]]、[[ヤマガラ]]、[[ヒガラ]]、[[メジロ]]、[[コゲラ]]などの違う種の小鳥と混群{{Efn2|ただし、長時間にわたり混群していることはない{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}。}}することも多い<ref name="中川 (2010)、204頁" />。エナガはその混群の先導を行う<ref name="大橋 (2007)、34-35頁" />。また、非繁殖期にはねぐらとなる木の枝に並列し、小さなからだを寄せ合って集団で眠る習性がある<ref name="中川 (2010)、204頁" />。街中の街路樹がねぐらとなることもあり、ねぐらとなった街路樹は夕方にはたくさんのエナガの鳴き声でザワザワと騒がしくなり木の下にはフンがたくさん落とされることになる。地鳴きで仲間を確認しながら、群れで雑木林の中を動き回る<ref name="高木 (2000)、110-111頁" />。 |
||
木の枝先などで小さな[[昆虫類]]・[[クモ]]類・[[木の実]]など{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}、草の[[種子]]を食べる<ref name="世界文化社"/>。特に[[アブラムシ]]を好み<ref name="世界文化社">{{Cite book|和書|title=鳥類|publisher=[[世界文化社]]|date=2004-06-15|edition=初版第1刷発行|series=改訂新版 世界文化生物大図鑑|isbn=978-4418049028|page=242}}</ref>、葉先にいるアブラムシを[[空中浮揚|停空飛行]]しながら捕食したり{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}、枝にぶら下がって種子を食べたりすることもある{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=499}}。また、[[樹皮]]から染み出る[[樹液]]を吸うこともある<ref name="中川 (2010)、204頁" />。 |
木の枝先などで小さな[[昆虫類]]・[[クモ]]類・[[木の実]]など{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}、草の[[種子]]を食べる<ref name="世界文化社"/>。特に[[アブラムシ]]を好み<ref name="世界文化社">{{Cite book|和書|title=鳥類|publisher=[[世界文化社]]|date=2004-06-15|edition=初版第1刷発行|series=改訂新版 世界文化生物大図鑑|isbn=978-4418049028|page=242}}</ref>、葉先にいるアブラムシを[[空中浮揚|停空飛行]]しながら捕食したり{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=498}}、枝にぶら下がって種子を食べたりすることもある{{Sfn|叶内拓哉|安部直哉|2015|p=499}}。また、[[樹皮]]から染み出る[[樹液]]を吸うこともある<ref name="中川 (2010)、204頁" />。 |
||
107行目: | 105行目: | ||
== 種の保全状況評価 == |
== 種の保全状況評価 == |
||
日本の以下の[[都道府県]]でレッドリストの指定を受けている<ref>{{Cite web |
日本の以下の[[都道府県]]でレッドリストの指定を受けている<ref>{{Cite web|url=http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02180160386|title=エナガ|website=日本のレッドデータ検索システム|publisher=[[EnVision環境保全事務所]]|accessdate=2020-11-30|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20201130134524/http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02180160386|archivedate=2020-11-30}} - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。</ref>。 |
||
* 準絶滅危惧(NT) - [[東京都]]北多摩地区<ref>{{Cite web |
* 準絶滅危惧(NT) - [[東京都]]北多摩地区<ref>{{Cite web|url=https://tokyo-rdb.jp/kohyou.php?serial=967|title=エナガ|website=東京都レッドデータブック|publisher=東京都|year=2013|accessdate=2020-11-30|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20201130135754/https://tokyo-rdb.jp/kohyou.php?serial=967|archivedate=2020-11-30}}</ref> |
||
* 地帯別危惧 - [[埼玉県]]<ref>{{Cite web |url=http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/351262.pdf |title=埼玉県レッドデータブック2008動物編 |publisher=埼玉県 |format=PDF |pages=104 |date=2008 |accessdate=2013-10-24}}{{リンク切れ|date=2020年6月}}</ref> |
|||
* 絶滅の恐れのある地域個体群(LP) - [[長崎県]](チョウセンエナガ) |
|||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
2020年11月30日 (月) 14:09時点における版
この記事の正確性に疑問が呈されています。 |
エナガ | |||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Aegithalos caudatus caudatus
| |||||||||||||||||||||||||||
保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Aegithalos caudatus (Linnaeus, 1758)[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
エナガ[3] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Long-tailed tit[1][2] Long-tailed bushtit[1] |
エナガ[3] (Aegithalos caudatus[1]、柄長[4][5]) は、鳥綱スズメ目エナガ科に分類される鳥類[6][5]。
分布
ユーラシア大陸の中緯度地方を中心にヨーロッパから中央アジア、日本まで広く分布する[5]。
日本では九州以北に留鳥または漂鳥として生息する[7][5]。渡りはしない[8]。
形態
体長は約14 cm[7][5][9]。翼開長は約16 cm[9][10]。体重は5.5 - 9.5 g。左記体長には長い尾羽を含むので、尾羽を含めない身体はスズメ(体重約24 g[11])と比べるとずいぶん小さい[9]が、羽が柔らかく膨らみ、尾が長いため、実際よりやや大きく見える[12]。尾の長さは約75 mm[12]。
黒いくちばしは小さく[13](約7 mm)[12]、首が短く丸い体に長い尾羽がついた小鳥である[14]。雌雄同形同色で、外観上の区別はできない[14]。
成鳥は瞼が黄色く[7]、南方系の亜種(エナガなど)の場合は黒色の太い眉斑があるが、北方系の亜種(シマエナガなど)の場合は頭部全体が白い[15]。眉斑を有する南方系亜種の場合[15]、眉斑はそのまま背中まで太く黒い模様になっている[7]。肩のあたり(背の両側)と尾の下(下尾筒)は淡い葡萄色で[7]、額から頭上[8]、および顔と体下面は白い[7]。翼・尾は黒い[7]。羽毛は薄褐色の初列風切が10枚で野外では黒く見え、次列風切りが6枚で重ねると黒く見え、3列風切が3枚で他の風切羽より褐色味が強く、尾羽は6枚で内側3枚は黒色、外側3枚は黒色に白色の模様が混じる[16]。
幼鳥は成鳥で黒色になる部分が淡色で[5]、眉斑などは褐色味を帯びる[7]。また頬は淡黄色で[7]、瞼は赤く、背・下腹部の淡い葡萄色味はない[5]。
学名は、長い尾をもつカラ類を意味する[17]。和名は極端に長い尾(全長14 cmに対して尾の長さが7-8 cm)を柄の長い柄杓に例えたこと由来し[9]、江戸時代には「柄長柄杓(えながひしゃく)」、「柄柄杓(えびしゃく)」、「尾長柄杓(おながひしゃく)」、「柄長鳥(えながどり)」などとも呼ばれていた[11][17]。
-
尾羽が長いのが特徴
-
飛行中の様子
分類
以下の亜種の分類・分布は、IOC World Bird List (v10.1)に従う[2]。基亜種を除く日本に分布する亜種の分布・和名は、日本産鳥類目録 改訂第7版に従う[3]。
- Aegithalos caudatus caudatus (Linnaeus, 1758)
- ヨーロッパ北部および東部 - シベリア、朝鮮半島、日本
- 亜種シマエナガ A. c. japonicus をシノニムとする説[注 1]もある[19]。シマエナガ(漢字表記:島柄長)[注 2][22][23]は日本では北海道に生息する[注 3][7]。本州以南に生息する3亜種とは異なり[5]、黒い眉斑[7](過眼線)がなく[24]、頭部全体が白い[7][5]。ただし、幼鳥はエナガと同様に眉斑などが褐色味を帯びるため、幼鳥の亜種間の区別は難しい[5]。
- Aegithalos caudatus alpinus (Hablizl, 1783)
- アゼルバイジャン南東部、イラン北部、トルクメニスタン南西部
- Aegithalos caudatus aremoricus Whistler, 1929
- フランス西部
- Aegithalos caudatus europaeus (Hermann, 1804)
- フランス北東部・ドイツからイタリア北部・トルコにかけて
- Aegithalos caudatus irbii (Sharpe & Dresser, 1871)
- スペイン南部、ポルトガル、コルシカ島
- Aegithalos caudatus italiae Jourdain, 1910
- イタリア中部および南部、スロベニア南西部
- Aegithalos caudatus kiusiuensis Kuroda, 1923
- 四国、九州[3]
- キュウシュウエナガ A. c. kiusiuensis [7]。胸の黒斑が薄い[12]。
- Aegithalos caudatus macedonicus (Salvadori & Dresser, 1892)
- アルバニア・ギリシャから、ブルガリア・トルコ北西部にかけて
- Aegithalos caudatus magnus (Clark, 1907)
- 朝鮮半島、対馬、壱岐[3]
- チョウセンエナガA. c. magnus [7]
- Aegithalos caudatus major (Radde, 1884)
- トルコ北東部、コーカサス
- Aegithalos caudatus passekii(Zarudny, 1904)
- イラン南西部、トルコ南東部
- Aegithalos caudatus rosaceus Mathews, 1938
- ブリテン諸島
- Aegithalos caudatus siculus (Whitaker, 1901)
- シチリア島
- Aegithalos caudatus taiti Ingram, 1913
- フランス南部および南西部から、スペイン中部・ポルトガルにかけて
- Aegithalos caudatus tauricus (Menzbier, 1903)
- クリミア半島
- Aegithalos caudatus tephronotus (Gunther, 1865)
- ギリシャ東部から、イラク北部・シリア・トルコ中部にかけて
- Aegithalos caudatus trivirgatus (Temminck & Schlegel, 1848) エナガ
- 本州、佐渡島、隠岐[3]
日本産の亜種
日本にはシマエナガ(北海道、基亜種のシノニムとする説あり[19])・エナガ(本州など)・キュウシュウエナガ(四国および九州)・チョウセンエナガ(対馬など)の4亜種が生息するが、北方系亜種であるシマエナガを除き、いずれも南方系の亜種である[15]。南方系3亜種の場合[15]、(成鳥の)亜種間の羽色にはほとんど差異はない[24]。
生態
主に平地から山地にかけての林[注 4]に生息するが[9]、木の多い公園や街路樹の上などでもみることができる。山地上部にいた個体が越冬のため低地の里山に降りてくることがある[13]。
繁殖期は群れの中につがいで小さな縄張りを持つ[25]。非繁殖期も小さな群れ[注 5]をつくるが、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ、メジロ、コゲラなどの違う種の小鳥と混群[注 6]することも多い[9]。エナガはその混群の先導を行う[11]。また、非繁殖期にはねぐらとなる木の枝に並列し、小さなからだを寄せ合って集団で眠る習性がある[9]。街中の街路樹がねぐらとなることもあり、ねぐらとなった街路樹は夕方にはたくさんのエナガの鳴き声でザワザワと騒がしくなり木の下にはフンがたくさん落とされることになる。地鳴きで仲間を確認しながら、群れで雑木林の中を動き回る[13]。
木の枝先などで小さな昆虫類・クモ類・木の実など[5]、草の種子を食べる[8]。特にアブラムシを好み[8]、葉先にいるアブラムシを停空飛行しながら捕食したり[5]、枝にぶら下がって種子を食べたりすることもある[20]。また、樹皮から染み出る樹液を吸うこともある[9]。
3月ごろから繁殖期に入りつがいとなって、樹木の枝や幹のまたに、苔をクモの糸[注 7]で丸くまとめた袋状の精巧な巣を作り[注 8][9]、その巣は樹幹の瘤のように見える[12]。このため巧婦鳥(たくみどり)と呼ばれることもあった[17]。4月 - 6月に白色有斑の卵を7 - 12個産み、主に雌が12 - 14日間抱卵する[注 9][8]。4月には雛が見られることがある[10]。産座には大量の羽毛が敷きつめられる[9]。雛は14-17日で巣立ちする。つがい以外の繁殖に失敗した雄が育雛に参加することもあり[9][14][26]、雌だけでなく雄が給餌する場合もある[15]。また、シジュウカラの育雛にも参加する例が確認されている[27]。
日本では岐阜県で2001 - 2004年に行われた178巣の調査では、56巣がなんらかの捕食者(ハシボソガラス・ハシブトガラス・ニホンイタチ・ヘビ類)による襲撃により繁殖に失敗し (31.5 %) 、繁殖に成功したのは51巣 (28.7 %) という報告例がある[28]。
さえずりは、「チーチー」、「ツリリ」、「ジュリリ」[9]。地鳴きは「チュリリ」、「ジュリリ」[9]。猛禽類のハイタカ、ツミ、モズなどにより捕食されることがあり、これらの外敵を察知すると警戒発声を行う[29]。
種の保全状況評価
日本の以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[30]。
脚注
注釈
- ^ シマエナガを基亜種 A. c. caudatus の亜種とする学説が提唱される以前には、基亜種をコウライシマエナガと呼称する場合もあった[18]。
- ^ シマエナガの「シマ」は「縞」ではなく「島」(=限られた特定の地域、すなわち北海道)の意味[20]。また北海道産であることから「えぞえなが」、頭部が白いことから「わたぼうし」とも呼ばれる[21]。
- ^ 「本州中部以北で記録されたこともある」とする文献もある[7]。
- ^ 特に落葉広葉樹林や、針葉樹との混合林を好む[15]。特に林縁部や、クリ・ナラとマツの混交した二次林でよく見かける[15]。
- ^ 数羽 - 約30羽前後の小群を作り、一定の区域内で行動する[5]。
- ^ ただし、長時間にわたり混群していることはない[5]。
- ^ クモの糸だけでなく、ガの繭など虫の糸を用いる場合もある[15]。
- ^ 巣について「枝または幹に、蘚苔類をクモの糸で楕円形にまとめ、ウメノキゴケをはりつけた巣をとりつける」とする文献もある[8]。また、巣の内部には各種の羽毛が詰まっている[12]。
- ^ 日中は雌のみが抱卵するが、夜は雄も抱卵を行う[9]。
出典
- ^ a b c d e BirdLife International. 2016. Aegithalos caudatus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T103871923A87471081. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T103871923A87471081.en. Downloaded on 14 June 2020.
- ^ a b c Bushtits, leaf warblers, reed warblers, Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2020. IOC World Bird List (v10.1). https://doi.org/10.14344/IOC.ML.10.1. (Downloaded 14 June 2020)
- ^ a b c d e f 日本鳥学会 「エナガ」『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会(目録編集委員会)編、日本鳥学会、2012年、282-283頁。
- ^ 「柄長」 。コトバンクより2020年11月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 叶内拓哉 & 安部直哉 2015, p. 498.
- ^ 小宮輝之(監修・執筆)『日本の野鳥』8号(増補改訂版初版)、学研教育出版〈増補改訂フィールドベスト図鑑〉、2010年2月16日(原著2000年5月11日:初版発行)、27頁。ISBN 978-4054044364。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 大西敏一 & 五百澤日丸 2014, p. 540.
- ^ a b c d e f 『鳥類』(初版第1刷発行)世界文化社〈改訂新版 世界文化生物大図鑑〉、2004年6月15日、242頁。ISBN 978-4418049028。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 中川 (2010)、204頁
- ^ a b 叶内 (2006/3)、158頁
- ^ a b c 大橋 (2007)、34-35頁
- ^ a b c d e f 岡田要・内田清之助・内田亨(著者代表。エナガの種解説は内田清之助)『新日本動物圖鑑』 下(9版発行)、北隆館、1988年5月10日(原著1965年1月25日(初版印刷))、644頁。
- ^ a b c 高木 (2000)、110-111頁
- ^ a b c 真木 (2012)、213頁
- ^ a b c d e f g h 「エナガ」 。コトバンクより2020年11月23日閲覧。
- ^ 高田 (2008)、73頁
- ^ a b c 国松 (1995)、142頁
- ^ edited by a special committee of the Ornithological Society of Japan (1958) (英語). A Hand-List of the Japanese Birds. Tokyo: Ornithological Society of Japan. p. 50. OCLC 1434704
- ^ a b 浅井芝樹・岩見恭子・斉藤安行・亀谷辰朗 「スズメ目15科を対象とした日本鳥類目録改訂第7版の学名と分類の検証 第6版およびIOCリストとの相違」『日本鳥学会誌』第65巻 2号、日本鳥学会、2016年、105-128頁。
- ^ a b 叶内拓哉 & 安部直哉 2015, p. 499.
- ^ 菅原浩 & 柿澤亮三 1993, p. 216.
- ^ 菅原浩 & 柿澤亮三 1993, p. 559.
- ^ 「島柄長」『デジタル大辞泉』 。コトバンクより2020年11月23日閲覧。
- ^ a b 大西敏一 & 五百澤日丸 2014, pp. 540–541.
- ^ 中村 (1972)、464頁
- ^ 上野 (2001)、83頁
- ^ 生田 (1989)、282-283頁
- ^ 赤塚隆幸 「エナガの卵や巣内ビナの捕食者」『Strix』23巻、日本野鳥の会、2005年、51-58頁。
- ^ 赤塚 (2005)、63頁
- ^ “エナガ”. 日本のレッドデータ検索システム. EnVision環境保全事務所. 2020年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
- ^ “エナガ”. 東京都レッドデータブック. 東京都 (2013年). 2020年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
参考文献
- 赤塚隆幸「冬期のエナガの捕食者とそれに対する警戒反応」(PDF)『野外鳥類学論文集 Strix』第23巻、日本野鳥の会、2005年、NAID 40006706766。
- 生田実「シジュウカラとエナガの共同育雛」『野外鳥類学論文集 Strix』第8巻、日本野鳥の会、1989年。
- 上野吉雄、佐藤英樹「広島県沿岸部におけるエナガ Aegithalos caudatus のつがい形成と冬季群形成」『日本鳥学会誌』第50巻第2号、日本鳥学会、2001年5月31日、NAID 10007421554。
- 大橋弘一『庭で楽しむ野鳥の本』山と溪谷社、2007年11月1日。ISBN 978-4635596190。
- 叶内拓哉、安部直哉『日本の野鳥』7号(初版第2版)、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2014年1月5日(原著2014年1月5日:初版第1刷)。ISBN 978-4635070331。
- 真木広造(写真)大西敏一・五百澤日丸 (解説)『決定版 日本の野鳥650』(初版第1刷)平凡社、2014年1月31日、540-541頁。ISBN 978-4582542523 。
- 叶内拓哉『絵解きで野鳥が識別できる本』文一総合出版、2006年3月。ISBN 978-4829901717。
- 国松俊英『名前といわれ 日本の野鳥図鑑1 野山の鳥』偕成社、1995年4月。ISBN 4035293601。
- 黒田長久(監修) 著、C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 編『鳥III』 9巻、平凡社〈動物大百科〉、1986年10月、158頁。ISBN 978-4582545098。
- 菅原浩(編著者)、柿澤亮三(編著者)『図説 日本鳥名由来辞典』(第1刷発行)柏書房、1993年3月25日。ISBN 978-4760107469 。
- 高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-野山の鳥』山と溪谷社、2000年8月。ISBN 4635063313。
- 高田勝、叶内拓哉『野鳥の羽ハンドブック』文一総合出版、2008年11月11日。ISBN 978-4829910146。
- 中川雄三(監修) 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325。
- 中村登流「エナガの蕃殖期生活の観察」『山階鳥類研究所研究報告』第3巻第3号、山階鳥類研究所、1962年12月、NAID 40018555831。
- 中村登流「エナガの個体群の行動圏構造II 繁殖期の行動圏とテリトリアリズム」『山階鳥類研究所研究報告』第6巻第5-6号、山階鳥類研究所、1972年12月、NAID 40018555668。
- 真木広造『名前がわかる野鳥大図鑑』永岡書店、2012年4月10日。ISBN 978-4522430866。
関連項目
- 小原玲『シマエナガちゃん』講談社、2016年11月2日。ISBN 978-4062203401。(「♪鳥くんのシマエナガ講座」と「シマエナガQ&A」も収録。)