「マタパン岬沖海戦」の版間の差分
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2020年8月16日 (日) 15:33時点における版
マタパン岬沖海戦 | |
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軽巡洋艦パース、エイジャックス、オライオン | |
戦争:第二次世界大戦 | |
年月日:1941年3月27日-3月29日 | |
場所:地中海、ギリシャマタパン岬沖 | |
結果:連合軍の勝利 | |
交戦勢力 | |
イギリス海軍 オーストラリア海軍 | イタリア海軍 |
指導者・指揮官 | |
アンドルー・カニンガム提督 | アンジェロ・イアキーノ提督 |
戦力 | |
空母1、戦艦3、軽巡洋艦3、駆逐艦17 | 戦艦1、重巡洋艦6、軽巡洋艦2、駆逐艦17 |
損害 | |
雷撃機1機 | 重巡洋艦3、駆逐艦2沈没、戦艦1大破 |
マタパン岬沖海戦[1][2](マタパンみさきおきかいせん、英: Battle of Cape Matapan, 伊: Battaglia di Capo Matapan)は、第二次世界大戦中の1941年3月に、地中海でイギリス海軍及びオーストラリア海軍とイタリア海軍の間で行われた海戦。
背景
1940年10月28日、イタリア軍はアルバニアからギリシャへの侵攻を開始した(ギリシャ・イタリア戦争)。だが、そのイタリア軍はギリシャ軍に撃退され、逆にアルバニアへ侵攻された。これを見かねたドイツが武力を背景にした外交で枢軸国への強制参加を着々と進め、1941年3月1日にブルガリアが、3月25日にはユーゴスラヴィアが枢軸国に加わった。そして、ソ連侵攻を控えたドイツ軍はイギリス軍の脅威を排除するためギリシャ侵攻を予定していた。
1941年2月14日、ミラノでイタリア海軍の参謀長アルトゥーロ・リッカルディとドイツ海軍のエーリヒ・レーダーが会談を行った。ドイツ側はエジプト・ギリシャ間の補給路に対する攻撃を求めたが、リッカルディはそれには反対した。
イギリス軍は2月25日にはドデカネス諸島のカステロリゾ島占領を試み(アブステンション作戦)、3月にはギリシャへの陸軍部隊の移送(ラスター作戦)を開始した。このようなイギリス軍の動きもあり、ドイツや作戦実行を求めていたアンジェロ・イアキーノ中将[3]などの圧力もあって、イタリア海軍は3月16日に作戦実行を決めた。そして、3月26日にイタリア艦隊は出撃した。
経過
戦闘前
イギリス軍は通信傍受や暗号解読などにより、イタリア海軍による船団攻撃を予期した。航行中であったAG9船団(エジプトからギリシャへ向かう船団)は船団を引き返させ、3月27日にギリシャから出発予定であったGA8船団はギリシャに留め置いた。3月27日夕方、アレクサンドリアからはアンドルー・カニンガム提督率いる、3隻の戦艦、1隻の空母を基幹とする地中海艦隊が出撃した。さらに、エーゲ海で行動中であった巡洋艦部隊も合流が命じられた。
最初の戦闘
28日朝、イギリスの巡洋艦部隊(軽巡洋艦エイジャックス、オライオン、グロスター、パース、駆逐艦4隻、プリダム・ウィッペル中将指揮)が3つに別れていたイタリア艦隊の一つ(重巡洋艦トリエステ、トレント、ボルツァーノ、駆逐艦3隻、第3戦隊司令官ルイージ・サンソネッチ上級少将[4]指揮)と遭遇し、8時12分にイタリアの重巡洋艦が砲撃を開始した。イギリス軍は東へ向かい、イタリア軍はそれを追撃したが、イギリス軍の動きを罠と考えたイアキーノは8時55分にサンソネッチに対し追跡を中止するよう命じた。そのため、サンソネッチの部隊は北西に向かい戦闘は中断した。この戦闘では両軍とも命中弾は得られなかった。
北西に向かったサンソネッチの部隊を追跡したプリダム・ウィッペルの部隊は、イタリアの戦艦ヴィットリオ・ヴェネトと遭遇した。10時55分、ヴィットリオ・ヴェネトは砲撃を開始した。また、サンソネッチの部隊も攻撃のため向きを変えたが、イギリス艦隊は南へ逃走した。ヴィットリオ・ヴェネトが航空攻撃を受けたことで戦闘は停止した。ヴィットリオ・ヴェネトの砲撃で命中弾は出なかった。
攻撃したのは9時38分に空母フォーミダブルから発進していたアルバコア6機で、11時27分にイタリア艦隊に対して攻撃を開始した。ヴィットリオ・ヴェネトに向けて発射された魚雷はすべて外れたが、敵空母の存在が明らかとなったことで11時40分にイアキーノ提督は撤退を決めた。
イギリス軍の航空攻撃
12時5分、クレタ島マレメから発進したソードフィッシュ3機がイタリアの重巡洋艦ボルツァーノを攻撃したが失敗に終わった。15時20分、フォーミダブルから発進したアルバコア3機による攻撃がおこなわれ、ヴィットリオ・ヴェネトの左舷に魚雷1本が命中した。
19時30分頃、フォーミダブルから発進したアルバコア6機とクレタ島マレメから発進したソードフィッシュ2機がイタリア艦隊を捕捉した。この攻撃隊の攻撃で19時58分に重巡洋艦ポーラの右舷に魚雷1本が命中した。
20時48分、イアキーノは第1戦隊司令官カルロ・カッタネオ上級少将に対し損傷したポーラの援護に向かうように命じた。そして、重巡洋艦ザラ、フィウメ、4隻の駆逐艦がポーラの元へ向かった。
夜間の戦闘
20時15分、先行していたプリダム・ウィッペルの巡洋艦がレーダーで重巡洋艦ポーラを探知した。22時10分には戦艦ヴァリアントのレーダーもそれを捉えた。続いて重巡洋艦ザラ、フィウメなども捉えられた。
22時27分、戦艦ウォースパイトが重巡洋艦フィウメに対して砲火を開いた。戦艦ウォースパイト、ヴァリアント、バーラムの砲撃を受けた重巡洋艦フィウメ、ザラ、駆逐艦ヴィットーリオ・アルフィエーリの3隻は短時間で大破炎上した。
フィウメは23時頃に沈没した。ザラも、駆逐艦ジャーヴィスに魚雷を打ち込まれて29日2時40分に沈んだ。ヴィットーリオ・アルフィエーリは23時15分に駆逐艦スチュアートによって沈められた。
また、イタリアの駆逐艦ジョズエ・カルドゥッチも駆逐艦ハヴォックの攻撃で23時30分に沈没した。そして、重巡洋艦ポーラも乗員の救助後に駆逐艦ジャーヴィスとヌビアンが魚雷を打ち込み、29日4時10分に沈没した。
参加艦艇
イギリス海軍
地中海艦隊(A部隊、B部隊、D部隊)
- A部隊 アンドルー・カニンガム提督(地中海艦隊司令長官代理)
- B部隊 ヘンリー・プリダム・ウィッペル提督
- D部隊
イタリア海軍
本隊(アンジェロ・イアッキーノ中将)
- 艦隊旗艦 - 戦艦:ヴィットリオ・ヴェネト
- 第8駆逐隊 - 駆逐艦:グラナティーレ、フチニエーレ、ベルサリエーレ、アルピーノ
- 第3戦隊(ルイージ・サンソネッチ上級少将)
- 偵察部隊(カルロ・カッタネオ上級少将)
- 第8戦隊(アントニオ・レグナーニ上級少将)
- 第2巡洋艦隊 - 軽巡洋艦:ルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ、ジュゼッペ・ガリバルディ
- 第16駆逐隊 駆逐艦:エマヌエレ・ペッサーノ、ニコロソ・ダ・レッコ
その後
海戦の結果、イタリア海軍内部では、艦隊保全主義の考えがいっそう強くなり、もっぱら本国周辺で活動するようになった。その反面、東地中海で、イギリス海軍の制海権に対抗するものは、ドイツ空軍だけという状況になった。
連合軍の勝因
連合軍の勝因は戦力の優位だけでなくイギリス海軍のレーダーによるものが大きかった。今回の海戦の勝敗を分けたのはレーダー装備の有無、その性能差によるところが大きい[5]。
参考文献
- Jack Greene and Alessandro Massignani, The Naval War in the Miditerranean, Chatham Publishing, 1998, ISBN 1-86176-190-2
- Geoffrey Bennett, Naval Battles of World War Two, Pen & Sword Books, 2003, ISBN 0-85052-989-1
- V・E・タラント 『戦艦ウォースパイト―第二次大戦で最も活躍した戦艦―』 井原裕司訳、元就出版社、1998年、ISBN 4-906631-38-X
出典・引用・脚注
- ^ 福田誠、光栄出版部 編集『第二次大戦海戦事典 W.W.II SEA BATTLE FILE 1939~45』光栄、1998年、ISBN 4-87719-606-4、262ページ
- ^ 『世界の艦船 増刊第41集 イタリア戦艦史』海人社、1994年、126ページ
- ^ Ammiraglio di squadra。英訳はSquadron Vice Admiral(フランス語のVice-amiral d'escadreより転じて。)。
- ^ Ammiraglio di divisione。英訳はvice admiral。ただし、職席は戦隊司令官に限定される。
- ^ 世界の艦船増刊第67集