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2020年8月2日 (日) 22:22時点における版
『夏への扉』(なつへのとびら、原題:The Door into Summer) は、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインが1956年に発表したSF小説。
概要
タイムトラベルを扱ったSF小説が直面する一般的な問題である、「自分自身との遭遇」、「未来からのタイムトラベルによる過去の変更」、「タイムトラベルを使って「将来の出来事」を変えることが倫理的かどうか」などを扱った初期のSF小説の一つである。また、「猫SF(あるいは猫小説)」の代表作としても知られる。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のアイデアの元になった小説。
そのロマンティックなストーリーが日本のSFファンに愛され、日本のSFファンが海外の長編SFのベストを選ぶ企画では、しばしば本作が1位に選出されている。(評論家・作家等が選ぶベストでは、そこまでの高い評価はされていない)。
タイムトラベル以外に扱われているガジェットとして、家庭用ロボットが一般への普及だけでなく、動作のプログラミングや特殊な機能・頻繁に利用する機能を登録する外部記憶媒体の概念(「メモリー・チューブ」)など、利用法についても現実的な設定が施されている。この他、ワープロ(もしくはCAD)に酷似した製図用タイプライターなど、個人用端末も登場する。また、この作品の発表の4年前の1952年にジェフェリー・ダマーによって考案・発表されたばかりの集積回路の原型(現在の集積回路と異なり配線はプリントされず後付、ほぼ後年(1958年)のキルビー特許に相当する)が早くも登場する。
この作品は、ハインラインが当時飼っていた愛猫の「ピクシー」にちなんで執筆された。[1]
あらすじ
舞台は1970年のロサンゼルス(原作発表時の近未来)。そこでは人工冬眠が実用化され、未来への片道旅行が流行っていた。
主人公ダンの愛猫ピートは、冬になると家中の扉を開けてくれとせがむ。ピートは、扉のどれかが明るく楽しい夏へ通じていると信じて疑わず、「夏への扉」を探しつづけ、決して諦めないのだ。
そして、ダンもまた「夏への扉」を探していた。
ダンは親友のマイルズと会社を興し、ダンは開発を、マイルズは営業を担当し、業績は順調に伸ばしていく。ダンは、マイルズの義娘で、リッキィというあだ名の少女とも仲が良かった。
そして株式会社設立のために美人秘書ベルを仲間に加え、ダンはベルと結婚話を進めるなど幸福の絶頂にあった。ダンは既存の技術をこねくり回し、家事用ロボット「文化女中器(ハイヤード・ガール、Hired Girl、福島正実による訳語)」を発明。しかし、質のいい商品を送り出したいダンは、企業をいち早く大きくさせたいマイルズと運営方針をめぐって対立。またベルの裏切りによって会社を追い出され全てを失う。
失意のまま、ピートと共に冷凍睡眠で30年間の眠りにつく決意をするダンだったが、直前で考えを改め、2人に復讐しようとする。しかし返り討ちにあい、ピートは行方不明、ダンは麻薬を打たれて人事不省のまま冷凍睡眠に送り込まれる。
そして西暦2000年、ダンは目覚める。保険会社が倒産していたため財産をすっかりなくしていたダンは、自動車解体の職を経験しながら失った30年の知識を蓄え、文化女中器製造会社に転職する。その過程で自分の頭の中で思い描いていた新型の製図器がそっくりそのまま世の中に普及していることを知る。偶然と考えたダンだったが、特許の記録を調べてみれば自分と同姓同名の人物が1970年に特許を取得している。さらにかつての会社は文化女中器で成功しているものと思われたが、倒産していた。そしてダンが手を下すまでもなくマイルズは若死にし、ベルは老醜の生き恥をさらしていた。自分の記憶と事実の不整合に悩むダンは、同僚のチャックから軍事機密とされているタイムマシンの存在を知る。そのタイムマシンは、過去と未来のどちらに跳ぶのかわからない未完成の代物であったが、ダンは2分の1の確率に賭け、発明者の物理学者トゥィッチェル教授を半ば騙す形で時間旅行に挑戦し、無事2001年から1970年に跳ぶことに成功する。
過去の世界へ着陸する様子をサットン夫妻に目撃されてしまうが、事情を説明したダンはサットン夫妻に助けられながら、製図器の開発などに力を注ぐ。そして自分が未来に送り込まれた日になるとマイルズの家に赴き、ピートを保護、さらに彼らが奪い取った自分の発明品の新型ロボットを密かに奪回の上破壊。それよりも更に高性能なロボットを開発して、新企業設立計画とともにサットンに1970年で開発したものを託し、新企業を設立するよう勧める。冷凍睡眠の予定日、ダンはリッキィのいるサマー・キャンプ地へ行くと、もしまた会いたいと思えば21歳になったら冷凍睡眠をするようにと言い残しお別れをする。ピートと共に再び冷凍睡眠で2001年の世界へ舞い戻ったダンは、善人サットン夫妻が返してくれた自分の会社と愛猫を取り戻し、真に自分を想ってくれる恋人リッキィを手に入れるのだった。
登場人物
- ダニエル・ブーン・デイヴィス(通称 ダン、愛称 ダニー)
- 主人公。機械技師で文化女中器の発明者。根っからの技術者肌で世事には疎いところがある。名前の由来はダニエル・ブーンで、父親が名づけた。
- 護民官ペトロニウス(ピート)
- 主人公の愛猫。オス。ダンの親友で喧嘩が強い。名の由来は古代ローマ帝国のネロの側近から。なお、邦訳では「護民官」とされているラテン語「Arbiter」は本来「審判者」程の意。この語に「護民官」の意はない。
- マイルズ・ジェントリイ
- 主人公の親友。元弁護士。主人公と一緒に会社を興すが裏切る。肥満のようだ。
- ベリンダ・ダーキン(ベル)
- 主人公の会社に雇われた女性事務員。マイルズを唆して主人公を裏切らせる。実は詐欺師。
- 「Belle S. Darkin」は『美人・美しい』に引っ掛けてある。
- フレドリカ(愛称リッキィ、 リッキィ・ジェントリイ)
- マイルズの義理の娘(ただし籍は入っていない)。ピートと仲が良い。ダンとも仲がよかった。
- 『六週間戦争』が始まるまではダンと とても仲が良かったが、
- ダンが六週間戦争で家族と妹を失ったショックからダンとリッキイは疎遠になってしまった。
- チャック・フロイデンバーグ (愛称チャック)
- 技師。西暦2000年の世界で主人公の友人となる。かつてトウィッチェルの助手をしていた。
- ヒューバート・トウィッチェル (トウィッチェル博士、トウィッチェル教授)
- 西暦2000年の大学教授で天才物理学者。タイムマシンの発明者だが、そのタイムマシンは「二つの同質量の物体を同時に過去と未来に飛ばす。ただし、どっちの物体が過去と未来のどっちに行くかはわからない。その上、送り出すことはできても連れ戻すことはできない」という実用性を欠く物だったため世に認められず、現在は酒で身を持ち崩している。
- 「Dr. Hubert Twitchell 」Twitchellは 『なじるひと』『愚かなひと』に引っ掛けてある。
- サットン夫妻
- 過去に舞い戻ったダンと最初に出会った。夫は現役弁護士で夫婦ともに主人公を疑わない誠実な人柄。ヌーディスト。ダンの新たな親友となり彼の計画に従って新会社を設立する。
出版
- 初出 - ファンタジー・アンド・サイエンス・フィクション誌 1956年10月号-12月号掲載
- ハードカバー版刊行 - 1957年
- 『夏への扉』 加藤喬訳、"講談社S・Fシリーズ"IV(1958年)
- 『夏への扉』 福島正実訳、"ハヤカワ・SF・シリーズ"(1963年)
- 『未来への旅』 福島正実訳、講談社"世界の科学名作"13(1965年)
- 『夏への扉』 福島正実訳、早川書房"世界SF全集"12(1971年)
- 『夏への扉』 福島正実訳、ハヤカワ文庫SF(1979年)
- 『夏への扉[英語版ルビ訳付]』 講談社"ルビー・ブックス"(2000年)
- 『夏への扉[新訳版] 』 小尾芙佐訳、早川書房(2009年) ISBN 978-4-15-209059-1
- 『夏への扉』 福島正実訳, ハヤカワ文庫 (2010年)(1979年版の新装版) ISBN 978-4-15-011742-9
他の媒体
青春アドベンチャーでラジオドラマ化されている。
この作品をモチーフとした難波弘之の同名楽曲(『センス・オブ・ワンダー』(1979年・キングレコード SKS(S)-1032) 収録:吉田美奈子作詞/山下達郎作曲)がある。 また、山下も自身のアルバム『RIDE ON TIME』(1980年)にセルフカバーを収録している。
舞台
演劇集団キャラメルボックスによって2011年に舞台化。脚本・演出は成井豊+真柴あずき。東日本大震災により3月11日 - 13日の東京公演が中止された。 2018年3月に、同じく演劇集団キャラメルボックスで再演された[2]。
出演者
- ダニエル・デイヴィス - 畑中智行(2011年・2018年)
- ピート - 筒井俊作(2011年・2018年)
- リッキイ・ジェントリイ - 実川貴美子(2011年)/木村玲衣(2018年)
- マイルズ・ジェントリイ/他多数 - 大内厚雄(2011年・2018年)
- ベル・ダーキン/他多数 - 岡田さつき(2011年)/原田樹里(2018年)
- ジョン・サットン/ 他多数- 西川浩幸(2011年)/井俣太良(2018年)
- ジェニイ・サットン/他多数 - 坂口理恵(2011年)/百花亜希(2018年)
- チャック・フロイデンバーグ/他多数 - 多田直人(2011年)/竹鼻優太(2018年)
- マクビー/他多数 - 渡邊安理(2011年)/元木諒(2018年)
- ハイヤード・ガール/他多数 - 稲野杏那(2011年)/石川彩織(2018年)
- 勤勉ビーバー/他多数 - 林貴子(2011年)/金城あさみ(2018年)
- 万能フランク/他多数 - 森めぐみ(2011年)/島野知也(2018年)
- 製図屋ダン/他多数 - 小笠原利弥(2011年)/矢野聖(2018年)
映画
この節には公開前の映画に関する記述があります。 |
夏への扉 | |
---|---|
監督 | 三木孝浩 |
脚本 | 菅野友恵 |
原作 |
ロバート・A・ハインライン 『夏への扉』 |
出演者 | 山﨑賢人 |
製作会社 | 「夏への扉」製作委員会 |
配給 |
東宝 アニプレックス |
公開 | 2021年(予定) |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
2021年に公開予定。原作から時代設定と舞台が1995年及び2025年の日本に変更されている[3]。
キャスト(映画)
- 高倉宗一郎:山﨑賢人
スタッフ(映画)
- 原作:ロバート・A・ハインライン『夏への扉』
- 監督:三木孝浩
- 脚本:菅野友恵
- 配給:東宝、アニプレックス
- 製作:「夏への扉」製作委員会
関連項目
- 演劇集団キャラメルボックス・『夏への扉』
- NHK連続テレビ小説「甘辛しゃん」 - 『夏への扉』がモチーフとして用いられている。
- モンテ・クリスト伯 - 本作の原案となった作品[要検証 ]。
- ピートのふしぎなガレージ(TOKYO FM・JFN系列) - 猫の「ピート」の名前は本作が由来。
脚注
- ^ ハヤカワ文庫2010年版解説
- ^ “夏への扉 キャラメルボックス2018スプリングツアー”. 演劇集団キャラメルボックス. 2017年12月17日閲覧。
- ^ “山崎賢人主演、三木孝浩監督のタッグで実現 ハインラインのSF小説『夏への扉』実写映画化決定”. Real Sound (株式会社blueprint). (2020年6月29日) 2020年6月29日閲覧。